深海で生まれたココロ   作:ほがみ(Hogami)⛩

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肆 召集

ヲ級side

F島北方

 

目を覚ますと、目の前に幸せそうな顔を浮かべるレ級がすやすやと心地の良い寝息を立てて寝ていた。そういえば、レ級に色々と教えていたんだったと色々思い出す。気づけば寝てしまっていたみたいだ。まぁ現在出撃の予定はワタシタチには無いから自由ではあるのだけど。

炭火は既に冷たい灰へと姿を変え、太陽が照らしていたはずの海は深海のように真っ暗に染まっていた。どうやら長い間眠っていてしまったようだ

ワタシは体を起こしてまだ火がつきそうな炭に火をつける。人に比べて寒さを感じにくい深海棲艦とはいえ、暖かいのは心地がいい。レ級もすやすや寝ていることだし、このまま朝まで寝かせてあげよう

 

(イマノウチニ、カンサイキノ…テイレデモスルカ)

 

ワタシは帽子の中から持っているだけの艦載機を取り出してひとつひとつメンテナンスしていく。車体を拭いたり、銃口の掃除をしたり…

まぁ正直に言うと必要のない工程だ。いつも知らぬ間に損傷や数が治っているし。だけど、ワタシにとって、この工程がただの作業ではないのだ。一つ一つの艦載機と向き合う時間

―ある艦載機を目の前にした時、手が止まる。それは、この間の任務で彼女たちに会話を求めた艦載機だった

何故彼女たちは話を聞いてくれたのだろうか。何故攻撃をやめて話を聞いてくれたのだろうか。

そもそも、彼女たちは本当に敵なのだろうか

 

(ワタシノココロハ…ミンナトハチガウ…)

 

彼女たちを完全に敵と考えている深海棲艦

それに対してワタシは、彼女たちは本当は敵では無いのではないかと考えている。出来ることなら戦いたくないし、話せるのなら話してみたい。この気持ちをわかってくれるかもしれない

―炭火がパチッと音を立てて燃える。さざ波が心地よい音を奏でる。ワタシのココロは少し不安を感じている。

もし、今の気持ちを飛行場姫に話せば、ワタシは異端者だと敵だと言われてしまうのだろうか。もしそうなった時、ワタシはどこに行けばいいのだろうか…

 

(…イヤ…ソンナコトハカンガエルナ…)

 

その時、島全体を艦載機が飛び交った。飛行場姫の艦載機だった。それは非常召集の合図。早くF島南方にある作戦司令室へ来いということ

ワタシはすやすやと寝息を立てるレ級を起こす

 

「レ級、オキテ」

「レ……?」

「ヒジョウショウシュウ…イカナイトゴウチンスル…」

「レ!!」

 

レ級は飛び上がって足早に進んでいった。

なんだか少し嫌な予感がする。先程まで色々と考えていたせいだろうか…まぁ単純にその空間が嫌なだけかもしれないが

 

 

F島南方 作戦司令室

 

そこは縦横30m程の広さがあり、正面には飛行場姫が話すためのステージが置かれている。ワタシタチはその場に集まった。駆逐、雷巡、軽巡と重巡、潜水やら空母やら戦艦全て集まっていた

空母はワタシ以外にも居る。ただ、真っ白なのはワタシだけ。

レ級も同じ一人で、他はル級やらタ級が多い。今はワタシの腰元に抱きついている

非常召集なだけあって全艦この場にいるのだ。およそ100近く?そんなにいないか

すると飛行場姫がステージへと足を踏み入れて、ワタシタチに今回召集した訳を説明し始めた

 

「コンカイ、ショウシュウノリユウ…カンムスガカッパツニナッネキテイル。ワレワレハ、キョアイヲハイジョシナケレバナラナイ」

 

長い長い話が終わり、要約すると…

艦娘の活動が活発しているため、脅威排除の為に警戒部隊を増設する。ということだそうだ。続いて部隊編成に伴う隊員が発表される。

同一艦もいるため、〇期の〇〇という感じで分けている。例えば、ワタシなら第四期の空母ヲ級という感じに。被ることもあるのかもしれないが、基本的にそれで呼ばれたらその艦というように紐付けられている

北方警備隊、西方警備隊、東方警備隊と続き、最後に南方警備隊が発表される。そこまで、ワタシやレ級の名はない。

 

「…ナンホウケイビタイ。キカン・第2期雷巡チ級。ツヅイテ、第4期雷巡チ級。第3期重巡リ級。同期軽母ヌ級。第3期軽巡ト級。サイゴニ…第5期戦艦レ級。イジョウ」

「……レ????」

 

腰に繋がれた拳が強く握られる。レ級はこの拠点内に一人。つまりは今腰にいるレ級が呼ばれたということ

飛行場姫は出撃時間―今から1時間後だった。それまで装備やら何やらを整えろと。そしてそのまま解散になり、ワタシは不安そうな顔を浮かべるレ級と共に1度作戦司令室の外へと出る。

今回ワタシは呼ばれなかった。それがいいことなのか悪いことなのかは分からない。ただ、レ級が呼ばれた真実は変わらない。

 

「…コワイ?」

「………レ」

「コレマデ、シュツゲキシタコトハ?」

 

首をブンブンと横に振るレ級

初任務は緊張するだろう。ワタシも緊張した…はず。失敗への不安、未知への恐怖心。そこにさらにこの非常召集が拍車をかけて恐怖心が生まれる。ワタシは依然として私の腰にしがみつきながら震えるレ級に目線を落として頭を撫でてあげる

 

「…レ級ナラ…ダイジョウブ。キットウマクヤレル。ダッテ、ワタシノイッタコト、スナオ二キイテクレタ。モシ、フアンナラ―」

 

ワタシは帽子からあの彼女達と会話した艦載機をレ級へと渡した。

レ級は航空戦艦。艦載機を飛ばすこともあるだろう。もちろんワタシの艦載機も飛ばせる。この艦載機がワタシだと思ってくれれば、不安も少しは消えるかもしれない。レ級は、ワタシの艦載機を受け取るとギュと胸の前で抱きしめ、不安を打ち消す笑顔を見せた

それはどんなに美しい朝日よりも眩しく、儚いものであった

 

1時間後、彼女達の発艦時刻が迫り、レ級は港へと進んでいくワタシは彼女が抜錨し、発艦するその時を見届けるために、港まで来た

レ級は既に水上へと足をすすめ、発艦の準備をしている。そしてワタシに気づいた時、レ級は眩しい笑顔を向け、Vピースをこちらに向けてきた

 

『南方警備隊―発艦――』

 

そのアナウンスと共に水平線へとレ級の背中が沈んでいく

ワタシはレ級に手を振りながら任務中の安全を祈る。いってらっしゃい。帰って来た時に暖かいご飯を作ってあげるよと

 

 

 

だけど、それがワタシが最後に見たレ級の姿だった。




あけましておめでとうございます(フライング)
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