「ハァ…ハァ…―ッ!…」
ワタシは背後から戦艦ル級に放たれた砲撃を間一髪で避ける
背後20km付近に戦艦ル級を始めとしたワタシを始末するための部隊が任務を遂行せんとワタシに砲撃を放ってくる
―ワタシは数刻前、レ級が沈んだ真相を見た。敵艦に沈められたという口合わせで雷撃処分したのだ。その理由は、次の標的になったワタシが逃げる時に飛行場姫が言い放った
『ココロヲモツイブツハハイジョ。ソレニカカワッタモノモオセンノカノウセイノタメ、ハイジョショブントス。キサマハニゲラレナイ。ワタシノメガアルカギリナ――』
危険分子はハイジョされる。それは世の理だろう。だがそれを黙って受け入れるほどワタシのココロは広くない
何も気づかなければ、レ級のように作戦内で誰にも知られることなく沈んで行っただろう。だが、ワタシは気づいてしまった。彼女達はもう既に仲間ではない。敵艦を轟沈させるために動く機械だ。ココロを持たない彼女達は命令に忠実
「ニガサナイ」
雷巡チ級の放つ砲撃がワタシの左腕に直撃した。
熱さを感じた瞬間、とてつもない痛みが左腕に走る。
「ヤダ…ユウバクシチャウ…」
ワタシは血流れる左腕を抑えながら必死に南方に向かって進む。速度の遅いル級は全速でも追いつくことはない。だがそのほかの軽巡やら駆逐艦は全速なら追いつく可能性がある。艦載機で雷撃応戦しているが、いつかは物資が尽きてしまうだろう。そうなる前に、行かなくてはー
と、その時思った。
どこに行くのだろうかと。
ワタシは深海棲艦。いるべき場所は艦娘側ではなく深海側だろう
しかし今、ワタシは深海棲艦から追われている。こんなワタシにどこに行けばいいのだろうか。この世にはふたつの勢力しかないというのに
酷く孤独感を感じる。
だがそんな時、先日の夜のことを思い出した
深海棲艦だというのに話しかけてくれた彼女達のことを
『もし――もし居場所に迷った場合、私達がいます。貴女のような"人"であれば、私は拒みません』
あの赤い空母の彼女なら受け入れてくれるのだろうか
不安はあれど、今はその希望に手を伸ばすしかない
そう思い、ワタシは一心を載せた艦載機をはるか遠くの南方へと飛ばす。彼女たちのA島はF島から南方方面にある。おそらく帰路に着いていたとしても1日で帰れる距離では無いはずだ。
届け。この想いよ
空母ヲ級より南方方面200km地点
私達はF島攻略連携訓練を終えてA島鎮守府へと帰路についていた。予定日よりも少し遅れてはいるが、まだ許容範囲内。提督には怒られるかもしれませんけど…
「しかし…本当に例のヲ級と遭遇できるなんて」
「予想に反して奇妙な存在でした。赤城さんが気にするのも少しわかった気がします」
少し時間が経って考えが変わったのか加賀はヲ級に対しての好感度が上がったようだ。
だがその言葉のすぐに、「だからといって仲間になれという話は納得できません」と…まぁ彼女の敵と味方を割り切る考えは素晴らしいと思う
私としては…彼女が仲間になって欲しいという訳ではなく、彼女の意思を尊重したい。敵となってしまったらその時だ。
「帰ったら間宮さんのご飯たべたーい」
「ゆっくりと温泉にでも入りたいですね」
「流石に疲れたなぁー提督に頼んで少し休み貰おうかな」
各々が帰港した後のことを話す。
まぁ流石に私も疲労感が出始めている。大盛カレーを10杯はたべたい気分。
「帰港して提督に報告しましたらみんなでご飯に行きまし……」
「赤城さん?どうか―」
「シッ―」
談笑している私達の声に混じって妙な音が聞こえた。
非常に小さい音だが波の音とは違う奇妙な音。フォーン…フォーンという不気味な音。どうやら他の子もその音に気づいたみたいだ。
私はありとあらゆる可能性を考え、どうすればいいかをまとめる。
とにかく警戒をした方がいいだろう。
「高雄さん、偵察機の準備をお願いします!私と加賀さんは東西を担当いたしますので、北方の警戒をお願いします!夕立さんと時雨さんは水中ソナーで潜水艦の索敵をお願いします!天龍さんは目視による南方の警戒をお願いします」
「承知致しました!偵察機、発艦いたします!!!」
羽音を立てて飛んでいく偵察機や艦載機
警戒状態を続けて10分ほどたった。目視、ソナーには反応なし。東西の敵影なし。北方は―――
「北方上空に敵艦載機発見!!!ですが…一機のみです!おそらく、その艦載機が音の発生源かと!」
「色々と妙ですね…」
「えぇ。何故一機のみなのか、何故音を発しているのか」
その時、高雄は続報を出した
艦載機は不安定に揺れながら高度を下げており、今いるこの地点が予想落下点になりそうとの事だ
敵影発見しているのであれば、おそらく見られている。だが迎撃はない。どこかで似たようなことがあったような…
「高雄さん。距離を保ちつつその艦載機を調査、接触を試みてください
」
「承知致しました!ええと…色は白、所々に被弾後があります!――――接触を試みましたがら、伝えなきゃと繰り返すばかりです」
様々な点が繋がった気がする。
おそらくその艦載機の主は彼女だ。何かがあってそんな状態になりながらも伝えに来たのだと
一機のみならば、回避も迎撃も容易いだろう。私は考えをみんなに話すと、その可能性が高いということで合致した
数分後、例の艦載機が目視できる距離まで来て、ゆっくりと私の方へと向かってくる。そして、私が両手を差し出すとその上で休むかのように着地した
『……タスケテ……』
ただその一言。
タスケテという言葉だけ。
だがそれを伝えるためだけに、ここまで飛んできた。
その一言は私の決意を固めるには十分だった
それを話そうとした私の肩を加賀が手を置く。そしてその目は真剣だ。私が考えていることを既に知っているかのように
だが加賀はすぐに手を離した。まるで我が子を見るかのような安堵の顔の中にほんの少し不安を混ぜたような顔をして一言放った
「その判断に賛同します」
私は加賀にお礼を言った後、私はみんなを見る。するとみんな私の話したいことがわかっているかのように笑顔だった
ならば、何の心配もいらない。私は言い放つ
「今ここに空母ヲ級援護作戦を発令します!」
ヲ級を追っているのは、ほぼ全艦種だったりします。
まあ、輸送艦とか潜水艦は省きますけどね