東方創想録   作:Mrコッコ

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【地熱洞】

旧地獄の街道を進み続け、やがて伊万里たちは赤みがかった熱気を伴う大きな洞穴の入り口にたどり着いた。壁一面に発光する赤い鉱物が貼られ、地中から湧き出る蒸気が空間を曇らせている——ここが地熱洞だ。

「やっと到着だ!」キスメが桶を転がして入り口に近づき、「熱くて暑いけど、地霊たちの気配がすごく強いよ!」

ヤマメが蜘蛛の糸を伸ばして周囲を探り、「糸が静かになってる… 地霊たちが私たちのことを知っているみたいだ。だけど… 何か重たい気配もするわ」伊万里は手を額に当てて熱気を避けながら、洞穴の奥を見つめた。暗がりの中には、大きな影がゆっくりと動いているのが見えた——それは地熱洞を守る古い地霊たちの姿だ。奥へ進むと、大きな岩の上に座っている白い髪の地霊が現れた。長いひげが垂れており、眼には数千年分の記憶が宿っているようだ。

「外の世界から来た青年と、その仲間たちか…」古き地霊が低い声で言い、伊万里の方を見つめた。

「デミウルゴスの脅威を伝えに来たのだろう。そのことは、さとりから聞いている」伊万里が一歩前に出て「はい! 旧地獄のみんなと力を合わせて、デミウルゴスを倒したいです! 地熱洞の地霊さんたちにも、協力してもらえないでしょうか?」古き地霊はゆっくりと頷き、「協力する。だが、この地熱洞には『絶望の記憶』が眠っている。デミウルゴスの下僕たちがそれを掘り起こそうとしているのだ」

「絶望の記憶…?」幻子が驚いて尋ねると、地霊は洞穴の奥を指さした。「あの岩の下に、旧地獄が創られた時の辛い記憶が封じられている。それが伊万里の心を蝕む最強の武器になる… 今、下僕たちがそこに近づいている!」その言葉と同時に、洞穴の奥から無数の黒い影が湧き出てきた。ゴロゴロと悪魔のような鳴き声を上げ、伊万里たちに襲いかかってくる。

「やってきたな!」空が大きな翼を羽ばたかせ、赤い火の弾幕を打ち出した。「みんな、守らないと! 岩の下を守るのが最優先!」キスメも桶から立ち上がり、「看てろ! 私の弾幕でぶち飛ばす!」と赤と青の光玉を打ち込んだ。ヤマメは蜘蛛の糸を張り巡らせ、影たちの動きを封じ込める。勇儀は拳を握りしめ、「俺が前衛だ! 近づくな!」と大きな岩を持ち上げて影たちに投げつけた。魔理沙と霊夢もそれぞれの弾幕を打ち出し、暗闇の中が鮮やかな光で彩られた。混戦の最中、伊万里は古き地霊の指さした岩の下に向かった。そこには黒い霧が渦巻いており、過去の辛い記憶が画像のように浮かび上がってきた——旧地獄の住民たちが争い合い、苦しんでいる姿だ。

「これが… 絶望の記憶…」伊万里は頭が痛くなり始め、デミウルゴスの声が精神世界から響いてきた。

「伊万里! これが真の世界だ! 希望はかつての虚構だ!」だがその時、幻子が伊万里の側に駆けつけ、手をしっかり握った。「伊万里くん! それは過去の記憶だけだ! 今はみんなが一緒に戦ってるじゃないですか!」

周囲から仲間たちの声が聞こえてきた。

「伊万里! 大丈夫か!」「私たちがいるんだ!」それらの声を聞いて、伊万里は頭の痛みが薄れ始めた。

「そうだ… 過去は変えられないけど、今は俺が選べる!」伊万里は手の甲の花模様を輝かせ、「この絶望の記憶を… 希望の力で照らしてやる!」花模様から放たれた明るい光が、黒い霧を包み込み、徐々に薄れさせていった。絶望の記憶はそのままに、新たな「希望の記憶」——仲間たちと戦う姿が重なり合い、洞穴全体が温かい光で満たされた。

光が収まると、黒い影たちは全部消え去っていた。古き地霊が伊万里の方に近づき、柔らかく笑った。

「お見事だ… 絶望を受け入れつつ、希望を信じ続ける力。それがこの地熱洞の力を呼び覚ます鍵だったのだ」その瞬間、洞穴全体が輝き始め、地中から強い力が湧き出てきた。「これは地熱洞の地霊たちの力だ。伊万里の希望に応えて、全員を支えてくれる」

伊万里は仲間たちの笑顔を見つめ、心から嬉しくなった。「ありがとうございます! これで、デミウルゴスに立ち向かう力が一層強くなりました!」空が翼を羽ばたかせて言った。

「でも、デミウルゴスはまだ諦めないだろう。次は地上に攻撃を仕掛けてくるかもしれない… 命蓮寺に行く準備をしよう」地熱洞の光の中、伊万里たちは新たな決意を胸に、次の旅立ちに向けて準備を始めた——デミウルゴスとの真の戦いは、今、より一層近づいていた。混戦が収まり、伊万里たちが呆れ気味に岩の下を見つめている時、伊万里の頭の中にデミウルゴスの機械質な声が轟いてきた。

「フフフ… 伊万里のやつ、努力はあったが… 地底の絶望の核は手に入った。残るは魔界と冥界と地上か」伊万里は手を頭に抱え、精神世界の中に浮かぶデミウルゴスの姿を見つめた。彼女は絶望の核を手に持ち、暗い眼が紫に輝いていた。

「魔界には神綺の力が、冥界には幽々子の力が、地上には命蓮寺や博麗神社の力が… それらを打ち砕き、全ての絶望を集めれば、俺は完全な姿になれる。その時、君の希望は塵もないだろう」デミウルゴスの笑い声が響き渡り、精神世界からの連絡は断たれた。伊万里はしばらく黙っていた後、力強く拳を握りしめた。「伊万里くん… 大丈夫ですか?」幻子が側に寄りかかり、手を握った。古き地霊も伊万里の方に近づき、「核は奪われたが、君が絶望に負けなかったことは大事だ。絶望の核は手に入れたが、彼女はまだ完全じゃない」

「そうだ! 私たちがここにいるんだ!」勇儀が大きな手で伊万里の肩を叩き、「魔界、冥界、地上——俺たちがそれぞれに行って、力を合わせれば勝てる!」伊万里は仲間たちの励ましの言葉を聞いて、徐々に顔を上げた。

「…ありがとうございます。デミウルゴスが核を手に入れたけど、俺たちには仲間がある。魔界に神綺様が、冥界に幽々子さんが、地上に命蓮寺が… 一緒になれば、絶望を打ち砕ける!」その瞬間、洞穴全体が再び輝き始めた。古き地霊が頷き、「地熱洞の地霊たちは君の希望に応える。核は奪われたが、ここの力は君たちを支える。魔界、冥界、地上へ——次は君たちが主導権を握る番だ」

空が翼を羽ばたかせて言った。

「そうだ! 今から魔界に神綺様に知らせ、冥界には伊万里が行く、地上には命蓮寺に連絡する——分業して行こう!」地熱洞の光の中、伊万里たちは新たな決意を胸に、デミウルゴスに対抗するための計画を立て始めた——全ての世界を結ぶ戦いが、今、本格的に始まったのだ。その時、霊夢が朱い巫女服の襟元を整え、突然ハキハキと言い出した。

「あっそうだ、この件は太陽の花畑にも伝わるかもね。まあ、紫がうまいぐわいに伝えてくれるだろうから、私たちは心配しなくていいよ」

「太陽の花畑… 風見幽香さんの所だね!」伊万里が目を輝かせ

。「彼女の力も加われば、さらに強くなりますね!」

魔理沙が帚を掻き立てながら、同じくハキハキと答えた。「だろうな! しかし、デミウルゴス… 名前自体は聞いたことあるようなないような感じなんだぜ。神綺も偉いな、魔界から来たらしいけど、置き土産を作ったなって感じだわ」

「置き土産って… ちょっとひどいよね」幻子が笑いながら言うと、勇儀も大きく笑う。

「まあ、神綺は昔から強気な女だからな。デミウルゴスが封印から逃げたのは意外だけど、今は彼女も一緒に戦ってくれるんだから大丈夫だ!」ヤマメが蜘蛛の糸を杖に巻きつけながら言う。 「太陽の花畑に伝われば、幻想郷の西側も警戒できるわ。紫さんがいるから、確実に伝わると思う」

「そうだね! 紫さんは隙間を自由に行き来できるから、いつでもどこにでも届くよ」キスメが桶の上で小さく跳ねる。「俺たちも、ここで地熱洞の力を受け取ったら、すぐに行動に移ろうよ!」古き地霊がその言葉を聞いて頷き、手を広げた。「さあ、地熱洞の力を君たちに授けよう。絶望の核は奪われたが、この力は『絶望を記憶することで希望を強める力』だ。デミウルゴスの力に対抗する鍵になるだろう」その瞬間、地中から湧き出る蒸気が明るい光に変わり、伊万里たち全員を包み込んだ。温かい気持ちが体中に広がり、手の甲の花模様も伊万里のものだけでなく、仲間たちの体にも薄く輝き始めた。

「これは… 地熱洞の力…」伊万里は驚いて手を見つめ、「みんなにも伝わってるんですね!」

「当然だ。希望は一人だけのものじゃないから」空が翼を羽ばたかせて笑う。

「さあ、準備はいいか? 魔界、冥界、地上——三つの世界を結び、デミウルゴスを倒すために!」地熱洞の明るい光の中、伊万里たちは一斉に頷き、新たな行動計画を確認した。太陽の花畑にも伝わることで幻想郷全体が結束し、魔界・冥界・地上に分かれて行動することで、デミウルゴスの計画を阻止する——全ての世界が繋がる戦いが、今、真に始まったのだ。その瞬間、伊万里の頭の中に再びデミウルゴスの声が響いてきた。今度は前よりもハキハキとした口調で、計画的な言葉が続いた。

「フフフ… 絶望の核はあといくつか集めないとな。地底の一つは手に入れたが、魔界や冥界にも隠されているはずだ…」

伊万里は手を頭に抱え、精神世界の中に浮かぶ彼女の姿を見つめた。デミウルゴスは絶望の核を回しながら、周囲に映る幻想郷の風景を見つめていた。

「それと、利用できる者だな。さっき、さとり妖怪が二人いたな——赤いサードアイの方は心読みができて危険だが、青い方は使える。アヤツをうまく使えばな…」

「青い方… こいしさん?」伊万里は驚いて呟く。精神世界のデミウルゴスはそんな伊万里の気持ちを察したように、さらに言い続けた。

「あとは境界か… それはスキマ妖怪だが、アヤツが進んで協力するとは思えん。紫という名前だったな? 隙間を自由に行き来できる力は便利だが、彼女は伊万里のことを守ってるような気配がする… うーむ、どうしたものか」デミウルゴスは眉をひそめ、一時的に黙った後、冷たく笑い出した。「まあ、どうにかなる。利用できる者は使い、障害になる者は打ち砕けばいい。青いサードアイの子には絶望の種を植え込み、境界の妖怪には何か手を焼かせる方法を考えよう…」その言葉が終わると、精神世界からの連絡は突然断たれた。伊万里はしばらく立ち尽くした後、力強く頭を上げた。

「伊万里くん、何だったの?」幻子が心配そうに問いかけると、伊万里はこいしのことと紫のことを仲間たちに話した。

「こいしちゃんが狙われてる…?」キスメが驚いて桶を掴む。ヤマメも顔を曇らせ、「絶望の種を植え込むなんて… あの子は純粋だから危険だわ」

霊夢が御札を手に取り、ハキハキと言う。「大丈夫だ。さとりがそばにいるから、こいしちゃんを守ってくれる。紫もそんなに簡単に手を焼かせるようなヤツじゃないからな」

「そうだ! 俺たちもすぐに行動に移れば、デミウルゴスの計画は阻止できる!」魔理沙が帚を掲げて声を上げる。「さあ、地熱洞を出て、魔界に神綺様に知らせる手配をしよう!」

伊万里は仲間たちの言葉を聞いて、再び希望に満ちた笑顔を浮かべた。デミウルゴスがこいしや紫を狙っていることは不安だったが、みんなが一緒に守り合えることを信じていた——三つの世界を結ぶ戦いは、今、一層緊迫した空気の中で始まるのだ。だがその時、洞穴の中の熱気が突然強くなってきた。蒸気がますます濃くなり、壁の赤い鉱物も異様に輝き始めた。

「おい、熱くないか?」魔理沙が襟元を引っ張り、額に汗を拭いた。

「普段はお空が制御してるはずなのに… 何か変だぜ」空も翼を羽ばたかせて周囲を見回し、顔を曇らせた。

「おかしい… 私がいつも地熱洞の熱気を調整してるんだけど、今は力が入ってない… 何かが俺の力を妨害してるような感じがする」

古き地霊が突然立ち上がり、低い声で言った。

「絶望の核が奪われた影響だ… 核は地熱洞のバランスを保つ鍵の一つだった。核が取り除かれたことで、地中の熱が暴走し始めているのだ」その瞬間、地中からゴロゴロと大きな音が響き、洞穴の壁が少しずつ崩れ始めた。赤い溶岩のようなものが岩の隙間からにじみ出てきて、周囲の温度はさらに上がった。

「危ない! ここが崩れちゃう前に出ないと!」勇儀が大きな手で伊万里と幻子を守り、「みんな、早く入り口に向かえ!」

キスメが桶を転がしながら慌てて言う。

「ヤマメ、大丈夫か! 糸で壁を支えられる?」

「少しだけ! みんなは先に行って!」ヤマメが蜘蛛の糸を全力で張り巡らせ、崩れかける壁を一時的に支えた。

「お空さん、熱気を抑えるのを何とかして!」空が深く息を吸い、大きな翼を広げた。

「私は全力で試す! だけど… 時間は少ないから、早く行け!」伊万里は幻子の手をしっかり握り、仲間たちと一緒に入り口に向かって走り始めた。熱気が息苦しく、足元も崩れかける岩のため不安定だったが、誰もが一緒に進んでくれることで、少しは安心できた。

「もう少しだ! 入り口が見える!」霊夢が先導して叫んだ。その時、空が赤い火の光を放ち、一時的に熱気を抑えた。

「今だ! 逃げろ!」全員が一気に入り口から飛び出すと、その直後に洞穴の奥から大きな爆発音が響き、岩が崩れ落ちて地熱洞の入り口が塞がれてしまった。伊万里たちは息を切らしながら崩れた岩を見つめ、しばらく黙っていた。空が翼をたたみ、少し疲れた声で言った。「…地熱洞は一時的に使えなくなったようだ。だけど、地霊たちは奥の安全な場所に逃げたはずだ…」伊万里は拳を握り、「核が奪われたことでこうなった… デミウルゴスの悪影響はすぐに現れるんだね…」

「だからこそ、早く行動しないと!」魔理沙が帚に乗り上がり、「地熱洞は塞がれたけど、俺たちには仲間がある。魔界に行く手配をしよう! 今すぐだ!」旧地獄の空の下、伊万里たちは新たな危機を経て、一層強い決意を胸に次の行動に移る準備をした——デミウルゴスの計画が現実になる前に、必ず阻止しなければならなかった。その時、伊万里の精神世界の中では、デミウルゴスが地熱洞が崩れる様子を映し出された画面で見つめていた。機械質な顔には少し意外そうな表情が浮かび、ハキハキと言葉を吐いた。

「本来はここまでは計画してなかったが… まあいい。これで下僕一つが作れる」彼女は絶望の核を手に持ち、崩れ落ちる岩や暴走する熱気の光景に目を細めた。地中から溢れ出る暗いエネルギーが画面に映り、デミウルゴスはそれを指さして笑った。

「地熱洞のバランスが崩れることで発生する絶望のエネルギー… これを集めれば、強力な下僕に変えられる。地底の絶望が形を持つのだ… フフフ、伊万里のやつ、俺にとっては幸先の良い誤算だったな」精神世界の中で、その暗いエネルギーが徐々にまとまり、ゴロゴロと鳴き声を上げる巨大な影が誕生し始めた。それは岩と熱気が混ざり合った、どこか地霊を模したような姿で——眼は暗く、凶暴な気配を放っていた。

「さあ、生まれよ、『地熱の悪霊』よ。俺の命令に従い、伊万里たちの道を塞げ。魔界や冥界へ行かせるな…」デミウルゴスの声が響くと、巨大な影は画面から飛び出し、旧地獄の現実世界へと向かっていった。彼女は再び伊万里の姿を見つめ、冷たく笑った。

「計画は順調に進んでいる… 絶望の核も、下僕も、全てが俺の手の中に入ってくる。伊万里、君の希望はいつまでも持ち続けられるのかな?」外の世界では、伊万里たちが次の行動を確認しようとしていた瞬間、崩れた地熱洞の近くから大きな足音が響き始めた。地を揺らすような音に全員が警戒し、空が翼を広げて叫んだ。

「何かが来てる! 大きなものだ!」伊万里が振り返ると、岩と熱気が混ざり合った巨大な悪霊が現れているのを見つけた。暗い眼が伊万里たちを見つめ、ゴロゴロと悪意に満ちた鳴き声を上げた——それはまさに、デミウルゴスが新たに生み出した下僕だった。

「これは… 地熱洞の崩れた影響で生まれたもの?」ヤマメが蜘蛛の糸を構え、緊張した声で言う。

「それにしても大きいな… みんな、覚悟しろ!」勇儀が拳を握りしめ、前に一歩出た。伊万里は幻子の手をしっかり握り、手の甲の花模様を輝かせた。デミウルゴスの新たな仕掛けだったが、今は仲間たちと一緒に立ち向かうしかなかった。

「みんな、一緒に倒そう! これを越えれば、魔界への道が開ける!」伊万里の声に応えて、全員が弾幕や武器を構えた。旧地獄の赤みがかった空の下、地熱の悪霊との新たな戦いが、今、始まったのだ。だがその時、勇儀が大きな手を広げて一歩前に出、突然ハキハキと言い出した。

「いいや、伊万里、お前は先に行け! ここは私が食い止める!」

伊万里は驚いて「勇儀さん! そんな… 一人では危ないです!」と叫ぶと、キスメが桶の上から跳ね上がって同じくハキハキと答えた。

「勇儀一人だけではないよ、私も残る! 桶で弾幕を打ち続けるから、大丈夫だ!」

続いてヤマメが蜘蛛の糸を張り巡らせながら、ハキハキと言う。

「私も残るわよ。もとより旧地獄の住民は地上に出るのは似合わないだろうし、ここで仲間たちを守るのが私たちの役目だから」

その瞬間、岩場の陰から金髪ボブのエルフ耳の女性が歩み出てきた——旧地獄の橋の番人パルスィだ。明るい笑顔で加勢した。

「私も来たよ! コイツはここから先は通してはいけないと直感が伝えたから。勇儀さんたちと一緒に、この大きなヤツを倒すからね!」伊万里は四人の姿を見つめ、胸が熱くなった。

「パルスィさんまで… でも、この悪霊は強そうですよ? みんな一緒に行かないと…」

「お前たちには魔界や冥界に行く大事な仕事があるだろう?」勇儀が大きく笑い、拳を叩き合わせた。

「このヤツは俺たち旧地獄の者が倒すんだ! お前は神綺様にデミウルゴスの計画を伝え、絶望の核を取り返すために頑張れ!」

キスメが弾幕を構えて言う。「そうだ! 私たちがここで食い止めるから、伊万里は安心して先に行け! 後で地上で会おうね!」

ヤマメも頷き、「蜘蛛の糸で周囲を封じ込めて、逃がさないわ。みんなで力を合わせれば勝てる!」

パルスィは手から弾幕を打ち出しながら、「嫉妬心を操る力で悪霊の足止めするから、大丈夫だよ。伊万里くん、お願いだから、先に行って!いかないと妬むわよ!」空が翼を羽ばたかせて伊万里の側に寄りかかり、「私は伊万里たちを地上まで送ってから戻ってくる。それまで、ここは任せたぞ!」

伊万里はしばらく迷ったが、四人の真っ直ぐな眼差しを見て、力強く頷いた。  

「…分かりました! みんな、お願いします! 絶対に無事にしてください! 俺たちが魔界で頑張るから、ここでも頑張ってください!」

幻子も手を合わせて言う。

「みんな、ありがとうございます。必ず会いに戻ってきます!」勇儀が大きな声で叫ぶ。

「さあ、行け! 今だ!」

地熱の悪霊がゴロゴロと鳴き始める瞬間、空が翼を広げて伊万里、幻子、霊夢、魔理沙を包み込んだ。

「走れ!」四人は一気に旧地獄の街道を駆け出し、後ろからは勇儀たちの弾幕が炸裂する音と、悪霊の鳴き声が響いてきた。伊万里は振り返らないように前を見つめ、心の中でみんなの無事を祈り続けた——地上への道は、今、その背中に託された希望を抱いて進むのだ。その時、精神世界の中でデミウルゴスは勇儀たちが地熱の悪霊を足止めする様子を見つめ、機械質な顔から初めて怒りと悔しさが滲み出てきた。

「グヌヌヌヌ… まさか… 旧地獄メンバーのみで足止めとは…!」彼女は絶望の核を手にして振り上げ、精神世界の暗闇がゆらぎ始めた。先程のハキハキな口調は消え失せ、かすれた声に混じって悔しさが伝わってくる。

「俺の計画はこんなはずじゃなかった… 地熱の悪霊で伊万里たちを叩き潰すはずだったのに…!」だがすぐに、彼女の眼が再び暗く輝き、冷たい決意を込めて言い続けた。

「だが、地上に戻ったらまた作戦を立てる! 幾度、潰されても下僕は滅びぬ! 何度でも蘇る!」精神世界の中には無数の黒い影が浮かび上がり、彼女の言葉に応えるようにゴロゴロと鳴き始めた。デミウルゴスは伊万里たちが魔界へ向かう背中を見つめ、冷たく笑い出した。

「伊万里… 今回は逃がしてやるが、次は魔界で、冥界で、地上で… 必ず君の希望を蝕み尽くす。絶望の核を全て集めた時、君たちはどこにも逃げ場がなくなる… それを信じて待っているよ…」その言葉が響き渡ると、精神世界からの連絡は完全に断たれた。外の世界では、空が翼を全力で羽ばたかせ、伊万里たちを旧地獄の出口へと運んでいた。後ろからはすでに弾幕の音が薄れ、勇儀たちが悪霊と戦い続けていることを感じさせる風が吹いてきた。伊万里は手の甲の花模様を輝かせ、魔界へと続く光の道を見つめた。デミウルゴスの怒りと決意は重かったが、勇儀たちが託してくれた希望を抱いて、必ず勝利をつかむことを誓った。

「神綺様… 魔界で待っててください。俺たちが来ます… 絶望を打ち砕くために!」

旧地獄の赤みがかった空が遠ざかり地上に出る

 

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