東方創想録   作:Mrコッコ

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【すすむ暗躍!?】

旧地獄に残った轟音の残響が薄れると、小さな妖怪は慌てて灼熱の大地を駆け抜け、地獄の入り口へと向かっていた。智代子が勇儀と萃香を手に入れたこと、その恐怖を誰かに伝えなければ——そんな思いが体中を駆け巡っていた。一方、幻想郷の人里と博麗神社と魔法の森の中間の建物、伊万里は八方屋の店先で商品を整理しながら、智代子の家の方向を何度も見つめていた。昨夜から彼女の姿が見えないことに不安を募らせ、ポケットに入れた携帯を揉みしだめていた。

「智代子さん… どこに行っちゃったんだろう…」

「伊万里くん、心配してるの?」幻子がお茶を持って近づき、「智代子ちゃんは朝から外出したって言ってたけど、何処に行くかは言わなかったよ」

伊万里は頷き、「ん… そうだね… でも、なんか強い波動が旧地獄の方向から伝わってきたような… 俺、幻子と一緒に見に行ってみようか?」

「旧地獄? 危険じゃない?」幻子は眉をひそめるが、伊万里の真剣な眼差しを見て頷いた。

「…分かった。一緒に行くよ。でも、危なかったらすぐ逃げるんだね」その頃、博麗神社の本殿では霊夢が古文書の最後の頁を見つめ、口をつぶやいていた。

「『虹の組み物』… 力を抑える唯一の方法は『心の共鳴』っと… 何それ?」

「心の共鳴って、妖具の持ち主の心に響くものだろうね」突然背後から紫の声が響き、霊夢は驚いて身を翻した。「紫! 今どこから来たんだ? 萃香の行方は知ってるの?」

「ふふん、萃香は旧地獄で智代子に捕まっちゃったわ」紫は扇子で口元を隠し、「勇儀も負けてしまったらしい。暗躍は着実に進んでるわね」

「何で知ってて知らせないのよ!」霊夢は立ち上がり、「今すぐ旧地獄に行かなきゃ…」

「待て」紫は手を挙げて止め、「智代子は今、他の妖怪たちを探してる最中。今行っても闘いになるだけで、萃香たちを救えない。『心の共鳴』を理解するまで、待つしかないのだ」その時、旧地獄から逃げてきた小さな妖怪が神社に飛び込んできて、喘ぎながら言った。

「霊夢さん… 智代子さんが… 勇儀さんと萃香さんを… 操っちゃったんです…」霊夢の顔が青ざめる中、伊万里と幻子も鳥居から駆けてきて、「霊夢さん! 旧地獄の方向から怪しい波動が…」視線が一つに集まり、誰もが同じ思いを抱いた——智代子の暗躍はもう止められないほどに進んでいるのか。そして「心の共鳴」とは何なのか。幻想郷の運命をかけた時間が、今、さらに速く刻まれ始めていた——一方、旧地獄の奥深くにある地霊殿へと智代子は進んでいった。後ろには萃香と勇儀が黙ってついており、虹色の妖具の光が暗い回廊を照らしていた。やがて、大広間の中央に二人の妖怪が立っているのを見つけ、智代子は微笑みを浮かべた。対峙していたのはさとりとこいしだった。さとりは手を顔の横に上げて、ハキハキと声を上げた。「アナタどうやってここに? 地霊殿には外来人が勝手に入れないはずだけど」智代子が答える前に、突然空中に隙間が開き、紫が悠然と降りてきた。

「私が力を貸したのよ。地霊殿の扉を開けてあげたわ」

さとりは眼を細め、紫と智代子を交互に見つめた。

「紫? 貴女がこの外来人と手を組んでるのか? 何か企んでるんだろ?」

「企んでるなんて言わないわ。ただ、幻想郷に新しい風を吹かせるための取り計らいよ」紫は扇子で髪をかき分け、「さとりちゃんも、地霊殿で毎日同じことばっかりじゃつまらないでしょ? 智代子の力で、地獄も幻想郷も自由になれるのだから」

こいしはさとりの隣に近づき、小さな声で言った。

「お姉ちゃん… あの人の気配、悪くないけど… 何か怖いような…」智代子は一歩前に進み、虹色の光をさとりに向けた。

「さとりさん、あなたは他人の心を読めるのでしょ? アタシの心を読んでみて。本当に悪いことをしようとしてるのか、見てみてごらん」さとりは眉をひそめ、智代子の心に思いを送った。すると、外の世界での孤独な日々、能力を使えない悲しみ、幻想郷で力を手に入れた喜び… そんな感情が混ざり合って伝わってきた。

「…複雑な心だね」さとりはハキハキという、「でも、自由を得るために他人を操るのは、私には気に入らない」

「操るんじゃなくて、一緒に生きるのよ」智代子は微笑みを深め、「さあ、地霊殿の力を貸してくれる? あなたたちも、アタシの計画の一員になってくれる?」紫は傍らで静かに見守り、目には依然として怪しげな光が宿っていた。地霊殿が智代子の手に落ちるのか、それともさとりたちが立ち向かうのか——暗躍は地霊殿でも新たな局面を迎えようとしていた。その時、勇儀がハキハキと声を上げた。

「ちなみに私は操られてなどいない。智代子との勝負に負けたから条件をつけて加わってる。さとり、お前は無駄なことをしないはずだ」さとりは勇儀の言葉に驚いて目を見開き、同じくハキハキと叫んだ。

「勇儀が負けた!? 実力は旧地獄では一番強いのに… 貴女、本気で闘ったの?」

「当然だ」勇儀は頷き、智代子の方向を指さした。

「この娘は妖具の力だけじゃない。外の世界で鍛え上げた体と、執念のような強さがある。俺は本気で闘ったが、確実に負けたんだ」

こいしはさとりの衣装を引っ張り、小さな声で言った。

「お姉ちゃん… 勇儀さんが負けるなんて… あの人、本当に強いのね…」

智代子は微笑みながら勇儀に感謝の眼差しを送り、さとりに向かって言った

「さとりさん、勇儀さんも本気で認めてくれたわ。あなたの心読みでも分かってるでしょ? アタシの力は、ただの支配欲じゃないのよ」さとりは智代子の心を再び読み込み、今度は勇儀の心も少し探った。勇儀の心には「負けを認める覚悟」と「萃香を元に戻す約束」が強く宿っているのを感じ、さとりは眉をひそめた。

「…条件って何だ?」さとりは手を握り締め、「勇儀が加わったのは、何か見返りがあるからでしょ?」

「もちろん」勇儀はハキハキと答えた。

「計画が成功したら、萃香を元に戻すって約束だ。それと、旧地獄の自由を守るって話だ」さとりは一時的に沈黙し、こいしの顔を見つめた。地霊殿の未来、旧地獄の未来、そして幻想郷全体の未来——それらが一つに絡み合い、さとりの心に波紋を立てていた。紫は傍らで扇子を軽く振り、心の中で呟いた。

「ふふん、選択は始まったわね。地霊殿が加われば、暗躍はさらに速く進む…」地霊殿の大広間には重い空気が満ち、さとりの選択が幻想郷の運命を大きく変えることになるのが、誰の目にも明らかだった。その瞬間、さとりはハキハキと声を上げた。

「だけど、私は智代子さんの計画には乗らない。計画が成功したとしても本当に自由とは限らないしね。それに、これは幻想郷が下手すりゃ壊れるから」智代子は眉をひそめ、リボンの輝きを少し強めた。

「へえ~ そうなの? 勇儀さんも認めた力なのに、さとりさんは頑固だね」

「頑固じゃない」さとりは一歩前に進み、眼を真っ直ぐに智代子を見つめた。

「他人の心を読むから分かるんだ。アタシの心には『自由』という言葉以上に、『幻想郷を守りたい』という思いが強いのよ。ここは俺たちの居場所だから」

こいしもさとりの後ろにしっかりと立ち、小さいながらも力強く言った。

「お姉ちゃんと一緒だ! 地霊殿はここがいいから、変えたくない!」

勇儀は唇をかんで、智代子に向かって言った。「さとりの選択は尊重するよ。私は約束のために加わったけど、こいつらを強制することはしない」紫は傍らで扇子で口元を隠し、微笑みを浮かべた。

「ふふん、予想外な展開ね。地霊殿が立ち向かうとは… 暗躍は思ったよりも曲がりくねってるわ」

「立ち向かうの?」智代子は冷たく笑い、虹色の弾幕を生成し始めた。「さとりさん、あなたは心を読めるけど、戦闘は得意じゃないでしょ? 勇儀さんも萃香さんもここにいるんだよ?」

「戦闘は得意じゃないけど、逃げるわけじゃない」さとりは手を前に振りかざし、「地霊殿の力は、妖具の力に負けないと思う。こいしも一緒だし、旧地獄の他の妖怪たちも、きっと俺たちの側に立ってくれるから」

その瞬間、地霊殿の回廊から小さな妖怪たちの足音が聞こえてきた。旧地獄の妖怪たちが集まってきて、さとりたちの後ろに並んだ——彼らは智代子の力を恐れていたが、さとりの決意に勇気づけられていた。地霊殿の大広間には、虹色の光と地獄の闇がぶつかり合いそうな緊張感が満ち始めた。智代子の暗躍は、ここで壁に突き当たるのか、それとも新たな暴力で進むのか——その分かれ道が今、眼前に広がっていた。智代子は旧地獄の妖怪たちの集まりを見つめながら、突然ハキハキと声を上げた。

「だけど、君の力は必要! どうしても加わってもらおう」

言葉と同時に、彼女は一歩閃くようにさとりの前に近づき、その肩に手を触れた。瞬く間に、虹色の光が智代子の手からさとりの体に流れ込み始めた。

「お前! 何をするんだ!」さとりは驚いて後ろに引こうとしたが、智代子の手はしっかりと肩に定着していた。心の中には虹色の波動が広がり、「加われ」「加われ」という囁きが聞こえてくるようだった。

こいしは慌ててさとりの衣装を引っ張り、「お姉ちゃん! 大丈夫? あの光、怖いよ!」

勇儀も、「智代子! 約束しただろう? 強制することはしないって!」

「強制じゃないわ」智代子は微笑みながら光を強め、「さとりさんの心の奥にも、『変わりたい』という思いはあるでしょ? アタシはそれを呼び覚ますだけよ」さとりは額に汗を浮かべ、心読みの能力を使って智代子の思いに抗おうとした。すると、外の世界での彼女自身の孤独な記憶までが呼び起こされ、「誰も理解してくれない」という悲しみが体中を駆け巡った。

「…ううっ…」さとりは頭を押さえ、体が震え始めた。虹色の光が彼女の瞳にも滲み始め、心が徐々に濁っていくのが見えた。その時、突然地霊殿の天井から強い風が吹き込み、智代子の手をさとりの肩から弾き飛ばすような力が生まれた。

「やめろ!」みんなが顔を上げると、現れたのは火焔猫燐だ、

「お燐!」さとりは息を呑み、「なぜここに…」

「地霊殿を守るのがアタイの役目だ」燐は暗い炎を周囲にまき散らし、「外来人がここで勝手に人を操るなんて、許さない」智代子は後ろに一歩引き、虹色の弾幕を生成した。

「番人か… 面白いわね。でも、アタシはさとりさんの力を手に入れるつもりだから」

地霊殿の大広間には、虹色の光、地獄の闇、暗い炎が混ざり合い、新たな闘いが今、始まろうとしていた。智代子の暗躍は、ここで挫折するのか、それともさらに深く進むのか——運命の歯車が一層速く回り始めた。智代子は燐の出現を見て、それでも不敵に唇を広げて笑った。

「だが、今の接触で十分」言葉が終わる瞬間、さとりの体が突然震え上がり、瞳に濁りが広がっていった。やがて、彼女の目つきは萃香とまったく同じ——誰かに操られたような空っぽさに変わっていた。

「お姉ちゃん…?」こいしは慌ててさとりに近づき、手を伸ばすと、さとりがゆっくりとその手をはねつけた。

「こいし、後ろにいればいい」さとりの声は冷たく、以前の温もりが消え失せていた。彼女は智代子の後ろに立ち位置を変えた。燐は暗い炎を燃やし強め、低い声で言った。「なんだ… そんな短い接触で… この娘の心はそんなに脆かったのか…」

「脆くないわ」智代子は不敵な笑いを続け、「さとりさんの心の奥には、外の世界の時と同じように『理解されたい』という思いが眠ってただけ。アタシはそれをちょっとだけ掻き立てたのよ」

勇儀は鉄球を握り締め、額に青筋を立てた。

「智代子… 私との約束は守るんだな? 萃香とさとりを元に戻すって…」

「もちろんよ、計画が成功したらね」智代子は手を広げ、萃香、勇儀、さとりの三人を後ろに従えながら、焔々子に向かって言った。

「あなたも一緒になる? 地霊殿も旧地獄も、アタシの力で自由になるわよ」燐は炎を体に巻きつけ、退かない姿勢を崩さなかった。

「地霊殿の自由はアタイが守る。お前のような外来人の手には渡さない」

「そうか… 残念ね」智代子は肩をすくい、「でも、今は時間がないからここは逃がしてあげるわ。さあ、みんな、次の場所へ行こう」

言葉を終えると、智代子は紫が開いてくれた隙間に向かって歩き始めた。萃香とさとりは黙ってついていき、勇儀は最後に燐とこいしを見つめた後、ためらいながらも追いかけていった。燐は炎を消し、こいしが崩れ落ちそうに立ち尽くしているのを見て、肩を落とした。

「こいし様… 大丈夫ですか?」

「お姉ちゃん… お姉ちゃんが…」こいしは小さな声で泣き始め、燐の手に顔を埋めた。地霊殿の大広間には暗闇が戻り、智代子の虹色の光の軌跡だけが残っていた。暗躍は確実に進み、幻想郷に迫る危機はもう手の届かない場所まで広がっていた——隙間を抜け出すと、智代子たちが立っていたのは、灼熱の蒸気が立ち込める地熱洞だった。赤く輝く溶岩が溝を流れ、周囲の岩は熱でゆがんだ形をしており、一歩間違えれば命がかかる危険な場所だった。

「次はここか… 地熱洞には何があるんだ?」勇儀は鉄球を肩に乗せ、蒸気を避けながら周囲を見つめた。

智代子は虹色のリボンを輝かせ、蒸気を弾き飛ばしながらハキハキと言った。「地熱洞にはヤタガラスの力がある。その力を手に入れれば、旧地獄全体を支配することができる。あとこれで、旧地獄の力はほとんどアタシのものになるわ」

紫は隙間から抜け出して彼女の側に立ち、「確かにお空は古くから旧地獄を守っている存在だけど… 妖具の力でも操れるのかしら?」

「もちろん。さとりさんや萃香さんのように、心の奥の思いを掻き立てればいいだけじゃない?」智代子は溶岩の溝を飛び越え、奥へと進んでいった。萃香とさとりは無言で追いかけ、勇儀もためらいながら足を動かした。 やがて、地熱洞の最奥には大きな岩塊があり、その中心から赤い光が溢れ出していた。虹色の光が炎の膜に触れる瞬間、岩塊から強い熱波が発せられ、お空の眼がゆっくりと開いた。  

「…誰? 地熱洞に許可なく入るなんて…」智代子は微笑み、「旧地獄を自由にするために、力を貸してくれない? アタシの力で、この灼熱の地獄を美しい場所に変えるのよ」お空は智代子の後ろに立つ萃香とさとりを見つめ、眉をひそめた。

「さとりと萃香… お前たち、何をしているんだ? この外来人と手を組むなんて…」

「彼女らは一緒になってくれたのよ。お空ちゃんも、一緒に来ない?」智代子の手から虹色の光が再び伸び、アカネの体に向かって迫っていた——

地熱洞の蒸気がさらに濃くなり、赤い溶岩の光と虹色の光が混ざり合い、新たな奪取劇が今、始まろうとしていた。

お空は「難しいことは分からない、だけど、危ないことをしようとしてるのは分かる!」と言う。その時、さとりが智代子の後ろから一歩進み、冷たい声で言った。「お燐は強情だったけど、アンタは昔からアタシには逆らえないよね。私たちと来なさい」お空はさとりの目つきを見て、少し驚いたように眉をひそめた。「さとり様… ちょっと変だよ? 普段はそんな口調じゃないのに…」

「変わったのは世界だけよ」さとりは手を前に突き出し、「智代子さんと一緒になれば、自由になれるんだ。お空も一緒に来なさい」お空はハキハキという

「難しいことは分からない、だけど、危ないことをしようとしてるのは分かる」さとりは言う

「お燐は強情だったけど、アンタは昔からアタシには逆らえないよね、私たちと来なさい」お空はハキハキという

「さとり様がおっしゃるなら私はついていきます」智代子は素敵に笑う

「決まりだね」智代子はお空の肩に触れる。紫は傍らで扇子を軽く振り、心の中で呟いた。

「旧地獄が全部手に入った… 暗躍は次の段階に進む時が来たわね」地熱洞の蒸気が虹色に染まり、智代子の手には旧地獄全ての力が集約されつつあった。幻想郷に向けて伸びる魔手は、今や誰にも止められそうになかった——大きく深呼吸をしてハキハキと声を上げた。

「次は永遠亭だな。月の狂気の兎と姫が重要、あとは捨てておいて構わない。まずは姫の方からだ」

紫は隙間を開けながら微笑み、「永遠亭の輝夜姫? 彼女は蓬莱の薬を飲んだ不老不死の存在だけど、心の弱点はあるのかしら?」

「不老不死だからこそ、心には長い年月で刻まれた寂しさが眠ってるはずよ」智代子は虹色の妖具を整え、「その寂しさを掻き立てれば、簡単に手に入れられるわ。狂気の兎も、姫に従うから問題ない」

勇儀は「永遠亭は人里から離れてるし、輝夜姫は強い妖怪を使い分けてる。油断はできないよ」という

「強い妖怪なんて、今のアタシには何にもならないわ」智代子は不敵に笑い、紫の開いた隙間に向かって歩き始めた。「さあ、みんな、次の場所へ。月の力を手に入れれば、幻想郷の支配はほとんど」萃香、さとり、お空、は黙ってついていき、勇儀は最後に地熱洞の溶岩を見つめた後、ためらいながらも追いかけていった。隙間が閉じると、地熱洞には再び灼熱の蒸気と赤い溶岩の光だけが残った。その頃、永遠亭の中では輝夜姫が縁側で月見草を眺め、鈴仙がお茶を運んできていた。

「姫さま、今夜の月は明るいですね」

「うん。月を見ると、昔のことが思い出されるわ」輝夜は柔らかく笑い、突然眉をひそめた。

「…何か怪しい波動が来てるわ。旧地獄の方向からだけど、力が強すぎる…」鈴仙は耳を澄まし、赤い瞳が少し鋭くなった。

「姫さま、何か悪い予感が… 誰かがここに来てるような気がします」

「来るのなら来るのだ。逃げるわけじゃない」輝夜は月見草を撫で、「ただ、その波動には『寂しさ』が混じってるのが不思議だわ…」その瞬間、永遠亭の庭に虹色の光が降り注ぎ、智代子たちの姿が現れた。輝夜は緩やかに立ち上がり、鈴仙は彼女の前に立ちはだかった。

「外来人? 永遠亭に何か用があるのかしら?」輝夜の声は静かだが、冷たさを含んでいた。智代子は微笑みながら一歩前に進み、「輝夜姫さん、はじめましてだね。アタシは智代子。あなたの力を借りたいのよ」永遠亭の庭には、月の光と虹色の光がぶつかり合い、新たな暗躍の舞台が今、開幕しようとしていた。輝夜は智代子の言葉を聞いて、緩やかに扇子を開き、ハキハキと声を上げた。

「君の狙いは分かってる。私と、あと一人は鈴仙でしょ。何も変化がないような感じで退屈だし、君に与するのも悪くないかもね」智代子は驚いて眉を上げ、同じくハキハキと笑った。

「意外な答えだね。君が進んで協力するとはね」その時、鈴仙は慌てて輝夜の前に一歩進み、赤い瞳を大きく開けてハキハキと叫んだ。

「だ、ダメですよ、姫様! 彼女は何かを企んでるようです! 旧地獄の波動が彼女の体から溢れてるんです!」輝夜は鈴仙の慌てた様子を見て微笑み、ハキハキと言った。

「企んでるのはわかってる。だけど、退屈凌ぎで付き合うだけ。もし嫌なことが始まったら、私が止めればいいじゃない」智代子は手を胸に当て、嬉しそうに頷いた。

「さすが輝夜姫さん、立派な覚悟ね。でも、アタシの計画は絶対に成功するから、後悔させないわ」

「後悔はしないよ」輝夜は月見草の方向を見つめ、「ただ、君の『自由』が私の『退屈凌ぎ』と合わなくなったら、すぐに手を引くからね」

鈴仙は肩を落とし、「姫様… でも…」と言いかけたが、輝夜の真っ直ぐな眼差しを見て言葉を呑んだ。彼女は姫様に従うのが使命だから、たとえ不安でもそばにいなければならない——そんな思いが心に満ちていた。紫は傍らで扇子を軽く振り、心の中で呟いた。「永遠亭も手に入った… 月の力が加われば、幻想郷の支配はもう手の届かない距離まで近づいたわ」智代子は輝夜の肩に軽く手を触れ、虹色の光を少しだけ流し込んだ。「さあ、輝夜姫さん、鈴仙ちゃん。次の場所へ行こう。あと少しで、すべてが終わるのよ」永遠亭の庭に降り注ぐ月の光が虹色に染まり、智代子の暗躍はもう誰にも妨げられない勢いで、幻想郷の中心へと迫っていた。智代子が輝夜と鈴仙を従えて隙間に向かおうとする瞬間、紫が扇子を開いてハキハキと声を上げた。

「強力な存在は太陽の花畑とあとは紅魔館にいるわ。どっちから行くのかしら? あら、太陽の畑のほうには幽香以外に伊万里もいるか。あらら~、幽香を引き入れるのは無理そうだね。残念だけど、代わりに、魔法の森のアリスを入れる?」

智代子は眉をひそめて太陽の花畑の方向を想像し、「伊万里がそこにいるの? ちょっと驚いたわ。幽香は幻想郷で最も強い妖怪の一人だから、確かに引き入れるのは難しいね」

「そうだし、伊万里がいれば、君の計画がバレる可能性もあるわ」紫は微笑みながら言った。

「魔法の森のアリスは人形使いだけど、心には『一人ぼっち』という弱さがあるはず。彼女の力を手に入れれば、紅魔館への道も開けやすくなるのよ」

勇儀は拳を左手に打ち付けて、「アリスか… 人形を操る力は意外と手強いけど、君の妖具の力なら大丈夫だろ?」

「もちろん」智代子は不敵に笑い、「アリスさんを手に入れてから紅魔館に行こう。紅魔館のレミリアは子供だけど、周りに強い手駒が多いから、先にアリスさんの力を借りたほうがいいわ」

輝夜は扇子で頬を叩き、「アリスか… 彼女は私とも少しだけ話したことがあるわ。確かに一人で魔法の森に住んでるから、寂しがり屋だったね」

「それなら簡単だわ」智代子は手を広げ、虹色の光が周囲を包み始めた。

「さあ、みんな、魔法の森へ。あとこれで、最後の手駒もそろうのよ」鈴仙は輝夜の側にしっかりと立ち、不安そうに魔法の森の方向を見つめた。萃香、さとりたちも黙ってついていき、紫は最後に太陽の花畑の方向をちらっと見つめた後、隙間に滑り込んでいった。魔法の森の暗がりの中、アリスの館の窓からは小さな明かりが灯っていた。彼女は人形たちと遊んでいるようだったが、突然何か悪い予感を感じて身をすくめた。虹色の光が森の奥から近づいてくるのを、誰もが見えない形で感じ始めていた——その瞬間、アリスの館の前に虹色の光が降り注ぎ、智代子たちの姿が現れた。アリスは人形「上海」を手に抱きながら立ち上がり、窓から外を見つめて、すぐに気づいたようにハキハキと声を上げた。

「これは珍しい組み合わせだね。そして、外来人ははじめまして、私はアリス・マーガトロイドよ」智代子は館の扉に向かって歩み出し、同じくハキハキと答えた。「これは丁寧にありがとう。私は虹星智代子だよ。君の人形を作る才能と操る力、その力は実に素晴らしい。どうかな? 私に力を貸してほしい」アリスは眉をひそめ、上海を肩に乗せかえて外を見つめた。萃香、さとり、輝夜、鈴仙——それぞれ幻想郷で名の知れた存在たちが、智代子の後ろに立っているのを見て、少し警戒心を抱いた。

「力を貸す… 何のために? 君たちは一体何を企んでるの?」

「幻想郷を自由にするためよ」智代子は微笑みながら、虹色のリボンを輝かせた。

「君は一人で魔法の森に住んでるでしょ? 人形たちといても、時には寂しくならないの? アタシの力で、誰もが孤独にならない世界を作るのだから」

紫は傍らで扇子を軽く振り、「アリスちゃん、君の心には『誰かと一緒にいたい』という思いが眠ってるでしょ? 智代子の計画に加われば、その思いが叶うのよ」アリスは手の中の上海をしっかりと抱き締め、「人形たちがいれば寂しくないわ」と言ったが、声には少し弱さが見えた。長い年月、魔法の森で一人で過ごしてきた彼女には、智代子の言葉が少しだけ心に響いていたのだ。

「でも… 君たちの様子を見ると、何か大きなことをしようとしてるように見えるわ」アリスは瞳を細め、智代子の体に宿る強い波動を感じ取った。「それが幻想郷に害を与えるのなら、断るわ」

「害なんて与えないわ。ただ、古い束縛を解くだけよ」智代子は一歩前に進み、手をアリスの方向に伸ばした。

「君の力があれば、計画はさらにスムーズに進む。どうするの? アリスさん」魔法の森の風が館の窓を鳴らし、上海の髪がそよいだ。アリスは智代子の手と、自分の抱える人形たちを交互に見つめ、選択の時が来たことを感じていた——その瞬間、アリスは肩を少しすくい、ハキハキと声を上げた。「いいでしょう、私の力を貸してあげるわ。ただし、ちょっとした利害一致だからね」

智代子は嬉しそうに手を合わせ、「やった! さすがアリスさん、明解だね。利害一致でいいわ、最後まで一緒にいてくれれば」

「もちろん、計画が自分にとって不利になったら、すぐに手を引くからね」アリスは上海を手に乗せ、館の扉を開けて外に出てきた。「人形たちも一緒に来るけど、大丈夫?」

「もちろんよ、それが君の力の源泉だから」智代子はアリスの肩に軽く手を触れ、虹色の光を少しだけ流し込んだ。アリスは少し体を震わせたが、すぐに落ち着いて——彼女は利害一致だと言ったように、完全に操られるわけではなく、自分の意志を保っていた。紫は傍らで扇子を広げて笑い、「アリスちゃんまで手に入れたわ。これで魔法の森の力も加わり、あとは紅魔館だけね」

「紅魔館… レミリア・スカーレットか」智代子は不敵に唇を広げ、「子供だけど、紅い悪魔の力は侮れない。でも、今の私たちには何にもならない。さあ、みんな、最後の場所へ行こう」萃香、さとり、輝夜、鈴仙、アリス——幻想郷と旧地獄の強力な存在たちが、智代子の後ろに並んだ。魔法の森の暗がりが虹色の光に染まり、暗躍は最後の段階に突入していた。アリスは上海の手を撫でながら、森の奥を見つめた。「利害一致… そう言っても、何か大きな変化が来るのは分かるわ。ただ、一人で過ごすよりは…」その言葉が風に乗って消えると、智代子たちは紫の開いた隙間に滑り込んでいった。魔法の森には再び暗闇と静けきが戻り、ただアリスの館の窓から灯る明かりだけが、何かを待ち受けているように輝いていた——

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