東方創想録   作:Mrコッコ

18 / 40
【深くなる暗躍】

魔法の森には再び暗闇と静けきが戻り、ただアリスの館の窓から灯る明かりだけが、何かを待ち受けているように輝いていた——隙間を抜け出すと、智代子たちは紅魔館から少し離れた、白い霧に包まれた霧の湖の前に立っていた。冷たい風が湖の面をなで、霧がゆっくりと舞っていた。

「ココには協力な手駒になりそうなのが多くいるな」紫が隙間から滑り出し、湖の方向を見つめて言った。

智代子は不敵に笑みを浮かべてる時に紫はいう

「少し紅魔館の中を見てきたけど、咲夜は都合よく館の外に出かけてるみたいだね」

「なるほどそれは好都合。まさか、紫さん知ってたんですか」

紫はハキハキと声を上げ、「そうだね。たぶん買い出しに行ってるから、1時間以上は帰ってこないでしょう」その言葉が終わる瞬間、湖の辺から青いワンピース姿の妖精が飛び出し、両手を腰につけて大声で叫んだ。

「やい、アタイの縄張りでなにしてんのよ! 霧の湖はアタイ、チルノのものだからね!」

智代子はチルノの小さな姿を見て微笑み、ハキハキと答えた。

「私は虹星智代子。幻想郷を変えるものよ」

「幻想郷を変える? アタイには分からないけど、変えたら霧の湖がなくなるんじゃないの? それはダメだね!」チルノは氷の矢を小さく生成し、智代子に向けた。

「早くここから出ていけ! アタイが氷で固めちゃうよ!」

勇儀は拳を打ち付けて小さな妖精だな… 君の妖具の力でも、こいつは簡単に手に入れられるんだろ?」

「小さいけど、心は単純だから逆に楽ちんよ」智代子は一歩前に進み、虹色の光をチルノに向けた。

「チルノちゃん、幻想郷を変えれば、霧の湖はいつでも氷で固められるようになるのよ。いつでも氷遊びができるんだから、嬉しくない?」

チルノは氷の矢を持つ手を少し緩め、「いつでも… 氷遊びができるの?」と小さな声で呟いた。妖精の心は単純だから、「楽しいこと」という言葉がすぐに響いていた。紫は傍らで扇子を軽く振り、「ふふん、妖精たちは数が多いから、チルノを手に入れれば他の妖精たちもついてくるわ。紅魔館へ行く前に、ここを手玉に取ってしまおうじゃない」霧の湖の霧が虹色の光に混ざり合い、小さな妖精チルノの選択が、周囲の妖精たちの動向を決めることになるのが、誰の目にも明らかだった。暗躍はさらに深く、幻想郷の奥底へと浸み込んでいった——その時、紫は扇子を軽く閉じて隙間を展開し、「さあ、チルノちゃんたちはここから入ってね」と言った。智代子はチルノに向かってハキハキと声を上げ、「さてと、君たちは私の家の地下にいてもらうよ。いつでも氷遊びができるようにしてあげるから」

チルノは氷の矢を収め、少しはぐらかしながらも隙間に向かって飛び込んだ。周囲の小さな妖精たちや智代子に操られてるものや賛同者も、チルノについていくように続々と隙間に入っていった。

「よし、妖精たちは片付いたわ」智代子は手を拍ち、紫に向かって言った。

「さあ、紫さん、紅魔館の中に入りましょう」二人は残った隙間から滑り込み、すぐに赤い壁とゴージャスな装飾が並ぶ紅魔館の内部に現れた。館内は静かで、咲夜が不在だからか、雰囲気が少し緩んでいた。そんな時、階段の下から小さな足音が聞こえてきて、赤いドレスに宝石がぶら下がった羽が飛び出した——最初に出会ったのはフランドール・スカーレットだった。

「あれ? 知らない人だね! お姉ちゃん、誰か来たよ~」フランドールは小さな杖を振り、階段の上に向かって叫ぶと、すぐに智代子と紫を見つめて目を輝かせた。

「へえ~ 外来人? 私はフランドール、フランって呼んでいいよ! 何しに来たの? お遊び?」智代子はフランドールの可愛らしい姿を見て微笑み、ハキハキと答えた。「おはよう、フランちゃん。私は智代子。お遊びじゃなくて、幻想郷を変えるために来たのよ。フランちゃんの杖の力、すごく素敵だね。一緒に来ない?」

「変える? おもしろそう!」フランちゃんは羽根を羽ばたかせて智代子の前に近づき、「でも、お姉ちゃんに許可を取らなきゃダメだよ。お姉ちゃんは館のお姫様だから」紫は扇子で口元を隠し、「フランちゃん、お姉ちゃんにも話してあげるわ。一緒になれば、いつでも外に出て遊べるようになるのよ。今までよりもっとおもしろい世界になるから」フランドールは目を大きく開け、「いつでも外に出て遊べるの? それはうれしい! お姉ちゃんに言ってみるね!」と言うと、急いで階段の上に飛び上がっていった。

智代子は紫に向かって笑い、「子供の心は単純だから、楽ちんだね。咲夜が不在でフランちゃんが先に出てきたのは、本当に好都合だわ」紅魔館の階段からはフランドールの声が響いてきて、レミリアの小さな返事も聞こえ始めた。暗躍の最後の舞台、紅魔館での奪取劇が、今、本格的に始まろうとしていた——。やがて、ピンクのドレスにピンクの帽子をかぶった小さな悪魔が階段を降りてきて、智代子の前に立ち止まった。レミリア・スカーレットはその小さな体をそびやかし、ハキハキと声を上げた。「確かに悪くなさそうな話だね。いいわよ、ちょっとした退屈しのぎに力を貸すわ」

智代子は嬉しそうに唇を広げ、レミリアの肩に手を触れた。虹色の光が瞬く間に彼女の体に流れ込み、レミリアの瞳には少し濁りが生まれたが、輝夜と同じように「退屈しのぎ」という自分の意志を保っていた。

「さすがレミリア様、決断が早いね」智代子は手を離し、館内の奥を見つめた。

「あとは、ここで手に入れるはパチュリーだな。そして、その後、守矢神社に行ってみるか」紫は扇子を軽く振り、「パチュリーは図書館にいるはずよ。彼女の魔法の知識があれば、計画はさらに完璧になるわ」

話している間に、フランドールが図書館の方向から飛び返ってきて、「お姉ちゃん、パチュリーさんが図書館で本を読んでるよ! 呼んでみる?」と言った。

「いいわ、一緒に行こう」智代子はフランドールに手招きし、紅魔館の奥にある大きな図書館へと向かった。扉を開けると、紫の髪の毛の魔女が大きな机に座り、山のような本を読んでいた——それはパチュリー・ノーレッジだった。

「誰か来たの? レミィ?」パチュリーは眼鏡を押し上げて外を見つめ、智代子と紫の姿に少し驚いた。

「外来人? 紅魔館に何か用があるのかしら?」智代子は図書館に入り、ハキハキと答えた。

「パチュリーさん、私は智代子。あなたの魔法の知識は幻想郷一級だと聞いてるのよ。私たちの計画に力を貸してくれない? 幻想郷を変えるために、あなたの知恵が必要なの」パチュリーは本を閉じ、智代子の体に宿る強い波動を感じ取った。

「変える… 何を変えるの? それが図書館や本に害を与えるのなら、断るわ」智代子は微笑みながら一歩前に進み、「害なんて与えないわ。ただ、新しい魔法の世界を作るだけよ。あなたにはさらに多くの新しい本や知識が手に入るようになるのだから」紅魔館の図書館には静かな空気が満ち、パチュリーの選択が計画の最後の欠片を埋めるかどうかが、今、問われていた。暗躍は既に幻想郷の大半を覆い、あと一歩で最終段階に達しようとしていた——。その瞬間、パチュリーは本を机に置き、眼鏡を押し上げてハキハキと声を上げた。「いいでしょう、君のそれに乗って上げましょう。新しい知識が手に入るのなら、少しの冒険は悪くないわ」

智代子は嬉しそうに手を合わせ、「やった! パチュリーさん、ありがとう! あなたの知識があれば、計画は完全になるわ」

言葉と同時に、彼女はパチュリーの肩に手を触れた。虹色の光が緩やかに彼女の体に流れ込み、パチュリーは少し体を震わせたが、すぐに落ち着いて——彼女もまた、「新しい知識を求める」という自分の意志を保ったまま、智代子の側に立った。

紫は傍らで扇子を広げて大きく笑い、「わあ、紅魔館も全部手に入れたわ! レミリア様、フランドール、パチュリーさん… これで幻想郷の西の側は完全に我々のものになったね」智代子は図書館の窓から外を見つめ、不敵な笑みを浮かべた。「さて、次は守矢神社だな。風見幽香が太陽の花畑にいるけど、まずは守矢神社の神様たちを手に入れよう。あと少しで、幻想郷全体がアタシの手の中に入るわ」

レミリアは小さな胸を張り、「守矢神社か… そこの神様たちは強いらしいけど、今の私たちには何にもならないわ」

フランドールは羽根を羽ばたかせて智代子の肩に乗り、「守矢神社に行くの? おもしろそう! 私も一緒に遊びに行きたい!」紅魔館の図書館には虹色の光が満ち、暗躍はもう止めることのできない勢いで、幻想郷の東の側——守矢神社へと向かっていた。これまでの収穫が重なり、智代子の力は空前の高みに達していたが、その背後には誰も気づいていない影が蠢いていた…。紫の隙間を抜け出すと、智代子たちは雲に覆われた妖怪の山の中腹に立っていた。冷たい風が山肌を吹き抜け、周囲には烏天狗や河童の気配が細かく散らばっていた。

智代子は山の上を見つめ、ハキハキと声を上げた。「守矢神社の神は二柱か。まあ、どちらか片方だけでいい。まずは妖怪の山では手始めに烏天狗と河童を」

その言葉が終わる瞬間、頭上から風の音が聞こえてきて、茶髪のロングヘアを紫のリボンでツインテールに結び、紫色の天狗帽子を被った烏天狗が舞い降りてきた。襟に紫のフリルが付いた薄ピンクのブラウスに黒いネクタイ、黒と紫の市松模様のミニスカートに黒のハイソックス、そして紫のバンドで縛った天狗の本足下駄——その姿は姫海棠はたてだった。

「おやおや、珍しいわ。外来人が妖怪の山に入ろうだなんて」はたては扇子を開いて智代子たちを見つめ、ハキハキと自己紹介した。「アタシは姫海棠はたてだよ。新聞記者の烏天狗だから、何か大きな事件が起こるのかしら? 書き込みにするわ」

智代子ははたての機転の良さに微笑み、「君の力を貸してほしい。私は虹星智代子」

「力を貸す? 何のために?」はたては眼を細め、智代子の後ろに立つレミリアたちの姿を見て少し警戒心を抱いた。「妖怪の山は守矢神社の管理下だから、勝手に力を貸すわけにはいかないわ」

「幻想郷を変えるためよ」智代子は虹色のリボンを輝かせ、「君は新聞記者だから、新しい世界の情報を最初に伝えられるんだ。今までにない大きなニュースを作るのだから、嬉しくない?」

紫は傍らで扇子を軽く振り、「はたてちゃん、烏天狗たちは君の言うことを聞くでしょ? 君が加われば、妖怪の山の烏天狗全体が我々の側に立つわ。河童たちもそれについてくるからね」はたては扇子で頬を叩き、「新しいニュース… 確かにおもしろそうだわ」と呟いた。新聞記者として「未体験の事件」を求める心が、智代子の言葉に少しずつ響いていた。妖怪の山の風がさらに強くなり、周囲から他の烏天狗たちの気配が近づいてきた。はたての選択が、妖怪の山の勢力図を一変させることになるのが、今、眼前に明らかになっていた。暗躍は妖怪の山を目指し、さらに深い闇の中へと進んでいった——はたては扇子を閉じて肩をすくい、ハキハキと声を上げた。

「いいわ、ついていくわよ。新しいニュースが作れるのなら、少しの冒険は悪くないわ」

智代子は嬉しそうに手を拍ち、「成立ね。でも、やたらと騒ぎにさせられると困るから、静かについてきてね」言葉と同時に、彼女ははたての肩に手を触れた。虹色の光が緩やかに流れ込み、はたては少し体を震わせたが、「新聞記者として大きな事件を追う」という意志を保ったまま、智代子の側に立った。周囲に隠れていた烏天狗たちも、はたての行動を見て徐々に近づいてきた。

その時、紫が隙間から浮かび上がり、「これで妖怪の山の勢力を動かせるわね。烏天狗たちがついてくれれば、河童たちも抵抗しないでしょう」

「守矢神社の様子を見てきたわ、諏訪子と早苗はいないわよ」智代子は不敵に笑みを浮かべ、ハキハキと言った。

「ちょうど狙ってたものがいたわね。それじゃ、紫、頼むよ」

紫は扇子を軽く振り、「分かったわ。さあ、隙間から移動しましょう」隙間が智代子たちの前に大きく開き、彼女たちは続々とその中に滑り込んでいった。妖怪の山には烏天狗たちの気配だけが残り、虹色の光の軌跡が風に乗って消えると、山は再び雲に覆われた静けきを取り戻した——隙間の中からは、守矢神社の境内の様子がぼんやりと見え始めていた。智代子が狙っていた「もの」とは何なのか、諏訪子と早苗が不在の今、彼女の暗躍はさらに順調に進むのか——その答えは、すぐに明らかになると思われた。隙間を抜け出すと、智代子たちは守矢神社の境内に立っていた。朱色の鳥居が雲間から漏れる光を反射し、境内には八坂神奈子が大きな鎌を手にして待ち受けていた。彼女の眼には鋭い光が宿り、智代子たちの気配を捉えていた。

「妙な気配を感じるな。何者だ?」神奈子は鎌を肩に乗せかえ、低い声で問いかけた。

智代子は不敵に微笑み、ハキハキと答えた。

「嫌ですね、そんなに警戒して。ただちょっと能力を持った人間ですよ——虹星智代子よ」そういうと、彼女は一歩閃くように神奈子の前に近づき、その肩に手を触れた。瞬く間に虹色の光が智代子の手から神奈子の体に流れ込み、神奈子は御柱を掲げようとしたが、体が一時的に硬直してしまった。

「な… 何をするんだ!」神奈子は額に汗を浮かべ、力を込めて抵抗しようとした。彼女は神であるから、さとりたちよりも強い精神力を持っていたが、智代子の妖具の光はその心の奥にまで届いていた。

「神奈子さん、あなたは妖怪の山を治め、守矢神社を立て直してきたわね」智代子は光を強めながら言った。

「でも、心の奥には『さらに大きな力を得て、幻想郷を自分のものにしたい』という思いが眠ってるでしょ? アタシの力で、その思いを叶えるのだから」

紫は傍らで扇子を開けて笑い、「神奈子様が加われば、守矢神社の力は完全に我々のものになるわ。諏訪子と早苗が不在だったのは、本当に好都合だったね」神奈子の瞳には濁りが徐々に広がり、抵抗する力が薄れていった。やがて、彼女は鎌を地面に突きつけ、声を落として言った。「…大きな力… 幻想郷を…」

「そうよ」智代子は手を離し、神奈子が自分の側に立つのを見守った。「これで妖怪の山と守矢神社が手に入ったわ。あとは太陽の花畑の幽香だけ… でも、彼女は必要ないかもね」守矢神社の鳥居から虹色の光が溢れ出し、暗躍は幻想郷のほぼ全てを覆うまでに達していた。智代子の手の中には、旧地獄、永遠亭、魔法の森、紅魔館、妖怪の山——それぞれの力が集約されつつあり、彼女はやがて幻想郷を支配する存在になりそうだった。だが、その時、遠くの太陽の花畑から強い波動が伝わってきて、智代子の眉をひそめさせた…。一方、黄金色の太陽花が一面に咲く太陽の花畑では、伊万里が手に水差しを持ち、花々に水をやっていた。その傍らには風見幽香が立ち、大きな向日葵の花を手にして伊万里の姿を見つめていた。

「ねえ、伊万里、アナタとはこの前時弾幕ごっこして実力も分かってるわよ。確かに強い」幽香はハキハキと声を上げ、太陽花に目を落とした。

「そして、植物を傷つけることもせずちゃんと育ててる。そして、それと同時に希望を作ろうとしてる——信じることはできる。だけど」

伊万里は水差しを止め、幽香の言葉に耳を傾けた。

「だけど? 幽香さん、何かあるのか?」

「あの外来人の波動が強すぎるわ」幽香は向日葵を軽く振り、花畑の空を見上げた。

「幻想郷の大半が彼女の手に落ちてるらしい。今にもこの花畑にまで手を伸ばしてくるだろう。アナタが希望を作ると言うのなら、この危機をどうするつもり?」伊万里は拳を握り、旧地獄や永遠亭の方向を見つめた。

「智代子さん… 確かに彼女は何か大きな計画をしてるけど… 俺は彼女の心の中に『寂しさ』を感じたんだ。ただ、それを解消する方法が間違ってるだけ…」

「間違ってるのなら、止めなきゃいけないわ」幽香は一歩前に進み、強い波動を周囲に放った。「この花畑は俺の縄張り。彼女がここに来たら、俺が立ち向かう。でも、アナタの言う『希望』が真実なら、私たちは一緒に彼女を『正しい道』に戻すことができるのかしら?」太陽の花畑には黄金色の光が満ち、幽香の強い波動が智代子の虹色の光と遠くでぶつかり合いそうな緊張感が漂っていた。幻想郷の最後の砦となる花畑で、伊万里と幽香の決意が、智代子の暗躍に対する最初の真の抵抗となるのが、今、明らかになっていた——。伊万里は幽香の言葉に少し戸惑い、ハキハキと声を上げた。「えっと、幽香さん、本当は何が言いたいのですか? 希望を作るって言ったけど…」

幽香は向日葵を手に胸に抱き、太陽の光を浴びながらハキハキと答えた。「極稀だけど、本当に幻想郷に危害を加えるもの、しかも、存続に大きく関わる異変の主格は… 博麗の巫女によって消される可能性もあるのよ。それは残酷なことだよ、それを受け入れることは」

伊万里は瞳を大きく開け、「消される… そんなことが…」と呟いた。博麗の巫女は幻想郷の均衡を守る存在だと聞いていたが、「消す」という言葉は初めて耳にして、心に衝撃が走った。

「そうよ。異変が収まらない時、巫女は最後の手段を使うの」幽香は花畑に目を落とし、柔らかく花びらを撫でた。「俺はこの花畑を守るためにどんなことでもするけど… あの外来人の心には寂しさが宿ってるのが分かる。消される運命になるのは、少し哀しいわ」

伊万里は拳をさらにしっかりと握り、「だから… 幽香さんは俺たちが一緒になって、智代子さんを止めつつ、消されないようにするって言いたいのですか?」

「そうだわ」幽香は伊万里を真っ直ぐに見つめ、強い眼差しで言った。

「私一人でも彼女に立ち向かえるけど、『止める』だけじゃなく『救う』には、アナタの力が必要なの。あの人が作ろうとしてる『自由』は間違ってるけど、その思いは偽りじゃないから」太陽の花畑の風が黄金色の花びらを舞わせ、遠くの守矢神社から虹色の光が徐々に近づいてくるのを感じさせる波動が伝わってきた。伊万里と幽香の選択が、智代子の運命を決めると同時に、幻想郷全体の未来を変えることになるのが、今、空気のように満ちていた——伊万里は胸を張り、目に真っ直ぐな光を宿らせてハキハキと声を上げた。「俺は幻想郷が大好きなんですよ。だから、異変が起こることはあるかもしれない、でも、それは“自分らしく入れる居場所の幻想郷”が好きなんです。確かにいろんな考えはあります、だが、だからと言って幻想郷を作り替えてまで自由を得ようとかは違う! 本来は博麗の巫女の役割であるが、消す役割は俺がする。好きな場所を守るために」

幽香は伊万里の覚悟に少し驚き、すぐに大きな笑いを上げた。

「ふふん、意外と男前じゃないか! 消すって言うけど、本当にその覚悟があるの? あの外来人の力は今や幻想郷一を争うくらい強いわよ」

「覚悟はあります」伊万里は水差しを机に置き、体に力を込めた。

「ただ… 消す前に、最後に一言、話してみたいです。彼女の寂しさが解けるのなら… それが一番いいと思うから」

「それは私も同じだわ」幽香は向日葵を肩に乗せかえ、太陽の花畑の入口を見つめた。虹色の光が既に空に広がり、智代子たちの気配がはっきりと伝わってきた。「でも、話し合いがまとまらなかったら… 俺たちは全力で立ち向かうんだ。この花畑も、幻想郷も、絶対に譲らない」

その瞬間、空から虹色の光が降り注ぎ、智代子と紫、そして従える者たちの姿が花畑の入口に現れた。智代子は不敵に笑みを浮かべ、「へえ~ 幽香さんと伊万里くんが待っていたのね。ここも最後に手に入れるわ」

伊万里は一歩前に進み、智代子に向かって声を上げた。「智代子さん、最後に一言、聞いてください。幻想郷を作り替えることで自由になれると思っていますか?」

太陽の花畑の黄金色と虹色の光がぶつかり合い、幻想郷最大の異変が今、始まろうとしていた——伊万里が智代子に話しかけようとした瞬間、幽香が手を横に出して彼を止め、ハキハキと声を上げた。「伊万里、今はまだ覚悟を実行するときではない。あなたはその時が来るまで… 待て」

言い終わるか否かの瞬間、空から風が吹き抜け、赤い巫女装束の少女と黒い魔法使いの姿が舞い降りてきた。博麗霊夢と霧雨魔理沙だった。

霊夢は智代子の姿を見つめ、すぐに紫の方に向けてハキハキと問いかけた。 

「紫、これはどういうことかしら? 幻想郷中に異変の波動が広がってるのに、君はこの外来人と一緒にいるんだね」紫は扇子で口元を隠し、一瞬だけ霊夢に目を合わせた。そして何も言わず、手を広げて大きな隙間を展開した。智代子は少し驚いたが、すぐに従える者たちに手招きし、「さあ、ここは一旦、引き上がろう」と言った。萃香、さとり、輝夜たちは続々と隙間に入り、智代子も最後に伊万里と幽香を見つめた後、滑り込んでいった。紫は隙間が閉じる直前に、霊夢に向かって小さな声で呟くように言った。

「…覚えててね、霊夢。私はいつも幻想郷のためにやってるんだ」

隙間が閉じると、太陽の花畑には伊万里、幽香、霊夢、魔理沙の四人だけが残された。虹色の光は消え、黄金色の太陽花が再び輝き始めたが、空気には依然として緊張感が残っていた。魔理沙はミニ八卦炉をポッケにしまい、「なんだ、あの紫、平気で逃げちまったな。あの外来人の計画、彼女も知ってたんだろ?」霊夢は腕を組み、眉をひそめて花畑の空を見上げた。

「異変の主格はあの智代子だと分かった。ただ… 紫が何を考えているのか、分からないわ」伊万里は拳を握り、「最後に話す機会をくれなかった… でも、幽香さんが言った通り、今はまだ時じゃないのかもしれません」太陽の花畑の風が花びらを舞わせ、幻想郷の均衡を守る巫女と魔法使いが現れたことで、異変は一時的に収束したように見えた。だが、智代子と紫が何処へ逃げたのか、彼らの次の手は何なのか——暗躍はまだ終わっていなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。