夜明け前の記憶に温かさを抱き、工房で装置の最終チェックを終えた伊万里は、突然迷いの竹林のことを思い出した。
「あっ、迷いの竹林の出入り口にも祠を作ろう」そう言って彼は小さな石材と簡易的な装置を荷車に積み、竹林へと向かった。迷いの竹林の出入り口は霧がかりやすく、誰もが通り過ぎても気づきにくい場所だった。
「ここは誰もが迷ってしまう場所だから、祠を建てれば“迷わないための光”になるんだ」伊万里は平らな地面に簡易的な土台を作り、小さな石材を組み立て始めた。今回は時間をかけずに作る簡易祠だが、柱には「迷いを照らす」という小さな文字を彫り込んだ。
作業を始めると、竹林の奥から輝夜と鈴仙が歩いてきた。「おや、伊万里? ここに祠を建てるの?」輝夜は扇子を手に微笑んで問いかけた。
「はい! 迷いの竹林には誰もが迷うから、この祠の光で道を照らしたいんです。簡易的だけど、装置はしっかり付けるから光は輝くよ!」伊万里はハキハキと答え、鈴仙も近くに来て手伝ってくれた。少しすると簡易祠が完成し、装置を取り付けてスイッチを押すと——黒と虹と金色が混ざった光が緩やかに輝き始め、竹林の霧を柔らかく照らして道筋を明るくした。
「おお! 完成だ!」伊万里は地図を取り出し、十五番目の印をつけた。
「これで全部で十五つの祠になった! 迷いの竹林も絆につながるよ」
輝夜は祠の光を見つめながら言った。「“迷いを照らす”… それはいいね。永遠亭に住む私たちにも、この光は届くわ。ありがとう、伊万里」
「うん! 2週間後に全部の光が一つになる時、この竹林の光もその一つになるんだ!」伊万里は荷車を準備しながら笑い、輝夜と鈴仙に挨拶をして竹林を後にした。
霧のかった竹林の出入り口に、小さな祠の光が静かに輝き続けていた——これが十五番目の祠、“迷いを照らす光”として、幻想郷の絆を一層広げていた。伊万里が荷車の準備をしようとしていると、鈴仙が突然前に進んできて、顔をごく近くまで覗き込むような仕草をした。そして、いつもと同じようにハキハキと言った。
「伊万里、君、最近、精神は安定してるかしら」その近すぎる距離に伊万里は少し驚いて後ろに引き離し、慌てながらもハキハキと答えた。「は、はい、順調です! 装置のチェックも全部終わって、祠も十五つになったし… まあ、昨夜はちょっと過去の夢を見たけど、今は大丈夫です!」鈴仙はそっと首を傾げ、伊万里の目を見つめながら言った。
「夢? 過去のことで悩んでるの? 迷いの竹林に祠を建てたのは、自分の迷いも照らしたいんじゃないの?」
「え? そ、そうかもしれないですね…」伊万里は少し照れて頭を下げ、「でも今は大丈夫! 紫さんや藍さん、みんなが一緒にいてくれるし、祠の光も安定してるから。迷いなんてないよ!」その時、輝夜が鈴仙の肩に手を置いて笑い、「鈴仙、君はいつもそんなに直接的ね。伊万里も頑張ってるんだから、心配しなくていいわ」
「あ、すみません… ただ、この光には少し複雑な気持ちが宿ってるように感じたので…」鈴仙は少し恥ずかしそうに後ろに下がった。伊万里はハキハキと大きく笑い、「気持ちは複雑だけど、想いは一つだよ! 全部の光を一つに結ぶことで、みんなの迷いも自分の迷いも照らせると思うんです!」祠の光が竹林の霧を照らし、鈴仙も少し安心したように頷いた。伊万里は再び挨拶をして竹林を出ると、胸の中には確かな想いが満たされていた——十五つ目の祠が、彼の心の迷いも照らし始めていたのだ。伊万里が笑って想いを伝えると、輝夜は扇子で唇を隠しながら、鈴仙に向かってハキハキと言った。
「ってか、鈴仙、君にしては珍しいね。伊万里のことをよく気にかけるし、人避けするのに、初対面の時からグイグイ行くみたいな感じだったし」その言葉を聞いた鈴仙は、耳が少し赤くなっても、いつものようにハキハキと答えた
「伊万里を見てると気にかけてしまうんですよ… 何か、自分に似てるような気がしたし、迷ってるような場所に祠を建てる姿が、なんだか心配になっちゃったんです」伊万里は驚いて鈴仙を見つめ、「え? 俺が鈴仙さんに似てるんですか? そ、それは光栄です! でも心配しなくていいよ、今はみんながいてくれるから!」
「ふふっ、それはいいね」輝夜は笑いながら言った。
「鈴仙が気にかける人は少ないから、伊万里くんは特別だわ。2週間後の異変の時も、この竹林の光を通して、君たちの絆も一層強くなると思うわ」鈴仙は頷き、祠の光を見つめながら小さく言った。
「そうですね… この光が伊万里の迷いを照らすように、私も伊万里のことを照らせるように… なんて、おかしいですよね」
「おかしくないよ!」伊万里はハキハキと大きく言い、「鈴仙さんが気にかけてくれると、一層力が湧いてくるよ! 異変の時に、この竹林の光をよろしくお願いするね!」祠の光が鈴仙の顔を柔らかく照らし、彼女も少し微笑んで頷いた。伊万里は再び荷車を押して竹林を出ると、胸の中には新しい絆が生まれたような温かさが残っていた——十五つ目の祠が、こんなに嬉しい会話を引き寄せてくれるなんて、思いもしなかったのだ。鈴仙が少し照れながら微笑むと、突然ハキハキと言い出した。
「た、たまにでいいから、永遠亭に顔出してね、師匠も何かしらと気にかけてるようだから」
伊万里は驚いて目を見開き、すぐにハキハキと答えた。
「永琳さんがですか? まあ、近いうちに顔出しにいきます! 今まで永遠亭には行ったことなかったけど、是非お邪魔します!
「ふふっ、師匠も伊万里の作った祠のことを聞いて、“光に複雑な想いが宿ってるな”って言ってたわ」輝夜が扇子で風を送り、笑い声が竹林に響いた。
「来た時はお茶でも出すから、ゆっくり話そうね」鈴仙は耳の赤みがまだ褪せないまま、少し大きな声で言った。
「そうだ! 師匠のお茶はすごくおいしいですよ! 来てくれると嬉しいです… 俺も、みんなで話せるといいなって思います」伊万里はポッカリと笑い、祠の光を見つめながら言った。「うん! 異変の準備が一段落したら、すぐに来ます! 永琳さんにも祠の装置のことや、光のことを聞きたいし、鈴仙さんとももっと話したいです!」霧のかった竹林の中、小さな祠の光が静かに輝き続けていた。伊万里は荷車を押して竹林の出口へと向かい、後ろにいる鈴仙と輝夜に手を振った。
「約束だよ! 近いうちに来るから!」鈴仙も手を振り返し、ハキハキと声を上げた。
「待ってるよ
伊万里が竹林を出ると、朝の太陽が空に輝いていた。胸の中には永遠亭への約束が鮮明に残り、新しい絆が一層強くなっていくような予感に包まれていた——十五つ目の祠が、彼にまた一つの幸せな約束を与えてくれたのだ。伊万里が竹林の出口まで来て手を振り返ると、突然身の回りに隙間が開き、紫がそこから顔を出してニヤリと笑った。「君、誑し込みの才能あるんじゃないかしら。人の目を避けてるあの鈴仙があそこまで親しくするぐらいだからね」
その言葉を聞いた伊万里は、慌てて紫の方向を指差し、ハキハキと言い返した。
「紫、変なこと言わないでくれよ! ただ鈴仙さんが気にかけてくれただけだよ! 何も誑し込んでないし!」
「ふふっ、冗談だって。そんなに慌てないで」紫は隙間から身を乗り出し、竹林の奥を見つめながら言った。
「でもね、あの鈴仙が他人にそんなに打ち解けるのは本当に珍しいわ。君には何か特別な魅力があるのかしら?」
「魅力なんてないよ! ただハキハキと話してるだけだ!」伊万里は少し照れて頭を掻き、「でも… 鈴仙さんと話すと楽しいし、約束したから近いうちに永遠亭に行くんだ!」
「そうね、行ってみるといいわ。永琳も君のことを気にかけてるし、輝夜もゆっくり話したがってるのだろう」紫は扇子で風を送り、「それに、あの竹林の祠の光が永遠亭まで届いてるから、君たちの絆もそこで一層深まると思うわ」伊万里は頷き、朝の太陽を見上げながらハキハキと笑った。
「うん! 変なこと言われたけど、今は楽しみだよ! 異変の準備も進んでるし、永遠亭への約束もあるし… 全部がうまくいきそうだ!」紫も微笑んで隙間に身を隠し始め、「それならいいわ。でもね、誑し込みの才能ってのは… まあ、今後に期待してるわ」と言ってから、すっぽりと隙間の中に消えていった。
伊万里は呆れたように肩を落としながらも、少し笑顔を浮かべて工房へと向かった——紫の変なネタばれも、なんだか嬉しい気持ちに変わっていた。少し時間が経ち、伊万里は工房での作業を終えて再び迷いの竹林に入ってきた。霧が依然としてかかっていて、道筋が見えにくくなると、彼は小さく呟いた。
「そういや、ここ、方向感覚が分かりにくくなるんだよな」その瞬間、茂った竹の間から桃色の半袖ワンピースを着た黒髪のうさ耳の少女が突然現れた。それは因幡てゐだった少女は伊万里を上から下まで見下ろすように見つめ、少し生意気そうにハキハキと言った。
「お前が鈴仙の気に入りの伊万里とか言うやつか、私は因幡てゐ」伊万里は驚いて後ろに引き離し、すぐに手を振りながらハキハキと答えた。
「は、はい! 伊万里です! 鈴仙の気に入りって… そ、そんなことないですよ! ただ最近話す機会があっただけで!」
てゐはうさ耳をピクリと動かし、祠の方向を指差した。
「あの祠、お前が建てたのか? 鈴仙が昨日から“伊万里が建てた光がすごくきれいだよ”って喋り続けてたから、見に来ちゃったんだ」
「え? 鈴仙がそんなこと言ってたんですか?」伊万里は少し照れて頭を掻き、「簡易的な祠だけど、光は安定してるから大丈夫です! ここが迷いやすいから、道を照らすために建てたんです」
「ふん、まあそれは悪くないわ」てゐは竹林の霧をかき分けるように近づき、「永遠亭に行くんだったら、私が道案内してあげるよ。鈴仙が待ってるかもしれないし」
「ありがとうございます! 方向感覚がないから助かります!」伊万里はハキハキと笑い、てゐの後ろについて竹林の奥へと進んでいった。霧の中、祠の光が道筋を照らし続け、うさ耳少女の後ろを追う伊万里の胸には、永遠亭で待っている誰かへの期待が膨らんでいた——竹林はまた一つ、新しい面識を彼に与えてくれたのだ。てゐの道案内でスムーズに竹林の奥まで進むと、いよいよ永遠亭の姿が見えてきた。門をくぐると、真っ先に鈴仙が出迎えに来ていて、顔を明るくしてハキハキと言った。
「伊万里、いらっしゃい、お師匠様や姫様も待ってるわよ」伊万里は安心して笑い、ハキハキと答えた。
「そうか、まあ、私自身の調子を見てもらおう、最近、ちょいと身体などにも違和感があってね」その言葉を聞いた鈴仙は、すぐに顔を真剣にして近づいた。
「違和感? どんな感じ? 頭が痛いの? それとも力を出しにくいの?」
「ああ、そんなに大きなことじゃないんだよ」伊万里は手を胸に置き、「ただ、祠の光を制御する時に、時折体が少し痺れるような感じがするんだ。黒と虹の光が混ざってから始まったんだけど、出力は安定してるから大丈夫だと思ってたけど…」その時、輝夜と八意永琳が舎内から出てきた。永琳は眼鏡越しに伊万里を見つめ、静かに言った。
「痺れるのか。光に宿った過去のエネルギーが、君の身体と同調しようとしているのかもしれない。さあ、舎内に入りなさい。ちゃんと診てあげる」
「はい、ありがとうございます!」伊万里は頷き、鈴仙に誘われるように永遠亭の中に入った。てゐはうさ耳をピクリと動かしながら後ろからついてきて、「私も少し見てるね! 鈴仙が心配してるから」と囁いた。舎内は柔らかな明かりに包まれ、落ち着いた雰囲気だった。伊万里は椅子に座ると、永琳が脈を取り始めた——祠の光が彼の身体に与えている影響、そしてその違和感の真相が、もうすぐ明らかになりそうだった。永琳は伊万里の喉を近くで見たり、目を小型の鏡で検査したり、脈を取り続けた。少し時間が過ぎると、彼女は眼鏡越しの目を少し大きくし、驚いたようにハキハキと言った。
「君、もう人間ではなくなってるよ。かといって妖怪や魔法使いや神とも違う、種族として変化してるわね」伊万里はその言葉を聞いてもあまり驚かず、むしろ安心したようにハキハキと答えた。
「やはり、私は人間ではなくなってたんですね」
「長年生きてたけど、ここまで変化を起こすものは初めて見たわ」永琳は筆を取って何かをメモしながら言い、「最近、能力使ったりしてる?」
「能力の使用は確かに1日数回以上使ってます!」伊万里はうなずき、「祠の光を結ぶために、毎日特訓してるし、装置の調整の時も能力を使ってるんです。黒と虹の光が混ざってから、使う回数が増えたかもしれないですね」
その傍らにいた鈴仙は顔を心配そうに皺め、「それが身体の違和感や種族変化の原因なの? 危険じゃないの?」
「危険とまでは言わないわ」永琳はメモを閉じて微笑んだ。
「ただ、君の能力が“光を結ぶ”だけじゃなく、“絆を結ぶ”力も持っていて、それが周りのエネルギーや過去の記憶と混ざり合って、自分自身の存在まで変えてしまったのよ。新しい種族… それは君だけのものだわ」
輝夜も傍らから言った。
「ふふっ、それは面白いね。人間でも妖怪でもない存在が、幻想郷に新しい絆をつくるなんて。2週間後の異変は、君の新しい力で更に特別になるのかしら」
伊万里はハキハキと大きく笑い、「新しい種族だなんて… 不思議だけど、悪くないよ! 能力も強くなって、絆もつなげるようになったし。これで異変は一層成功する自信がある!」
永琳は頷き、「それならいいわ。今後も身体の変化を観察しておくから、気になることがあったらいつでも永遠亭に来なさい。師匠として責任を持って見守ってあげるわ」仙も安心したように肩を落とし、少し笑顔を浮かべた。永遠亭の柔らかな明かりの中、伊万里は自分自身の新しい姿を受け入れ、2週間後の異変への想いを一層強くしていた——人間ではなくなったけれど、それが今の自分を作る一つの絆になっていたのだ。