Stage0【予兆】
あれからちょうど2週間が経った。幻想郷の各所に建てられた十五つの祠から、黒と虹と金色が混ざった光が一気に昇り、やがては全体を覆うように広がっていった。太陽の畑の光が最も強く輝き、家の祠の心の拠り所からは柔らかな波が送られ、迷いの竹林の祠からは霧を貫くような光が伸びて——全ての光が空の中で結ばれ、やがて幻想郷の空全体が変わり始めた。昼間のはずなのに太陽は隠れ、夜のような闇にもならない。それは昼とも夜ともつかない、黒と虹と金色が混ざり合った不思議な色だった。鳥たちが空を見上げて羽を休め、人里の人々も戸外に出てその異変に驚きを隠せない様子だ。
伊万里は家の裏庭の祠の前に立ち、空を見つめながらハキハキと呟いた。「始まった… 伊万里異変の予兆だ」その時、紫が隙間から出てきて彼の隣に立ち、「ふふっ、この空の色は君自身の姿そのものね。人間でも妖怪でもない、新しい存在の光だわ」藍もそばに来て、「全部の祠の光が安定して結ばれています。あと少しで、一つの大きな光になります」遠くからは魔理沙の八卦炉の光が見え、早苗が太陽の畑から手を振っているのが確認できた。永遠亭の方向からも鈴仙とてゐの気配が感じられる。昼と夜の間の不思議な空の下、伊万里は拳を握り、「今度こそ… みんなに絆の光を見せるんだ!」とハキハキと声を上げた。異変は正式に始まる寸前にあった——伊万里が拳を握って声を上げると、突然空からマキーナのはっきりとした声が響き渡った。「違うぞ、伊万里、絆の光?お前は種族が変わるんだ、お前の力を試すためだろう」
周りの紫や藍は驚いて空を見上げたが、伊万里は少し微笑んでハキハキと答えた。
「そうさ、真の目的はそれだよ! 絆の光もその一つだけど、俺は自分の新しい力が何か、どこまで強いかを知りたかったんだ!」空の中の声が再び響いた。
「ならば試してみよう、伊万里。幻想郷の力が君を認めるかどうか、君自身が自分を受け入れられるかどうか——それがこの異変の真の意味だ」
紫は伊万里の肩に手を置き、「君、これは最初から計画してたの?」と問いかけた。
「うん、種族が変わり始めた時から気づいてたんだ」伊万里は空を見つめ、黒と虹と金色が混ざった光が自分の体に吸い寄せられるのを感じた。
「絆の光でみんなを集めて、俺の新しい力を試す場を作る——それが伊万里異変の真の目的だ!」遠くから魔理沙の声が響いてきた。
「へえ、そんなことだったのか! ならば俺たちも試し役なのか? 楽しみだぜ!」早苗の声も続いた。
「そうだね! 伊万里さんの新しい力を見せてくれるなら、俺たちも全力で応えるよ!」伊万里はハキハキと大きく笑い、体から同じ色の光が溢れ出し始めた。
「いいぞ! みんなで私の力を試してくれ! これが新しい俺の姿だ——!」昼と夜ともつかない空の下、伊万里の体から輝く光が一層強くなり、幻想郷全体にその力の気配が広がっていった。真の目的が明かされた瞬間、異変は正式に始動したのだ——魔理沙と早苗は空の変化を感じ取り、博麗神社に集まってきた。境内に立つと、霊夢が賽銭箱の横に靠っていて、最初に口を開いた。「あんたらも本当は気づいてるんでしょ、伊万里が人間ではなくなってることに。それにもはやこれは絆云々ではない、力試しってわけのようね。異変は異変、解決しないとね」
魔理沙は八卦炉を肩に掛けながら答えた。「まあ、気づいてはいたけど、伊万里が悪気はなさそうだからな。でも異変だから仕方ないぜ」
早苗も頷き、「神奈子様からも“光に不安定なエネルギーが宿ってる”と言われたの。解決するけど、伊万里くんを傷つけたくはないんだ」
その時、境内の木陰から突然黒い毛玉の妖怪が現れた。小さな体はまるまると黒く光り、八本の細い足が地面を這い、赤い眼が三人をじっと見つめていた。数が一つ、二つ… やがて十数匹に増えて境内を囲み始めた。
「おや、これは伊万里の力が引き寄せた妖怪か?」霊夢は賽銭箱から御札を取り出し、「黒い毛玉なんて珍しいね。触れたら悪影響がありそうだから気をつけろ」
魔理沙は八卦炉に火をつけ、「ちっ、小さいけど嫌らしいな。焼き払ってしまおうか」
「待って、これらの妖怪には伊万里くんの光の痕跡があるように感じる…」早苗は手をかざして力を探り、「もしかしたら、これが彼の力の試しの第一歩なのかもしれない!」
黒い毛玉たちは一斉に鳴き声を上げ、三人に向かって飛びかかってきた。霊夢は御札を打ち出し、早苗は太陽の光を集め、魔理沙は火の弾を放つ——博麗神社の境内で、異変解決の第一戦が始まったのだ。空の昼と夜ともつかない色が境内を照らし、黒い毛玉の光と三人の攻撃が交差する中、遠くから伊万里の気配が感じられた。彼はこの戦いを見つめているのか——そんな疑問が三人の胸に浮かんだ。博麗神社の境内で黒い毛玉たちが飛びかかってくると、魔理沙は火の弾を放ちながらハキハキと言った。
「これ、伊万里が作ったものかもな」早苗は太陽の光で毛玉を弾き返し、驚いたようにハキハキと答えた。
「まさか、こんなモノを生み出すとは… 彼の新しい力がこんなに荒っぽいのかしら」霊夢は御札を連続で打ち出し、一気に数匹の毛玉を払いのけながらハキハキと言った。
「無駄口叩いてる暇はないわよ、コイツラを退治して先に進むわ」三人は一斉に攻撃を仕掛け、黒い毛玉たちを次々と撃ち落としていった。だがその間にも、新しい毛玉が空から降ってきて境内を満たし始め——戦いはなかなか収まらない様子だった。その頃、幻想郷の別の場所でも同じ異変が起きていた。紅魔館の庭では、十数匹の黒い毛玉がろうそくの火を消そうと飛び回っていた。咲夜がナイフを指先に挟み、冷静に的を絞って投げつけた。
「クスッ… こんな小さなモノに庭を荒らされるとは。お嬢様に文句を言われる前に片付けなければ」ナイフは的確に毛玉に命中し、黒い塵になって散った。だがすぐに別の毛玉が飛びかかってきて、咲夜は身をかわしながら再びナイフを取り出した。
「この数… どこから溢れてくるのだろう。もしかして、今起きてる空の異変と関係があるのか?」
遠くの空には昼と夜ともつかない色が広がり、紅魔館の窓からはレミリアがその景色を見つめている姿が見えた。
「咲夜、慌てないで。この妖怪たちには何か力が宿ってるようだわ… 伊万里の異変、意外な展開になってきたわね」
博麗神社も紅魔館も、そして幻想郷の各所も黒い毛玉の妖怪に包まれ始め——伊万里異変の戦いは、これから本格的に広がっていくのだ。紅魔館の窓辺から戦いを見つめていたレミリアは、突然ハキハキと声を上げた。「咲夜、霊夢達と合流することが先、そして、一緒に異変解決を」
咲夜はナイフを投げて最後の一匹の毛玉を撃ち落とし、地面に落ちた黒い塵を見つめながら了承した。「はい、お嬢様。すぐに博麗神社へ向かいます」
「クフフ… 伊万里くんの力がこんなに広がるとは思わなかったわ」レミリアは手にしたグラスを少し傾け、「だからこそ、霊夢たちと力を合わせなければ。ただ… 傷つけすぎないようにね? 彼は悪気はないはずだから」
「承知いたしました」咲夜はナイフを腰の鞘に収め、紅魔館の門へと急いで向かった。庭には黒い塵が散らかっていたが、それ以上毛玉が現れる様子はなく——一時的に紅魔館の危機は収まった。
その頃、博麗神社では霊夢達も最後の毛玉を退治し、息を整えていた。魔理沙は八卦炉の火を弱めながら言った。
「これで一安心… だけど、他の場所にもこんなモノがいるんだろうな」
「そうだね… 空の光が続いてる限り、新しく生まれてくるのかもしれない」早苗は手を胸に置き、遠くから咲夜が近づいてくるのを見つけて驚いた。
「あれ? 咲夜さんが?」咲夜は境内に入ると、一礼をしてハキハキと言った。
「お嬢様の指示で、霊夢さんたちと合流して異変解決に協力することになりました。紅魔館でも同じ黒い毛玉が発生していました」霊夢は御札を収めながら頷いた。
「そうか。人数が増えたのは助かるわ。でも、次はどこへ行く? 伊万里の居場所を探さないと根本的に解決しないわ」空の昼と夜ともつかない色が依然として広がり、四人の前には新たな戦いの道が開かれていた——異変解決チームが結成され、伊万里異変への本格的な挑みが始まるのだ。霊夢たちが咲夜と合流し、次の行き先を議論していると、突然背後から清らかな声が響いた。
「まずは人里に向かいましょう」
四人は振り返ると、妖夢がそこに立っていた。彼女は二本の刀を腰に下げ、ハキハキと微笑んでいた。魔理沙は八卦炉を肩に掛け直しながら驚いて叫んだ。「うわっ、妖夢いつの間に! 冥界から来たのか?」
「はい。冥界でも空の変化が見え、黒い毛玉の妖怪が少しずつ現れ始めたので、幽々子様に許可を取って来ました」妖夢は頷き、「人里は人が多いから、もし毛玉が現れたら被害が大きくなると思います。先に守っておきたいです」
早苗は頷きながら言った。
「そうだね! 人里の人々は異変に慣れていないから、早く行かないと…」
「わかった、それじゃ人里へ向かおう」霊夢は手を横に広げて指示を出し、「咲夜、妖夢、一緒に行くわ。魔理沙、早苗、後ろを守って。空から毛玉が降ってくるかもしれないから気をつけろ」五人は一斉に頷き、博麗神社を出て人里へと向かい始めた。空の昼と夜ともつかない色が彼らの道を照らし、途中から少しずつ黒い毛玉の影が空に浮かび始めた。妖夢は二本の刀を手に取り、「少しずつ増えてきましたね。これからが本番です」とハキハキと言った。
魔理沙も火をつけた八卦炉を構え、「いいぜ! みんなで人里を守って、伊万里の居場所を探すんだ!」
五人の足取りは確かで、人里へと近づいていく中、幻想郷全体に広がる異変の波が一層激しくなっていた——新たな仲間が合流し、戦いは人里へと移るのだ。五人が人里へと向かう道の途中、竹林と人里の境目に突然誰かが立ち塞がった。ミスティアだった。彼女は胸を張り、声を高らかに上げてハキハキと叫んだ。「私の歌を聴いていけ!」
言葉と同時に、闇夜のように深い色の旋律が空に広がってきた。その歌は美しいようでもあり、少し悲しいようでもあり、聞いていると頭がくらくらと目が回り始める不思議な力を持っていた。
「ちっ、これは幻惑の歌か!」魔理沙は八卦炉を構えながら目を細め、「伊万里の力がミスティアを引き寄せたのか?」
妖夢は刀を前に出し、「気をつけて! 歌に合わせて動けなくなると危険です!」とハキハキと言った。
霊夢は御札を取り出し、「無駄な抵抗はしないでミスティア。異変解決に協力してくれないの?」
だがミスティアは頭を振り、歌を続けながら言った。
「伊万里さんの光が私の歌を一層強くしてくれたの! この歌でみんなを止めて、彼の力を試してあげるんだ!」咲夜は手を腰に置き、「試しだとはいえ、人里に害が及ぶのは困ります」と言いながら、体を少し動かし始めた——彼女は時を操って歌のリズムを掻き乱そうとしていた。
早苗は太陽の光を手のひらに集め、「美しい歌だけど、今は違うんだよ!」と声を上げて光を放った。その光が旋律に当たると、少し明るい色が混ざり、幻惑の力が弱まった。
五人は一斉に行動を始め、ミスティアの歌を掻き乱しながら近づいていった。空の昼と夜ともつかない色が歌と光を混ぜ合わせ、道中の闘いは新たな局面へと突入したのだ。
早苗の光がミスティアの歌の幻惑力を弱め、五人が近づき始めた瞬間、突然空から明るい声が響いた。「おっと、私達も行くぜ!」
見上げると、サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの三妖精が羽根をひらひらさせて舞い降りてきた。彼女たちはそれぞれ赤、白、青の衣装を着て、嬉しそうに五人を見つめていた。霊夢は御札を手にしたまま肩を落とし、ハキハキと嘆いた。
「三妖精まで現れたか、やれやれ、面倒なことに」サニーが体を浮かせながら笑い、「伊万里さんの光がすごくきれいだから、遊びに来ちゃったの! ミスティアの歌に合わせて、みんなを混乱させちゃうぞ!」ルナも続けて言った。
「そうそう! 異変って楽しそうだから、私達も参加するの!」
スターは指を立て、「でも傷つけるわけじゃないよ! ただ伊万里さんの力を試すために、ちょっと邪魔するだけ!」
言葉と同時に、サニーが光をかき混ぜて視界を曇らせ、ルナが影を動かして足元を不安定にし、スターが小さな星の弾を飛ばし始めた。ミスティアもこれを機に歌を一層力強く鳴らし、旋律が空に溢れ出した。
「まあ、これは大変だな」魔理沙は八卦炉で星の弾を撃ち落としながら言った。妖夢は刀で影を払い、「気を散らされないで! ミスティアさんの歌を止めるのが先です!」とハキハキと叫んだ。
咲夜は時をスローにして視界の曇りを避け、ナイフをミスティアの近くまで飛ばそうとした。早苗は太陽の光を大きく広げ、三妖精の仕掛けを一気に掻き消そうとしていた。
空の不思議な色が光と影と歌を混ぜ合わせ、道中の闘いは一層混雑になった。霊夢は御札を握りしめ、「いいよ、遊びだったら奉陪するけど、人里に被害が及ぶ前に片付けるわ!」と声を上げた。紛れもない戦いの中、五人の異変解決チームは三妖精とミスティアの妨害をかわしながら、人里への道を開こうとしていた——伊万里の力が引き寄せた仲間たちの“試し”は、これからも続いていくのだ。三妖精の仕掛けが空に散らばる中、ミスティアが両手を広げて声を轟かせた。「夜雀“真夜中のコーラスマスター”!」
言葉と同時に、彼女の周りから暗闇が一気に広がり、昼と夜ともつかない空の色さえかき消すようになった。境内は一瞬で漆黒に包まれ、五人の視界は極限まで狭められた——ただミスティアの歌声と、暗闇の中を光る弾の軌跡だけが存在する世界になった。
「くっ、視界が…!」魔理沙は八卦炉の火を大きくして周囲を照らそうとしたが、暗闇はその光さえ吸い込んでしまう。
すると、暗闇の中から無数の丸弾が浮かび上がった。それらはまるで音符のように規則的に配置され、ミスティアの歌声のリズムに合わせてゆっくりと動き出した。「これが… 私の歌の調べだ!」
やがて丸弾が一定の位置に落ち着くと、突然別の弾が横一列に並び、高速で五人に向かって撃ち出された。その速さは驚異的で、かつ列が次々と変わり、弾の間隔も狭くなっていく——避けるのは容易ではなかった。
「気をつけて! 列が変わる!」妖夢は薙刀で身の回りの丸弾を弾き飛ばしながら叫んだ。咲夜は時をスローにして高速弾をかわし、ナイフを暗闇の中のミスティアの位置に向けて投げつけた。
早苗は太陽の光を手のひらに集め、「光を放て! 視界を取り戻そう!」と声を上げて大きな光弾を放った。その光が暗闇を切り裂き、一時的にミスティアの姿と弾幕の全体像が見えた——丸弾が天板と床板のように配置され、高速列弾がその間を往復しているのだ。
「ふん、これが“真夜中のコーラスマスター”か!」霊夢は御札を連続で打ち出し、高速弾を撃ち落としながら言った。
「でも、これだけじゃ困らないわ!」その時、三妖精も弾幕に加わり始めた。サニーが光をかき混ぜて弾の軌跡を曖昧にし、ルナが影を動かして足元を崩し、スターが星の弾を高速列弾に混ぜ込んだ——戦いは一層混雑に陥り、混戦の頂点に達していた。暗闇と光が交差し、歌声と弾の音が響く中、五人は一丸となってミスティアのスペルカードを打ち破るべく、全身全霊で避け続け、反撃を続けていた——伊万里の力によって高まった夜雀の歌は、異変解決チームにとって初めての本格的な試練となっていた。暗闇の中で高速弾が飛び交う最中、サニーが突然体を浮かばせて手をかざした。
「ほら、これでどうだ!」言葉と同時に、早苗が放った太陽光をサニーがいきなり屈折させ、その光を一気に霊夢たちの目に向けて当てた。強烈な光が突然視界に突き刺さり、五人は一瞬まぶしくて何も見えなくなった。
「っ! まぶしい!」霊夢は手で目を覆い、身をかわそうとしたが足元がバランスを崩しそうになった。
「クソッ、こんな時に…!」魔理沙も八卦炉を構える手が震え、高速で飛んでくる弾の軌跡が見えなくなった。その隙を突いて、ミスティアの歌声が一層力強くなり、丸弾が一斉に動き出して五人の周りを包み込み始めた。高速列弾も間隔をさらに狭め、見えない状態で避けるのは不可能に近かった。
「気をつけて!」妖夢は目を細めてなんとか弾の風合いを感じ取り、刀で身の回りの弾を弾き飛ばしながら周りを守った。咲夜は時を一瞬凍らせ、その間に目を慣らして弾の位置を確認した。
「時間よ、止まれ…! 今よ、みんな!」凍った時間の中、咲夜はナイフを飛ばしてサニーの手元に向け、光の屈折を掻き乱そうとした。早苗も目をほどこし、太陽光を再び集めて暗闇の中に別の明かりを作り出した。
「光を分散させるわ! まぶしくないように!」
光が分散して視界が少しずつ戻ると、霊夢は御札を一気に打ち出し、サニーの近くに爆発を起こさせた。
「ふん、そんな小細工は通用しないわ!」サニーは身をかわしながら笑い、「へへ、おもしろい! もう一回やるね!」と言ってまた光を屈折させ始めたが、今度は妖夢の刀が先にその手を遮った。暗闇の中で光と影が繰り返し交差し、五人は一丸となって三妖精の妨害とミスティアの弾幕をかわし続けていた——一瞬の死角が命取りとなるこの戦いの中、彼らはチームワークを発揮して徐々に主導権を取り戻そうとしていた。妖夢の薙刀がサニーの光の屈折を遮り、早苗の分散した光が暗闇を徐々に明るくしていくと——突然ミスティアの周りを包んでいた漆黒の暗闇がパッと消え、高速で飛んでいた弾たちも一斉に空に散って塵となった。ミスティアは両手を下ろし、少し疲れたように肩を落としてハキハキと言った。
「ありゃ切れちゃった」霊夢は手を目から離し、ミスティアの姿を見つめながら言った。
「やっとね。そのスペルカード、意外と手強かったわ」魔理沙も八卦炉の火を弱め、「まあ、三妖精の妨害もあったからな。でも今はどうだ? 歌い終わったんだったら、一緒に異変解決に来ないか?」
ミスティアは頭を掻きながら笑い、「うーん… 伊万里さんの光が歌を強くしてくれたのは嬉しかったけど、確かに人里に被害が及ぶのは悪かったな。でも… 彼の力を試すのはまだ終わってないよ? 幻想郷の他の所でも、今こうして誰かが彼の力に応えてるんだ」その時、三妖精も近くに集まってきた。ルナが手を振りながら言った。
「そうそう! 私達も遊んで楽しかったけど、伊万里さんの光がさらに大きくなってるよ! 空を見てみな!」五人は上を見上げると、昼と夜ともつかない空の色が一層鮮やかになり、十五つの祠からの光が空の中心で一つに結ばれ始めていた。その光には、ミスティアの歌の旋律や三妖精の光の跡が混ざっているように感じられた。
妖夢は刀を腰に収め、「これは… 彼の力が幻想郷の誰かの想いと共鳴しているんですね」
ミスティアは羽根を軽く鳴らし、「じゃあ、私達はここでお別れ。あとはお前たちに任せるよ! でも伊万里くんに言ってね——“歌は絆をつなぐ力にもなるよ”って!」
言い終わると、ミスティアは三妖精と一緒に空に舞い上がり、少し遠くまで飛んでから手を振って消えていった。
霊夢は頷き、「わかった。でもまずは人里に行かないと。彼の力がさらに広がる前に、伊万里の居場所を探さないと」
五人の足取りは一層確かになり、人里へと急いで向かっていった——スペルカードの戦いは終わったが、伊万里異変の真の試練はまだ始まっていないのだ。場面が一転、幻想郷の中心付近にある小高い丘の上——そこに立っている伊万里の姿は、以前とは明らかに変わっていた。黒と虹と金色が混ざった光りを纏う衣装が体に密着し、両腕には元々持っていた弾幕生産機が完全に一体化していた。機械の部分からは細い光の線が体中に伸び、空に結ばれている大きな光と同調して緩やかに輝いていた。伊万里は空を見つめながらハキハキと呟いた。
「なるほど、こういうこともできるか。まあ、まだ始まったばかり。霊夢達が止めに来ても問題はない」その時、マキーナの声が空から響いてきた。
「君の体の変化は思った以上だ。弾幕生産機が一体化するなんて… 新しい種族の力はこんなものなのか」「うん、種族が変わったことで、機械と体が一つになって力を使いやすくなったんだ」伊万里は腕を伸ばし、一体化した機械から小さな光の弾を数発空に放った。弾は空の中心に結ばれた大きな光に吸い込まれ、一層輝きを増した。
「でも、霊夢たちは異変として解決しに来る。君はそれを受け入れるのか?」伊万里は少し微笑んで答えた。
「もちろんだ。これが俺の力を試す意味だろ? 彼女たちが全力で来てくれるなら、俺も全力で応える。そうして初めて、俺は自分の新しい姿を本当に受け入れられるんだ」丘の下からは人里の方向に向かう霊夢達の気配が感じられ、空にはミスティアの歌や三妖精の光の跡が混ざっていた。伊万里は拳を握り、一体化した機械から強い光が溢れ出し始めた。
「まだ、まだ… この力の真価を見せるのは、彼女たちが来る時だ。今は、光をさらに広げるだけだ」小高い丘の上、伊万里の変貌した姿が空の光と一体化し、幻想郷全体にその力の波が広がっていった——彼と霊夢達との対面は、もうすぐそこに迫っていた。人里と魔法の森と博麗神社の中環地点、数キロ前の道端で——霊夢たち五人が急いで歩いていると、突然赤紫のメイド服を着た少女が道に立っているのを見つけた。それは幻子だった。霊夢は足を止め、ハキハキと言った。
「アンタ、いつも伊万里と一緒にいたんじゃ」幻子は少し悲しげに頷き、ハキハキと答えた。
「ここら二週間前後はそうではないですよ。しかし、幻想郷の空の色が変わったかと思えば、周りには黒い毛玉のような妖怪が現れるし一体… 伊万里が何をしているのか、私にもわかりません」魔理沙は八卦炉を肩に掛け直しながら不満そうに言った。「伊万里のやつ、異変を起こすにしても何してんだ、幻子をほったらかしにするとは」
「いえ、それは…」幻子は手を胸に置き、「彼が種族が変わり始めた時から、自分一人で考えることが多くなりました。“俺自身の力を知らないままでは、誰も守れない”って言ってたんです」妖夢は刀を腰に下げながら問いかけた。
「それで、幻子さんはここに来たのは…」
「伊万里の気配がこの方向から強く感じられるからです。私も、彼が何をしようとしているのか聞きたいし、一緒に受け止めたいと思いました」幻子は目を強くし、「だから、異変解決に協力させてください。彼を傷つけるのは嫌いですが、私には彼のことを知っている部分もあるから…」
霊夢は頷き、「わかった。一緒に行くわ。アンタがいれば、伊万里のこともわかりやすくなるかもしれない」咲夜も微笑んで言った。
「人数が増えるほど力強いです。幻子さん、よろしくお願いします」六人になった異変解決チームは、再び足取りを速めて中環地点へと向かった。空の昼と夜ともつかない色が彼らの道を照らし、伊万里の気配は一層近くに感じられるようになっていた——幻子の合流が、彼らと伊万里との対面に、新たな温もりを与えることになるのだ