霊夢たち六人が人里の入り口に足を踏み入れると、普段は賑やかな通りに異変の兆しがあふれていた。道端には小さな黒い毛玉が転がり、空には光を歪ませるような妖精たちが浮かんでいる——彼女たちは伊万里の光を纏い、周囲の景色を少しずつ歪めていた。
「やっぱり現れてるな」魔理沙は八卦炉で毛玉を一気に焼き払い、「この妖精たち、景色を歪ませてるから道がわかりにくくなってる!」道は確かに普段とは違い、曲がり角が本来とは違う場所にあったり、家々の配置が少しずつズレていたりと、まるで視覚が狂ったような感覚に陥る。住民たちは家の中に隠れており、外に出る者はほとんどいなかった。
「これは伊万里さんの力が影響して、空間が歪んでるんですね」早苗は太陽の光を放ち、周囲の歪みを一時的に修正しながら言った。
「住民たちが不安になってるのも当然だ… 早く片付けないと」その時、歪んだ空間から大きな黒い毛玉が塊となって現れ、六人に向かって突進してきた。妖夢は刀を振り下ろし、「これは個体が集まって大きくなったんです! 気をつけて!」霊夢は御札を連続で打ち出し、毛玉の塊を崩しながら道を進んだ。
「まずは人里の中心へ行こう! そこで防衛線を作って、住民を守るわ!」咲夜は時をスローにして妖精たちの動きを読み、ナイフで光の歪みを掻き乱した。
「空間の歪みは妖精たちが原因です。これらを退ければ景色は元に戻ります!」幻子も柔らかな光を広げ、「毛玉たちにも伊万里くんの想いが宿ってるようです… ただ力が余ってしまって、暴走してるだけかもしれません」六人は一丸となり、黒い毛玉と歪みの妖精を退けながら人里の中心へと進んだ。歪んだ道は進むほどに複雑になり、日常の景色が徐々に崩れていく中——彼らは守るべき場所を目指し、異変の核心に近づいていたのだ。六人が黒い毛玉と妖精を退け、人里中心に近づこうとした時、突然道端から鈴仙の姿が現れた。
「あらあら、まさか、ここでお会いするとはですねぇ」霊夢は御札を手にしたままハキハキと言った。
「鈴仙、永琳からのお使いかしら、だけど、今は見ての通りだよ」鈴仙は赤い瞳を輝かせながらハキハキと答えた。
「知ってますよ、これ伊万里さんの仕業でしょ。私は解決側ではない」言葉と同時に、彼女の瞳から強い光が放たれ——六人は思わずその目を直視してしまい、霊夢がつぶやいた。
「しまった」すると、周囲の景色が一気に歪み、今までとは違う空間へと引きずり込まれた。道はまっすぐに伸び続け、家々は蜃気楼のように揺らぎ、黒い毛玉も妖精も姿を消した。
「これは… 鈴仙さんの“狂気の瞳”の力…!」早苗が頭を掴みながら言った。
「でも、普段よりも力が強い… 伊万里さんの影響を受けてるんですね」鈴仙は空間の中で浮かびながら言った。
「伊万里さんが私に頼んだの。“人里の住人たちが慌てないように、霊夢達を少しだけ邪魔して”って。私もこの力で、歪んだ空間をコントロールしてるんです」歪んだ空間の中で、六人は足元を定めにくくなり、視界も徐々にぼやけてくる。魔理沙は八卦炉で火を灯し、「まあ、狂気には負けないぞ! 火の光で気を鎮めるんだ!」妖夢は刀を前に突き立て、「みんな、集中してください! 鈴仙さんの力に負けてはいけません!」しかし鈴仙の瞳はさらに輝き、空間が波のように揺れ始めた。
「私は異変を止めるつもりはありません… 伊万里さんが“自分を受け入れるため”に戦ってるんだと、永琳さんも言ってました。だから私は、君たちが本気で戦う気持ちを試すんです!」歪む景色の中、六人は鈴仙の赤い瞳に抗いながら——守るべき人里と、伊万里の想いの間で選択を迫られていたのだ。鈴仙の赤い瞳がさらに輝き、彼女は片手を鉄砲の形に組み、指先から無数の光弾を一気に放った。弾幕は歪んだ空間に沿って曲がりながら、避けようがない軌道で六人に迫り、次々と命中した。
「っ!」霊夢は御札で一部を防いだものの、肩に弾が当たり少し後退する。魔理沙も八卦炉を盾にしたが、足元に弾が命中して立ち止まる。
「この弾… 力は強くないけど、軌道が予測できない!」早苗が太陽の光で身を守りながら叫んだ。妖夢は刀で弾を弾き飛ばそうとしたが、空間の歪みで軌道が変わり、腕に擦り傷を負った。咲夜は時をスローにして一部を避けたものの、鈴仙の弾は空間と共に動くため、やはり数発は命中してしまう。幻子も柔らかな光で防御したが、弾が光を抜けて胸元に当たり、彼女は少し顔を曇らせた。
「ふん、これでもまだ本気じゃないわ」鈴仙は指を組み直し、今度は弾の速さを上げて連続で放ち始めた。「伊万里さんの力で、私の“狂気の瞳”と弾幕が一体化してるんです。歪んだ空間と共に弾が動くから、避けるのは難しいはずです!」弾幕が次々と命中し、六人は少しずつ劣勢に追い込まれていく。だがその中で、霊夢がハキハキと声を上げた。
「逃げたり避けたりじゃない! この空間を壊せばいいんだ!」言葉と同時に、霊夢は全身に力を込めて御札を打ち出した。御札は歪んだ空間に衝突し、一時的に亀裂を入れた。魔理沙も八卦炉から大火弾を放ち、亀裂を広げた。
「みんな、力を合わせろ!」早苗が太陽の光を集中させ、亀裂に向けて放った。妖夢、咲夜、幻子もそれぞれの力を込めて攻撃を加え、ついに歪んだ空間がパッと崩れ去った。鈴仙は少し後退しながら弾幕を止め、「やはり… 君たちは人里を守る覚悟が固いんですね。伊万里さんにはその想いを伝えます」赤い瞳の輝きが落ち着き、周囲の景色は元の人里の道に戻った。六人は少し息切れしながらも、鈴仙の姿を見つめていた——この試練を越えた今、人里を守るための決意はさらに強くなっていた。鈴仙は赤い瞳をさらに輝かせ、ハキハキと言った。
「伊万里さんのためならなんだってやるわよ、この命に変えてでも!」その瞬間、空から伊万里の声が響き渡った。
「鈴仙、その思いは嬉しいが何も命までかけられるのは後味悪い。だが、与えられた使命はこなせ!」
「はい、主人様!」鈴仙は力強く応え、両手を広げて叫んだ。
「
「停止したり消えたり… 予測不能だ!」妖夢は刀を円軌道に振り、弾をかわしながら叫んだ。霊夢は御札を連続で打ち出し、「この弾幕、空間の歪みと連動してるわ! 消失した時こそが突破口だ!」魔理沙はミニ八卦炉で火の弾を放ち、再出現した弾を撃ち落としながら言った。
「まあ、伊万里の指示通りに本気出してるな! でもこの繰り返しが厄介だ!」早苗は太陽の光を盾にし、弾の波紋を跳ね返した。
「鈴仙さんの想いは強いけど… このままじゃ人里が危ない!」咲夜は時を細かく操り、弾が消失する瞬間を見極めてナイフを投げつけた。
「時間の隙を突くしかありません! みんな、タイミングを合わせて!」幻子も柔らかな光を大きく広げ、弾の軌道を明らかにしながら言った。
「鈴仙さん、伊万里さんも命をかけることは望んでないはずです!」鈴仙は弾幕の繰り返しを続けながら、少し声を震わせながら言った。
「でも… 主人様のためには…!」放射状に広がる丸弾と波紋の弾幕が消えたり現れたりする中、六人はタイミングを合わせて一斉に行動を開始した——鈴仙の固い想いが作り出す弾幕を突破するため、彼らは全員の力を結集させようとしていた。弾幕が消えたり現れたりする中、霊夢は一歩前に出てハキハキと言った。
「それ、本気で言ってるかしら、アンタが慕ってるのは輝夜と永琳じゃなかったかしら」鈴仙は赤い瞳を輝かせたまま、黙々とスペルカードを発動させ続けていた。放射状の丸弾がまたたく間に再配置され、今度は波紋の軌道もさらに複雑に変化し、六人の周りを狭い範囲で回り始めた。
「鈴仙さん…!」早苗が声を掛けるが、彼女はまったく応えようとしない。弾幕の停止と消失の間隔も短くなり、もはや目で追うのが難しいスピードになっていた。
「まあ、話を聞いてないな」魔理沙はミニ八卦炉から大火弾を放ち、弾幕の一部を崩しながら言った。
「でもあんなこと言ったのは、きっと気にしてるんだろう?」すると鈴仙の動きが一瞬止まり、その隙に弾幕も一時的に安定した。彼女は少し声を落としながら呟いた。
「輝夜様と永琳様は… 私を救ってくれた大切な存在です」
「ならばなおさら、命なんてかけちゃダメじゃない!」霊夢は御札を一気に打ち出し、弾幕の中心へと近づいた。
「伊万里だって、アンタの命なんか望んでないんだから!」その言葉が響いた瞬間、鈴仙のスペルカードが突然消滅した。彼女は両手を下ろし、赤い瞳の輝きも薄れていった。
「…私は… 伊万里さんが幻想郷を守るために戦ってると思っていました」鈴仙は少し俯きながら言った。
「でも、輝夜様たちも、人里の皆さんも… 全てが大切なのですね」空からまた伊万里の声が響いた。
「分かってくれたか、鈴仙。君の想いは嬉しいが、守るべきものは一つじゃない。ここではもういい、任せろ」鈴仙は頷き、「はい、主人様… 霊夢さんたち、ごめんなさい」六人は少し安心しながら鈴仙の姿を見つめ、霊夢がハキハキと言った。
「大丈夫よ。でもこれからは、本当に守るべきものを見失わないでね」
人里の道は元通りに戻り、鈴仙の試練を越えた六人は、いよいよ八方屋へ向かう準備を本格的に進めようとしていた——想いの迷いが晴れた今、彼女らの決意はさらに確かなものになっていた。鈴仙が静かに退いた後、六人が人里中心へと進もうとすると、突然道を横切るように上白沢慧音が立ち塞がった。
「悪いけどここまでだよ」霊夢は御札を手に取りながらハキハキと言った。
「邪魔しないでもらえるかしら」慧音は獣耳を軽く動かし、眼を真剣に見開いた。
「人里の住人たちはもう十分に不安を感じてる。伊万里の力で空間が歪み、妖怪が現れるなら… 私はここで君たちを止める」
「慧音さんも… 伊万里の仕業に加担するつもり?」早苗が太陽の光を手元に集めながら問いかけた。
「加担じゃない」慧音は地面を踏みしめ、「私は人里の“日常”を守るために立ってるんだ。伊万里が何を考えていようと、住人たちの穏やかな生活を壊すようなことは許さない」言葉と同時に、慧音の周りに無数の本のような形の光弾が現れた。それらは歴史の記憶を纏い、放射状に広がりながら六人に向かって飛んできた。
「これは… 慧音さんの“歴符”が、伊万里さんの力で変化してるんですね」妖夢は薙刀を振り、光弾を弾き飛ばした。魔理沙はミニ八卦炉で火弾を放ちながら言った。
「まあ、教師さんも本気だな! でも私たちも人里を守るために動いてるんだぞ!」慧音は光弾の発射を続けながら、「それならば、君たちが本当に“日常”を守れるか、試させてもらう!」と声を上げた。本の形をした光弾が人里の道を覆い、六人は慧音の真剣な想いに抗いながら——“日常”を守るという同じ目的で、対峙することになったのだ。慧音の言葉と同時に、彼女の姿は一気に変わった——普段の人間の姿から、銀色の獣毛に覆われたワーハクタクの姿へと変化した。大きな獣耳が立ち上がり、尻尾が風になびき、瞳には黄金色の光が宿っていた。
「本来の力を出すわ」低く響く声と共に、地面から無数の石版のようなものが浮かび上がった。それらは太古の歴史を刻んでおり、慧音の周りを回転しながら強い光を放ち始めた。
「ワーハクタクの姿だわ… 本気だな」霊夢は御札を両手に取り、全神経を集中させた。石版は一斉に放射状に飛び出し、その隙間から細い光の刃が無数に伸びてくる。今度は弾幕ではなく、切り裂くような攻撃が六人を包み込んできた。
「これは歴史そのものが攻撃してるようだ!」魔理沙は八卦炉を盾にし、光の刃を跳ね返しながら叫んだ慧音は獣身で地面を駆け、時には空中を跳び回りながら石版を操る。「人里の歴史は、穏やかな日常で積み上げられてきた! それを壊すものは、私が排除する!」黄金色の瞳からも光弾が放たれ、石版と光刃が絡み合って攻撃は一層激しくなった。早苗は太陽の光を大きく広げ、「慧音さんの力… 伊万里さんの影響で、さらに強くなってるんですね!」妖夢は刀を高速で振り、光刃を切り裂きながら慧音に近づこうとした。「でも私たちも、日常を守るために戦っています!」
咲夜は時を細かく調整し、石版の軌道を見極めてナイフを的確に投げつけた。
「獣身の慧音さんは速い… 時間を操ってでも対応します!」幻子は柔らかな光を慧音に向けて放ち、「慧音さん、伊万里くんも人里を壊すつもりはないはずです! 話し合ってください!」獣身に変わった慧音は石版を一気に集め、「それを証明してみせるんだ!」と叫びながら、全ての石版を六人に向けて一斉に放った——太古の歴史が刻まれた石版が空を覆い、人里の“日常”を守るための慧音の全力が、六人にぶつかろうとしていた。石版が六人の眼前に迫ろうとした瞬間、火、水、木、金、土——五色の弾幕が突然両者の間に打ち込まれ、石版を一気に弾き飛ばした。
「なんだこの弾幕…!」慧音が獣身で後退し、空中を見上げると、紫の魔法書を抱えたパチュリー・ノーレッジが浮かんでいた。魔理沙はミニ八卦炉を構え直し、驚いたように声を上げた。
「パチュリー、お前が出張るとはどういうことだ?パチュリーは魔法書をパタリと開き、メガネ越しに静かに言った。
「私は異変を解決するために来たんじゃない。伊万里の力を支持する、紅魔館の意思だ」
「なんだって!」魔理沙が思わず前に出る。「紅魔館が伊万里に味方するとは…」
「レミィが判断したんだ」パチュリーは五行の弾幕を周囲に巡らせ、「伊万里の力は“異変”ではなく、“新たな在り方”を提示している。紅魔館も太古からの“異変”を経てきたけど、今回は違う。彼が目指すのは幻想郷全体の調和だ」言葉と共に、火の玉が舞い、水の流れが螺旋を描き、木の枝が網のように広がり、金の光が刃を作り、土の塊が壁を築いた——五行の弾幕が六人と慧音の間に立ちはだかった。慧音は人間の姿に戻りつつ、「パチュリー… 紅魔館もこの異変に賛す同するのか」
「賛同するじゃなく、共に進むんのよ」パチュリーは魔法書を動かし、五行の弾幕を強化した。「伊万里は私に七曜の魔法を“理解させる”ために力を与えた。君たちが人里を守る気持ちは尊いが、伊万里の想いを見ないままでは、本当の解決には至らない」魔理沙はミニ八卦炉で火弾を放ち、「でもお前が邪魔をすれば、私たちは立ち向かうぞ!」パチュリーは静かに微笑み、「それでいい。伊万里はその“覚悟”を待っているんだから」——五行の弾幕が人里の空を彩り、六人は慧音と共に、紅魔館の意思に抗いながら八方屋への道を探ろうとしていた。エピソード37【歪む里道、揺らぐ日常】(新たな手がかり、森への予感)パチュリーの五行弾幕が両者の間に壁を作る中、霊夢は少し考え込んだ後、ハキハキと言い放った。
「とは言っても、これ、八方屋のところに直接行っても意味ないわね。私の感だと魔法の森が怪しいと思うわ、そこに向かう鍵がありそうだわ」魔理沙がミニ八卦炉を肩に掛けながら言った。「魔法の森? まさかあの場所に何かあるのか?」パチュリーは五行の弾幕を維持したまま、「魔法の森は幻想郷の“力の源”の一つだ。伊万里もそこで何かを準備しているかもしれないが… 鍵があるなんて、霊夢はよく気づくね」
慧音は人里の住民が顔を出しているのを見ながら言った。
「魔法の森… 確かに太古から“鍵の在り処”という伝説が残ってるけど、本当にそこに行くのか?」
「うん、八方屋に直行するより、まずは鍵を手に入れるべきだと思うわ」霊夢は御札を収め、足元を確かめながら言った。
「パチュリーがここにいる限り、人里で争い続けても仕方ない。それならば、別の道を探すわ」パチュリーは魔法書を少し閉じ、五行の弾幕を緩めた。
「魔法の森は伊万里の力でさらに危険が増してる。それでも行くのか?」
「もちろんだ」霊夢は六人に目を配り、「みんな、魔法の森へ向かおう。鍵を手に入れてこそ、伊万里と真剣に話し合えるんだから」魔理沙はうなずきながら言った。
「まあ、それなら一緒だ! 魔法の森なら私も詳しいし、何かあっても対処できるさ!」早苗も太陽の光を手元に集め、「魔法の森に鍵があるなら、そこへ向かいましょう。伊万里さんの想いも、そこで分かるかもしれません」パチュリーは弾幕を完全に収め、「分かった。私は紅魔館へ戻り、レミィと共に準備を進める。魔法の森で君たちを待つことはないが… 鍵を手に入れた時、伊万里と対面する覚悟を固めておきなさい」言い終わると、パチュリーは魔法の光に包まれて姿を消した。慧音は六人に近づき、「魔法の森は危険だから、気をつけて。もし手詰まりになったら、私に言ってくれ」六人は頷き、霊夢が先頭に立って言った。「わかった! では、人里の安全は慧音に任せるわ。魔法の森へ、出発だ!」歪んでいた里道も徐々に元通りに戻り、六人は新たな目的地を目指して足を進めた——魔法の森に潜む鍵が、伊万里の真の想いを解き明かす鍵となるのかもしれない。