東方創想録   作:Mrコッコ

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Stage4:境界に潜む希望の信仰

霊夢たちは魔法の森の奥深くへと進み、歪みが完全に解けた静かな空間にたどり着いた。草木が本来の姿で輝き、地面には銀色の紋様が光を放っていた。霊夢はその紋様を見つめながらハキハキと言った。

「どうやら、ここから伊万里達が潜む本拠点に行けるようだね」早苗が手に取った鍵を確かめながら言う。

「この鍵が合うのでしょうか… 先程の木箱から出てきたものですし」幻子が柔らかな光を放ち、紋様と鍵を繋ぐように導く。

「光が反応していますよ、きっとここです」霊夢が鍵を紋様の中心に差し込み、回す——すると、空間がまるでジッパーを開くように、真ん中から左右に引き裂かれるように隙間が広がった。紫の作る隙間とは一味違い、整然とした切れ目からは暖かな光が溢れ出していた。

「これは… 紫の隙間とは全然違う感じだ」魔理沙が八卦炉を構えながら見上げる。アリスも人形を操りながら頷く。

「伊万里さんの力だわ… まるで世界を縫い合わせるような」霊夢は先頭に立ち、隙間の向こうを見据える。

「さあ、行こうよ。伊万里の真の目的を聞きに」そして一行は、ジッパーのように開いた境界の隙間へと足を踏み入れた——ジッパーのように開いた隙間の先へ足を踏み入れた一行は、思わず息を呑んだ。そこに広がっていたのは、魔法の森の薄暗さとは対照的な、清浄な空気に満ちた空間だった。見渡す限り、白石で敷き詰められた参道と、天高くそびえる朱塗りの柱。瑞々しい神木が立ち並び、至る所に精巧な細工が施された灯籠が並んでいる。それはまるで、古き良き寺院の神域そのものだった。霊夢は周囲を見渡し、ハキハキと言った。

「これは驚いたわ」早苗も周囲の濃密な神気に目を輝かせる。

「なんて清らかな……。幻想郷の中に、これほど見事な神域が隠されていたなんて」魔理沙は帽子を押さえながら、キョロキョロと辺りを探る。

「寺のような、神社のような……妙に落ち着く場所だな。伊万里の奴、こんな大層な拠点を隠し持ってたのかぜ」参道の先からは、微かに線香の香りと、鈴の音が風に乗って運ばれてくる。霊夢はハキハキと続けた。

「ただの隠れ家じゃないわね。ここには確かな『信仰』の流れがある。伊万里が何をしようとしているのか、その答えがこの先にあるはずよ」一行は、厳かな空気に包まれた神域の奥へと歩みを進めた。清浄な神域の参道をしばらく進むと、正面の石段の上に二人の姿が現れた。一人は鮮やかな衣装をまとい、扇子を手にした物部布都。もう一人は、肩から水色の炎をたなびかせ、気風の良さそうな雰囲気の蘇我屠自古だった。屠自古はこちらを見ると、腕を組んでハキハキと言った。

「まさか、ここに入り込んでくるとはねぇ。迷い込んだわけじゃないよね。だってここに入れるのは、信仰の道に導かれたか、それとも鍵を使ってしかないからな」布都も一歩前に出て、鋭い視線を向けながら続ける。

「ここはただの隠れ家ではない。古くから続く信仰の流れが集まる場所だ。何の目的でここに来たのか、はっきり言ってもらおうか」霊夢は御札を軽く握りながら、落ち着いて応じた。

「迷い込んだわけじゃない。鍵を使って来たのよ。伊万里に話があってね。この神域に隠された計画の全てを聞きに来たの」屠自古は口元に笑みを浮かべ、肩をすくめる。

「なるほど、鍵の所持者か。なら話は早い。道を開けるわけじゃないけど……通してもらうには、少しくらいこちらの試練を受けてもらわないと、ってところかな?」神域の石段の前で向き合ったまま、魔理沙は八卦炉の柄を指で叩きながらハキハキと言った。

「なあ、お前らは協力してるのか、それとも」屠自古は肩の青い炎をゆらめかせ、腕を組んだままハキハキと続けた。

「我らは霍青娥というやつが何やらよからぬことを企んでてね、そしたら調べたら背後に伊万里とか言う奴がいるって話じゃないか。ヤツは幻想郷の新参だが、その力は畜生界からも目をつけられてるとか、はたまた幻想郷の賢者からも注目を得てるとか——そしたらこんな大がかりなことになろうとはな」一息ついて、屠自古はさらに言葉を重ねる。

「信仰など人々の感情を集めて、そして自身を幻想体という——人間でありながら妖怪であり、魔法使いであり、神であろうとする、と来た」布都が隣で頷き、扇子を開いて口元を隠しながら補足する。

「境界の理を超え、種族の枠組みそのものを書き換えようということだ。この神域はそのための力の源の一つとして用意された場所、というわけだ」霊夢は眉を寄せ、御札を握り直した。

「人間でも妖怪でも神でもない、何でもありの存在になろうとしてるの?」

「ああ」屠自古は答える。

「幻想郷が『すべてを受け入れる』場所なら、その在り方そのものを自分自身で体現しよう、というのがヤツの考えらしい」神域の清らかな空気の中、妖夢は白刃を軽く手元に引き寄せ、ハキハキと言った。

「種族を変えるだけなら、こんな異変まがいなことをわざわざする必要はないはずです。あの人は下準備をして、それを媒体に思いや感情を集めて……。紫様たちの協力だけで済むことを、こんな多数を巻き込んでまでするとは、伊万里だけの考えとは思えません」隣で時計の鎖を指でなぞっていた咲夜も、表情を引き締めてハキハキと続けた。

「畜生界から目をつけられてるってのも気がかりです。まさか……」言葉の続きを飲み込むように、咲夜は周囲の神域の気配を探る。石畳の下からは、確かにただの信仰だけではない、複雑で濃密な力の流れが立ち上っていた。屠自古は肩の青い炎を少し大きく揺らし、頷きながら答える。

「その通りだ。伊万里自身が望んだことではあるが、背後には色々な思惑が絡み合っている。隠岐奈の考え、紫の立場、畜生界の干渉の可能性……それら全部が重なって、この計画は動き出したんだ」布都も扇子を閉じ、石段の先を指し示す。

「だが真の中心にあるのは、やはり伊万里自身の願いだ。種族の壁をなくし、誰もが自分の在り方を選べる世界を作りたい——それが根本にあるのは間違いない」霊夢は前に一歩進み、先の見える参道を見据える。

「だとしたら、話を聞くだけじゃなく、ちゃんと自分たちの意見も伝えないとね。幻想郷の在り方は、一人が勝手に決めていいものじゃないんだから」緊張した空気が流れる参道に、荒い足音が響いた。見ると、物部布都と蘇我屠自古の背後から、衣装を乱し体のあちこちに傷を負った豊聡耳神子が現れた。呼吸も荒く、いつもの落ち着いた雰囲気はどこにもない。

神子は肩で息をしながら、慌てた様子で叫んだ。

「大変です、畜生界の剛欲連合が介入してきました!」

その言葉に、その場にいた全員の表情が一気に険しくなる。屠自古は肩の青い炎を鋭く燃え上がらせ、布都も扇子を強く握り締める。

「剛欲連合だと……? まさか本当に畜生界が動いてきたのか」屠自古が低い声でつぶやく。

神子は頷き、続けて状況を告げる。

「奴らはこの神域に集まる信仰の力、そして伊万里さんが作り出そうとしている幻想体の力を狙っているようです。境界の隙間をこじ開け、すでにこの神域の外郭まで迫ってきています!」魔理沙は八卦炉を構え直し、舌打ちする。

「畜生界の連中まで出てくるとはな……これは伊万里の計画どころの話じゃなくなってきたぜ」霊夢も御札を手に取り、警戒しながら言った。

「力を狙われてるってこと? だったらこのまま放置しても、幻想郷全体に被害が及ぶわね」咲夜はナイフの柄に手をかけ、冷静に状況を分析する。

「これで背後の思惑が一つ明らかになりました。伊万里さんの計画は、知らないうちに畜生界の標的にもなっていた——ということですね」妖夢は白刀を鞘から少し引き出し、鋭い視線を向ける。

「敵が迫っているのなら、ここで立ち止まっているわけにはいきません。先へ進んで伊万里さんとも話をつけつつ、迫る敵にも備えなければ」神子は力強く頷き、道を開けるように脇に退いた。

「私も力になります。この神域と、幻想郷の平穏を守るために——」参道の先からは、遠くない場所から重苦しい地鳴りのような気配が近づいてくるのを、誰もが感じ取っていた。神子の報告が終わり、一行が先へ進もうとしたその瞬間——

「おっと、そう簡単には」

「行かせるか!」

重々しい声が二つ重なって響き、石畳の空間に強い気迫が満ちた。姿を現したのは、なんと鬼傑組の組長・八千慧と、勁牙組の組長・早鬼だった。

魔理沙は目を丸くして八卦炉を構え直し、呆れたように言った。

「おいおい、この二人とは変な組み合わせだぜ」

八千慧は鋭い瞳で一行を見据え、ハキハキと言った。

「伊万里様の命令で仕方なくよ」

霊夢は御札を強く握り、冷静ながらも鋭い口調で応じる。

「コイツラは誰かの下につくようなやつではない。これは伊万里の力の影響を受けてるわ」早鬼は拳を鳴らし、荒々しい笑みを浮かべながらハキハキと続けた。

「アタシはなりふり構われないんだよね。伊万里様は畜生界の連中を負かしたんだから、逆らう理由なんてない。それに久々にコイツも来てくれてるんだからな——慧ノ子!」声に応えるように、地面を蹴る音が響く。両手に大きなトラバサミを装着した山狗の三頭慧ノ子が木々の陰から姿を現した。

「姉御が声かけたから、再び力を貸すことになったわ」続けて八千慧も手を上げ、ハキハキと言う。

「こちらも部下は連れてきましたよ——孫美天!」風が巻き起こると同時に、孫美天が闇のような気配をまとって現れ、八千慧の後ろに静かに控えた。神域の入り口には、伊万里側として立ちはだかる畜生界の実力者たちが並び、緊迫した空気が辺り一面に張り詰めた。魔理沙は眉を吊り上げ、八卦炉の引き金に指をかけながらハキハキと声を上げた。

「マジかよ、鬼傑組と勁牙組の主力がこうして揃って出てくるとはな! 畜生界でも指折りの荒くれ者どもが一つの目的で束になってるなんて、普通じゃありえねえ」霊夢は巫女服の袖をはらい、手にした御札と祓い棒をしっかりと構え、周囲を鋭く見渡しながら落ち着いた口調で続ける。

「こちらは私、魔理沙、咲夜、妖夢、早苗、それに幻子の計六人。数だけ見れば五分だけど、相手は一筋縄じゃいかない連中ばかり。それに見てごらん——カワウソ霊やオオカミ霊の気配が周囲の木々の陰や地面の下から渦巻いている。この場は囲まれつつあるのかもしれない」咲夜は懐中時計をちらりと確認し、無数のナイフを宙に浮かべながら冷静に補足する。

「単純な力比べ以上に、相手の連携と周囲の雑魚霊が厄介になりそうですね」妖夢は白刀の切っ先を相手に向け、気合を込めて構えを固める。

「囲まれる前に突破口を作るか、それとも正面から来る者を先に制するか——早く方針を決めないと」

「迷ってる暇はあるのかしら、行くよ!」

慧ノ子が手を勢いよく真上に突き上げると、両手に装着したトラバサミがカチリと大きく開き、空気を裂くような金属音が響いた。次の瞬間、地面や木立の陰に隠れていた仕掛けが一斉に起動——霊夢、魔理沙、早苗の足元と背後から、鋭い歯を備えた罠が鎖を引きながら飛び出し、三人の進路を塞ぐように襲いかかった。

「くっ、これは……!」

魔理沙は慌てて魔法の箒で跳び上がり、ギリギリでかわすが、裾の布端がトラバサミの歯に触れて裂ける。霊夢は素早く身を反らし、祓い棒で一つを弾き飛ばすも、別の罠が横から迫り、足場を奪われて体勢が崩れる。

「まさか至る所に隠してあったなんて!」早苗は神風の力を起こして周囲の罠を吹き飛ばそうとするが、次々と連鎖的に飛び出すトラバサミの数に、一瞬の判断が遅れる。慧ノ子は冷ややかな笑みを浮かべ、さらに指を鳴らす。

「私のトラバサミは一度だけじゃない。かわせば次が来る、進めばさらに奥が待ってるよ」しばらくの間、早鬼を筆頭とした四人の猛攻が絶え間なく続いた。荒々しい体術、重い打撃、妖力を込めた斬撃が四方から襲いかかり、霊夢たち六人は防御と回避に追われ、じりじりと後退を強いられる。だが次の瞬間——空気が不自然に歪み、強烈な光の柱が天と地を貫くように出現した。

ドオオオオンッ!!

轟音と共に放たれた巨大なレーザーは、軌道上にいた早鬼たち四人をまるで予定通り巻き込み、直進して霊夢たち六人の正面へと撃ち込まれた。逃れる間もなく、光の熱と衝撃波が両陣営を一気に包み込む。

「なっ……何が起きた!?」早鬼は驚きと怒りの声を上げながら、咄嗟に腕で顔を覆って防ぐが、強い熱が肌を刺す。他の三人も次々に吹き飛ばされ、地面を何回も転がって倒れ込む。

「くっ……この威力は一体!」霊夢は祓い棒と御札で結界を瞬間的に張るも、衝撃で手が痺れ、後ろへ大きく弾き飛ばされる。魔理沙は八卦炉を前に突き出して魔力の盾を作るが、エネルギーの圧力に押し負け、箒ごと後退する。咲夜、妖夢、早苗、幻子もそれぞれの力で防御を試みるが、いずれも完全には受け止められず、光と熱の嵐の中で体勢を崩したまま、地面に叩きつけられるようにして命中の衝撃を受け止めた。煙と砂塵が立ち込め、両陣営とも一瞬の混乱に包まれる中、どこからか冷たい響きの声が虚空に浮かんだ——誰が、何のためにこの一撃を放ったのか、まだ誰にも分からないまま。煙と砂塵がゆっくりと晴れていく中、どこからともなく軽く冷めた声が響き渡った。

「あーあー、くだらない、実にくだらない」光の筋の先に、悠然と立つ姿が現れた——伊万里だった。まるで何事もなかったかのような落ち着いた様子で、周囲の荒れた地面を見下ろしている。

「伊万里、これは何のつもりだ?」体を起こしながら、早鬼は傷ついた肩を押さえ、怒りと疑問の入り混じった目で伊万里を睨みつけ、ハキハキと声を上げた。巻き込まれた衝撃で息も上がっているが、それでも気迫だけは失っていない。伊万里は少し肩をすくめ、淡々と答える。

「お前達を霊夢達にぶっつけたが、大した成果ではないな。牽制にすらなっていない、ただ時間を無駄にしただけだ」八千慧、慧ノ子、孫美天も起き上がり、戸惑いながら伊万里の方を見る。霊夢たちも体勢を立て直し、今度は伊万里自身を相手にするかのように武器を構え直した。霊夢は鋭い視線を向けて問いかける。

「自分の配下まで巻き込んで攻撃するなんて……まさか、最初からこんな勝負など本気ではなかったの?」伊万里はその問いに答えることなく、ただ深い瞳で両陣営を見渡し、次の言葉を待つような雰囲気を漂わせていた。煙が完全に晴れる前に、伊万里の周囲に淡い光が渦を巻き始めた。次の瞬間、八千慧と早鬼の体がまるで液体のような光の膜に包まれ、瞬く間に透明な球体へと閉じ込められていった。

「なっ、これは何だ!? コラ〜!出せ、伊万里!」球体の内側から叩く音と怒鳴り声が響くが、壁は硬く、びくともしない。

「姉御に何する気!?」慧ノ子は驚きで目を見開き、トラバサミを構えて突っ込もうとするが、伊万里は片手を軽く上げるだけで強い力場が立ちはだかり、近づくことすらできない。伊万里は冷めた表情で言い放つ。

「畜生界の組長たちにはまだ利用価値がある。だが、お前たちのこの程度の衝突は、これ以上続けても無駄に終わるだけだ。私にはまだまだやらなくてはならないことが山ほどあるからね」言葉が終わると同時に、伊万里の背後の空間がまるで布を引き裂くように歪み、ジッパーのような境界の隙間が現れた。球体ごと空間の奥へと引き込まれるように浮かび上がり、伊万里自身もゆっくりとその中へと身を滑り込ませていく。

「待て!逃げるつもりか!」魔理沙が八卦炉に火を込めようとするが、伊万里は最後に一瞥を送るだけで、隙間は音もなく閉じていった。あっという間に空間は元通りに戻り、ただ荒れ果てた石畳と、残された慧ノ子、孫美天、そして霊夢たちだけが取り残されていた。

「……これでは、まるで手のひらの上で踊らされていたようなものだな」妖夢が鞘に刀を納めながら、深いため息をつく。霊夢は奥へと続く参道を睨みつけ、ハキハキと決意を込めて言った。

「どんな計画があろうと、もう逃げられない。この先に進んで、伊万里の真の目的をこの目で確かめるまでだ」閉じた空間の歪みの痕跡がわずかに光を失い、風だけが静かに残された者たちの間を吹き抜ける。霊夢は手で顔の前の塵を払い、まっすぐ先へと続く道を見据える。

「ここで立ち止まっていても始まらない。行くわよ」 短く声をかけると、巫女の裾を翻して歩き出す。魔理沙は魔法の箒を肩に担ぎ、「全く、面倒なことになったもんだ」とぼやきながらもすぐ後に続く。妖夢は白い刀身を薄く光らせ、警戒の視線を左右に巡らせつつ進み、妖夢は冷静に周囲の気配を探りながら歩調を合わせる。残された慧ノ子と孫美天は一瞬顔を見合わせる。姉御たちが連れ去られ、行く先も目的も見えない状況だが、ここで取り残されていては事態は何も動かない。

「……私たちも行く。姉御を放っておくわけにはいかないからな」慧ノ子がトラバサミを握り直して頷くと、孫美天も深く息をついて従う。荒れた地面の上を、6人の影が一つになって進んでいく。先にはまだ見えない伊万里の本拠、そして彼の隠された真意が待ち受けているかのように、道は暗く、遠くまで続いていた。

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