東方創想録   作:Mrコッコ

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【弾幕ごっこ】

魔理沙とのエンジン作りが一段落してから数日。伊万里は博麗神社で掃除を手伝いながら、幻想郷の生活にだんだん慣れてきた。朝は霊夢と一緒に朝ごはんを食べ、昼は魔理沙の魔法店で道具作りをし、夕方は森の小道を散歩して不思議な花や鳥を見つける——外の世界では考えられないような、穏やかで充実した日々が続いていた。その日、伊万里が神社の境内で光の花を咲かせながら掃除していると、空から突然キラキラした光が降ってくる。

「わっ、何だそれ…!」気が散ってすぐに頭を上げると、赤い巫女姿の霊夢と金髪の魔理沙が空を飛んでいて、互いに小さな光弾を打ち合っていた。光弾が空中で散って虹色の花火のように輝き、境内に降り注ぐ。

「霊夢さん! 魔理沙さん! 危ないでしょ!」

伊万里が叫ぶと、二人は一気に神社の縁側に着地する。霊夢は少し息を荒げながら笑い、「危ないわけないのよ。これは弾幕ごっこだから。幻想郷では普通にする遊びだって知らないの?」

「弾幕ごっこ… ゲームでは見たけど、現実にするんですか?」

「当然だよ! 私たちは事件の時は真剣に弾幕を交わすけど、暇な時はごっこで楽しむんだ。伊万里、君も一緒に来ないか?」 魔理沙が手を招くと、伊万里は慌てて頭を振る。

「え? 俺が… 弾幕なんて打てません! 能力は光の花を咲かせる程度だし…」

「そんなことはどうでもいい! 弾幕は『心の形』を表すものだから、君の能力でもきっと美しい弾幕が打てるよ。試してみないか?」霊夢が柔らかく誘う。伊万里は少し考え込んだが、これまで魔理沙や霊夢に助けてもらってばかりだし、自分も何か一緒にできることがあれば…

「… はい! 試してみます! でも… どうやって打つんですか?」

「簡単だよ。心に思ったことを集中して、手の先から放つだけ。私が最初に遅い弾幕を打つから、避けてみてね!」

魔理沙は指先に小さな緑の光弾を浮かべ、ゆっくりと伊万里の方に打ち出す。伊万里は慌てて横に飛び出す——気が散りやすいせいで、体が自然に動いて避けられた。

「おお、避けたじゃないか! 次は君が打ってみな!」

伊万里は深呼吸をして、手の先を前に出す。心に「キラキラした花が散るような弾幕」を思い描く。その瞬間、手の先から真っ白な光が溢れ出し、小さな光の花たちが空中に散っていく——それらがゆっくりと魔理沙の方に舞い落ちていく。

「わっ… これは… 弾幕ですか?」

「もちろんだ! これは私が見た中で最も美しい弾幕の一つだよ! さあ、私も返しちゃうぜ!」魔理沙は指先から黄色い光弾を打ち出すが、それらは光の花に当たると一気に虹色に変わり、境内に散りばめられる。伊万里は目を大きく見開き、心が高鳴る。

「すごい… これ、楽しいです!」

「ね? 言ったでしょ。さあ、霊夢も入れようよ!」霊夢は頷き、手の先から赤い光弾を打ち出す。赤い光弾が空中を描くように飛び、伊万里の光の花と魔理沙の黄色い光が混ざり合って、神社の上空が虹色に輝く。伊万里は気が散ることなく、体を動かしながら光の花を打ち続ける。弾幕のリズムに合わせて心が動き、自分の能力がこんな形で活かせることに驚きと嬉しさを感じる。その時、森の方向から小さな声が聞こえてくる。

「あら、何か楽しいことをしてるのね?」三人が頭を上げると、長い金髪を風になびかせ、傘を持った女性が空から降りてくる——八雲紫だった。

「紫さん! 弾幕ごっこをしてるんです! 俺も一緒になれました!」伊万里が嬉しそうに報告すると、紫は目を細めて笑う。

「ふふん、それは素敵ね。伊万里くんの弾幕、花が散るようで美しいわ。でも… ただ美しいだけじゃ物足りないでしょ? 隙間を使って試してみるかしら?」紫は指先に隙間を開け、そこから小さな青い光弾を打ち出す。光弾は隙間を通り抜けるたびに方向を変え、伊万里の周りをゆっくりと舞う。

「わっ… 方向が変わるんですか! どうやって避ければ…」

慌てながらも、伊万里は弾幕のリズムを感じ取り、体をかわす。そして、心に「隙間に花が咲く」を思い描くと、光の花が紫の隙間の中にも咲き始め、青い光弾が花に包まれて穏やかに散る。

「あら… 隙間の中に花を咲かせるなんて、思いつかなかったわ。伊万里くん、意外と機転が利くのね」紫の称賛に伊万里は恥ずかしそうに笑い、霊夢と魔理沙もにっこりする。神社の上空は、四人の弾幕によって一層美しく輝き続けていた。太陽が西に沈む頃、弾幕ごっこは終わった。伊万里は汗を拭きながら、心から充実感を感じる。外の世界では「集中できない」「変わってる」と言われていた自分だけど、ここではそんな自分の特徴が、弾幕ごっこを楽しむコツになっていたのだ。

「伊万里、明日も一緒に弾幕ごっこしようね! 今度はもっと速い弾幕で試してみよう!」魔理沙が呼びかけると、伊万里は力強く頷く。

「はい! 絶対に参加します!」

夕暮れの光が神社を染め、光の花が境内に散りばめられている。そんな風景の中、伊万里は初めて「自分が幻想郷の一員になれている」と思えた。その時、森の木陰から小さな声が漏れる。

「わー、すごい… 弾幕が花みたいだった!」

「うんうん! 新しい人の弾幕、初めて見たよ!」

三人が頭を向けると、大きな木の葉の陰から三匹の妖精が顔を出していた——金髪のサニーミルク、金髪のルナチャイルド、茶髪のスターサファイアだ。

「あら、妖精たちが見てたのね」霊夢が柔らかく笑うと、三匹は一気に木から飛び降りて境内に舞い込む。サニーミルクが伊万里の前に近づき、目をキラキラ輝かせて問いかける。

「お前は外の世界から来た人だよね! 弾幕が超美しかった! 教えて教えて、どうやって花みたいにしたの?」

「え? 俺? ただ… 心に花を思い描いただけです…」

伊万里が照れて頭を下げると、ルナチャイルドが手を振って叫ぶ。

「そんなの簡単じゃないよ! 私たちは弾幕ごっこをする時、光の玉しか打てないの! 花みたいにはできないんだ!」

「だからだよ! 新しい人に教えてもらおうよ! 一緒に弾幕ごっこしようよ!」

スターサファイアが伊万里の腕を引っ張ると、他の二匹も一緒に頷く。魔理沙は手を腰にかけて笑い、「へえ、妖精たちまで興味津々だな。伊万里、君は人気者になっちゃったよ」

「そうね。妖精たちは普段から新しいことに興味があるの。君の弾幕は彼らにとっても新しい発見だったわ」霊夢の言葉に伊万里は少し安心し、妖精たちに向けて微笑む。

「… そうだったら… 明日、一緒に弾幕ごっこしましょう! 俺も妖精さんたちの弾幕を見て、新しい花の形を考えちゃいます!」

「わー、イェーイ!」三匹は一斉に跳び上がり、空中で小さな光弾を打ち合い始める。サニーとルナの金の光、スターの茶っぽい光が混ざり合って、夕暮れの空に小さな虹を作る。紫は傘を肩に掛けて見守り、口元に微笑みを浮かべる。

「ふふん、幻想郷に新しい人が来ると、こんな風に新しい楽しみ方が生まれるのね。いいわね」太陽が完全に沈み、星が一つ一つ輝き始める頃、妖精たちは森に帰る約束をして飛び去った。伊万里は境内に残った光の花を見つめ、心に明日の約束を刻む。

「霊夢さん、魔理沙さん、紫さん… 今日は本当にありがとうございます。妖精さんたちとも一緒に弾幕ごっこができるなんて…」

「うん、よかったわ。君が楽しんでくれるのが一番重要だから」霊夢が手を置くと、魔理沙は肩を組んで言う。

「明日は私たちも妖精たちも全部集まって、大きな弾幕ごっこをするよ! 伊万里、君の新しい花の弾幕を楽しみにしてるぞ!」星の光が神社を照らし、光の花がそっと輝いている。伊万里は胸の高鳴りを抑えながら、この瞬間を永遠に忘れないようにと思った——外の世界で失った「居場所」は、ここ幻想郷で、こんなに多くの人たちとの絆で満たされていくのだと。妖精たちが飛び去ってから少し経つと、夜空は星でいっぱいになった。伊万里は縁側に座り、光の花が残っている境内を見つめていると、魔理沙がビスケットを持って近づいてくる。

「お、疲れただろ? 少し休もうよ。私が作った星の形のビスケットだよ」

「ありがとうございます! 魔理沙さん、手作りなんですか?」

「当然だ! 魔法で作ったら味が薄くなるから、手作りが一番だ。試してみてごらん」

伊万里がビスケットをかじると、甘くて少しクリーミーな味が口の中に広がる。その時、頭の中に突然イメージが浮かび、手の先から小さな星の形の光が咲き始める。

「わっ… 花じゃなくて星になっちゃいました!」

「へえ、妖精たちのことを思ってるからだろ? 君の弾幕は心の中の思いがすぐに表れるんだね。それはすごい能力だよ」霊夢が茶碗を置き、星の光を見つめる。紫は傘を開いて星を遮らないように少し傾け、

「明日の弾幕ごっこ、妖精たちはきっと大騒ぎするわ。サニーはいつも先に飛び出しちゃって危ないことをするし、ルナは少し臆病だけど意外と機転が利くし、スターはいつも二人についてくるけど自分でも思い切った弾幕を打つ時があるの。君は彼らと一緒になれば、もっと新しい形の弾幕が打てると思うわ」

「そうですか… 俺も妖精さんたちと一緒に、みんなで美しい弾幕を作りたいです」その夜、伊万里は空き部屋でベッドに横になり、明日のことを思いながら眠った。外の世界では眠れない夜が多かったけど、幻想郷の夜は静かで、星の光が安心感を与えてくれる。翌朝、鳥の鳴き声よりも早く、妖精たちの声が神社の外から聞こえてくる。

「伊万里! 起きたの? 早く弾幕ごっこしようよ!」

「サニー、ちょっと待って! 伊万里はまだ眠ってるかもしれないじゃない!」

「でも待てないよ! 今日は新しい弾幕を見たいんだ!」

伊万里は慌てて起き上がり、窓から外を見ると、三匹の妖精が鳥居の上に座って神社を見つめていた。サニーとルナの金髪が朝陽に輝き、スターの茶髪が風になびいている。

「おはようございます! ちょっと待っててください! すぐ準備します!」伊万里が叫ぶと、三匹は一斉に跳び上がって喜んでいる。その時、霊夢と魔理沙も縁側に出てきて、

「早起きだね妖精たち。でもまずは朝ごはんを食べないと、弾幕ごっこはできないわよ」

「えー、待ちきれないけど… わかった! 朝ごはんは早く食べよう!」サニーが飛び降りて縁側に座ると、ルナとスターも続いてくる。朝ごはんはおにぎりと味噌汁、そして魔理沙の作った星のビスケット。みんなで囲んで食べると、境内は笑い声で溢れていた。朝ごはんを食べ終わると、みんなで神社の前の広場に移動した。魔理沙が手を上げて叫ぶ、

「さあ、大きな弾幕ごっこの始まりだ! 伊万里、妖精たちと一緒にチームにしようか? 私と霊夢、紫さんは反対チームだよ!」

「はい! 妖精さんたち、よろしくお願いします!」

「うんうん! 一緒に勝とうね!」ルナが伊万里の肩に止まると、サニーは先に空中に飛び上がり、小さな金の光弾を打ち出す。スターも続いて茶っぽい光弾を打ち、伊万里は心に「花と星が混ざった弾幕」を思い描き、手の先から光を放つ。金、茶、白い光が混ざり合って、空中に大きな花束のような弾幕を作り上げる。反対チームの霊夢が赤い光弾、魔理沙が黄色い光弾、紫が青い光弾を打ち出し、それらが花束の周りを舞って虹色の輪を作る。

「わー、すごい! 伊万里の弾幕と合わせると、こんなに美しくなるんだ!」サニーが喜んで飛び回ると、ルナも勇気を出して光弾を打ち続け、スターは二人の弾幕を支えるように光を放つ。伊万里は気が散ることなく、みんなの弾幕のリズムに合わせて自分の能力を使い続ける——外の世界では「欠点」だった気が散りやすさが、今ではみんなの弾幕の動きを瞬時に感じ取る「強み」になっていた。神社の上空は、五人と三匹の弾幕でいっぱいになり、朝陽の光を反射してまるで宝石箱のように輝いていた。そんな風景の中、伊万里は確かに自分がここに「居場所」を持っていることを感じ、心から笑顔を浮かべた。だが、そんな賑やかな様子を、遠くの山の斜面から静かに観ている者がいた。緑色の長い髪を風になびかせ、白い衣装に緑の帯を締めた風祝——東風谷早苗だ。早苗は手に持つ御幣を少し揺らし、周りを吹く風を感じながら低く呟く。

「最近、博麗神社が賑やかですね… 外の世界から来た新しい人のせいなのかしら。遊びに行ってみますか」唇に微かな笑みを浮かべ、早苗は足元から小さな風を起こして空中に浮かぶ。緑の髪が風に舞い、御幣の鈴がカラカラと柔らかな音を立てる。山から博麗神社へと一気に飛び下りるように移動し、神社の空を静かに回り始める。その時、スターサファイアが頭を上げて叫ぶ。

「あれ? 誰か来てるよ! 緑の髪の人だ!」みんなの視線が一斉に上空に向かうと、早苗は優雅に縁側に着地し、手を合わせて挨拶する。

「博麗神社の皆さん、こんにちは。風祝の東風谷早苗です。遠くから賑やかな様子を見て、つい遊びに来てしまいました」

「早苗! 久しぶりね。洩矢諏訪子さんたちは元気かしら?」霊夢が迎えかけると、早苗は頷く。

「はい、元気です。諏訪子さんは最近、新しいお祭りの計画を考えていますよ。でも… この新しい人は?」早苗の視線が伊万里に向かうと、伊万里は慌てて頭を下げる。

「は… はい! 八方伊万里です! 外の世界から来ました! 今、弾幕ごっこをしています… もしよければ、一緒に参加してください!」

「え? 私も? 弾幕ごっこ、久しぶりですけど…」早苗が少し照れてるような表情を浮かべると、魔理沙が手を招く。

「もちろんだよ! 人が多ければ多いほど楽しいじゃないか! 早苗の弾幕は風を使ったものだろ? 伊万里の花と合わせれば、もっと美しくなるよ!」

「そうですよ! 早苗さん、一緒にしようよ!」サニーミルクが早苗の腕を引っ張ると、他の妖精たちも一緒に頷く。早苗は笑顔になり、小さく頷く。

「わかりました。では、お願いします!」早苗は手の先に風を集め、小さな緑の光弾を浮かべる。それを打ち出すと、光弾は風に乗ってゆっくりと空中を舞い、伊万里の花と星の弾幕に混ざり合う。風に乗った花や星が回り始め、神社の上空に大きな竜巻のような美しい模様を作り上げる。

「わー、すごい! 風が弾幕を運んでるよ!」ルナチャイルドが喜んで飛び回ると、早苗は少し得意げに笑う。

「風は万物をつなぐものですから… このように、皆さんの弾幕を一つにまとめることもできるのです」伊万里は心から感心し、手の先からさらに多くの光の花を放つ。気が散ることはなく、みんなの弾幕のリズムと風の流れを感じ取り、最適なタイミングで花を咲かせる。神社の上空は、今まで以上に輝き、風と花と星が混ざり合って、誰も見たことのないような弾幕の景色になっていた。遠くからでも見えるような美しさに、周りの森の鳥たちまで集まってきて、その風景を見守っていた。早苗は風をやわらげ、伊万里に向けて微笑む。

「伊万里くんの弾幕は、心を和ませてくれるものですね。外の世界から来たとは思えないくらい、幻想郷に溶け込んでいますよ」伊万里は照れて頭を下げるが、胸の中は温かく満たされていた。新しく早苗が加わったことで、弾幕ごっこはさらに楽しくなり、自分の居場所が一層確かなものになったように感じた。

神社の上空は、今まで以上に輝き、風と花と星が混ざり合って、誰も見たことのないような弾幕の景色になっていた。遠くからでも見えるような美しさに、周りの森の鳥たちまで集まってきて、その風景を見守っていた。早苗は風をやわらげ、伊万里に向けて微笑む。

「伊万里くんの弾幕は、心を和ませてくれるものですね。外の世界から来たとは思えないくらい、幻想郷に溶け込んでいますよ」伊万里は照れて頭を下げるが、胸の中は温かく満たされていた。新しく早苗が加わったことで、弾幕ごっこはさらに楽しくなり、自分の居場所が一層確かなものになったように感じた。そして、太陽が空の真ん中あたりまで昇った頃、弾幕ごっこはやっと終わった。みんなは一斉に地面に着地し、汗を拭きながら大きな息を吐く。妖精たちは疲れたように伊万里の肩に止まり、眼を細めて太陽の光を浴びていた。早苗は伊万里の前に一歩近づき、静かに彼を見つめる。その視線は柔らかいのに、何か鋭いものを含んでいて、伊万里は少し緊張する。

「伊万里さんって普通の人間とは違いますね」然の言葉に、周りの空気が一時的に静まる。霊夢も魔理沙も紫も、早苗の言葉に耳を傾けていた。

「なんか、簡単に言い表すと人間っていうよりは… 人間以外の種族の気配を感じます」伊万里は目を大きく見開き、自分の手を見つめる。人間以外の種族… そんなことは考えたこともなかった。外の世界では確かに「変わってる」と言われたけど、それはADHDのせいだと思っていたのに…

「え? そ… そんなこと… 俺は普通の人間ですよ? 外の世界で生まれて… 普通に育ちました…」声が震えてしまう。早苗は手を振って慌てて言う、

「あ、ごめんなさい! 言葉が悪かったです! 嫌なことを言ったわけじゃないんです… ただ、風が運んでくる『気配』が、普通の人間とは少し違うのを感じただけです。何か特別な血筋があるのかもしれないし、何かの契約をしたのかもしれないし…」

「ふふん、早苗の鼻は鋭いわね」紫が傘を軽く振り、伊万里を見つめて微笑む。

「実は私も、最初に君に会った時からそんな気がしていたの。だから『正体はまだ時が来てない』って言ったでしょ?」

伊万里は紫の言葉を思い出す——初めて神社に来た夜、紫が突然消える前に言っていた言葉だ。その時は何のことかわからなかったが、今早苗の言葉を聞いて、少しずつ実感が湧いてくる。

「そ… それでは俺は… 何者なんですか?」

「誰にもわからないのよ。君自身も、自分で探り出さないとね」

霊夢が伊万里の肩に手を置き、柔らかな声で言う。

「でもそんなことは今は関係ないわ。君は君自身だから。ここで弾幕ごっこをして、妖精たちと遊んで、私たちと一緒に住んでいる——それだけで十分じゃない?」

「そうだよ! 正体が何だって、伊万里は伊万里だから! 一緒に道具を作る約束もしたし!」魔理沙が肩を組んで笑うと、妖精たちも一緒に頷く。

「うんうん! 伊万里は伊万里だよ! 花の弾幕を教えてくれる人だよ!」早苗も少し安心したように笑い、「すみません、余計なことを言っちゃいました。でも… もしいつか正体がわかった時は、教えていただけますか? 私も興味深いですし、風の情報で何かわかることがあったら伝えますね」伊万里はみんなの笑顔を見て、心が温かくなる。正体が何かはわからないけど、ここには自分を受け入れてくれる人たちがいる。それだけで、今は何も恐れる必要はない。

「… はい! ありがとうございます! 正体がわかったら絶対に教えます! それまでは… みんなと一緒に、ここで生きていきたいです!」太陽の光が神社を照らし、残っている弾幕の光が一斉に輝き出す。みんなの笑い声が森に響き、伊万里は初めて自分の「未知なる正体」を、怖いだけでなく、少しだけ期待するようになった。

——幻想郷での生活は、これからも新しい発見と絆に満ちていくのだろうと、彼はそう思った。

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