転生したら「ワルプルギスの夜」だった件   作:十二夜

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親愛なる読者諸君!明けましておめでとうございます!

去年に息抜き代わりに見切り発車させた本作ですが、俺の黒歴史ノートと言い張るには少々伸びすぎてしまいました。
かつてない伸び方で嬉しい悲鳴です。

今年はフリーレン二期とまどマギ映画と青ブタ映画を観るまでは死ねません。
マケイン二期とぼざろ二期はまだかな・・・まだだろうな・・・。

それでは今年も拙著をよろしくお願い致します。





ちょ、待てよ(血涙)

 

前にも述べた通り、俺は睡眠を必要としない。

 

それを羨ましいと思うだろうか、でもね、そうでもないんだよ。

確かに人間だった頃は必死こいて夜更かししたものだが、いざ夜更かしし放題になると深刻な問題が発生する。

 

暇だ。

 

超暇だ。

 

娯楽が無さすぎる。

 

夜空の星に想いを馳せるのは最初の20年でもう飽きた。

 

リムルがやってきて娯楽を充実させ始めるのは三百年後。

それまで待てるもんか。ミイラになるわ。

 

現在の時刻は月の位置から見て午後の11時。たぶんね。

 

窓から部屋に差し込む月明りの中をぐるぐると意味も無く歩き回る。

 

当たり前のことだが、都市部ならいざ知らず、基本的にこの世界の人々は日が沈んで月が輝き始めたら寝る。

そして太陽が昇る頃に起きるという、まっこと規則正しい生活を送っている。

それは彼女たちも例外ではなく、俺以外はもう既に全員寝た。

 

と、ここで俺の天才的な頭脳が閃いてしまった。

 

今のうちに、行きたい所へ行けば良いのでは……?

 

しまったな、天才か。

 

もうヴェルドラはいないし。

それに、ヴェルドラもいないし。

大事なことなので二回言ったぞ。

 

よし、そうと決まればさっそく動こう。

行き先は……ドワルゴンにしよう。

なんだかんだあの国が一番リムルと関わっていると思う。

聖地巡礼ってやつだ。

 

しかし、この村の誰かに見つかれば厄介なことになるのは目に見えている。

最悪、全員付いていきますとか言い出しかねない。

特にリュティスとミナとニナ。こいつらは絶対に付いて来る。

俺が白昼堂々と世界巡りに繰り出さない原因だ。

旅行は一人で自由気ままに楽しみたいのさ。

 

使い魔の道化役者を一体、部屋に出しておく。

 

それに多少多めの魔素を分け与えると同時に、俺は完全に妖気と気配を消す。

 

そのアカハナはしばらく部屋の中をキョロキョロと見回していたが、やがて得心がいったのか真っ直ぐベッドに向かうとポムンとダイブして寛ぎ始めた。

なんだコイツ、図々しいやつめ。

 

しかし、これで身代わり兼監視役の完成だ。

 

割と多く渡したから皆こいつの放つ妖気を俺だと勘違いしてくれるだろう。

ついでに彼女たちに何かあればコイツを通じて俺も感知できる。

あとはいつまで誤魔化せるかだけど……一日が限界かなぁ。二日持てば良いなぁ……。

 

俺はそのアカハナに家から出ないよう指示をすると、窓を開けて静かに地面に降り立つ。

 

そして衝撃波が出ないように、重力の膜で自らを覆うと、一気に最高速度で結界を通過した。

 

バレた気配は無い。よし。

 

俺は能力を解除すると、速度を落として音速程度に保つ。

 

何故か分からないがやたらと疲れる。

豚頭魔王(オーク・ディザスター)の攻撃が今になって効いてきたのだろうか。大した奴だ。

 

見渡す限りの樹海、うっすらと靄がかかった大森林の更に向こう。

 

ここからドワルゴンまではおよそ一か月の道のり。

でも、俺なら十分で着く。

 

それじゃあ、行こう。

リムルが最初に訪れた、ドワーフの大国へ。

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

山脈に空いた大洞窟を改造して出来た国家、武装国家ドワルゴン。

 

その大洞窟を塞ぐように設えられた、大門。

その下に、出入り口専用の小さな扉が設置されている。

流石にこんな深夜だからか並ぶ人は居ない。だが入ることは出来るらしく、横の警備隊の詰め所からは明かりが漏れていた。

 

うーん、まずいな。

 

警備、厳重すぎじゃね?

え、戦争でもやってんの?

 

一見、大門の近くには誰もいない。

しかし、大門の更に上からは複数の兵士が眼下に目を光らせており、大門の前に広がる牧草地では複数の兵士が二人一組となって何かを警戒するかのように見回りをしている。

俺は森の中から魔力感知で状況を把握すると、一旦近くの茂みに身を隠す。

 

これは困った。

 

最初は村を出たのと同じ要領で超高速の侵入を考えていたのだが、これほど監視の目が多いとバレる可能性が高い。

 

これは奥の手を使うしかないか。

 

森と牧草地の境界を見回る二人に目を付ける。

彼らは比較的気楽で、お互い雑談に興じながらこちらに近づいて来る。

 

俺が、俺には「自前の能力と自前の防御力」しかないと言ったのを覚えているだろうか。

よく考えれば分かることだが、俺は能力(スキル)や魔法が使えないため、魔素の使いどころが無い。

今まで使っていた炎の槍や重力操作や使い魔の触手などは、いわば俺の生理現象のようなものであるため、魔素を消費しない。

実は、俺の魔素量は発散されないため、ひたすらに蓄えられていく一方なのだ。

 

まぁそんなことは置いといて、だ。

 

自前の能力しか使えないということは、少なくとも()()()()()()は全て備わっているということで。

 

だからこんな事も出来るのさ。

 

その二人が俺の隠れている木のちょうど真ん前を通った時を狙って、俺は木の陰から彼らの前に姿を現す。

 

二人が突然のことに驚いて動けないその一瞬を突いて、俺は前にいた一人に近づくと、その首に腕を回して彼にキスをした。

途端にその男の目から光が消え、身体の力が抜けて腕がだらりと垂れ下がる。

それを横目に、俺は未だ反応できずに呆然としているもう一人の男にも同じように近づいてキスをする。

 

「魔女の口づけ」。

 

二人の首元には虹色の魔法陣と歯車を模った模様が現れていた。

 

おっと、ゲイだなんて言ってくれるなよ。俺だって嫌なんだからな。だから奥の手だって言ったんだ。

 

俺は二人にその場で三回回れと心の中で命じる。

すると命令通りに二人はその場でくるくる回り出した。

 

よし、これで入れる。

 

バレないように入るのが無理なら、堂々と入ればいい。

正規の兵士が二人もこっち側にいるのだからどうとでもなる。

そう思って作戦を練ろうとした時だった。

 

二人がおもむろに腰の剣を引き抜く。

 

そしてそれを自らの頸に押し当てると、止める間も無く一気に切り落とした。

 

血を吹き出しながら胴体が倒れ、支えを失った生首が二つ、足元に転がってくる。

 

………あれぇ~?

 

ちょっと待ってくれ、話が違う。

アニメを見る限り、てっきり魔女が死ねと命じたから「魔女の口づけ」を受けた人間が自殺をするものだとばかり思っていた。

 

まさかこの能力、自害がデフォなのか?

 

対象が自害をするまでの間しか思い通りに操れないってことか?

 

嘘だろ。ピーキーすぎるだろ。

万事休すだぞ、おい。

 

取り敢えず死体を浮かせて、すぐにはバレないように森の奥に転がしておく。

 

あれだな、初めて人を殺したわけだが思っていたより動揺は少ないな。

心は凪のように平穏だ。

強いて言うならば、可哀そうだと思ったくらいか。

 

まぁなんだ、美人とキスできたと思って諦めてくれ。

 

しかし、これは本格的に打つ手が無いぞ。

 

一か八か、最高速度での強行突破を狙ってみるか……?

 

そう覚悟を決めた時だった。

 

いきなり左右から元気な声が響いてきた。

 

「お困りか、なのです!」

「こんな時は我らにお任せを、です!」

 

両側の茂みからニョキッとミナとニナが生える。

 

うわぁ!どっから出てきたんだこいつら!

 

え、なんでこんなところにいるの?

え、どうやって付いてきたの?

村からここまでは本来一か月かかる距離だよ?

 

「えっへん! 見くびってもらっちゃあ困るのです! お子様の夜は長いのです、ワル様が抜け出したのもお見通しなのです!」

「たまたまそれを見ていた私とミナは認識阻害の魔法道具(マジックアイテム)で近づいて一緒に飛んだ、です!」

「「速かった!!」」

 

俺にしがみついてたってことかよ!

道理でなんか重くて疲れると思ったんだよ。

 

ミナとニナが懐から宝石のような物と台座型の魔法道具(マジックアイテム)を取り出す。

そしてその宝石を嵌めると、途端に二人の姿が消え去った。

魔力感知でも一切把握できない。

 

なるほど、だから気づかなかったのか。

俺の第六感とも呼ぶべき「人間の気配察知」は、前も言ったようにぼんやりとしか分からない。

特に、人が多数集まっている場所では一つのぼんやりとした気配でしか察知できないので、二人の気配も他の気配に紛れて感じ取れなかったのだろう。

 

違う、問題はそこじゃないんだよ。

寝ろよ。

なんで起きてるんだよ。

 

『夜更かししないで早く寝なさい』

「「いや!」」

 

くそが。

クソガキめ。

 

というか、ずっと俺に引っ付いてたってことは自殺現場も目撃したんじゃ……。

俺の心配はよそに、二人は気にした風もなく元気に話し始める。

 

「バレないようにドワルゴンに入りたいんですよね?この魔法道具(マジックアイテム)を貸してあげます!」

「自分で言うのもなんですけどね、かなり凄いやつなんですよ! 私とミナが20年かけて創った、です!」

確かに透明化出来るならありがたい。

これでほとんどの問題は解決できる。

 

でも、中に入るには扉を開けなければならない。ひとりでに扉が開くところを見られるのは不味いだろう。

そう思っていると、ニナが茂みから身を乗り出して牧草地の方へ向けて走っていく。

 

そしてこちらを振り返ると楽しそうに笑顔で言った。

 

「ニナが騒ぎを起こしてあいつらの気を引きます! そのうちに入っちゃってください! ニナは後からコッソリ行く、です!」

 

そう言い残すとテクテク向こうに走り去っていく。

 

しばらくすると遠くの方から爆発音が響き、兵士たちは騒然となってそちらに向かっていく。

大分派手にやったな。

ありがたくこの隙に侵入させてもらおう。

 

魔法道具(マジックアイテム)で透明になった俺とミナは真っ直ぐ大門に向かうと、誰も見てないのを確認して警備隊の詰め所の横にある小さな扉をそっと開けて中に入った。

 

当たり前だけどミナは付いて来るのね。

はぁ~あ、俺の優雅な一人旅が。

でも二人とも役に立ってくれたし、たまには良いか。

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

「という訳で、ワル様は一人で楽しんできてくださいなのです」

「私たちは適当な宿屋に泊っておくので、帰る際は呼んでくれ、です」

 

あの後、一通り暴れまわったニナは、頃合いを見計らってコッソリとバレないように潜り込み、俺たちは合流した。

 

かと思えば、二人は俺を見上げながら笑って離れる。

 

「ワル様のことはお見通しなのです」

「一人でこっそり抜け出した理由を察せないほど、鈍感じゃない、です!」

 

俺としては二人と一緒に回るのも悪くないと考えていたんだが。

しかし、一人になれるのならありがたくそうさせてもらおう。

とは言え、流石にこのままでは二人に悪いので、俺は二人に見えないように小袋に詰まった金貨を創りだす。

 

対象を詳しく思い浮かばなければ発動しないこの能力だが、詳しく思い浮かべさえすれば金貨さえ生み出すことが出来るのは既に実験済みだ。

これは自重しなければ不味い。秘密にしなければ金融が崩壊してしまう。

 

俺はさも元々持っていたかのように二人にそれを差し出すと、しっかり礼を言った。

 

『ありがとうございました。お二人も楽しんできてくださいね』

「「おー!!」」

 

二人は袋の中の金貨に目を輝かせると、すぐにどこかへ走り去っていった。

 

居場所については、魔力感知で把握できるから問題ないだろう。

 

俺は改めて街を見渡す。

 

流石はドワルゴン、大国なだけあって発展度合いが段違いだ。

 

街の至る所で明かりがつき、道の両側には街路灯まで灯っている。

人は少ないが、確かな熱気を感じた。

 

所々に露店が立ち並び、冷やかす人もいれば店主と値段交渉をする人もいる。

道の端にある店では、様々な人が思い思いに酒の器を傾けていた。

 

良いなぁ、これ。

まさに異世界って感じだ。

 

誰もが楽しそうに笑っており、その顔はガゼル王の賢王ぶりを物語っている。

 

更に、幾多の種族が集まる国だということも幸いした。

 

俺の姿が珍しいのだろう、先ほどから明らかに注目されているが、みな一瞥するだけで絡んでは来ない。

俺の姿は確かに珍しいだろう。

貴族のような出で立ちをした長身の女が、虹色に発光する魔法陣を背負って、目を隠すほどに深く三角帽を被っているのだから。

目、無いけど。

 

これは、絡まれることを覚悟していた俺には嬉しい誤算と言える。

面倒ごとはなるべく少ないほうが良いのだよ。

 

そうしてブラブラと散策していると、お目当てのお店を見つけた。

 

紳士御用達の店、『夜の蝶』。

 

ここは外せないでしょ!

 

リムルが散々絶賛していたエルフ、いやエロフのお姉さん。

 

前々から気になっていたのだ。

この世界に来て真っ先に思い浮かんだ店でもある。

 

さぁ、見せてもらおうか!

異世界のエロフとやらを!

 

俺はエロにはうるさい漢だぜ?

 

わたし、気になります!

 

そうして意気揚々と店のドアをくぐろうとした時だった。

 

「「「ありがとうございましたー!!」」」

 

そんな声に送られて一人の人物がホクホク顔で店から出てくる。

 

そしてその人物は、今まさに店に入ろうとしていた俺とバッチリ目が合ってしまった。

目、無いけど。

 

「は?……なん…だと……」

 

吃驚仰天、なんとガゼル・ドワルゴその人である。

 

店のドアが閉まる音を背後に、俺もガゼルも動かない。

 

この反応は俺の正体を知っているな。

大方、暗部から俺の姿を聞いたのだろう。

あと、おそらくは俺の魔法陣を知っているだろうし。

 

しばらくポカンとしていたが、すぐにガゼルは表情を切り替え、器用に目もと以外の顔の筋肉を使ってにこやかに笑って言った。

 

「ふむ、『舞台装置の魔女』殿とお見受けする。余はガゼル・ドワルゴ。こんな所での立ち話では都合が悪いだろう、済まないが場所を変えても良いかね?」

 

有無を言わせぬ威圧で問いかけてくる。

 

本気と書いてマジと読む、そんな顔をしていた。

 

残念ながら、どうやら俺は『夜の蝶』には行けないようだ。

 

あぁ、楽園が………。

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

ガゼルだって若い頃は遊んでたって良いじゃない。

おっと、どうして主人公がドワルゴンの位置を知っていたのかというツッコミはナシだ。


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