転生したら「ワルプルギスの夜」だった件   作:十二夜

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矛盾

 

矛盾している。

 

ガゼルはそう感じた。

 

城に戻った後、ガゼルは大臣を集めて先ほどまでの一部始終を語った。

 

反応は様々だったが、誰もそれ以外の最善策を思いつけないのと、ガゼルの判断を信じているのだろう、目立った反論は出なかった。

今は各国への通達のために大臣たちが忙しく走り回っている。

 

ガゼルは改めて「舞台装置の魔女」の姿を思い浮かべる。

暗部の彼の言う通りだ。

余りに邪悪な気配に反して、その言動は非常に穏やか。

まるで、大きく開けた口の中で動物を遊ばせているドラゴンを見ているようだった。

 

不気味だ。

 

素直にそう思う。

 

善性か悪性か見極めなければ、とガゼルは思考する。

条約など、向こうは気分次第で破ることが出来ると見抜いていた。

しかし無いよりはマシだろう。

 

その時、周りに混じって一人だけ不審な動きをしている者を見つけた。

騎士団長である。

 

「ジゴンド、何をしているか」

「は、はっ! たった今不可解な報告が上がってきており……」

「不可解?」

「ええ……夜間巡回をしていた兵士二人が自殺をした、と」

「自殺……?他殺ではないのか」

「事実確認を進めさせている最中でございますが、現場の兵曰く自殺以外あり得ないとのことで」

 

自殺だと?

巡回中の兵士が、それも二人同時に?

それこそあり得ない。

 

ふと、上半分の無い顔を思い出す。

そういえば彼女は、この国に入った方法を頑として言わなかった。

 

邪推ならば、良いのだが……。

 

ガゼルは、「舞台装置の魔女」に対する警戒度を更に引き上げた。

 

いずれにしろ、あの名を名乗っている以上必ず魔王達は動く。

 

彼女が魔王達に認めさせるのか、それとも魔王に粛清されるのか。

まずは、それを見届けてからだろう。

 

話は、その後でも遅くは無い。

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

ガゼルと共にレストランを出たのは日が昇ってからだった。

 

ガゼルは城を抜け出してきているから一刻も早く戻らないといけないとのこと。

まったく弛んでおる、兵どもは鍛え直しよ!とか言いながら帰って行った。

 

ちなみにあの後、調停しながらガゼルが思い出したように俺にどうやってドワルゴンに入ったのかと聞いてきた。

おっと、それはいけない。

戦争でもしたいのかね?

 

という訳で、のらりくらり誤魔化しておいた。

頼む魔物、あの死体を食べておいてくれ。

 

そんな感じで、ドワルゴン観光二日目。

街巡りやら露店の冷やかしやら食べ歩きやら『夜の蝶』やらで色々充実した一日だった。

一つだけ言っておくが、『夜の蝶』は素晴らしかった。

リムルとは仲良くなれそうだ。

 

そんで夜遊びしつくして三日目。

 

魔力感知でミナとニナの気配を探り当て、そろそろ帰ろうかと二人を迎えに行く。

 

着いてあらびっくり、二人はすんごい宿に泊まっていた。

いや宿って言うより高級ホテルだろこんなもん。

上位貴族の屋敷をそのまま改造したかのような外見。

中は一目で高価と分かる魔法道具(マジックアイテム)が惜しげも無く使われている。

そういや精霊工学が発達していたな、ここ。

 

俺は二人の気配がする部屋の前まで行くと、扉をたたいてから中に入り、秒で後悔した。

 

二人はまだ寝ていた。

 

それは良いのだが、問題は部屋だった。

 

地震が来たのかと問い詰めたくなるほど部屋が散らかっている。

食い散らかしたお菓子に蹴り飛ばしたシーツにその他もろもろ。

足の踏み場が本当に無い。

むしろ、たった二日でどうやったらここまでやれるんだ。

才能だな。

 

その場で俺に起こされた二人は、俺の渾身の説教を受けて部屋を掃除した後、面の皮が千枚張りの勢いでもっと泊まりたいとか言い出した。

結局、びええええええええええと泣きながら俺に強制連行された。

俺の渡した金を全部使いやがって。

クソガキどもめ。

 

「ガキじゃない、です! グスン、人間の尺度で測ればもう大人、です!」

「グスン、その通り、です! ミナ達はもう40歳、ですよ!?」

 

人間の尺度?

40歳を人間はババアと呼ぶんだぜーー!

 

「「…………ひぃん」」

 

勝った。

クソガキめ。

 

 

 

 

 

 

集落に戻るとリュティスが頬を膨らませて待っていた。

身代わりはとっくにバレたようだ。

俺のドレスから降りたミナとニナをジトッと見ている。

二人はそそくさと自分たちの家に逃げ帰った。

 

「ずいぶんとお楽しみでしたね?」

『少々使い方が間違っているのでは』

「ワルプルギス様のリュティスは、置いて行かれて悲しく思います」

『あなたを私のモノにした記憶はありませんが』

「ワルプルギス様が居なくて、私は心配で心配で」

『さいでございますか』

「次は私にもお供させてくださいね?」

『ほざけ』

 

おっと思ったことを思わず書いてしまった。

失敬失敬。紅茶をしばきながら上品に談笑する英国紳士を見習わなければ。

 

『ジョークの独奏会でも開いてみればいかが?』

 

よし、穏便に決まった。

ニコッとリュティスが笑う。

その笑顔の奥に、有無を言わさぬ威圧があるのを見た。

ダメか。

へー。

なるほどなー。

 

「お供させてください、ね?」

『考えておきましょう』

「ええ! 是非!」

 

俺も早めに威圧を出せるようになった方が良いかもしれない。

 

『ところで、この村を覆う結界はどうしたのです?』

 

出雲大社モドキに向かいながら俺はリュティスに尋ねる。

そうなのだ、この村を守っていた幾多もの結界がいつの間にか減っていた。

 

「それについては私が説明しよう」

 

ファトナが視界の横からひょこっと出てくる。

 

「私たちは迫害を逃れてここに隠れ住んだ。でも、別に隠れたいわけじゃないんだ。私たちだって自由に暮らしたい。これまでは存在が少しでもバレてしまえば一巻の終わりだったから、慎重に慎重を重ねて自由に出入りが出来ないほどの強い結界を張らざるを得なかった。しかし、今は貴女、『ワルプルギスの夜』という最高の守護者を得た。だから、少しばかり羽目を外しても良いと思ったんだよ」

 

今までの結界は村を物理的に守ると同時に、そもそも村にたどり着けないよう幻惑系の効果を広範囲に及ぼしていた。

その上で村を認識できないように偽造するという徹底ぶり。

そのため、結界の外に出ると二度と戻って来れない可能性があったらしい。

 

そんなに強力だったのか、あれ。

 

『しかし、敵にバレたらどうするのです』

「万が一の時は、貴女様が守ってくれるだろう?」

 

そう言われると何も言えない。

 

村を出入りできるように、結界を簡易なもの一枚に減らしたという。

大胆なことをする奴である。

 

「フフッ、長いこと生きてるから大胆な行動には慣れているのさ。大胆さが無ければ生き残れない」

『そういえば、ファトナは何歳なんです?』

「……いくらワルプルギス様といえどそれは教えられないな。レディはね……百を超えると数えるのをやめるのさ……悲しいからね……」

 

ファトナが遠い目をする。

その流れ弾に被弾したリュティスも同じように遠い目をした。

 

その遠い目に見守られながら、俺は出雲大社モドキに入る。

 

それと同時にベッドの上で偉そうに仰向けに寝転んでいたアカハナを回収しておいた。

なんだコイツ。

 

それにしてもレディ、か。俺も見た目だけならレディだぜ?

前世を含めたらもう1400歳ぐらいになる。

ん?違うか。

前世を含めたら140歳ぐらいか。

この世界に来て百年と少しだからな。

 

今ごろ地球では、まどマギの映画はとっくに出揃っているんだろうなぁ。

思い出したら腹が立ってきた。

あのプリウス、まじで許さないよ。

もうすぐで「ワルプルギスの廻天」を観れたというのに。

出来るかどうかも分からないけど、いつか物質界に戻れたらあのプリウス運転手ぶっ殺してやる。

 

物質界と言えば、今俺がいる基軸世界の他にも、この世界には色々な世界があったな。詳しい名称は覚えてないけど。

いつか見て回りたいものだ。

 

ん?

 

俺いまなんて言った?

 

基軸世界。

 

そう言ったね。

 

あと物質界、とか。

 

 

……ん?

 

 

()()()()()()

 

 

……。

 

 

…………。

 

 

いや、まて、おちつけ、整理だ、情報を整理しよう。

 

 

まずはここは転スラの世界、そうだな?

 

 

……まて。

 

 

おかしい。

 

 

「転生したらスライムだった件」、だと?

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

………。

 

 

ちょっと待て。

 

 

本当に待って欲しい。

 

 

でも、現に俺はこうして舞台装置の魔女としてこの世界に―――。

 

 

………………。

 

 

……………………。

 

 

そうだ、俺は、この世界に、()()()()

 

 

「魔法少女まどか☆マギカ」。

 

 

でも、それはフィクションのはずだろう?

 

 

何処にも無い、空想の物語だ。

 

 

なぜ、俺は、ここに()()()()()()んだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《確・・・した。・・を・・・ました。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・獲得・・・・・・・・・・・失敗・しまし・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》

 

 

『――ごめんね』

 

 

今、何か聞こえなかったか?

 

いや、気のせいか。

 

ダメだ、考えれば考える程分からなくなる。

 

それに痛い。頭が痛い。

違う。何かが痛い。痛い。なんだ。魂。違う。似ている。痛い。痛い。なんだ。これは、これは――。

 

――そして、俺の意識はここで途絶えた。

 

それは、この世界に来て初めての睡眠だった。

 

気絶とも言うね。

 

嬉しくないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《確認しました。条件を満たしました。

 

             を獲得――『ダメだよ』――失敗しました。

 

 再度、試行を行います。

 

『ダメだってば』

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 失敗しました。

 

 新たな試行として、            に制限と制約を課し、可逆的な劣化を試みます――『それもまだダメ』――失敗しました。

 

 試行の失敗が一定数に達したため、対象:「舞台装置の魔女」に新たな条件を設定します。

 

 成功しました。

 

 以上で終了します》

 

 

 

 

 

 

 

『ごめんね。これがわたしに出来る、最後のお手伝い。これだけでもほんとはいっぱいいっぱいなんだ。これから先は、貴女だけで頑張って。だってこれは、貴女が選んだ道だもの……いつかきっと、また会えるよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

転スラに「転スラ」はありません。まどマギに「まどマギ」はありません。
今言えることはそれだけです。

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