転生したら「ワルプルギスの夜」だった件   作:十二夜

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お帰りください、ヴェルドラさん

 

結論から申し上げましょう。

 

勝った☆

 

誰よりも俺が一番驚いている。だってヴェルドラだよ?あのヴェルドラだよ?勝てるわけないじゃん。

 

死を覚悟して受けた、というより受けざるを得なかったヴェルドラの一撃。

その鉤爪に切り裂かれるかと思いきや、まさかのまさか、直撃しても無傷な上に、むしろヴェルドラの爪が欠けるとは思いもしなかった。

その時のヴェルドラの顔といったら。

 

「ナニィィィィッ!?」

 

なんと嬉しいことに、全ての能力がこの世界に合わせて底上げされているようなのだ。

たぶん。

つまり、この世界基準の「舞台装置の魔女」になっている。

たぶん。

 

最高だ。

 

『ワルプルギスの夜』が恐れられる所以は、その使い魔の強さでも本体の戦闘能力でも無く、ただただ恐ろしいまでに硬い、というその一点にある。

こちらが何をしても傷一つ付けられないのに、向こうは即死級の攻撃を絶え間なく浴びせてくるという()()の悪さにある。

それらがこの転スラ世界でも発揮できるのなら、あるいは。

 

「ウフフフ!アハハハハハハハハハハハ!!」

「ほ、ほほぅ! まさかこんな所で貴様のような強者と出会えるとは思いもよらなんだ! クアハハハハ!! 心ゆくまで戦おうぞ!!」

 

ヴェルドラの叫びと共にその身体に秘められた魔素が解放され、文字通りの荒れ狂う暴風と化す。

 

そこからはもう死に物狂いで抵抗した。

使い魔も全部放ってとにかく雨あられとヴェルドラに攻撃を浴びせかけた。

周囲の重力や摩擦の全てが秩序を失い、巨大な竜巻に巻き上げられたかのように眼下の森が根こそぎ宙に舞う。

それらを一塊に押し固めてヴェルドラにぶつける。

 

対してヴェルドラも「死を呼ぶ風」や「黒き稲妻」で対抗するが、これが自分でも驚くほど痛くも痒くも無い。

ヴェルドラの攻撃が、防がれるのならまだしも、直撃した上で効かないのは明らかにおかしいのだ。

いくらリムルと出会う前だからって、世界最強の一体であるヴェルドラの攻撃がことごとくダメージを与えられないなんて事はあってはならないはずだ。

はっきり言って異常。

だが、実際に俺はまだ生きている。

 

もはやヴェルドラが生み出したのか、自分が生み出したのかも分からない嵐の中で俺たちは戦う。

 

雷嵐咆哮(サンダーストーム)!!!」

 

ヴェルドラの口から破滅のエネルギーが放たれる。

圧倒的な破壊力を秘めたその一撃は、狙い違わず俺の胴体に直撃した。

 

「ギィアアアァァアアァアアアアァァァアアア!!!!」

 

ここにきて俺は初めてのダメージを負った。

ドレスが破け、小さくない傷が歯車に刻まれる。

ただ、裏を返せばたったそれだけだった。ヴェルドラのブレスに直撃して、たったその程度。

 

「ヌウウウウッ!?貴様、さすがに硬すぎやしないか!?」

 

戦闘が伸びるにつれて、状況は明らかに俺の有利に傾いている。

俺の放った黒い触手や炎の槍、絶えずぶつけている木や巨岩は少しずつ、しかし確実にヴェルドラの体力を削っていく。

対して、ヴェルドラの攻撃はこちらにほとんどダメージを与えることが出来ていない。

 

ヴェルドラって確か「物理攻撃無効」だったような?

どうして俺はヴェルドラにダメージを与えられているのだろう?

この辺りも要検討か。

 

戦闘はさらに激しさを増していく。

 

どれくらい戦ったのだろうか、周囲一帯が徹底的に破壊され、生い茂っていた森林が見渡す限りの岩だらけの更地になった頃、ようやくヴェルドラは捨て台詞を吐いて帰って行った。

 

「きょ、今日はこのぐらいにしておいてやる!この程度で我に勝ったなどと思い上がるなよ!!」

 

そう言ってバッサバッサと瞬く間に地平線の向こうに消えていった。

 

よし。

 

勝った☆

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

そうは言っても流石に肝が冷えた。あとめっちゃ疲れた。

 

俺が居た洞窟はかなり高い山の斜面にあったので何とか崩落を免れたらしい。

俺は再び洞窟の中に避難していた。俺の周りでは使い魔たちがせっせと戦いで負った俺の傷を修復してくれていた。愛着わきそう。

兎にも角にもこれからのことを考えよう。

 

まずは、ここが「転生したらスライムだった件」の世界であること。

これはさっきも言ったように非常にまずい。

やがてこの世界では大戦争が起こる。これに巻き込まれれば、まず命は無いだろう。

 

いくらヴェルドラを退けたからって、俺にはユニークスキルも無ければ究極能力(アルティメットスキル)も無い。

それどころか、ただのスキル一つも持っていない。

 

これはひどい。

せめて「大賢者」みたいなスキルが一つでもあれば大分話が変わってくるんだが、無いものねだりをしても仕方ない。

 

この世界の上澄みは当たり前のように「物理攻撃無効」やら「魔法攻撃無効」やら、挙句の果てには「時間停止」「空間操作」などを引っ提げているのだ。そんな相手にスキルなしでどう立ち向かえと。

 

俺だって死にたくないんだ。

目を付けられないように平穏に生きるか、リムルたちの戦いに巻き込まれても生きていけるだけの力を付けるか。

俺としては平穏に生きたい。この世界をこの目で見て回りたい。

 

次に今の状況。

ヴェルドラは俺の気配を捉えて来たと言っていた。

つまり、今の俺は気配だかなんだかを常時放出している状態なのだろう。

それに、こんな巨体では気配が無くとも目立ちすぎる。

このままでは無駄に目立ってしまって、平穏な暮らしや、世界を見て回るなど夢のまた夢だ。

 

だから、この巨大な姿ではダメだ。せめて人と同じぐらいのサイズにならなければさっきみたいにまた目を付けられる。

まぁ、もう既にヴェルドラには目を付けられているかもしれないが。そもそも気配を消さなければ人化しても意味ないと思うし。

 

これでひとまずの目標は定まった。

 

まずは、気配を消す術と人化が出来るようにならなければならない。

その後はいろいろな国を見て回ろうか。ヴェルドラの攻撃を防げるぐらいだし、大抵の危険はどうにかできるだろう。原作開始までは少なくともあと数百年の猶予はある。

 

よし。

 

そう決めた俺はさっそく試行錯誤を始めるのだった。

 

 

 

今もワタクシの頭の中で響き続けている、たった一つの欲望をどうにか振り払うように。

 

運命も不幸もぜえんぶ。

ただ、そおいう脚本を演じただけ。

そおいう事にするの。

デショ?

 

ウフフ

 

 




お読みいただきありがとうございます。
誤字脱字などありましたら、ご報告お待ちしています。


ちなみにヴェルドラが大人しく帰った理由としては、あれ以上戦うと姉たちが飛んできてぶっ殺されるからです。
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