転生したら「ワルプルギスの夜」だった件   作:十二夜

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明日の行方はどっちだ

この世界に来てからかなりの時間が流れた。

具体的には百年ぐらい経ったらしい。

ずっと洞窟に引きこもってたので時間感覚無いんだよなぁ。

 

じゃあどうして百年経ったと知っているかって?

 

あれからちょくちょく俺を襲いに来るヴェルドラが教えてくれたからサ!!

 

「クアハハハハハハ!今度こそは決着をつけてやる!」

「アハハハハハハハハハハハ!!!」

「フハハハハハ!!この前のようにいくと思うなよ!!」

「イヒヒヒヒヒヒィヒヒヒヒ!!!」

「ファーーハハハハハハ!!我の『破滅の嵐』を食らえぃ!!」

「ア、アハハハ……」

「ワハハハハハハハ!!!貴様と出会ってからそろそろ百年ぐらいだな!我を相手に勝ち越すその力に敬意を示そう!だが!最後に勝つのは我ェ!!!!」

「ウフフフ……………ハ????」

 

こんな感じで百年経ったのを知りました。

 

もう本当に勘弁してほしい。ヴェルドラのせいでロクに練習も出来なかった。

辛うじて気配を消すことは出来るようになったが、人化は未だにきっかけさえ掴めていない。

一年に一回は必ず来るんだよ、アイツ。そのせいで洞窟の周囲は完全に不毛の大地と化し、あらゆる生き物が寄り付かない死の領域になってしまった。未だにヴェルドラ以外のこの世界の生き物とは出会っていない。

 

ていうか崩落していない洞窟凄いな。よく耐えたな。

 

この洞窟だが、いざ腰を落ち着けて住んでみるとなかなか居心地が良い。

暗いのも好みだし、なによりこの洞窟にいる間は誰も襲って来ない一人の時間を楽しめる。

こんな巨体で外をうろつくわけにはいかないし、外に出たとしても襲われるのだ。

主にヴェルドラとか暴風竜とか邪竜とかに。

 

ちなみに意思疎通を何度か試みたが、俺の口からは笑い声しか出なかった。

「念話」? 出来るわけないじゃんそんなの。

 

気配を消すことについてだが、これは一方的に話しまくっているヴェルドラから情報を得た。

 

どうやら俺は膨大な量の魔素を常時放出しているらしいのだ。確か「妖気」だったか?まどマギの世界に沿って言えば「魔力」とでも言おうか。そんなものを垂れ流しているせいで、はるか遠くからでも俺の存在を捕捉できるんだと。

 

まず、この魔素を認識するのに五十年ぐらいかかった。

今まで魔素もクソも無い世界で生きていたため、いきなり新しい概念を感じ取れとか無理な話だ。

そして魔素を感じ取れるようになると、今度はそれを制御しなければならない。これに五十年。

ようやく身体からあふれ出る妖気を抑えることが出来るようになったのはつい最近のことだ。

 

これに伴って、「魔力感知」が出来るようになった。でも、なぜかスキルを獲得したって言う世界の声は響かなかった。というかこの世界に来てからまだ一度も聞いていない。

もしかして俺の「魔力感知」は、スキルとはまた違うのだろうか。

なんせ、その範囲が広大すぎる。

視覚の延長としてとても優秀で、数十、いや、下手したら数百㎞先でも意識を向ければ感じ取ることが出来る。

確か一般的な「魔力感知」って数百mだよな。「舞台装置の魔女」すげぇ。

 

ついでに、俺もとい「舞台装置の魔女」が異様に強い理由も判明した。

 

まどマギの世界では、魔力というのはどこにでもあるものじゃない。

魔法少女ならば、その願いとソウルジェムが。魔女ならば、その悲嘆とグリーフシードが。

それぞれが体内に魔力を生み出し、それを使用する。逆に言えば、それ以外に魔力は存在しない。

 

それに対してこの世界の人々は、魔法と共に生きている。

魔法が当たり前の世界で、至る所に魔素が満ち満ちている。

 

『ワルプルギスの夜』こと「舞台装置の魔女」は、魔法が無く魔力も無い世界、自らが生み出すしか無い世界ですら、無類の強さを誇った。

それがこの世界に、魔素も魔法も溢れんばかりに存在するこの世界に来たらどうなるのか。

その答えが、今の俺の強さなんだと思う。

 

という訳で、俺もただ黙ってヴェルドラにやられていたわけではない。

何ができて、どこまでできるのか。この百年、ヴェルドラと戦うついでに検証していた。

 

まず、使い魔に分裂する黒い触手。

コイツはなかなか便利だ。

攻撃にも使えるのはもちろん、ヴェルドラを十数秒拘束するほどの強度も併せ持っている。

これには流石に驚いた。この世界ですらヴェルドラを拘束できる存在など稀だというのに。

 

あと新しい防御方法も編み出した。

そう言うと何か仰々しく聞こえるかもしれないが、なんてことはない、使い魔たちを集めて盾代わりにするのである。

肉・壁・SA♡

 

この使い魔たちだが、どうやら軽い自我のようなものを持っているらしい。

 

この世界に来て少し経った時のことだ。

ヴェルドラが鬱陶しいのと、戦闘や慣れない環境へのストレスやらで、俺は一時期だいぶ参っていた。

精神状態が重要なのは魔法少女だけでは無かったらしい。俺は日に日に弱っていき、戦ってもいないのにひとりでにドレスが破け、歯車が欠けたりしていた。

 

そんな時だ。呼んでもいないのに使い魔たちが勝手に出てきて俺の傷を修復し始めた。

中には俺を元気づけようとしているのか、軽い劇のようなものまで始めた使い魔もいた。

道化役者はいつにもまして気合を入れて踏まれていたな。

だから、俺はこいつらが大好きだ。

 

まぁ、それはそれとして肉壁にはするんだけどネ♡

 

この肉壁、見かけによらずかなり硬い。

ヴェルドラが放つ「雷嵐咆哮(サンダーストーム)」は当たればかなり痛い。痛いのは嫌なので、試しに「雷嵐咆哮(サンダーストーム)」の軌道上に使い魔を圧し固めて盾にしたことがある。

するとあらびっくり、なんとヴェルドラのブレスを完璧に防ぎ切ったのだ。

それからというもの、この肉壁は重宝させてもらっている。

 

ちなみに使い魔は無限に生み出せるらしい。

最大で何体の使い魔を生み出せるのかと気になって一度だけ、ヴェルドラと戦うときにひたすら使い魔を出し続けたことがある。

最初はヴェルドラも気に留めずに蹴散らしていたが、およそ万を超えたところでおや、と思い、最終的には空中を埋め尽くすほどの数になった。

 

これはやばい、すごくやばい。「舞台装置の魔女」の使い魔はとても強力だ。一体一体が並みの魔女に届くほどの力を持っている。

この圧倒的な物量の前には、流石のヴェルドラも退散していた。

 

最後に炎の槍だが、これはかなり応用度が高かった。

自由自在に形を変えることができるし、自らに炎を纏わせることができる。

黒い触手でヴェルドラを拘束してから、火だるまの状態で最高速度で体当たりする、というのが一時期の鉄板攻撃方法になっていた。

 

つまり何が言いたいのかというと。

俺はかなり強い。

未だヴェルドラに負けたことは無い。百年間勝ち越している。

とはいってもこの後、本編でヴェルドラはリムルに超強化されるから調子に乗ってはいけない。

それでも、これがどれだけ凄いことなのか分かってもらえると思う。

 

あとは人化が出来るようになればなぁ……。

 

ヴェルドラ早く封印されねぇかな……。

 

「クアーーハッハッハッ!!我が来たぞ!!」

 

うわ来たよ。

一度洞窟に引きこもったまま無視したことあるけど、その時は洞窟を壊そうとしてきたんだよなコイツ。

 

あーあ、死ね。

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

祝!ヴェルドラ封印!

 

ついでに祝!人化達成!

 

どうしてヴェルドラが封印されたことを知っているかというと、ヴェルドラが放つ膨大な魔素は常に全世界をうっすらと覆っていたから。

それがこの前からぱったりと消え去った。いや、ある方角からは僅かに感じるので、恐らくそこが封印の洞窟なのだろうが、いずれにしてもこれは、ヴェルドラが封印されたことを意味する。

いやぁ、長かったね。厳しい戦いの日々だった。

これでようやっと自由に動けるってもんよ。

 

人化についてだが、これは竜種の「万能変化」のプロセスと魔法少女の変身のイメージを参考にした。

竜種は「万能変化」によって人型に変化することができ、人型のほうがエネルギー効率は圧倒的に良い。

俺はその「エネルギー効率を良くする」という点に着目して、どうにかできないかと考えていた。

 

そんな考えが続いたある日、ヴェルドラの体内を巡る魔素の動きと、魔法少女みたいに変身出来たらなーっと何となく思った途端にいきなり身体が変化を始めた。

 

そもそも姿を変える魔女なんてCharlotteぐらいしか知らないし、それも人化と呼ぶにはほど遠く、もしかしたら無理かもなって諦めかけていたので、成功した時は小躍りしたくなるほど喜んだものだ。

 

ギゴガゴと音を立てて歯車が小さくなっていく。

 

トラ〇スフォーマーみたいだな。

そう、映画一作目のオールスパーク、あれだ。

バ〇ブルビーがオールスパークを小さくするシーンだと言えば伝わるだろうか、とにかくそんな感じで俺の身体が小さくなっていく。

みるみるうちに歯車が一般的なスカートの中に収まるサイズになる。それを、開いていた前方が閉じた形になったスカートでふわっと覆い隠せば出来上がり。

 

それじゃあ、今の俺の姿を紹介するぜ!

 

白い縁取りの青いドレス!

頭部は上半分が切り取られたまま!

地面まで届くスカートの中では足の代わりに巨大な歯車が回転中!

僅かに地面から浮いて移動するぞ!

 

まぁ、ぶっちゃけほとんど変わらない。身長は180㎝ちょいになった。

 

もちろん、はっきり変わった所もある。

まず、しなやかで真っ白い腕と手が生成された。いや、マジで見惚れるほど綺麗なんだよ。

手だけを見れば、深窓の令嬢ってカンジ。

 

次に頭から生えていた角のような帽子。

これが消えて、代わりに魔女が着けるような鍔広の三角帽になっていた。青色を基調として白の模様が入っており、なかなかお洒落だ。

帽子からは深い青みがかった黒髪がさらりと流れ出している。

 

これによって今の俺は、上から見れば広い鍔で目元を隠した美人、下から見れば両目が隠れるほど帽子を目深にかぶった変な美人、という風に見えるだろう。

帽子を取れば・・・大絶叫待ったナシさ☆

 

さて、改めて自分の妖気を並みの魔物程度まで抑える。

 

これでようやく準備が整った。

俺は洞窟の出口に立って中を名残惜しい気持ちで振り返る。

 

本編開始まで残りおよそ三百年。

 

それまでにこの世界を楽しみ尽くしてやる!

 

こうして俺は長いことお世話になった洞窟に別れを告げ、外の世界に向けて一歩を踏み出したのだった。

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。説明回でした。

次回は三人称視点の話になる予定です。
あと早くも書き溜めが消し飛んだので、これにて毎日投稿は終了だぜぇ!!

ゆるして
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