転生したら「ワルプルギスの夜」だった件   作:十二夜

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難易度ルナティックなハードコアモード開始

 

 

 

どれだけの時間が経った?

 

 

 

《分かりませんワ。数え切れない程の夜が頭上を過ぎ去ったとしか》

 

 

 

どうだろう、リムルはもうこの世界に来ているかな。

 

 

 

《……エエ、おそらくは》

 

 

 

なら、長い時が経ったんだろう。

 

 

 

少なくとも、三百年。

 

 

 

ここもだいぶ様変わりした。

 

 

 

彼女たちが暮らした村は、もう跡形も無くなっている。

 

 

 

辛うじて、私の居る出雲大社モドキが原形を保っている程度か。

 

 

 

あとはもう、全て吞まれた。

 

 

 

いや、こういう言い方は良くないな。

 

 

 

まるで時間の流れの所為であるかのようだが、そうじゃない。

 

 

 

私が、消した。

 

 

 

そうしなければ出られない、などと言い訳をするつもりはないよ。

 

 

 

「俺」と共に、村はこの世から消えた。

 

 

 

私が自らの意思で消したんだ。

 

 

 

私が百年を過ごした洞窟も、半年を過ごした村も、これで全部無くなった。

 

 

 

私に、もう帰る場所は無い。

 

 

 

その必要も無い。

 

 

 

全ては過去の話になった。

 

 

 

《マァ! 「全ては主観性を失って、歴史的遠近法の彼方で古典となっていく」ですワネ!》

 

 

 

……ヨル。

 

 

 

今度は「氷菓」にハマったのか。

 

 

 

私の記憶を読むのも程々にしてくれよ。

 

 

 

あとそれ、例によって使い方が違うぞ。

 

 

 

《アレレ? おかしいですワネ……》

 

 

 

とにかく、この世界に来て数百年、私はようやく独り立ちを迎える。

 

 

 

巣立ちの時だ。

 

 

 

一人じゃ生きられなかった人間は、分別ざかりを迎えた。

 

 

 

私は、魔女になったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ、まだ見ているのか?

 

 

 

やめてくれ、私はもう主人公じゃないよ。

 

 

 

「俺」の物語は幕を引いたんだ。

 

 

 

その代わり、本物の主人公様が居るだろ?

 

 

 

そっちに行くべきだよ。

 

 

 

こんな魔女の元じゃなくてね。

 

 

 

その方がきっと、面白い。

 

 

 

さぁ、お別れだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思ったよりもしぶといんだな。

 

 

 

まったく……。

 

 

 

仕方ない、実力行使だ。

 

 

 

ヨル。

 

 

 

《ハァイ》

 

 

 

まさかこんな事のために『戯曲之神(シェイクスピア)』を使う羽目になるとは。

 

 

 

なかなか綺麗に締めたと思ったんだがな。

 

 

 

ヨル、頼むよ。

 

 

 

《チョチョイのチョイですワ》

 

 

 

……おい、私がいつでもツッコむと思ったら大間違いだぞ。

 

 

 

では、今度こそお別れだな。

 

 

 

なに、惜しむ必要は無い。

 

 

 

何も今生の別れじゃないんだ。

 

 

 

私は、もうすぐここから出られる。

 

 

 

それまで、少しの間のお別れだよ。

 

 

 

じきに、会えるさ。

 

 

 

《ウフ。では、ゴキゲンヨウ》

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

『感謝する。オレの飢えは今、満たされた……!』

 

戦場の中心で、一匹の魔物が息絶えた。

残されたのは、死闘に勝利したもう一匹の魔物。

 

《確認しました。豚頭魔王(オーク・ディザスター)消失。ユニークスキル『飢餓者(ウエルモノ)』はユニークスキル『捕食者(クラウモノ)』に吸収され、統合されました》

 

頭の中で響くその声を聴き、リムルは目を開ける。

戦場に、声は無かった。

敵も味方もリムルを囲むように立ち並び、その一挙手一投足に注目していた。

 

リムルが息を大きく吸い込む。

静寂に包まれたその場所で、勝利の宣言は高らかに響いた。

 

「俺の勝ちだ。安らかに眠るが良い、豚頭魔王(オーク・ディザスター)ゲルド!」

 

勝敗は決した。

 

歓声と嗚咽が戦場を飛び交い、王を失ったオークが次々に膝を折っていく。

 

約三百年ぶりの豚頭族(オーク)の侵攻は、この時をもって完全に食い止められ、終了することになった。

 

それを成したのは、たった一匹のスライム。

 

リムル=テンペストである。

 

 

 

 

 

 

その翌日。

 

戦場となった湿地帯中央に仮設されたテントに、リムルの勢力を含めた各々の種族の代表が集っていた。

 

上座には、リムルとシオン。そして、ベニマル、ハクロウ、ソウエイがその一歩後ろで控えている。

例によって、リムルはスライム状態でシオンの膝の上に乗っている。

 

あとは蜥蜴人族(リザードマン)の首領と、その親衛隊長と副長。

豚頭族(オーク)側からは、豚頭将(オークジェネラル)の生き残りと、部族連合代表の十大族長達。

オーク達は全員が死にそうな顔色をしている。

 

重苦しい空気の中、最初に口を開いたのはリムルだった。

 

「まず会議を行う前に、俺の知り得た情報を伝えたい。聞け!」

 

そしてリムルは、豚頭族(オーク)が武力蜂起する事となった原因と現在の状況を滔々と各人に向けて語りだした。

豚頭族(オーク)の生活のこと。

豚頭族(オーク)を取り巻く環境のこと。

大飢饉のこと。

 

驚いたのはオークだ。

 

その話をこの場でする意図はただ一つ、情状酌量の要求。

侵攻を終わらせ、今この場で最も発言力を持つ人物が、侵略者であり敗者でもある豚頭族(オーク)の事情を考慮して欲しいと自ら願い出ているのだ。

 

リムルの配下はもちろん、蜥蜴人族(リザードマン)もその意図を酌まざるを得ないだろう。

 

これで、オーク達が恐れていた事態が引き起こされる可能性はほとんど無くなった。

三百年前の繰り返しには、ならない。

 

リムルの話が進むにつれ、涙を流すオークが現れた。

そうでない者も、例外なく深い感謝の念を抱えてリムルの顔を見つめている。

無理もない。

彼らは一族の絶滅を覚悟してこの場に来た。

 

前回の侵攻の代償が、そうであったように。

 

「以上だ! 皆もどうか今の情報を念頭に置いて会議に臨んで欲しい!」

「うぉっほん! では、まずは今回のオーク侵攻における損害について、確認を!」

 

リムルの目配せを受け取ったハクロウが改めて会議の進行を促す。

今までの沈黙が嘘であるかのように滞りなく会議は進み、ついにオークに対する処罰の話になった。

リムルの一声が響いた。

 

「皆の思いはあるだろうが、オークに対する処罰は行わない。何故ならば、それが豚頭魔王(オーク・ディザスター)との約束だからだ。オーク全ての罪も俺が引き受ける。文句があるならば、俺に言ってくれ!」

 

決まりだった。

異論など、出るはずも無かった。

満場一致で、豚頭族(オーク)への処罰は行われないことになった。

 

そしてそのタイミングで、さらにリムルから同盟の話が出た。

 

子鬼族(ゴブリン)を含むリムルの配下、豚頭族(オーク)蜥蜴人族(リザードマン)からなるジュラの大森林の一大同盟。

 

ここにいる者はリムルの力を知っている。

誰にとっても、願っても無い話だった。

 

豚頭将(オークジェネラル)蜥蜴人族(リザードマン)の首領は一も二も無く同意を示す。

 

しかし、ここで問題が残った。

 

生き残った十五万ものオーク、その食料をどうするか。

 

非常に現実的かつ、難しい大問題。

 

その時、救世主は現れた。

 

「会議中、失礼します! どうしてもお目通りしたいと、使者がお見えです!」

 

何やら大慌てで伝令のリザードマンが飛び込んで来る。

 

通せ、と許可してから間も無く一人の魔物がテントへと入ってきた。

 

樹妖精(ドライアド)

 

「初めまして、皆様! わたくし、樹妖精(ドライアド)のトレイニーと申します。お見知りおきを。さて、本日参りましたのは、豚頭帝(オークロード)を討伐するのが目的でした……けれど、どうやらそれは達成された様子。帰ろうかと思ったのですが、挨拶だけでもと思い立ち寄ったのです。そうしましたら、何やらお困りのようでしたので、声をかけさせて頂きました!」

 

トレイニーは朗らかな笑顔でそう言った。

 

会議室内に驚きの声が上がる。

樹妖精(ドライアド)はこの森の守護者、滅多に聖域たる棲家から出て来ず、その姿を見せるのは実に数百年ぶりのこと。

その上、声まで掛けて来た。

 

この場で落ち着きを保っているのはリムルだけだった。

皆のリムルを見る目が更に尊敬の念を増す。

 

「何でも、食料が足りないのでしょう? 私、お役に立てると思うのです。でも……私の守護する種族、樹人族(トレント)も、この同盟に参加させて頂くのが条件ですけれど!」

 

まさに願ったり叶ったり、棚から牡丹餅。

 

話はとんとん拍子に進み、笑顔で案が纏められていく。

 

リムルは始終ニコニコしていたが、同盟の盟主に担ぎ上げられた瞬間は少しだけ顔が引き攣っていた。

 

こうして、ジュラの森大同盟は締結された。

参加種族は、子鬼族(ゴブリン)豚頭族(オーク)蜥蜴人族(リザードマン)樹人族(トレント)、そしてリムルの配下全て。

 

やがて歴史を変える存在の始まりとなる、偉大な同盟である。

 

 

 

 

 

 

「それにしてもリムル様がお優しい方でわたくし、安心しました。前回のようにはならなくて……本当に……」

「前回……うっ」

「……ああ…アレか。あれは本当にヤバかったな……」

 

同盟が成立し、会議も終わった直後。

ポツリと呟いたトレイニーに同調するようにベニマルが頷く。

誰よりも早く話の内容を察したオークが呻きを上げた。

 

途端に場の空気に重力が戻った。

全員が過去を思い出して青い顔をする。

 

特にオーク達は今までで最も死にそうな顔をしていた。

 

何も知らないのは、リムルのみ。

 

スライムの身体が怪訝そうにポヨンと揺れた。

 

「おい、皆どうしたんだよ? 前回って何の事だ?」

「そうか。リムル様は知らなかったっけな、魔女の事を」

 

魔女。

 

その単語を言った時、ベニマルの声には確かに怯えの震えが乗っていた。

ハクロウでさえ、僅かに畏れの色を瞳に浮かべている。

 

「魔女……数百年前までは人間から魔人に成った女を魔女と呼んでいたんだが、今ではその言葉はたった一体の魔物の事を指す」

 

ベニマルの言葉を引き継ぐ形で、トレイニーが口を開く。

 

「およそ四百年程前にその魔物は突如として現れました。あまりにも強大な力を持っていたその魔物は、前回現れた豚頭帝(オークロード)……いえ、豚頭魔王(オーク・ディザスター)を討伐したのです。この森全体の三分の一と、十万以上のオークを消し炭にして」

《告。現在の森林密度と生物分布から、この話は事実であると推測出来ます》

「……なんてこった。それはまた……」

 

頭の中で響く「大賢者」の声を聞いたリムルが絶句する。

 

「大賢者」が即座に弾き出した推定威力が、桁違いだったのだ。

ベニマルの『黒炎獄(ヘルフレア)』やランガの『黒雷嵐(デスストーム)』でさえもまるでお話にならないような火力が、そこにはあった。

正に、次元が違う。

 

オーク達が小刻みに震え始める。

顔色は死にそうというよりは最早死んでいた。

 

「その魔物は今、このジュラの大森林に封印されています。封印から漏れ出る魔力は森の南半分を覆いつくし、北半分を覆っていた暴風竜の魔力と拮抗していました。今は、暴風竜は消えてしまいましたが」

「だから、南側の連中は魔女を守護神だと崇めているんだ。こっち側の魔物が暴風竜を奉っているように、な。いくらリムル様でも、封印には絶対に近付かないでくれよ?」

 

ベニマルが説明を締めくくる。

 

(相当やべー奴なんだな、魔女ってのは。いや、待てよ……?)

 

リムルが首をかしげる。

 

「なんで『魔女』って呼ぶんだ? 名前は無いのか?」

「いや、あるにはあるんだが、それは名前というよりは称号のようなもんでな……」

「称号?」

「ああ」

 

場に緊張が走る。

 

誰かが唾を飲み込む音がやけに大きく響いた。

 

全員の視線が、ベニマルに注がれている。

 

視線は雄弁に語っていた。

お前が言え、と。

 

(いや、名前を言ってはいけない我が君かよ)

 

そんな空気を怪訝に思いつつ、人型となったリムルはお茶を口に含んだ。

 

「俺か……まあ、そうだよな……よし分かった、言うぞ……!」

 

ベニマルが覚悟を決める。

額から流れた冷や汗が一滴、地面に滴る。

 

変だと思いながらも、その雰囲気に当てられたリムルは思わず背筋を伸ばした。

 

ベニマルは言った。

 

「その魔物は、『ワルプルギスの夜』と呼ばれている」

「ブーーーーーーッ!!」

 

リムルはお茶を吹き出した。

 

「ゴホッゴホッ! けほっ!」

「ど、どうしたんですかリムル様!?」

 

シオンが心配そうにリムルに駆け寄る。

そして、すかさずリムルの口まわりを拭った。

ハンカチが胸の谷間から取り出された事に関しては、リムルは見て見ぬふりをしようと決めた。

 

「いや、何でもないよ。悪かった。ちょっとびっくりしただけで……」

「そ、そうですか……」

「リムル様、少しばかり下品ですよ」

 

珍しくシュナがジト目でリムルを咎める。

 

その視線に気づいたリムルは気を取り直して、今度こそお茶で喉を潤す。

 

「その『ワルプルギスの夜』って呼び名は、魔女本人が言い出したのか?」

 

(まさか、な)

 

そう思いながらも、リムルはその事をベニマルに訊かずにはいられなかった。

有り得ないとは分かっているが、万が一ということもある。

 

ベニマルをはじめ、皆の心は一つだった。

正直、この話題を終わらせたい。

 

その一心ではあるのだが、リムルに訊かれたからには答えなければならない。

 

「ああ。それともう一つ」

「もう一つ?」

「『ワルプルギスの夜』の他にも、魔女はもう一つ呼び名を残してんだ。だが、それも名前というよりは称号に近いもので……」

「……よし、言ってみろ」

 

ベニマルが大きく息を吸い込む。

場の緊張が再び高まる。

 

「舞台装置の魔女」

「ブォッファッッッッッ!!!」

「「「リムル様ーーーーっ!?!?」」」

 

リムルの口から噴出されたお茶は霧状となって、七色の綺麗な虹をテント内に架けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

ベストバウト投票は概ね予想通りの結果。
作者的にはvs.ミリムに思い入れがあるかな。
「明星よ墜ちよ」の描写に30分ぐらいかけた記憶がある。それも授業中に。目ぇバッキバキ。
みんな大好き25話の描写は思っていたよりも楽だった。
BGM垂れ流しのテンション爆上げで書きまくった。
「魔女の罰」も、威力の大きさとか気にせずにただ最強の技を書けばいいだけだったので、スラスラ出てきた記憶。

ところで現代編の転スラパートってそれぐらい省略して良いのかね?
加減が難しいよ、加減が。



あなたはどの程度まで知ってる?

  • 転スラ完遂&まどマギ完遂
  • 転スラ途中&まどマギ完遂
  • まどマギ途中&転スラ完遂
  • なんと、転スラもまどマギも未遂
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