転生したら「ワルプルギスの夜」だった件   作:十二夜

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にょっす!(気さくな挨拶)

いやはや随分とお待たせしちゃって……何せいろいろ忙しかったもので……。
空いた時間で最終回までの流れや構想を考えてました。「廻天」が公開される8月28日までには終わりたい……。
結構大変なんですよ、話を考えるのって。
え? 言い訳?
ですよね……はい……すみません……。

では、本編どうぞ。




行くなと言われるほど行きたくなるよねって話

 

いやぁ、びっくりした。

 

随分とはっちゃけた転生者が居たもんだ。

「ワルプルギスの夜」とな。

中二病のロールプレイ限界突破にも程があるだろう。

 

あの後、地獄のオーク名付け祭りを無事に乗り切ったリムルは、急速に形を整えつつある街を眺めながらそう思った。

 

オークだけじゃない。

ガビル率いるリザードマン戦士団や、ジュラの大森林に住むほとんどのゴブリンたちがリムルの配下にしてくれと頼み込んできた。

リムルはもちろん、彼らを受け入れた。

 

住民数の拡大はすなわち労働力の拡大。

 

一万近い魔物が暮らす町が出来た。

それぞれに家が割り当てられ、インフラが張り巡らされていく。

町を発展させるという目的を与えられて働くオーク達の顔には充実感が浮かんでいた。

それを手伝うゴブリン達もどことなく楽しそうだ。

 

そして例の如く、リムルは手持無沙汰である。

 

手伝おうとは思ったのだが、なんせ全員のやる気が凄すぎて何もさせてもらえない。

暇だった。

たまに口出しはするのだが、基本的に暇だった。

 

「……さて、と」

 

町を見下ろせる場所に立つリムルはボーっと眼下の風景を眺めていたが、しばらくしてそっとその場を動いた。

 

行く先はもちろん、件の封印――

 

「リムル様~~? どこへ行こうってんですかねぇ?」

「げっ、今度はベニマルか」

 

――へ、行こうとしてあっけなくベニマルに捕まった。

 

首根っこを持ち上げられて空中にぷらんとぶら下がるリムル。

 

「今度はどうやって俺の居場所が分かったんだよ? 痕跡を残すようなヘマはしなかったぞ?」

「フッフッフ。リムル様でも気付けないとは、アイツもなかなかやるな」

「あいつ?」

「――リムル様、俺です。恐れながら」

「ソウエイ、お前も参戦したのかこの野郎」

 

何も無かった木々の間から、どこからともなくソウエイの姿が現れる。

つまり、リムルの行動は全て監視されていたということ。

 

リムルがガクッと項垂れる。

 

ベニマルはリムルを掴んだまま、ソウエイを伴って町に戻った。

町では、頬を膨らませたシュナが仁王立ちでリムルを待ち構えていた。

 

リムルの額に一筋の汗が流れる。

 

「ま、待てシュナ、ここはコミュニケーションをだね――」

「リムル様!!」

「ひぃっ」

「何度言ったら分かるんですか! 封印に近付いてはならないとあれほど……!」

 

ここ数日ですっかり馴染みになった光景である。

 

ワルプルギスの話を聞かされて以来、リムルは事あるごとに封印を見に行こうとあの手この手で町を離れようとしていた。

 

しかし、ジュラの大森林に住む魔物にとって魔女の封印に近付くことは禁忌を意味する。

 

これまでにも大勢の魔物が守護神を一目見ようと封印に向かった。

そして、その多くが帰ってこなかった。

 

戻った魔物達は伝える。

 

曰く、封印の近くでは奇妙な歌声が聞こえる。

曰く、封印の周りはこの世ならざる景色に覆われている。

曰く、封印に近付きすぎると正気を失う。

曰く、封印は笑っている、等々……。

 

千差万別な彼らの話はしかし、一つだけ口を揃えて語られる事がある。

 

曰く、封印に一定距離近付いた者は二度と戻っては来れない、と。

 

故に、魔女の封印に近付いてはならないという暗黙の了解が魔物達の間にはあった。

 

(ほとんど怪談じゃねーか!)

 

だが、こんな話を聞かされたリムルの好奇心は益々募るばかり。

 

その脱出劇も日に日に白熱するばかり。

 

危険な封印がある?

中身は転生者だ?

そそるぜぇ、これは!

 

リムルはヴェルドラから話を聞かされていた。

暴風竜たる自分よりも、遥かに強い転生者が居ると。

 

詳しい話は教えられなかったので、リムルはそれらも込みで一度会いに行きたかったのだ。

 

しかし、そんな事情をリムル以外は知る由も無い。

さらにどんな理由があろうと、リムルを万が一にも失う可能性がある以上シュナ達はそれを見過ごせないため、リムルの脱出を全力で止めなければならない。

 

構図はここに完成した。

 

ここ数日、リムル対その他で攻防戦が繰り広げられていた。

 

「いや、だから! ヤバそうだったらすぐに逃げるって! そもそも――!」

「ダメです! 今までどれだけの犠牲者がそう言って――!」

 

一日に一回、リムルとシュナの口論が聞こえるようになったということ以外は、町は極めて平和だった。

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

カイジン、という名のドワーフがいる。

 

人間の国でも有名な鍛冶職人であり、ドワルゴン国にて鍛冶屋を営んでいたのだが、色々やらかした結果幼馴染のガルム、ドルド、ミルド三兄弟と共にドワルゴンを追放され、リムルの配下となった。

 

そして今、四人共にそれぞれ町の技術力向上と生産物の価値向上に重要な役割を担っている。

 

カイジンは武器を中心に主に鍛冶を担当していた。

 

同じく鍛冶職人のクロベエと日々切磋琢磨しながら住民たちの武器や防具、道具などを作っている。

 

その日も、いつものように朝から晩まで作業場に籠って武器を鍛えたり改良したりしていたカイジンは、一日の終わりに自宅で景気良く一杯呑んでいた。

 

時刻は深夜。

町はとうに静まり返っている。

 

沈むことの無い半月の光が、カイジンの部屋を明るく照らし出していた。

 

その光景を眺めていたカイジンだったが、おもむろに身を乗り出すと卓上の蝋燭の火を吹き消した。

 

そろそろ寝なければ、明日に障る。

 

そう思ったカイジンは最後の一口を喉に流し込むと、勢いよく立ち上がった。

 

そしてベッドの方へ一歩を踏み出しかけ、驚きでその場に固まった。

 

「久しいな、カイジン。俺の分も一杯注いでくれぬか?」

 

いつの間にか部屋の暗がりに一人の男が立っていた。

親し気にカイジンに語り掛けるその声を、忘れるはずも無い。

 

「こ、これは……王よ!」

 

驚愕に喘ぎながらもカイジンが必死に声を絞り出す。

 

カイジンへ向けて一歩を踏み出し、月光の下に身を晒したのは、王ガゼル・ドワルゴその人。

 

本来、こんな所に居てはならない人物だ。

まして、カイジンはドワルゴン国を追放された身。

 

「な、何故、一体どうしてここへ? というか、まさか城を抜け出して来られたのですか!?」

「うむ。俺の警護の兵ども、100人もいて、俺が抜け出す事に気付かなかったぞ! 弛んでおる。帰ったら鍛えなおしよ!」

 

動揺してうろたえるカイジンとは裏腹に、さも当たり前であるかのように椅子に座ったガゼルは容器を手に取ると酒の瓶をカイジンに手渡した。

訳が分からないながらもカイジンは本能で動き、瓶の栓を開けてガゼルの容器になみなみと酒を注ぐ。

 

それを見たガゼルは向かいの椅子を指し示してカイジンを座らせると、グイと酒を傾けて一口飲んだ。

 

「さて、俺がここに出向いたのはお前と内密に話をするためだ」

「な、内密ですと? しかしながら王よ、ここに居ることは既にリムル様に感知されているんじゃ……」

「リムル……あのスライムの名だな? フン、俺を舐めるでないわ! 確かに腕の立つ奴も何人か居るようだが、俺がここに居ることを何人たりにも悟らせはせん! 知るのは今現在でお前だけよ!」

「えぇ……」

 

それはそれで困る。

カイジンは微妙な顔を作った。

 

それに構わずガゼルは再びグイと一口飲むと、空になった容器を勢いよくテーブルに置いた。

 

「で、だ。話というのは他でもない、俺はこの国を友としたいのだ。分かるか? お前達を国と認め、正式に交流を持ちたいと考えている」

「なんと……! 王よ、それは……!」

「だが、その前にやらねばならぬ事がある」

 

興奮するカイジンを、ガゼルは目線で射抜くようにして言った。

 

「お前らの主、あのスライムの善性を見極めねばならぬ。勿論、お前の判断を疑っているわけでは無いのだ。しかし、念には念を、慎重には慎重を重ねなければならない」

「ッ……ガゼル王」

「カイジン、お前も知っているだろうが、三百年前に俺は一つの判断を下した。その判断が間違っていたとは今も思わない。俺の判断は正しかったが、しかし、俺は認識を違えていた。認識を違えるは、王として致命的であった。今度は、違えるわけにはいかぬ」

 

そこまで言い切ると、ガゼルは窓から半月を見上げた。

絶えぬ月光で輝き続ける半月を。

 

ガゼルの言葉には、強い覚悟が込められていた。

 

「………」

 

その行動で、カイジンはガゼルが自分と同じ存在を思い浮かべていることを理解した。

 

恐怖の夜たる、魔女を。

 

ガゼルは恐れているのだ。

あの夜の二の舞を。

故に、決めあぐねている。

 

カイジンは興奮を抑えて、努めて冷静にガゼルに訊いた。

 

「……どうするおつもりですか?」

「なに、簡単な事よ。カイジン、お前には俺と共に一芝居を打って欲しい」

「……一芝居?」

「うむ。あのスライムの価値観、思考、善性を試す。一計案じて、その人柄を試す」

「それでは私に自らの主を、リムル様を謀れと、そう言うのですか。ガゼル王よ」

「その通りだ」

 

カイジンの顔が強張る。

 

ガゼルの言うことは理解できる。その必要性も認識している。ガゼルは王だ、その背負う責任も察して余りある。

だが、いくらなんでもリムルを騙すことだけは気が引けた。

 

「……王よ」

「カイジン。無事に事が済めば、俺はこの国に謝罪をすることを誓おう。お前に責任は無い。俺の責任だ」

 

口を開こうとしたカイジンを、ガゼルは手で遮る。

そしてニヤリと笑ってカイジンに訊いた。

 

「カイジン。リムルは、配下であるお前でさえも信じきれぬほどに危ういのか?」

「何を……」

 

それを聞いたカイジンはしばらく呆けていたが、やがて苦笑いを浮かべるとゆっくりと首を振った。

 

(ずるいお方だ。そんな質問をされてしまえば、俺の取れる行動は一つしか無くなる)

 

カイジンは覚悟を決めたように顔を上げると、真っ直ぐにガゼルを見つめた。

 

「分かりました。協力しましょう」

「実に結構。では――」

「ただし」

 

そこで言葉を区切ったカイジンは、これまでで最も真剣な目をガゼルに向けた。

 

「リムル様を含め、この町の住人を傷付けるようなことは許しませんよ?」

 

その言葉に込められた本気を察せないガゼルではない。

 

「無論だ。心得ているとも。というよりはむしろ……」

 

ガゼルは反応を面白がるようにカイジンに計画を伝えた。

 

「これから傷付くのは、我々の方なのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

今回は少し短いです。その代わり次回は長いよ。

それよりもアンケート結果びっくりしたんですけど!
転スラもまどマギも未遂の読者が29%!?
大丈夫かな……。これからすげぇネタバレしていくんだけど。
それに未遂ならともかく、どちらかの作品にしか触れてないって人はこの物語楽しめてるんですかね?
話分かるの?
不安なんだけど。

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