お ま た せ
えー、なんと週一更新すら怪しくなるとは思いませんでした、はい、すみません。
いや、処刑は、処刑は待ってください。言い訳させて。
この一週間、グリッドマンとダイナゼノンを一気見してました!!!!!
面白かったです!!!!!!!
飛鳥川ちせは俺の嫁!!!!!!
さて、冗談(!?)はこれぐらいにして。
本当を言うと、難産の理由はルミナスをどれくらい虐めて良いかの加減が難しかったからです。
結局、メインディッシュは後に取っておくものだよねってことで。
そこそこのルミナス虐待、略してルナ虐・小をどうぞ。
「遅ればせながらも皆様。私はフール、ミリム様の刃」
以上。
フールは軽くお辞儀をして簡潔にそう自己紹介すると、するりとミリムの膝の上に舞い戻る。
改めて名乗ったフールに魔王達は少なくない驚きを抱いていたが、今はそれを更に上回る人物がこの会場には居た。
魔王達の視線がギィの隣へと突き刺さる。
ルミナス・バレンタイン。
吸血鬼の少女はかつてと同じように尊大に腕を組んで立っていたが、一斉に視線を向けられて怯えたように僅かに肩が跳ねる。
その表情も、心なしか居心地が悪そうにびくびくしていた。
ルミナスがらしくもなく怯えている理由はただ一つ。
ギィがルミナスを伴って会場に戻って来る時に発した一言が原因である。
「待たせたな。これより
そう言ってギィはどっかと席に腰を沈めた。
戦犯という言葉、死んだはずのルミナス。
死因は確か――。
そこまで思い至った数人の魔王がルミナスへの視線を険しくする。
場の状況からルミナスも何かの可能性に気が付いたのだが、それを表に出すようなヘマはしない。
だが、それ故に内心少なからず怯えているのだ。
「こ、これはどういうことじゃギィ! 何故こやつがこの場におる! こやつは我らを――」
「誰が口を開いて良いと言った、ルミナス・バレンタイン」
「ひっ」
ワルプルギスをキッと睨んでギィを問いただそうとしたルミナスはしかし、こちらへは目もくれないギィの発する本気の怒気に当てられてすっかり委縮してしまう。
ちなみにこの場で最も居心地が悪いのは、いつの間にか巻き込まれてこの
ルミナスの姿を見ては驚き、魔王達の姿を見ては驚き、なぜ自分はここに居るのだろうと驚き、驚愕に次ぐ驚愕、脳はとっくに処理を諦めて目はぐるぐる回り、ついにヒナタは物言わぬ置物になることを決めた。
今は壁際で空気と同化しようと頑張っている。
そんなヒナタを置き去りにして、
「さて、まずはオレから説明をさせてもらおう」
最初に口を開いたのは、もちろんこの男。
ギィは尊大に足を組むと、有無を言わせぬ視線を魔王の面々に投げかける。
世界の秘密が明かされる予感に、自然と場の緊張が高まっていく。
「300年前――言うまでも無く、ワルプルギスによる世界危機は各々の記憶に焼き付いていることだろう。あの時、オレとヴェルザードと愉快な仲間たちが犠牲を出しながらも必死こいてワルプルギスを封印したわけだが………なんてことはない、元凶はコイツだ」
そう言ってルミナスを指差すギィ。
途端に会場は騒然となり、誰もが胡乱な眼差しをルミナスに注ぐ。
しかし、まったく心当たりの無い容疑を掛けられたルミナスも黙ってはいない。
弾かれたようにギィを見ると、抗議の声を張り上げた。
「待て、待つのじゃ! ギィ、言い掛かりにも程があろうて! 妾はそんな――!」
「――黙れ、ルミナス。二度は無い」
「……ッ!! い、否、黙らぬ! 何を考えておるのか―――ぁ」
「二度は無いと言ったぞ。不愉快だ」
誰一人反応する間も無く、それまでジッと座っていたギィが目にも止まらぬ速さで拳を振りかぶって薙ぐ。
その一撃は正確にルミナスの鳩尾を抉り、為す術も無く後方の壁まで吹き飛んで血反吐を撒き散らしながらルミナスは力なく床に倒れ込んだ。
「………!!」
ギィのその行動が魔王達に与えた衝撃は計り知れない。
今までギィは魔王達に対してほとんど無興味、不干渉を貫いてきた。
何名かのお気に入りの魔王と親しくする事はあっても、公の場で一人の魔王に対して何かの極端な行動を取ることなど無かった。
それが今、ルミナスに対してこれでもかと敵愾心を露わにしている。
喧噪から一転、静まり返ったその場にギィの声が滔々と響く。
それは三百年もの間隠されていた、「ワルプルギスの夜」の始まり。
あの夜、何が起こって何が目覚めたのか。
ルミナス教が、何をやったのか。
話を聞くにつれて魔王達の顔には驚愕と同情の色が浮かび、同じような経験をしたリムルは憐憫とも同情とも異なる何とも言えない表情をワルプルギスに向けた。
ただ一人だけ、ミリムは先程から顔を俯かせており、その表情を窺い知ることは出来ない。
ミリムの膝に乗っているフールも、気を遣っているのか静かに腕に抱かれていた。
そして最も驚きを受けたのが誰あろうルミナスである。
初めは怒りを湛えた表情でギィを睨んでいたが、話が進むにつれその意気は消沈して顔色はどんどん悪くなっていき、そして最後に不服、後悔、渋面と万華鏡の如く百面相を披露して黙りこくってしまった。
「とまあ、これが事の次第だ。ルミナス、何か言いたい事はあるか?」
ギィの顔が初めてルミナスの方を向く。
それを受けて地面からフラフラと立ち上がったルミナスは、唇をキツく噛みしめたままゆっくりと口を開いた。
「……妾が目覚めた時、居るはずの気配を不気味なほどに感じ取れ無かった。妾の配下は……ロイ達は……どこじゃ?」
『殺しましたワ』
「……ッ!」
『ロイとルイ、それと七曜、でしたっけ? ワタクシが殺しましたワ。何か文句がありまして?』
「……そうか。いや……文句など、無い……」
ルミナスは気づかなかったが、その時立ち上がろうとしたフールは驚いたような顔でワルプルギスを見ていた。
フールは己の殺戮を何ら恥じていない為に迷わず声を上げようとしていたのだが、ワルプルギスに先手を取られて渋々引き下がる。
『一度だけで良いワ。ワタクシに譲って下さる?』
(ええ、良いでしょう)
二人が密かに念話を交わしていることにも気付かず、ルミナスは力が抜けたように再び地面に座り込む。
普段ならばここまで弱ることは滅多に無いのだが、今のルミナスは三百年の死から目覚めたばかりで少なからず混乱している上に、整理する間も無く次々と衝撃の事実を告げられてすっかり参っていた。
無遠慮に突き刺さる視線が痛い。
「ギィ……わ、妾は……」
「おいおい、まさか同情を誘おうとしてんのか? あの国は宗教から教義まで、全てお前が作り上げたものだ。魔物の殲滅なんてものを掲げるのなら、この程度の事態は予め想定して然るべきだろうよ。そうだろう? リムル」
「……ああ。ルミナスさんには悪いが、俺の配下もあんたの国に一度殺されてる。俺としてはこれ以上事を荒げるつもりは無いけど、あんたの責任は重いぞ」
救いを求めて伸ばして手はあっけなくギィに払い落とされる。
ルミナスはしばらく呆然と視線を宙に彷徨わせていたが、やがて目を伏せると弱弱しく言葉を絞り出した。
「いや……そなたの言う通りじゃな。全ては妾の短慮と管理不足が招いた結果じゃ。どんな罰も甘んじて受け入れよう」
ルミナスは吹っ切れたように笑うと、立ち上がってワルプルギスの前まで進んで頭を――
『なに清々しく正義面してんだゴミが』
――下げようとして、突如現れた巨砲に下半身を消し飛ばされた。
「グフッ! あぐ、グウウゥゥゥゥゥゥゥ……ッッ!!」
吹き飛んで宙に浮いたルミナス、その長い髪の毛をギィは無造作に掴むとワルプルギスの足元に残った上半身をぶん投げる。
べちゃっ、と生々しい音を立ててルミナスは顔から地面に着地した。
再生するからと言って、身体の痛みまで消えるわけでは無い。
ルミナスは血が滲むほどに歯を食いしばって悲鳴を堪えると、地面に這い蹲りながらも再生途中の身体を使ってワルプルギスに頭を下げる。
「ワルプルギス……妾が悪かった……。はぁ、はぁ……ゆ、許せとは言わぬ……言わぬが、どうか命だけは……どうか……!」
額を地面に擦りつけてワルプルギスの慈悲を乞う。
今この時ほど、ルミナスが何かを恐れたことは無かった。
ワルプルギスが怖いのではない。顔の無いワルプルギスが浮かべている、張り付けたような笑みが今は何よりも怖いのだ。
『……まあ、良いですワ。今の一撃で手打ちにします。ウフフ、お互い過去の事は水に流して、これからは仲良くしまショウ?』
怖い。
だが、ルミナスはその恐怖を顔に出すことはせずに差し出されたワルプルギスの手を取って立ち上がると、その横に座っているリムルに向けても頭を下げる。
「感謝するぞ……。それとリムル、だったか。そなたにも悪いことをしたようじゃ。謝らせて欲しい」
「分かった。ちょうど俺もそこのヒナタと和解しようとしていた所なんだよ。あんたの謝罪は受け取っておく」
リムルは肩を竦めてそう言うと、満足げに頷いているギィに視線を向ける。
ギィは立ち上がって魔王達を見渡すと、声を張り上げて言い放つ。
「では、沙汰を言い渡す! これまでの貢献も加味し、ルミナス・バレンタインには魔王の継続と引き換えに、しばらくの間は発言権を始めとする魔王の諸権利を剝奪し、全ての魔王の最下位にその権利を位置させる。加えてルミナス教の教義の変更を命令し、神聖法皇国ルべリオスには、ここに居る魔王達が治める国に対して最恵国待遇を要求する。異論のあるヤツはいるか?」
異論は出ない。
つい先程まで事実すら知らなかった者が、今更出しゃばるような真似が出来るほど魔王達は恥知らずでは無かった。
更に三百年前の「ワルプルギスの夜」においてこの中で最も被害を受けたのはフレイの治める天翼国フルブロジアだったが、彼女はもう魔王では無いため異論を挟むことは出来ない。
ギィはもう一度その場を見渡すと、これで決まりだという風に席に座ってルミナスに命令を下す。
「という訳で、だ。取り敢えずお前、魔物の国であるリムルの国と国交を結べ。ついでに教義も変えろ。話はそれからだ」
「相分かった。今すぐ戻って――」
「待ちなさいよ」
声を発したのは今まで部屋の隅に立っていたヒナタ。
この場に連れて来られた時とは打って変わって、全身から怒気を発しながら憎しみを込めた眼でルミナスを睨んでいる。
「ふざけた話だわ。これがルミナス教の本質だなんて……ッ」
「ぬ……? 貴様、名は」
「聖騎士団団長ヒナタ・サカグチよ。そして、貴女という邪悪を滅ぼす者の名よ!!」
喊声と共にヒナタが駆け出す。
一瞬の内に間合いを踏み潰し、レイピアの如き引き絞った剣から神速の突きが放たれようとして――
「帰ってから喧嘩しろお前ら」
その一言と共に、ギィによってルミナスごとルべリオスに瞬間転移魔法で転移されられた。
「「「…………」」」
二人が消えた後、何を言っていいのか分からない魔王達による気まずい沈黙が少しの間だけ続き。
「さて、今日新たな魔王として立つリムルよ。君に素晴らしい特権を与えたい」
「特権?」
「そうだとも、我らの新たなる呼び名を付ける権利。それを君に進呈する」
ギィのその言葉でようやく思い出したかのようにピクリと反応する魔王達。
何かを察したリムルが目線で助けを訴えるも、全員に目を逸らされてしまう。
「あ、遠慮しときま」
「ん?」
ドカァンッ!!
ギィが手刀で円卓をかち割った。
「お前が人数を減らしたのが原因なんだぜ? 責任、取ってくれるよねぇ?」
「……わ、わかったよ! 後で文句言うなよ!?」
リムルは折れた。
×××
それがリムルによって名付けられた、魔王達の新たな呼び名だった。
その呼称は諸手を挙げて受け入れられ、その後しばらくの歓談を挟んでから一人また一人と魔王達は帰って行く。
「いやあ、アンタも大変だったんだね。何か困ったことがあればこのラミリス様を頼るがいいさ! なんならアタシの弟子にしてあげても『ア、そういうのは間に合ってますワ』食い気味っ!?」
何となく話しかけ辛かったワルプルギスにラミリスが話しかけに行ったのを見て、ディーノとダグリュールも帰り際にワルプルギスに声を掛ける。
「ディーノだ。で、こっちのデカい奴がダグリュール。もう会うことも無いだろうけど、よろしく頼むよ……じゃ、俺は帰って寝るから……」
「ふむ。ヴェルドラとの喧嘩も捨てがたいが、機会があれば一度お主に挑ませて欲しいものだな。それにお主のおかげと言ってはなんだが、ルミナスの力を大幅に削ぐことが出来た。感謝するぞ」
そう言い残して二人は帰って行った。
そしてそのタイミングを見計らって、今まで俯いていたミリムがおずおずとワルプルギスの傍まで近づくと不安そうに口を開いた。
「あ、あの……ワルプルギス……その、あの時はワタシが……」
『ミリム』
「っ」
言葉を遮るようにミリムの肩にワルプルギスの手が置かれ、ビクッと肩が震えるように跳ねる。
ワルプルギスはそんなミリムを見て困ったように微笑むと、しゃがみ込んで目線の高さを合わせた。
『良いんだ。あの時は私も悪かった。皆を喪ったばかりで、お前の気遣いを撥ね退けてしまった。ミリムのことが嫌いになったわけじゃないよ』
「っ! ほ、ほんとか……? ひぐっ……! で、でもぉ……!!」
『でももなにも無い。お前はあそこの一員だったんだ。だろう? なら、お前は私のトモダチで、家族だよ』
「う……うわあああああああん!! ぶわああああああああああああ!!!」
堪え切れずに大粒の涙を流しながらワルプルギスを抱き締めるミリムを見て、リムルは良い話だとうんうん頷く。
近くに居たもう一人、ギィはというと、念話に割り込んでいた為にワルプルギスが発する男の声も聞こえていたのだが、特に驚いた様子も無く眉を少し吊り上げただけで後は黙って様子を見ていた。
やがてミリムは一通り泣いて泣き疲れると、赤くなった目元を擦りながらフレイとカリオンと共に手を振りながら帰って行った。
「すぐにまた会いに行くのだーーー!!」
これで、会場に残っているのはリムル一行とギィだけになった。
「それじゃ、俺達も帰るか」
『エエ、そうですワネ』
リムルは未だにソファーで寝転んで漫画を読んでいるヴェルドラを叩き起こすと、魔王へと即位した際に貰った
来た時と同じように目の前に転移門が出現し、その扉を潜ろうとした瞬間だった。
ワルプルギスが消えた。
「―――ッ!!」
「………え?」
呆けたように声を漏らすリムルとは対照的に、ギィは弾かれたように立ち上がると目を限界まで見開いて先程までワルプルギスが立っていた空間を凝視する。
《告。強力な空間干渉を感知しました。ワルプルギスが存在していた空間が、何者かに世界ごと切り取られたと推測されます》
『
「今のは……誰かに世界ごとワルプルギスを持っていかれたのか!?」
「ああ。それも仮想世界じゃねぇな。完全な別世界が一瞬こちらの世界を侵食した」
「クアハハハハハハ!! 異世界転生というヤツだな!!」
「ギィ。お前は、何かを知っているんじゃないのか……? 誰がこんな事をやったのか、心当たりがあるんじゃないのか?」
明らかに尋常ではないギィの様子を見て訝しんだリムルが問い詰める。
ギィはそのことに気が付くと、乱れていた息を整えて一呼吸挟んでから自然な態度で首を振った。
「……いや、流石のオレでもそこまでは分からないぜ。だがそうだな、この状況はむしろ好都合とも言える」
「好都合だって?」
「そうだ。リムル、信頼できる腹心を伴ってオレが指定した座標まで転移しろ。ワルプルギスは心配するな、その内戻って来るだろうさ。だからこれは時間との勝負になる」
「ちょっと待ってくれって! いきなりそんなことを言われても困る。そもそも、まずはワルプルギスを助けに行った方が……」
「いや、今すぐだ。まさかお前、ワルプルギスがこちらの味方だとは思っていまいな?」
「うっ……」
ギィの見通すような眼差しに貫かれて、リムルが僅かにたじろぐ。
真なる魔王に覚醒したあの日、眠りから目覚めたリムルに『
《告。不確定な推論ですのでお伝えするつもりはありませんでしたが、極めて高い緊急性を要すると判断しました。あくまで参考程度にお聞きください。
個体名:ワルプルギスは敵です。どうか警戒を、
ワルプルギスは敵。
リムルが何よりも信頼を置く『
そうして生まれた疑惑が、魚の小骨のようにリムルの脳裏に刺さったまま抜けない。
それに、かつてリムルが知るワルプルギス像がその疑惑を更に加速させていた。
故に、万が一を考えてリムルはギィの提案に乗ることにした。
「分かったよ。でも、何を見せてくれるつもりなんだ?」
ギィの答えは簡潔だった。
「魔女の罰……忌々しい『火』だ」
×××
その場所は文字通りの異世界だった。
ワルプルギスの目の前に広がる光景は、まさに「壊れかけの世界」。
(なんだ? どこだここ?)
『サァ……?
まるで神がこの場所を作る途中で放棄したような、あるいは創造過程を何もかも間違えてしまったような、そんな狂った空間。
大地こそ存在するものの、水平線は滑らかな曲線を描くことなく鋭利な刃物で抉り取られたように断絶し、その断面からは土ではなく無機質な灰色が幾何学模様のように剥き出しになっている。
視線を上げれば、空は白とも黒とも言えない色をしており、まるで鏡のように地面の姿を映し出していた。
ある場所では川の水が下から上へと逆流していたり、あるいは空中で直角に折れ曲がって流れていたりと、世界が完全に壊れている。
そんなおかしな光景が、地平の果てまで続いているようだった。
「やあ、突然呼び出してすまないね」
背後から声を掛けられて、ワルプルギスは振り向く。
ローブのフードで顔を隠した男がそこには立っていた。
こんな奇妙な場所に居るというのに少しも動揺した様子は無く、それどころかその堂々とした立ち姿からは支配者の風格のようなものすら醸し出されているように見える。
男はただその場に立っているだけで、全ての生命を圧倒できる程の気配を絶えず放っていた。
ワルプルギスは即座に思考を巡らせて、目の前の人物の特定にかかる。
幸いにも、答えはすぐに導き出せた。
『……ヴェルダナーヴァ』
「正解だよ」
まるで初めから当てられることが分かっていたかのように、男はあっさりとフードを取った。
世界そのものの如く星々の輝きを宿す漆黒の長髪。
男にも女にも見える、余りにも美しい神秘的な容貌。
頭部から伸びた二本の神々しい角が、今まで隠されていたのか天を衝くように現れて伸びる。
ヴェルダナーヴァ。
星王竜、創造主、最初の竜種。
幾多の呼び名はあれど、その存在を余すところなく示す単語はただ一つ。
神である。
「フフフ、そう警戒しないでくれよ。ボクはねワルプルギス、君に期待をしているんだよ」
『ここはどこですノ』
「ここかい? ここはそうだね……複製世界とでも呼ぼうか。基軸世界を参考にして新しく世界を創ったんだ。そうでもしなきゃ、あの子たちにバレてしまうからね。流石に無から創造する程の力は無いよ、安心して欲しいな」
事も無げに言っているが、やっていることは紛れも無く天地創造に他ならない。
ワルプルギスを呼び出すため、たったそれだけの為に世界を創る。
ヴェルダナーヴァの力の一端を垣間見た気がして、ワルプルギスの笑みが引き攣る。
『それで、創造神がワタクシに何の用ですノ?』
「言っただろう? ボクは君に期待しているんだよ。君の決心を見極める為にここへ連れて来たんだけど……どうやら不要だったようだね。でも、せっかく会えたんだ。どうだい? ボクと一つ、取引をしてみないかい?」
『取引?』
「そう。君は君の望むままに世界を滅ぼせばいい。何ならボクも出来る限り手伝うよ。その代わり、君はボクの目的を少しばかり手伝う。そうすれば、"選別"した後の新世界に君の名も加えてあげよう?」
ヴェルダナーヴァは微笑を湛えてワルプルギスを見る。
見下すように、見下ろすように、ゾッとする程に冷たい瞳で。
『……アナタに協力すれば、ワタクシを手伝ってくれますノ?』
「そう、その通りだよ」
『ワタクシの邪魔をせず、この世界を滅ぼすのを認めてくれますノ?』
「そしてその後の新世界で君が生きていく資格も与えようじゃないか。価値ある者は、残さなきゃね」
悟ることなど叶わないが、もちろん嘘である。
ヴェルダナーヴァが再創造する世界、その世界に移住出来るのはヴェルダナーヴァ自身が認めた者のみ。
神は決して、ワルプルギスの存在を認めなどしない。
だが、そんな内心をおくびにも出さず、ヴェルダナーヴァにこやかに手を差し出す。
「さあ、この手を取ると良い。ボクと共に、新世界を創ろう!」
ワルプルギスは少し逡巡しているようだったが、やがて覚悟を決めたのか顔を上げてヴェルダナーヴァの方を向く。
それを見たヴェルダナーヴァは勝利を確信し、歓迎するかのように笑みを深め――
『だが断る』
「……なに?」
その余裕の笑みが、初めて崩れた。
ワルプルギスが嗤う。
嬲るように、嘲るように、顔の無いままで。
『勘違いしないで欲しいですワネ。アナタがワタクシに懇願する側ですのヨ? どうかボクを殺さないでください、どうか生かしてください、ってネ』
「……おかしいね。どうやら神に逆らうという事の意味を理解できていないようだ。ボクは頼んでいるんじゃないよ、君の行動を決定しているんだ」
『アラアラ、自ら全知全能を捨てた挙句にそのざまに成り果てた無能が何か鳴いていますワ』
「死にたいんだね」
『殺したいのヨ』
ヴェルダナーヴァの顔が明確に歪む。
ワルプルギスの頬が限界まで吊り上がる。
形を伴うほどの殺意が弾け、覇気が世界を分かちてぶつかり合う。
先に動いたのはどちらだったか。
「duz罰ryq」
その吐息は渦巻く炎となり、その言葉は『火』となる。
「ewft罰bpvtcg」
その『火』は刑となり、その刑は『魔女の罰』となる。
ワルプルギスは嗤う。
嘲笑、嗤笑、呵々大笑。
「アハハハハハ! アハハハハハハハハハハハ!!!」
「チッ、話はここまでだよ」
『火』を見たヴェルダナーヴァは忌々しげに舌打ちをすると、無造作に右腕を振る。
瞬間、何かが砕けたような音が響くと、世界が一斉に崩壊した。
ワルプルギスの身体が空中に投げ出され、落ちていくような感覚と共にヴェルダナーヴァの気配が徐々に遠ざかる。
辺りが一面の闇に包まれる中、ヴェルダナーヴァの声だけがワルプルギスに届いた。
「君はボクの掌の上で踊っているに過ぎないよ。精々ボクの役に立ってくれ」
その言葉はとても可笑しくて。舞台装置に投げかける言葉としては落第で。
だからワルプルギスは静かに、とても静かに宣言した。
『ヴェルダナーヴァ』
『お前を殺す』
デデン!
お読みいただきありがとうございます。
滑り込みアウトです。23日に更新するって約束したのに……俺って最低だ……。
ミリム暴れないの?って思っている方。よくよく考えてみて下さい。
例えばゴブタやベニマルが死んだとして、ミリムは暴れ出しますか?
はい、つまりそういうことです。
ミリムは純粋なまでに強者にしか興味が無いんですねえ。それか身内。