???:ウワアアアアアアアアアアアアアアア!!!
ぼく、わるい魔女じゃないよ!
洞窟を出て数日が経過した。
やはりというかなんというか、俺とヴェルドラの戦闘の影響は思っていたより大きかったようだ。
進んでも進んでも、どこまでも岩。
生命の気配を感じない不毛の大地は、洞窟のあった山を中心に半径20㎞ほどの円を描いて広がっていた。
プカプカと浮かんで進みながら、無い頭で考えてひねり出した意思疎通の手段を練習する。
魔女には物質創造の能力がある。
「舞台装置の魔女」が規格外すぎるせいで忘れがちになるが、本来魔女とは自らの結界の中に閉じこもっている存在だ。
一口に魔女の結界と言っても色々あるが、結界の中は例外なく様々なもので溢れている。それらは全て魔女が生み出したものだ。
「舞台装置の魔女」は結界を必要としないが、魔女である以上その能力は備わっている。
そうは言っても、何でも生み出せる訳ではなく、さらに生み出す物を具体的に思い浮かばないといけないという制限がある。
紙を思い浮かべて左手に集中する。ポンッ、と一枚の紙が現れた。
ペンを思い浮かべて右手に集中する。何も起きない。
万年筆を思い浮かべる。ポンッ、と右手に万年筆が握られた。
そう、意思疎通の手段、それは筆談。
ちなみにヴェルドラの言葉が理解できることからも分かるように、俺はなぜかこの世界の言葉を理解できる。
理由は知らないが、便利なので文句は言わない。
紙に『こんにちは』と書いてみる。
ここ数日の練習のおかげで、口で話すのと同じくらいの速度で文字を書けるようになった。
ところで字が汚すぎて通じないなんてことは無いよな?
いくら理解できるとはいえ、完全に未知の言語だから字の良し悪しが分からない。
まぁ、いざとなれば身振り手振りで何とかするさ。
人間、ノリと勢いがあれば案外どうとでもなれるんだよ、君ぃ。
俺人間じゃないけど。
口調はどうしようか。
「俺」じゃまずいよなぁ。
中身はコレでも、外面は立派な「舞台装置の魔女」だ、なるべくイメージは崩したくない。まぁ、この存在を知っている人は居ないだろうからイメージもクソも無いんだけどね。
これは完全に俺のワガママだ。
やはりここは、無難に「私」とかでどうだろうか。
「私」。
うん、良い感じだ。
一人称は「私」でいこう。
ついでに口調も敬語にしよう。
ロールプレイは大事だからな。
×××
さて、問題発生だ。
やっと遠くに森が見え始め、そろそろ境界線にたどり着こうかという頃、俺の「魔力感知」がある集団を捉えた。
200m先の森の中で、十五人ほどの魔人とやたら強そうな魔物の群れが戦っている。
それだけなら別に無視しても良いのだが、問題なのは俺の進路をふさぐように戦っているので、このまま進めば間違いなくぶつかるということだ。
いや、別に遠回りして避けても良いんだよ?
でもね?なんかシャクじゃない?
避けるべきはそっちでしょーが。
ねぇ????
こういう思考になるのは、魔女っぽくなっている証拠なのだろうか。
分からない。
しかし、これは見方を変えればチャンスなんじゃないだろうか。
一つは、コミュニケーションの練習。
そしてもう一つ。
今の俺は、厳密には「舞台装置の魔女」ではない。
小型化するにあたって、魔法少女の変身をイメージしたという話を覚えているだろうか。
俺は自分の身体を巡る魔素に干渉して、それを組み替えたり手を加えたり、文字通りに自らの存在を作り変えた。
魔法少女がもはや人間ではないのと同じく、今の俺は厳密には「舞台装置の魔女」ではない別の「魔女」になっている。とはいえ「厳密には」ってだけで、その差異は無視できるほどに小さいんだけどね。
しかも、いつでも元に戻ることが出来る。いやぁ、すまんね魔法少女諸君!
だからなのか、小型化すると使い魔が出せなくなり、それに伴って触手も使えない。
そして炎の攻撃の威力が半分以下に落ち、重力で操れる範囲も重さも十分の一になる。
その代わり、防御力は更に上がった。
でもなぁ、ただでさえ硬いのにこれ以上硬くなってどうすんだよ、マジで。
つまりこれが二つ目。
今の俺がどれだけ強いのか、実戦で確認といこう。
眼下で女の魔人たちと狼の魔物の群れが戦っている。
いや、違うか。
狼の魔物が魔人を
最初は牙狼族かと思ったのだが、よく見ると全然違う。
まるで突然変異したかのような赤黒い肉体に、触手のようにうねる毛皮、膨張している筋肉からは湯気が立っており、溢れ出る妖気は禍々しい。
なにコイツ。こんな狼の魔物知らないんだけど。
しかもかなり強いな。一体一体が確実にBランクは超えているだろう。ランクの基準は覚えていないし、ぶっちゃけ適当な勘だが。
魔人たちも弱くはなく、なんとか数頭を殺せてはいるのだが、残っている狼のほうが圧倒的に多くて明らかに不利な状況に立たされている。
狩りをしているのは群れの一部で、残りは魔人たちが逃げないように周りを囲って様子見している。
ほら、今も一人殺された。
元々十五人いた集団は、今はもう九人しか残っていない。
流石に目の前で全滅されるのは嫌なので、そろそろ動こう。
森の上空に浮かんでいた俺は、彼女たちの前に着地すると群れの内の一体に向けて炎の槍を飛ばしてみる。
ボッ! チュドォン!!!
あれ?
小手調べのつもりだったのに、炎の槍は魔物に当たるや否や塵も残さずに消し飛ばし、突き抜けた先で地面に着弾して爆発を引き起こした。
今の一撃で群れの三分の一は死んだな。
「……え?あ、え、え?」
「え?こ、こ、この模様って……」
背後で彼女たちの困惑している声が聞こえる。
俺だってびっくりだ。見た感じ結構強そうな魔物だったし、死にはしないだろうが大ダメージは与えられるだろうな~とか思っていたのに。
突然の乱入者に呆けていた狼が、様子見していた狼も含めて瞬時に散開する。
「ガルルル……ガウッ!」
どうやら俺のことを脅威だと認識したようで、ひと際体の大きいボスのような奴が先陣を切って俺の喉に嚙みついた。
その瞬間、残りの奴らも次々と身体に噛みついてくるが………うん、予想はしてたけど何も感じない。服に傷すら付いていない。
「ガルッ!ガルルッ!……キャウ?」
器用に首を傾げているところ申し訳ないが、早急に退場してもらおう。
俺は全身に炎を纏わせて噛みついている数体をまとめて燃やすと、今まさに逃げ出そうとしている残りの狼を炎の槍で殲滅していく。
FPSのゲームみたいで結構楽しいぞ、これ。着弾した傍から爆発するのが難点だけど。ちょっとオーバーキルが過ぎる。
その甲斐もあってか、最初は三十二頭居た狼の魔物はみるみるうちに減っていき、あっという間に全滅してしまった。重力操作を使うまでも無かった。
後に残ったのは俺と彼女たち、そして局地的に焼け野原になった森。随分と視界が開けたな、うん。
さて、俺は振り返って紙と万年筆を出すと、ササッと文字を書いて見せた。
『こんにちは。大丈夫ですか?』
「……………」
どうしたのだろうか。
さっきから彼女たちは俺の背後を見つめたままピクリとも動かない。
いや、目だけは徐々に見開かれていっている。怖い。
『どうかしましたか?』
「あ……あ……」
今度は小刻みに震えだした。全員の視線がせわしなく動き、ガチガチと歯の当たる音が響いている。
おかしいな、妖気は人間レベルまで抑えているのに。
あ!!
そうか、魔法陣か!
何故か小型化しても、背後でゆっくりと回転している魔法陣だけは消えなかったのだ。消そうとしても消せなかった、というべきか。
確かにこれは怖いだろう。
急に空から降ってきたと思ったら瞬く間に魔物を全滅させた得体のしれない存在が、背後で得体の知れない魔法陣を回転させていたら怖いに決まっている。
しかし、どうやって説明するべきか。
馬鹿正直に本当のことを教えるわけにもいくまい。
取り敢えず、まずは敵じゃないということを説明するほうが先だな。
そう考えて紙に文字を書こうとした俺よりも、彼女たちが動くほうが早かった。
全員が一糸乱れぬ動きで、いきなり地面に平伏したのである。
「「「「我ら一同、貴女様に絶対服従を誓います!!必ずお役に立って見せますので、どうか、命だけはご容赦を!!!」」」」
oh……
WHAT
THE
FUCK(ネイティブ発音)
お読みいただきありがとうございます。
見たことない伸び方してやがるぜ…
お気に入り600超え!?
ありがてぇ、ありがてぇや
休む休む詐欺が激しいこの僕ですが、いったん筆が乗ると止まらんのですよ。ええ。
しかし、今度こそは大丈夫です。
明日は映画を観に行くし、土日は用事があって忙しいので、流石に書くことが出来ません。
では、また次話でお会いしましょう!