お前はもう死んでいる
「えー、本日お集まりいただいたのは…説明しなくてもわかるか。じゃ…各人持ってきた?」
「その前にいざこざだけでも」
「ダメ。俺の解呪が最優先。他は二の次。57577の77の部分。」
「まずは上の句、ということだね?」
「もしこの場で暴れるのなら。俺の呪い本体を持って来ますので、どうぞご勝手に」
来たのは白蓮と華扇、豊郷耳に面白半分の青蛾と観察しに来たパチュリーノーレッジ。解呪する奴が四人しかいないのが心残りだが、まあ仕方ない。予定を前倒ししてまで解呪するのだから、多少の不便は無視できる。各人解呪のために必要なものを持ち寄り、相性の確認。これは俺がやる。俺も解呪に不必要なマジックアイテムを取らなければならないから面倒なんだよなこれが。…本音を言えばあと一人欲しかった。途中で俺は抜けるから。豊郷耳と白蓮の腕次第でもあるわけだな。
「柏、貴方の死体見せて♡」
「そんなにいいもんじゃないぞ。あ、誰か青蛾抑えといて」
「こんなにも呪いがたまるものなのか」
「二度目ですが、かなり凄惨な呪いですね」
「まあ素敵」
「柏はこの状態から魂だけ抜き出したのね」
一人変な奴いなかった?まあ青蛾か。まあそうだろうな。さて、大物が二人来ていて少し肩身が狭いので早く終わらせよう。皆に伝えておくこととして、解呪に失敗したら多分死にます。呪いが広まる呪いがかかっているので。しかしそんなことがあれば私の面目が死にます。よって、それぞれを結界で区切る。俺、華扇、豊郷耳、白蓮の順に遠ざかってもらう。その間に結界で区切りをつける。失敗したら結界破って逃げて♡ということ。無理なら死ぬだけだもん。
「その順番に意味は?」
「白蓮は死んだらまずいだろ。華扇ちゃんはそこからでも多分逃げられる。お前は知らん。俺は生き残るつもりない」
「…私は近くからでも抜け出せますが」
「触っていい?」
「華扇ちゃん、あれ持って来て」
「はい」
結界で区切り、俺と華扇の間にある結界を強化する石を置く。…眉唾物だけど、効果は多分ある。なくても多分大丈夫。そうして準備が終わり、それぞれが解呪のための道具を取り出す。わかりやすいので白蓮のものだけ伝えるが、やはりセオリーは数珠とかだろう。何その刀。何その巻物。何この魔法。…まあ、いい。狐の放った呪いなんだから効果はあるかもしれんと狛犬も設置してあるぞ。狐は狼が嫌いらしいからな。狛犬でも効果はあるだろ。たぶん。
「じゃあやるか」
「あ、待ってください」
「私も少し待ってほしい。」
「…私は別に今からでも。」
全員の準備が整ったところで、俺の死体と向き合う。…呪いで見えたもんじゃないわ。気持ちわる。見てたら腹下しそう。あと本当に瘴気がひどい。マジックアイテムのせいだと思ってたのに、普通にこいつが瘴気放ってたのかよ。瘴気をマシにするために塩を振りかける。…うん、増したわ。あの狐許さん。とは言えこの塩を皮切りに始まったのは確実で。なんかもう、掛け声とかもなしにぶつぶつ唱えはじめられた。俺はマジックアイテムで瘴気を魔力に変えながら吸収して、…何やってんだっけ?
「あぶねえ忘れかけてた」
「柏の体から離れろ柏の体から離れろ柏の」
「怖えな…」
魔法陣を一つ追加。解呪のための魔法である。なんかすごい速さで呪いが消えてる気がしなくもないけど、それでも底が見えないのは八雲藍のせいだろう。俺が扱う解呪の原理は至極単純な正攻法。一つの呪いに対して最適な魔法陣に変化するだけ。どんな鍵にも使える万能鍵みたいなもの。ちなみに解呪を始めると呪いがそれぞれ発動しやがったので、たぶん手を緩めた瞬間死にます。やったぜクソが。さてそろそろ俺が抜ける頃合いか。魂になってさっさと生身の体に入っちゃう。瘴気を吸収することだけは忘れずに。
「おっしゃ入れた」
「あら可愛らしくない」
「黙れ青蛾」
「魂だけになれるのね」
「すごいでしょノーレッジ」
自慢。勿論必死に。それぞれがやることを終えたように振る舞う頃には、俺の集中力が限界を迎えていた。結界に瘴気が満ちている。…生身なのに無事なのは少し変だな。アフターサービスと言わんばかりに白蓮が祓ってくれた。ありがとう。いやしかし、なんだかんだ言ってあっさりと終わった。全員変なこと唱えてるだけだし、俺は魔法陣維持するだけだし。あーでも少し時間かけすぎたな。視力が弱くなった。というかたぶん五感全部が弱くなってる。蝕む呪いの基本みてえな効果だけ残ってる。何これ嫌い。
「…どっと疲れました」
「刺したら一発だったんだけれども」
「この三人がいたのなら結界で区切るほどには思えませんでしたが」
「正直言って俺だけ囲めば良かったんだけど、瘴気が怖いから全員囲んだ」
「成程」
「じゃあ全員帰れ」
「では。」
「私に対する謝礼がないな?」
「あるんですか?」
「白蓮は素直に帰ったのにさ。」
あーめんどくせ。青蛾を帰す。ノーレッジも。そして最後はこの二人。豊郷耳と華扇。…もう終わろうぜ、帰ってさ。無理?あ、そう。豊郷耳の要求は予想できていたので、仕方ない渡すか。豊郷耳には伝記を渡した。名のあるらしいよくわからん奴の寝床から奪ったものだ。ずいぶん前のことなので詳しくは知らん。が、受取拒否。華扇には俺の持ってるマジックアイテム一式だ。受取拒否。…仕方ないので、我が家から好きなものを持って行けと言った。俺はマジックアイテムの整理をしなければならない。めんど。
「…おれの宝物でいい?」
「私は構わないよ」
「じゃあ私はこの神器で」
「お前それは盗むのに3年かかった奴だぞ」
「だから貰います」
宝物→後生大事に取っていた簪。青蛾から貰ったもの。