思いつきで歩き回り、疲れたので仙界に帰ろうとしたところをよく分からん奴に捕まった。白黒、どっちつかずの様な色をしている。人間だろうか。興味がないので振り解くも、その様子が怪しいとか何とか言われてマジックアイテムを向けられた。…なんで全人外が人里の外にいるってだけの人間に興味を持たなきゃならんのだ。どうせ数十年で消えるのに。価値観の違いってものをわかってないね。マジックアイテムがあることから、多分魔法使いか何かだろう。…魔女になるんだったら多少の興味が沸くところだが。
「じゃあな」
「動いたな?」
何を了承した覚えもないが、目の前を光で包まれた。うわ強い死ぬ。死なないけど。死神の大群よりは対応し易い。ただ力を放出しているだけの魔法なんてものは…と言いたいが、それにしては強い。どこぞの花畑を思い出す。見事耐え切って見せるが、仙界に入るための道が消えた。成る程、威力は確かに花畑の化け物を語るくらいにはあるのだろう。面白いが、それだけ。本人の顔を見るにこれ以上はないといった感じなのだろう。精一杯の一発芸。興味なし。帰る。
「何だあの馬鹿は…」
「私のことか?」
「っ」
「耐えられたからな。入れそうだったし入った」
「文脈を知らないのか。可哀想な頭だ、煮崩しても大した味はないだろうな」
「…ところで、どうやって耐えたんだ?魔法か?」
「そもそもお前は誰だ」
「私は霧雨魔理沙!幻想郷だと普通の魔法使いやってる!」
「魔法…誰に教わった?」
「色々!まあ独学の部分もあるけどな」
それを聞いて、ならば問題はないかと思って仙界から追い出そうとする。が、何故か強気にこちらに来る。困ったな。追い出そうにも先ほどの魔法を撃たれるのは勘弁。先程はある程度離れていたから対応できたので、近づかれたくない。ぶっちゃけ離れて欲しい。華扇以外にそこまで近づかれることはほとんどないのだが、そこら辺分かっているのか。一発芸の魔法使いが俺の行動に制限をかけないで欲しい。仙界の中にある我が家に入り、鍵をかけて入って来れないようにする。
「窓から入るけどな」
「窓のすぐそばに床を置くわけないだろ。そのまま地上にでも行ってこい」
落とし穴。仙界は天界に位置してはいるので、そのまま地上に真っ逆さまであふ。床を閉じ、ようやく一人の時間を楽しめる。…そういや、初めてここに来た奴がさっきの霧雨魔理沙になるのか。初来客。華扇に無理を言ってでも来てもらうべきだったな。あんな奴が初来客なんて、俺は嫌だ。まあ、おそらく華扇は嫌がるだろうが。言ってしまうと、そこまで嫌われるようなことをした覚えはある。が、俺と華扇では価値観が違うため、理由までは分からない。気晴らしに霧雨魔理沙の死ぬ様でも見に地上に行く。
「君」
「…」
「…おーい」
「誰だお前」
「ああ、すまない。私は」
「そうか。黙ってて良いだろ」
「えっ」
「まだ喋るのか」
隣にいる変な女を横目に、落下を待つ。…が、遅い。魔法使いだから飛べたのか。それとも、実際は飛べないが顔が広くて助けられたか…だな。やっぱり興味のない人間。体の向きを変え、気晴らしの気晴らしに人里に寄るとする。が、何でか知らんが変な女に待ったをかけられる。勿論無視する。久しぶりに飯を食うのも悪くはない。それをするには金がいるが、まあ結構頻繁に地上には来ている。…魚を売れば、多少は金にはなるだろうか。適当な魚屋にデカめの魚を叩き付ける。
「…これくらいにはなるか。」
「随分と安く買い叩かれたね」
「…」
「おーい…まさか全部無視するつもりかな?」
そのつもりなのに察さないこの女はなんなのか。あまり近寄らないで欲しい。純粋な嫌悪感がすごい。袋に詰めた金を数え、目の前にある飲食屋の金額を読み、これはもしかしなくても魚を食ったほうが良かったかと少し困惑する。こういうものの値段には人の手や保存などの金もかかる。やはりある程度里の飯に精通した奴が欲しいな。変な女は妙な自己主張を始めたが、無視。お前がお前を指で示しても、生憎お前を頼ることはしない。やはり帰っていたほうが良かったか。
「ここの店は特に米が人気なんだ。量は勿論、味でもね。」
「帰るか」
「えっ」
「お前は好きそうだな。ここで食っていくと良い」
「は?」
興味の湧かない変な女だった。宗教勧誘をしていたやつではあったが、神霊廟のリーダーがあれということはない。多分。表には出ない奴がいるのだろう。そいつが青蛾だったり。いや、少しありえない話だな。やっぱりあれがリーダーなのか。金髪の変な耳。そこら辺も華扇の方が詳しいだろう。というよりも、あんな奴らと出会ったことに対する口直しとして会いに行くだけだが。華扇の仙界は万人に開かれているとは言え、ある程度の進み方はある。仙界への入り口を掴むことは、その仙人がどんな人間であるかの把握が必要不可欠だ。華扇はわかりやすいけど。
「よう」
「どうしました?」
「神霊廟の金髪で変な耳してる奴って、どんな立場?」
「…立場、ですか。そうですね。リーダーですよ」
「あんな奴が?」
「結構酷いですよね」
以前青蛾と出会った時に話した、面白い聖徳王の話。それがあいつであることを再認識。やはりあいつらは青蛾の弟子という立場にはなるのだろう。あいつがそんなことをするとは思えない。これが俺の本音ではあるが、勿論これも俺の意見。キョンシーを作る奴が自律した傀儡を作りたがっても何ら不思議ではない。問題は傀儡のような気配が何もなかったという点だ。そもそもキョンシーでさえある程度の話を聞くし、ある程度の自律はしている。つまり、なんだあいつら。青蛾も何を考えている?
「華扇ちゃんに会えたし良いか」
「気持ちが悪いです。出て行ってもらっても?」
「里の美味い飯」
「…わかりました。その代わり、絶対ですよ。」
「?」
「で、何がしたいんですか。私をご飯で釣ってまでやりたいことは。」
「…あー…いや、美味い飯教えて貰えばもう帰るだけだぞ」
華扇はその後、美味い飯を教えて柏が帰ってからは静かに布団に篭った。