「片腕捨ててきたわ」
「はい?」
「意外と不便だな。華扇ちゃんもそうだった?」
「はい??」
捨ててきた。腕をつけるよりも試したいマジックアイテムが別の仙界にあったからだ。どう言うわけか出来ていた新しいマジックアイテム。と言うよりも義手。予測不可能な呪いには予測不可能なマジックアイテムの融合をと適当に放り込んでいるのだが、たまに実用的なマジックアイテムもできるからバカに出来ない。煙幕も吸収も、仙界の中で作られたものだ。実質仙界で蠱毒をしているわけだな。ちなみに、隔離用の仙界に長居すると普通に死ぬ。呪いもあるしマジックアイテムもあるから当然だな。
「んで、こいつが面白くてな。義手の中が空洞なんだよ。物運べるんだわ」
「…柏、頭がおかしいのよ。知り合いに漬ける薬があるか聞いてくるから、待ってて」
「えっ」
なんだか本当に心配されているようだ。ちょっと嫌だな。でも取り付けられた義手はとても快適に動く。そんで持ってこのマジックアイテム、驚くことに魔力以外でも動く。魔力に変換するわけでもないのに。つまりこいつを使う時に態々魔力に変換することもないわけだな。吸収するマジックアイテムは腰にぶら下げることで融合することを避けている。腹の中に煙幕なので融合はもうあり得ないと言える。さて華扇だが…どうするべきか。行ったのはもう仕方がないと割り切るだけなのだが、知り合いの方だ。馬鹿に付ける薬はないと門前払いされてくれると嬉しい。
「連れて来たわよ」
「誰?腕をちぎって義手を付ける馬鹿は」
「…華扇ちゃんって、俺のこと嫌う割には結構献身的よね」
「と言うわけなので四肢を取り外す方向で…」
「仙人でしょ。腕が鳴るわ」
名前は永琳。医者をやっているらしいが、役職としては薬剤師が一番の天職らしい。つまりこいつは得意なわけでもない分野で飯を食っているのだとか。変なの。桃を一口齧る。天界の桃はやはり味が薄いなとかそう言うことを考えていたらガチで四肢を取られそうだったので、その場に正座。無益な争いがどうとか言うわけではないのだが、俺は華扇に勝てない程の力量なのでどうかガチギレだけは勘弁願いたい。折角の義手も取られるのだけは避けるつもりだ。
「なるほど…面白いわね」
「だろ。だから割とマジで無くなると困るんだよ」
「…だけど?」
「御足労をおかけしました、すみません…」
なんだったのか、永琳は帰った。さて、ここでふと思ったことがある。俺の体から腕を取ったのだが、死体の方も取れているのだろうか。確認するつもりはないのだが、気にはなる。…が。勘違いが発生しそうなので断っておく。多分この先二時間はあの空間に入らないほうがいい。死にたくない。俺はまだ死にたくないので放置だ。あの空間重いしキツいし。隔離した理由もそれなのだが、誰かが気まぐれで入ったりしないかが不安だ。死体もあるし、マジックアイテムも大量にある。あと入って出られたら呪いがどうなるかも分からない。
「切り離した腕はどこに?」
「…そこ」
「何を言っているんですか。これは座布団でしょう」
「腕の肉を培養して増やした。いい感触だろ」
「気持ち悪いですやめて」
「勿論嘘だ。腕は然るところに放った。今頃は跡形もないだろ」
「…無縁塚ですか?」
「あんな所に捨てたらダメだろ。俺だけが知る場所だ」
「…まさか、青蛾の」
「やめて?」
青蛾に渡したら、多分大変なことになる。それか芳香の腕になる。これでも腕は細い方なんだ。やめてほしいと言うのが切実な願い。…後で天界の桃盗むか。あいつら自身刺激に飢えてるっぽいからな。その刺激を満たす行為にもなる。万々歳だろう。前殺されかけたが、それも刺激の一つと受け取って寛大な心をだな…無理か。まあそんなことはさておき、腕の新調を華扇に自慢したかっただけなのだが、医者を呼ばれたり腕の居処を聞かれたり…。何がそんなに気になるのやら。
「あ、そうだ」
「どうしたの華扇ちゃん」
「私、明日から少し集中して取り組むことがあるので、呼ばないでください」
「分かった。そんじゃ〜」
「…仙界も閉じますからね」
「なんで?」
天界に来た。天界の癖に、天国ではない。あの世でもない。天界に来たと言っても仙界の外に出ただけ。浮島のどこかに桃のなる木があるはずだ。…木だよな?まあそれとは別にやって来る馬鹿もいるが。桃を一口食べる。不味い。やっぱりどこぞの家から持ち出すと鮮度がなぁ。木になる桃を探すのなら、いっそ木を盗んだほうがいいかもしれない。…そうするか。天界の奴らには申し訳ないな。特に青髪の天人。略さず馬鹿。と言う考えを巡らせていたら本人が来た。…根本からの話をするが、俺は力でこいつには勝てない。逃げるか。
「待ちなさい!今日こそ桃は取らせないわよ!」
「…よっ」
「さあ、どこ…あれ、え!?落ちた!?」
面倒なので地上に行く。修行代わりに囓る桃も大事だが、思いつきの行動も大切だ。あんなものに番人がついたのなら思い付きを実行する。桃だけならまだしも、木を運ぶとなっては難しい。地上に降りて、まず視界に入ったのは鬼。横に天狗。山でもないのに変な、と思って周りを見渡すと、とってもやばいことが判明した。鬼がジッとコチラを見ている。萃香が。俺を。じーっと、見つめている。…天狗の顔が青ざめている。次に起こることはもう分かった。腕から煙幕のマジックアイテムを取り出す。
「何しようとしてるんだぁ?酒呑めよ!」
「っ」
「ほらぁ!」
マジックアイテム同士には相性があり、相性次第で融合したり変な作用を起こしたりする、らしい。
柏は能力によって体に流れる力を変換し、魔力を通らなくすることで吸収だったりのマジックアイテムと作用させないようにしています。これは腕の中にあるマジックアイテムも同様です。