オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
至高の41人が多数登場しますが、主要メンバーのオリキャラは登場しません。
(私の想像力が足りないので)
初心者ですので暖かく見守っていただければありがたいです。
また、ご意見いただけるととてもありがたいです。
全体的な流れや、終わり方は決めていますが、細かい部分はいただいたご意見を参考にしたいと考えています。
こうしたら読みやすいとか、名前間違ってるとか、教えていただけるととても喜びます。
それではよろしくお願いいたします。
2136年1月。
一世を風靡したゲーム、DMMO RPG<Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game>『ユグドラシル<Yggdrasil>』はサービス開始から10年の時間が過ぎた。
ユグドラシルの9つの世界の一つ、“ヘルヘイム”のグレンデラ沼地に存在する“ナザリック地下大墳墓”をギルドホームとして構える、悪名高いギルド:アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターであるモモンガは、一人新年からログインし、昨年も手に入れた『嫉妬する者たちのマスク』を見つめながら心の中で思うことを呟いていた。
「ああ、去年のクリスマスイベントも楽しかったなぁ…。でも最近、皆あんまりログインしなくなってきてるよな…皆リアルがうまくいってるってことか…いやでもヘロヘロさんとかは健康やばそうだよなぁ…転職うまくといいなぁ…俺も体に気を付けながら今年も(課金のために)頑張ろう」
モモンガこと鈴木悟は、外見は最上位アンデットの一種『
同じ頃、リアルの粗末なアパートの中で、ある男がメールを受け取った。
『あけましておめでとうございます。今年もよろしく。ところで今日の夕方、暇なら第4区画のいつもの公共ルームで会いませんか。他愛もない話でもしたいので。——鈴川』
メールを見たその男は、文面の中の『他愛もない話』という文字を見ると、黒く沈むような瞳を少し細めたのち、指先を動かして、了解する旨のメールを作成し返信のアイコンをタップした。
***
公共ルーム。そこはおよそ100年前まではおそらく『公園』と呼ばれた場所だ。
しかし環境汚染がどうしようもないところまで進み、もはや防毒マスクなしでは外出も難しい現在は、公共の広場は室内に作られている。
たが、その比較的安全な公共ルームへ足を運ぶためには、体に害のある外気の中を一定時間移動しなければならない。
新年であるという時期柄もあるが、そういった事情から公共ルームに人がいることは滅多にない。
ただしこれは富裕層が住む完全環境都市アーコロジーの中では違った話で、そもそもアーコロジーは浄化フィルターにより本当の意味での外気にはさらされていないので、『公園』が存在していて、人々はそこで安全に時間を過ごすことができる。
男が指定された公共ルームに着くと、男を呼び出した存在はすでにそこにいた。
「ああ、あけましておめでとう」
「ああ・・まあおめでたくはないが、どうしたんだ鈴川さん。“他愛もない話”なんだろ」
“他愛もない話”
それは、二人の間で決められた符丁。
対巨大複合企業に関連する話をするときの合図だ。
“鈴川”と呼ばれた男は、相手のせっかちな様子に少し首をすくめながら封筒を差し出した。
「詳しくはこのディスクを読み込んでくれ。もちろんオンラインからは隔離された端末でな。俺の、まあ別の知り合いが手に入れた“あちらさん”にとって都合が悪い情報だ。一応言っておくけど自己責任でな。これを手に入れた俺の知り合いは…」
鈴川はそこまで言うと、一拍おいて続けた。
「“事故死”した。俺はやめとけと言ったんだが、公共ネットで流そうとしたようだ」
その説明を聞いた黒く沈む色の目の色をした男は、「クソが…」とつぶやくと受け取った荷物を懐にしまい、鈴川に目線を合わせて言った。
「あんたも…大丈夫なのか?」
鈴川は一度目を閉じて、そして再び目を開くと言った。
「実はな、俺もその“事故死”したやつと同じことをしようと思っていた。状況は良くない。環境も、健康も…この世界はもう終わりに向かって進んでいて、もう戻ることができないように思う。少し自暴自棄というやつだったかもしれない」
黒く沈むような目の色をした男は、頭の回転が速く、思慮深く、どちらかといえばかなり慎重な目の前の男が、そのような判断をしようとしていたという事実を理解し、ただの“同志”というだけでなく、明らかに“仲間”であった男にその判断をさせた、憎むべき者たちへの憎しみをさらに高めた。
そしてその憎しみが自身の目つきがさらに悪くしていくことを感じた。
だが、鈴川の次の言葉を聞き、少し虚を突かれたように眉間の皺を緩めた。
「だけど、今日わざわざ来てもらったのは、そんな自暴自棄をする前にやることがあるって思ったからなんだ。ウルベルトさん」
「……どういうことだ?ベルリバーさん」
二人はお互いを、10年近い時間を他の仲間たちとともに過ごしたゲームの中での呼び名で読んだ。
「“事故死”した知り合いはな、ユグドラシルプレーヤーだった。覚えてるか?ギルド:燃え上がる三眼。あのメンバーだ」
「ああ…懐かしいな。」
ギルド:燃え上がる三眼は、ユグドラシルに存在した、ある意味最も有名なギルド。様々な上位ギルドにスパイを送り込み、情報を入手して有料サイトにて公表。その結果恨みを買った様々な上位ギルドによってリスポーンキルを繰り返されついには壊滅した。
自分たちのギルド:アインズ・ウール・ゴウンがギルドメンバーの新規加入を停止した理由でもある。
そんな、<ユグドラシル>においては敵であったギルドのメンバーであっても、リアルの、本当にやらなければいけない目的のためなら、ためらわずつながりを持つ、鈴川、ベルリーバーという男に、ウルベルトと呼ばれた男は少し敬意を持った。
「実は、そいつと知り合ったのは“三眼”が壊滅した後だ。リアルで“あちらさん”の情報を集めてる時に出会った。なんでも“三眼”はゲーム攻略のために情報を集めていただけでなく、“あちらさん”の情報を集めるために活動していたメンバーもいたらしい」
「??どういうことだ?」
「これはあくまで仮説なんだがな、“あちらさん”は何らかの目的のために<ユグドラシル>で情報収集をしてる可能性があるということだった」
「それは…貧困層が不満を持たないように仮想現実でストレス発散をさせるために作られたとか言われてたアレのことか?」
ウルベルトは、DMMO RPGについて、まことしやかに噂されていた説を口に出した。
「いや、まあ、それも間違いではないな。実際、運営の上には“あちらさん”がいるようだし、貧困から搾取しているのも事実だ。だが、その件じゃない」
ベルリバーはスマートガジェット端末を開くと、アプリを指さして言った。
「これ、ウルベルトさんはまだやってるっけ?」
ベルリバーが指さしたアプリには<Yggdrasil>の文字。
それは今から1年前位に実装された、<Yggdrasil-Mobile>というアプリ。
アプリとしての評価は最低のその次。つまりクソアプリだ。
まず、このアプリは、実際に<ユグドラシル>でアカウントを持っている必要がある。
しかしながらこのアプリで遊べることは<ユグドラシル>プレーヤーにとっては、大したメリットがない。
少なくとも現時点では、このアプリをインストールしていなければ手に入らないアイテムや、発生しないイベントなどはなく、せいぜい装備の変更や、自動生成される難易度が高くないダンジョンを自動攻略できるといったところ。
いわゆる“ログインボーナス”も、ジョークグッズや低位の消費アイテムしかない。
にもかかわらず、万が一アプリでの自動操作状態でキャラクターが死ぬと、ちゃんとデスペナルティーを食らう。
廃人が揃う、ギルド:アインズ・ウール・ゴウンのメンバーは皆、アプリ発表後インストールはしたが、実際のアプリの使用感の悪さから、その後ほとんどアプリ起動をしていないかアンインストールしている。
メンバーのぺロロンチーノなどは、アプリでローパー系モンスターが出現する自動生成ダンジョンに一人で挑み、麻痺を食らって動けなくなった後、毒も食らってじわじわと体力を削られて死亡し、デスペナルティーを食らって真っ白になっていた。
ウルベルトは、そんなぺロロンチーノを爆笑しながらスクリーンショットで撮影し、それでもレベルダウンした分を取り返すために一緒にダンジョンに潜った時のことを思い出しながら答えた。
「いや、ダウンロードしたけどクソ仕様だったからアンインストールしたな。」
「俺も、一度同じ理由でアンインストールしたんだけど、その例の“三眼”だった奴が、ハッキングしてアプリをダウンロードしているアドレス一覧を確認したら、なぜかアーコロジー内からのアクセスが85%を超えていたらしい。俺が知る限り、このアプリがクソ仕様だってわかってからはアンインストールしたやつが多いはずだ。有料だしな。」
「それは…たしかに妙な話だな」
「まあ偶然という可能性もある。クソ仕様でも有料のアプリを利用し続ける余裕がある人間がまだ利用しているだけというバイアスの可能性もな。ただ、本質はこの件じゃない。そいつがこの件で<ユグドラシル>に興味を持って、アプリじゃないほうへのハッキングも本格的に始めたところ、あることが分かった」
ウルベルトは、ベルリバーの少し疲れた、それでも英知の光が宿る瞳を見ながら、首を動かし続きを促す。
「ユグドラシルは、2138年の6月にサービスを終了するらしい」
「……ん?」
予想していた言葉、何らかの巨大複合企業の目論見、そういったものを受け取る準備をしていたウルベルトは、予想外のベルリバーの言葉に少し頭を傾げた。
「……だから、どういうことだ?」
「“三眼”のやつが言っていたことの真偽は分からない。だが、終わりが決まっているゲームのクソアプリを、富裕層がダウンロードし続けている理由は何なのか」
「…確かにな」
もちろん、ベルリバーの言うバイアスの可能性もある。ただ、矛盾があるのも事実だ。
「今日渡した“情報”だけで動くのは時期尚早かと思ったんだ。2138年より後には今以上に情報があるかもしれないと。それに…」
「それに?」
「このゲームが終わったとき、このゲームに執着している貧困層の仲間は大きなショックを受けるのかもしれないと、思ったんだ」
「……我らがギルマスか」
そこまで言うと二人は、誰もいないサービスの終了日、たった一人で終わりを迎えるガイコツの幻影が見えた。
彼は、愛すべき我らのギルマスは、同じ貧困層で、そして同じ被害者だ。
今はまだ動くべきではないと理解したとき、今は彼の心の安寧のために時間を費やしてもいいと考え始めたのだった。
こうして、<ユグドラシル>がサービスの終了を迎える2年前、決定的な物語の分岐が発生したのだった。
1話5000文字前後で考えていますが、いかがでしょうか。
気に入っていただけましたら次回も読んでいただけると嬉しいです。