オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
ゆっくり投稿していきます
「ぎゃああああああああ!!!!!」
「アッアンデッドォォォォォォ!!!!」
「オバケェェェェェェェ!!!」
「食わないでくれええええ!!!」
ゴブリンの集落は阿鼻叫喚の悲鳴の嵐であった。
復活したゴブリン達に事情を説明し、餡ころもっちもちは案内の
その場所は何処かの森の中で、
生き返ったゴブリン達の案内で、彼らの集落へ行くことになった。
餡ころもっちもちとしては、新しい友達を作ることと、この辺りに生息していると思われる“木の根っこ”のようなモンスターのことを調査するためである。
ゴブリン集落の者達は悲しみに包まれていた。
集落のかなり南、トレントや
この領域に何者かは分からないが強大なモンスターがいるとの話を、トレントから聞いたのが始まりだった。
ゴブリン達はトレントたちとは特に敵対することも無く、一部の木の実や果物を付けるトレントからはその恵みを貰い、一方で魔獣などが樹々を荒らさないよう退治するという、いわば共生関係のような状態を保っていた。
ある日、香ばしい実をつける事で重宝している“長老”と呼ばれるトレントが、思い出したように話を始めた。
かつて空の彼方から現れた悪しきトレントが現れ、森の命を蹂躙していたが、幾匹かの竜たちがこの悪しき存在を追い詰め、ついには封印した。
しかしその存在は完全には滅んでおらず、何度となく目を覚ましては被害を出し、やがて森を支配していた
その後も悪しきトレントは今もなおこの森のどこかに潜み、幾度となく目覚めては眠るを繰り返し、いずれ完全復活の時を迎えるかもしれないという。
その時ゴブリンの集落には、とても勇敢な若者がいた。
その若者は<ホブゴブリン>にまで進化し、集落の中では高い知能と戦闘力を以って森林東側を冒険し、様々な他種族の存在を明らかにした。
トレントや
またさらに南には未知の大魔獣が縄張りを持ち、非常に強いため決して立ち入ってはならないという事も種族に共有した。
彼は森の中のはぐれ
集落の皆はその若者を勇者と呼んだ。
そこに来て、トレントたちから告げられた悪しきトレントの存在。
勇者であるホブゴブリン―ジュゲは、配下の強いゴブリン達を従えて、その存在を探し、可能であれば倒すことにしたのだ。
結果から言えばそれは、ただの蛮勇だった。
いや、ジュゲは本来、敵の力量が分かる者だ。
南に縄張りを持つ魔獣が、自分たちには敵わないことを冷静に理解して、縄張りに近寄らない様に仲間に忠告した様に、一度その悪しきトレントを確認し、手に負えないならば、同じく近寄らない様にするための注意喚起をする、そう考えていたのだった。
気づいたときには、彼らその領域に不用意に立ち入ってしまい、瞬く間にその触手のような根に体を貫かれていった。
“トレント”と聞き、その存在がまさか地中にその大半を埋めているとは考えていなかったことも、油断した要因の一つであった。
ジュゲを含む生き残った数名が必死に仲間の亡骸を運び出し、なんとか集落までは辿り着いたが、ジュゲも傷は深く、最終的には遠征した者の全てが命を落とした。
ジュゲは息を引き取る際、集落の者に、決して悪しきトレントの領域に近寄ってはいけない事、自身が死んで
“集落西の奈落”とは、真に
だからこそ、万が一アンデッド化しても、その穴からは這い出てくることは無いだろうと考えられていたのだ。
集落のゴブリン達は、簡素な弔いの後、ジュゲの言いつけ通り、彼らの死体を“集落西の奈落”に落とした。
それから2日ほど経った昼過ぎ、確かに看取ったはずの勇者たちが、再び集落に現れたわけである。
そういう訳で、集落の者達は、ジュゲ達が亡霊かアンデッド化して戻ってきたと勘違いし、冒頭の阿鼻叫喚が発生したのだった。
「…という訳で俺たちは、この御方、森の妖精のアンコ様とその配下のペス様に復活させていただいたわけだ。そんでもって驚くことに、この方は、森の南に縄張りを持つ例の魔獣殿だ。アンコ様はこの魔獣殿も配下に収めておられる」
「…なんだって…!」
「と…とんでもねぇ…!!」
「…南の魔獣殿…確かにすげぇおっかねぇ…アンコ様はこの魔獣殿を支配するほどの御方か…」
「そうでござるよ!某、アンコ姫の第一の家臣でござる!!」
「「「おおーーーー!!」」」
「いや、ペスも、トロちゃんも、家臣じゃなくて友達だよ!それにさ、ジュゲちゃんも他の皆も、みんな森の仲間なんだから、友達になろうよ!みんなで助け合えば、森の暮らしももっと楽しくなるよ!!」
「なんと…これ程の力がありながら…とんでもねぇ御方だ…これが森の化身…」
「ジュゲ様、ジュゲ様はアンコ様の配下になったんすか?!」
「お前ら…聞いて驚くなよ。このアンコ様は、既に森の西側を平定済みだ!アンコ様は森に棲む全ての部族を繋げ、西側では種族を越えた交易が始まっているという!そしてアンコ様は確かに死んだ俺達を復活する力さえ持つ…この意味が分かるな?」
「うおおおお!神!まさに神!!」
「乗るしかねぇ!このビッグウェーブに!!」
「もージュゲちゃん!なんかニュアンスおかしくない?!」
「ハハ…アンコ様。こいつらはノリがいいからこういう風に言った方が分かってくれるんすよ!…ですが、この森のゴブリン族を代表してお願いします…どうか俺たちもアンコ様が率いる森の仲間たちの一員に入れてください。少なくとも俺が族長になってから、俺たちは他種族とは無駄な争いをしないことに決めたんすよ。南に大魔獣…トロペジェンヌ殿が縄張りを持っているって分かったんでその先、森の西側には進出できていなかったが、仮にそれが出来ていたら、俺としてはその先で会った他種族とは可能なら友好的な関係を築きたいと思っていたんです」
ホブゴブリンという100年に一度起こるかどうかという進化の結果生まれたジュゲは、明らかに他のゴブリンよりも聡明であった。
餡ころもっちもちは、そんな彼が、自分と同じように森の皆と仲良く暮らしたいという願望を持っていたことがとても嬉しかった。
「もちろんだよ!ゴブリンのみんな、今日からみんな、私の友達だね!じゃあ森の他の友達にも紹介しなきゃね!!」
大妖精は嬉しそうに輝きながら満面の笑みを浮かべた。
「あっと、そうだ、アンコ様。それだったら南の森のトレントと
「おっけー!ありがとう!!」
***
ジュゲの案内で、餡ころもっちもち達はトレントと
すると明らかに巨大な一本の大木がこちらに気づき、ゆっくりとその巨体を動かして近づいてきた。
動くたびにその枝になる木の実が落ちる。
「おお…ゴブリンの…族長よ…。新しい…住人か…?」
「こんにちは!私はアンコ。妖精だよ!」
「おお…見たことがない…珍しい…妖精じゃ…。
「私はね、コㇿポックㇽっていう種族。この森には他に居ないかもね。こっちは私の友達のペストーニャちゃんとトロペジェンヌちゃん。トロペジェンヌちゃんはこの森の南に縄張りがあるよ!」
「ああ…知っている…少し前…山から下りてきた…魔獣だの…時々…儂の曾孫たちの…実を拾っておるらしいの」
「ほわー…でっかいでござるなー…長老どののご子孫の実であったでござるかー…その節はどうもでござる」
「長老さん!今日はね、このジュゲちゃんに紹介してもらって来たんだけど、私、この森で、
「ほっほっほ…愉快…愉快じゃの…まるで……
長老と言われている巨木のトレントの言葉を聞き、彼の後ろからそーっと小さな
「えー、ちょっとちょっと!そっちの魔獣怖いんだけど!!大丈夫?大丈夫なの?噛みついたりしない?!」
「某、姫の命令でもなければそんな事しないでござるよー!」
「え、まってまってまって!姫ってそっちの妖精?そんな命令しないでよ!?おんなじ妖精でしょ!!」
「しないよーそんなこと!私はアンコって言うの。あなたはピニスンって言うの?」
「うんうん!私はね、ピニスン・ポール・ペルリアっていうの!」
「よろしくね、ピニスン!長老も、ピニスンも、この森で困っていることない?私にできることが有ったら手伝うよ?」
「儂は…そうじゃの…時々雨が降らない時期の後…地面の栄養が少なくなるんじゃ…もしお前様の力で…土に栄養を運べるなら…助かるのじゃが…かつて
「うーん…時期限定ってわけじゃないんだけど、土地の栄養回復ならいくつか魔法あるよ。とりあえず、
餡ころもっちもちが2つの魔法を唱えると、周囲の大地は明らかに豊かさを増し、優しい雨が降りそそいだ。
「なんと…これはあの…ブルーベリーの若者以上じゃ…ああ…若返る様じゃ…」
「今回はこれでいいと思うけど、栄養ありすぎるのもダメってブルプラさんが言ってたから、これからはこの子達に森を歩き回って栄養を運んでもらうようにするね!」
餡ころもっちもちは、新たに3体の
ジュゲにはその
「ねえねえ、アンコちゃん!」
「どしたのー?」
落ち着きがないピニスンの言葉に、のほほんとしたアンコが答える。
さすが妖精同士、というか、その画は周囲の風景も相まって、まるで童話の一ページの様である。
「えっとさ、私の見間違いじゃなければ、そっちのゴブリンの人、この間私の近くでケガしてた気がするんだけど、大丈夫だったの?!」
「あれ、ジュゲちゃんのこと知ってるの?」
「うん、たぶんだけど、太陽が何回か上がる前にね、そのゴブリンの人、ケガしたり死んじゃってたりした他のゴブリンの人を私の木の近くで運んでた気がするよ!」
「あー、ピニスン殿。俺はゴブリン集落のジュゲって言うんだが、何日か前に、俺は確かに謎のモンスターに襲われてケガして逃げ帰り、そして一度死んだ。その言いぶりだと、あんたの住んでる所の近くにあのモンスターがいるってことかな?」
「えっ…一度死んだ…?モンスター…?私の木の近く…?え?え?え?」
ピニスンが混乱状態に陥ってしまったので、餡ころもっちもちがジュゲから引き継いで、トレントの長老とピニスンに“木の根のようなモンスター”の話をした。
「え…ウソウソウソ!ヤダヤダヤダ!私の
「ふむ…それはもしかしたら…
「いや、間違いないと思うぜ、ありゃとんでもねー強さだった」
「既にナーガちゃんやゴブリンちゃんにもケガ人出てるし、地震で洞窟塞がってたりしたから、なんとかしなきゃいけないよね。私、一回見て見ようと思うんだ」
ここまで、妖精のそばで静かに座っていた犬の亜人?が初めて口を開く。
「餡ころもっちもち様、皆さまから聞いたお話ですと、とても危険な可能性があります…わん。どうか御身を危険にさらすようなことはおやめください…わん」
「そ…某も危ないのは嫌でござる…」
巨大ジャンガリアンハムスターも賛成する。
「じゃあさ、低レベルの
最終的には餡ころもっちもちの案が採用された。
彼女は第1位階相当の極低レベルな
すると実験を始めて2時間ほど経った時、1体の
続けて、その周りの
謎のモンスターの探知?に引っかからない様に、可能な限りその領域へそーっと近づくと、そこは僅かに地面が剝げ、植物が無く、土にも栄養が無いエリアが散在している。
次に彼女は、そのモンスターが何に反応しているのか突き止めるために、4属性の低レベル精霊を召喚し歩かせてみる。
結果、いずれの精霊も攻撃を受けて消滅した。
この過程で、地面から頭を出している根っこを確認。
それに何かが触れると反応するのかと思い、アイテムボックスへ手を突っ込んで、もうきっと今後は使わない、ユグドラシル産のアイテムや素材、金貨を片っ端から投げてみた。
すると薬草には反応したが、それ以外の素材やスクロール、金貨には反応がない。
量が関係あるかもと思い、念のため素材や金貨は大量に投げてみる。
しかしやはり根っこに反応はない。
これらから、餡ころもっちもちは、このモンスターは生命あるものや栄養になる自然物にだけ反応して攻撃してくると結論づけた。
そして、召喚した精霊たちが倒された感覚から、そのレベルは恐らく50近い。
ここで餡ころもっちもちは考える。
今のメンバーでこれを倒すのは危険だと。
個人的にはまずは、お話をしてみて、それが通じないようなモンスターの類だったら、森のみんなのために倒してしまった方がいい気がする。
でも、お話をしている途中で突然襲い掛かってきた場合、対処できそうなのは自分とペストーニャだけだ。
そもそも地面から出ている部分だけでも50レベルなので、もしかしたら本体はもっと強いかもしれない…
現在の種族、【コㇿポックㇽ】は戦闘に特化した種族ではない。
100レベルのモンスターを一人で倒すのは難しい。
安全に行くためには【コントン】に戻ってデバフを振り撒きまくるか、あるいは切り札を出す必要がありそうだ。
ただ【コントン】のデバフは、かなり注意しないと広範囲に厄災を振り撒くので、森の今後を考えると、それは最終手段としたい…
切り札は、本当に切り札…【
だからこれも、最終手段の一つ。
今は手に届く範囲で出来ることをしよう。
心の中でそう結論付けた餡ころもっちもちは、謎のモンスターの生息域を長老やピニスンだけでなく、友達になった森の全ての種族へ決して立ち入らない様にと伝えたのだった。
同時にゴブリンのジュゲには、洞窟の中に暮らす
そうして、彼らゴブリン族もまた、主に北東エリアの森の管理を任せ、交易のサイクルに組み込む。
主な仕事は、トレントが生み出す木の実や果物の余剰分を他の種族へ渡し、代わりに他の物、例えば魚などを貰うというものだ。
これでゴブリン族もまた森の中の循環の一部となり、結果的に森の自然循環の一部となるだろう。
その過程でジュゲは、餡ころもっちもちへ一つのお願いをした。
それは、部族の者が死んだとき、その死体を適切に処理してほしいというものだ。
これは今回自分自身も一度死んだことで実感したのだが、何かの原因で複数の者が死んだとき、死体がアンデッド化しない様に上手く葬る手段がないという懸念があるのだ。
餡ころもっちもちが聞くと、彼らには一応死者を弔う習慣はあるようで、弔った後は死体を焼くなどしてアンデッド化を防ぐか、今回の様に深い穴などに死体を落として、万が一アンデッド化した場合も集落に戻らない様に工夫しているという。
そこで餡ころもっちもちは、その死体も循環の一部に組み込めないかと考えた。
「ジュゲちゃん、提案なんだけど、君たちが“集落西の奈落”と呼んでいる場所に弔いが終わった遺体を運ぶのはどうかな。説明した様に、あそこは
「アンコ様、ですがそれだと、中でアンデッド化しちまった場合、
「うん、だからあの場所にだけ、私が魔法をかけるよ。アンデッド化せずに遺体が分解される魔法を」
「…今更ですが、アンコ様はスゲーですね…正直それをどうやってやるのかは分かりませんが、アンコ様なら出来るんでしょうね。分かりました。部族にはそう伝えます…いつか俺が死んだ時も、あの場所に運んでもらって俺も森の…アンコ様の一部に戻らせてもらえるなんて光栄ですよ」
「ありがとう。でも病気とかケガとか、そういうのはちゃんと言ってね。治せるものはちゃんと治すから」
こうして北の森のゴブリン族には、元々あった死者を弔うという風習に、“死者はやがて森の一部に戻り、森の化身たる大妖精様の下に還る”という宗教観が追加されることになった。
ジュゲと
トロペジェンヌは一旦縄張りの巣に戻っているし、ペストーニャは周囲の人払いを行い何者も立ち入らないよう見張りとなっている。
周りに誰も居ないことを確認すると、餡ころもっちもちは静かに指輪の効果を解除する。
その場に顕現した【コントン】は、静かにスキルを発動する。
スキル:
このスキルを含み、【コントン】は一定エリアに見境なくいくつかの種類のデバフを付与することが出来る。
そして【
この効果はユグドラシルでは、この領域で死んだ者の蘇生を妨げ、蘇生可能時間が切れたプレイヤーは強制的にギルドホームなどに戻されることになる。
この効果はあらゆる蘇生に類する効果…アンデッド化も不可となるため、この領域に運ばれた死体はアンデッド化することなく、通常よりも早いスピードで腐敗・分解され、速やかに
やるべきことを終え、【コㇿポックㇽ】に戻った餡ころもっちもちは、新緑のような笑顔を浮かべ、ペストーニャに言った。
「じゃあ行こうか、ペス。明日は森の皆が集まってお祭りをするんだって!森の皆が仲良く暮らしていけるようになったお祝いなんだよ!」
「はい、おめでとうございます、わん。私、餡ころもっちもち様のそばでお仕え出来て本当に幸せです、わん」
こうしてトブの大森林と呼ばれる森は、“悪しきトレント”という存在を除き、一旦は統一された。
森の住人たちは、その統一を成した大妖精様を森の化身として崇め、大妖精様も幸せそうに森の仲間たちのお世話をする。
これは人間たちにトブの大森林と呼ばれた場所の、その森に住む者達の物語。
大妖精様はそれから長い年月、その森で尊敬され、森に住む全ての生き物たちにとって象徴となる存在であった。
だがこれはまだ物語の始まりでしかない。
やがてこの森を訪れる人間たちが、大妖精様に何を齎すのか。
その時は、もうすぐそこまで迫っていた。
童話のお話はここまでです。
第5章がやっと動き始めます。
アンケートです。餡ころもっちもちさんは、モモンガ(鈴木悟)さんのことをどう考えているか。
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異性として気になっていたことがある人
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あくまで友人として尊敬できるギルマス