オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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年度切り替わりの激務で風邪をひいてしましました…
皆さんもお気を付けください


第5章 第12話 -7人の英雄来る-

 

 

「うーん…なんか来るものがあるいい音色だねー」

 

 

腰に何の変哲もない剣を差した、戦士風の若い青年が言う。

彼が言う音色、それは森の外でも聞こえる、高く響く笛の音。

 

彼らは7人からなる冒険者風の集団。

しかしその者達は明らかに複数種族の混合パーティーである。

 

彼らは今、目的地である大森林の手前までやってきたが、今日はもう時間が遅いという事で、森に入る手前の開けた場所にテントを張っている。

明日の朝一で森に侵入するつもりである。

 

彼らがテントを張っていると、森の中、正確には森の上空から高く響く笛の音が聞こえてきたのだ。

 

7人のうち、比較的のこの森に所縁がある2名——ドワーフのヴィンと、エルフのデケムに確認したが、このような笛の音は知らないという事だった。

なのでこのチームのリーダーであるリクは、もう開き直って、笛の音に聴き入っている。

 

 

「うーん、ファンタジ~!なんだろうこのBGM的なやつと、一緒に旅してる君らのこと見てると、なんか記憶にない筈の使命を思い出しそうだよね。指輪捨てなきゃ!とかさ!!」

 

 

「…まーたリーダーが意味不明なこと言ってるよ」

ボサボサ髪の暗黒邪道師の男、ルミノスが“ヤレヤレ”と言ったジェスチャーをしながら呟く。

 

「いや、リーダーのことだ…何か隠された意味があるのやもしれん。安易にそうと決めつけるのは尚早ではないか」

悪魔の羽が生えた男、暗黒騎士のニベールコルが真剣そうな面持ちで反論する。

 

 

「おい、まーたニベールが真に受けちょる。儂ぁ知らんぞ、何とかせぇよ、リーダー」

言葉とは裏腹に、心底楽しそうな深い笑みのドワーフの男、ヴィンが言う。

 

 

「いやいや、失敬な。ボクはいつだって真剣だからな。まあ兎に角さ、あの笛の音は、つまりあの笛を吹くような存在がこの森に居るってことだろ?そんでもって、ヴィンもデケムも知らないってことは、その存在はボクらにとって未知の存在だから警戒はしないとってことさ」

 

リーダーと呼ばれた男は、取り繕ったような真面目な顔をして、仲間の面々に説明する。

 

 

「…然リ。マア、事実デハアルナ」

無骨な口調で風巨人(エアジャイアント)の戦士長、サンダルデルが呟く。

 

 

「…そうじゃな。明日はいつも通り儂が先頭か?それとも森だからデケムか?」

メンバーの中で最も老人に見える男、<イジャニーヤ>が尋ねる。

 

 

「うん、明日の先頭はデケムにお願いするよ。<イジャニーヤ>は最後尾でお願いするよ」

 

 

そこまで話が進んだところで、ピタッと笛の音が止まった。

 

瞬間、7人の警戒度が上がる。

 

軽口をたたいていても、彼らはいわゆる英雄だ。

今までも様々な死線をくぐってきたし、その戦闘に対する感覚は皆、折り紙付きである。

 

 

「…森の入り口から、獣1、人型の者3、それと…何か浮いておる」

 

<イジャニーヤ>が呟く。

 

 

「…浮いているのは妖精だ…敵対的な感覚は無いが…どうする?」

 

素早く被ったフードの奥から、左右異なる色の光を湛えた双眸を鋭く研ぎ澄ましたデケムも呟く。

 

 

「ボクらはこの森に攻め入るために来たわけじゃない。まずはご挨拶して、ちゃんと説明しよう」

 

リーダーはそう言って、テントから体を完全に出し、森の入り口に体を向けた。

 

他の6人も、それぞれ思うとことはあるものの、今更出来ることは特にないなと合理的な判断をし、リーダーを囲むように森の入り口に視線を遣った。

 

 

 

果たして、現れたのは<イジャニーヤ>とデケムが言った通りの者達。

 

真ん中に白銀の体毛と蛇の尾を持つ精悍な魔獣と犬の顔をした亜人、その左右にはリザードマン(蜥蜴人)人鬼(ゴブリン)が並び、真ん中の空中にはフヨフヨと浮かぶ妖精がいた。

 

妖精は羽らしきものが無いにもかかわらず宙に浮いているので、飛行(フライ)を行使しているか、あるいは妖精の種族特性で浮くことが出来るのかもしれない。

その小さな妖精の左手には小さな笛が握られていて、さきほど森に響いていた音楽は、この妖精が奏でていたのだろうと、一同は考えた。

 

 

「こんばんは。えっと、森の妖精さん。ボクはリクっていう名前の人間の戦士だよ。さっき笛を吹いていたのは君かな?」

 

「そうだよ。私はこの森の妖精のアンコ。君たちは何しにこの森に来たの?」

 

「ああ、驚かせてごめんね。ボクたちは巷で“魔神”って呼ばれてる存在…うーん…どう説明すればいいんだろう。とても強くて、種族関係なく暴れる者達かな。そういうのがこの森に居ないか調査に来たんだ。そういう存在が居たら討伐をしないといけないと思ってね。この森は大昔から“禁断の森”とか呼ばれてるって聞いたからそういうのが居るんじゃないかなと思ったんだよ」

 

「“魔神”…?うーん…目的はそれだけ?」

 

「ん…?まあそうかな。あとはそういう強い敵を倒してレベルアップ…何て言うんだろう、ボクらが強くなるって言うのも目的かな?」

 

「じゃあ、その“魔神”とかいう子が居なかった場合は、森に住む子達を攻撃したりしない?」

 

「まあ、そうだね。魔神じゃなくても、手が付けられないようなモンスターが居れば退治するよ。もちろん君たちが希望する場合の話だけど」

 

「ふーん…わかった。私はねこの森の管理をしているの。だから森の外から危険な子が入ってこないか確認するのも大事な仕事なの。だから失礼かもしれないけど、君が言ったこと、ウソじゃないか確かめていい?」

 

 

リクは、妖精からの提案を聞き、一旦目線を仲間たちへ向けた。

 

ルミノスは目を閉じてヤレヤレのジェスチャーをし、デケムはやや不審そうな表情を浮かべた。

<イジャニーヤ>は『分かっておろうな?』という手話をし、他の者達は『リーダーに任せる』という顔で頷いた。

 

 

「うん、調べてもらっていいよ。でも、ボクらに危害が及ぶようなやり方や、魔法で服従させる様なのは止めてくれるかな?」

 

「わかった、ありがとう。泉精霊の問い掛け(クエッション・オブ・ナーイアス)!」

 

 

妖精が泉と女精霊を召喚したところで、一部の者はギョッとしたが、すぐにリクと名乗った者がそれを手で制し、『大丈夫、アレ、攻撃してこないから』と言った。

 

 

「泉の精霊さん、この人たちの目的は、森の調査と“魔神”の討伐ですか?」

 

女精霊は『○』と書かれた木の板を挙げた。

 

 

「泉の精霊さん、この人達は“魔神”や強いモンスター以外の森の生き物に攻撃しないですか?」

 

女精霊は『○』と書かれた木の板を挙げた。

 

 

「泉の精霊さん、私が攻撃してはいけないと言った場合は、この人たちは強いモンスターでも森の生き物に攻撃はしないですか?」

 

女精霊は『○』と書かれた木の板を挙げた。

 

 

「泉の精霊さん、この人は何かウソを言っていますか?」

 

女精霊は『×』と書かれた木の板を挙げた。

 

 

そして女精霊は微笑みながら手を振り、足元の泉に姿を消し、続けて泉も消えた。

妖精は、消えて行く女精霊に手を振りながら「うわっ4回…反動かなぁ」と呟いた。

 

 

 

「うん、どうやらウソはないみたいだね。疑ってごめんね。それじゃあ明日、森に入るときに声を掛けてよ。森を案内してあげるから。それと、これは疑ったお詫び。良かったら食べてね」

 

妖精はそう言うと、どこからともなく木の実や果物を出すと、テントの前に山積みにした。

 

 

妖精たちが森に消えると、7人の者達は『ふぅ…』とため息をついた。

 

リーダーは能天気に笑いながら、「いやー、まさか森の管理人の方から声かけてくれるとはね。案内してくれるって言ってたし、今回の探索はそんなに危険じゃないかもね」と言い、妖精が置いていった果物を頬張った。

 

 

「おい、リクよ。一応毒が無いかとか確認した方がいいのではないかの?」

 

職業柄、安易に出された物を食べることを良しとしない<イジャニーヤ>が小言を言う。

だが、リーダーはあっけらかんとしながらそれに答える。

 

「たぶん大丈夫だよ。さっきの妖精さんが使った泉精霊(ナーイアス)召喚、あれは善の妖精しか使えないはずだからね。いやそれにしてもあの魔法にあんな使い方があるとはなぁ」

 

「なんか良く分からないけど、またリーダーの知識に助けられたって訳か…リーダーが知ってる魔法を使ったってことはあの妖精、もしかしてリーダーと同じ故郷なのかな?」

 

そんなルミノスの言葉に答えたのは、リクではなくデケムだ。

 

 

「…いや、妖精というのは、森や海など、自然の環境で自然発生するもの。あの妖精の口ぶり、“森の管理者”という事は、恐らくはこの森で、森を管理するべく生まれた存在だろう。余の治める森においても、これほど広範囲を管理する者は居ないが、ごく狭い領域の管理者として生まれる妖精も存在する」

 

「ウム…我ガ祖国ニモ、似タヨウナ風妖精ガ存在スル…チナミニ、蜥蜴人(リザードマン)人鬼(ゴブリン)ハ戦士ノヨウデアッタ。魔獣モ同様ダナ。イズレモ我々ニハ届カナイ強サダガ、普通ノ人間ナドデハトテモ敵ワヌダロウナ」

 

「まあ、森の管理者の側近つうとこじゃろ!何にせよ、お眼鏡にかなったようで何よりだの!」

 

 

サンダルデルとヴィンも感じたところを共有し、最後にいつもクソ真面目なニベールコルが一人真剣な面持ちで「“森の管理者”…敬意を払わねばならぬな」と意見した。

 

 

 

 

 

翌日、7人は約束通り、森の入り口で妖精たちと合流し、大所帯で森を進んでいった。

 

妖精の案内で連れてこられたのは、比較的高い木が集まったエリアの中で、なぜかぽっかりと木が無い場所で、そこにはいくつかの木製の椅子が置かれている。

 

7人は当然知る由もないが、そこはかつてこの森の長老たる巨木のトレントが居た場所で、彼が消えてからは、その場所は簡単な休憩スペースとなっていて、森に住む者達の憩いの場所となっている。

 

用意された飲み物や果物を頂きながら、7人は、妖精やその仲間と一緒にこの森についての話をしている。

 

特にリーダーとジュゲは話が盛り上がっている。

これは彼の人見知りしない気さくな性格によるところが大きい。

 

 

「…つー訳で、アンコ様はその根っこにやられた俺たちを救ってくれたんすよ!」

 

「いや、森の妖精さんもすごいけど、君もすごいよね。少なくともボクがこの世界で今までに会ったゴブリンの中では一番勇敢だと思うよ」

 

「そうでしょ!ジュゲちゃんはすごいんだよ。ついこの間もね、ジュゲちゃん達は体を張って自分より強いモンスターの足止めをしてくれたんだよ」

 

 

森の妖精は、自分のことを褒められる以上に、仲間たちが褒められることが嬉しいらしく、その小さな体をぱたぱたと動かしながら喜んでいる。

 

なお、“スレイン法国”なる場所から来た人間が、森の住人たちを殺して回り、最終的にアンコが倒したことは秘密事項となっていて、攻め入ってきたのは“モンスター”という事になっている。

 

 

「やっぱり君はすごいね。君のことは…そうだな、“勇者”と言ってもいいかもしれない」

 

「おー!」

 

妖精は嬉しそうに小さく手を叩いている。

 

ジュゲは少々照れながらも、『まあ既に種族の中ではそう呼ばれることもあるけどな』と考えていた。

 

 

「ところで、君の名前はジュゲだって聞いたけど、他の皆の名前は何て言うんだい?」

 

 

リクと名乗った人間が言っているのは、ジュゲと共にこの広場に来ている、ジュゲの配下という数名のゴブリンのことだ。

 

 

「ああ、俺たちゴブリンは名前が有ったり無かったりで、俺は偶々名前があるが、こいつらは名前が無い者もいるんですぜ」

 

「へーそういうもんなんだ…じゃあさ、もし良かったらボクが名前を付けてあげようか?」

 

「こら、リク。そう安易に提案するな。他種族に勝手に名前をつけられることを良しとしない者達もいるかもしれないであろう」

 

フードを被った、左右で目の色が違うデケムと名乗った男が、リクを窘めた。

 

 

「いや、デケムさん、俺ら別にそういうしきたりは無いすよ」

 

「む…そうか。しかし迷惑ではないか?」

 

「いや、別に迷惑とかそういうことは無いですが、」

 

ジュゲはチラと妖精の方を見たが、妖精は『いいんじゃない?』と答えた。

 

 

「アンコ様もこう仰ってますし、良かったらお願いできますかね、リクさん」

 

「よし!じゃあ、君の配下のゴブリンはここに居る人たちで全員かい?」

 

「いや、里にあと9名いますね」

 

「うーん…じゃあさ、いっそのこと君の名前もちょっと変えて、君の名前は“ジュゲム・ジュゲーム”だ。で、隣の君、君は“ゴコウ”、君は“ノスリ”…」

 

こうして、19名のゴブリンの名前が改められた。

 

 

名前を決めていく過程で、森の妖精だけはなぜか口を押えプルプルと震えていたが、それ以外の者は皆『良く思いつくものだ』と目を丸くしていた。

 

 

「では、“ジュゲム・ジュゲーム”とその配下18人の騎士たちは、ボクが街に戻ったら、ゴブリンの勇者として存分に披露目させてもらうよ!」

 

「なんか、改めてそう言われると恥ずかしいっすね」

 

「ぷぷぷ…いいんじゃない?きっと有名なおとぎ話になるよ!」

 

 

何故か楽しくてしょうがないと言った感じの妖精を除き、森の代表者の一角であるジュゲ新ためジュゲムが、外から来た人間にも勇者と認められ名を送られたことで、その場に居た外の森の住人は純粋にうれしい気持ちとなった。

 

これは、この7人が前回の敵対的な侵略者とは異なり、友好的な接触をしてきたことに他ならない。

 

 

「そう言えば、さっきジュゲムさんが言っていた“根っこ”のことだけど…」

 

リクがそこまで言った時、どこからともなく新たな森の住人が現れた。

 

 

「アンコちゃん、アンコちゃん!大変、大変なの!アレ(・・)が地面から体を出して、私の本体に近づいてきてるの!!」

 

 

 

ピニスン・ポール・ペルリアと名乗った森精霊(ドライアード)によれば、例のジュゲムに致命傷を負わせた“根っこ”が今まで以上に地面からその根を伸ばしていて、ピニスン本体の木に迫っているらしい。

 

根っこが通った場所の植物は枯れ、不運にも横切ろうとした森の小動物などもその根に捕まり養分を吸われて命を落としているという。

 

アンコとしても友人の危機を見逃すわけにはいかないし、リクたち一行も当初の目的である“魔神や強力なモンスターの討伐”のために現場を確認したいという事で、“長老の広場”に居た者たちは、ピニスンの案内に従って一緒に様子を確認することとなった。

 

 

「うわ…完全にアレだよね?」

 

リクがそう言って指差した先には、地面から数メートルほどはみ出た木の根っこのような触手が、何かを探すようにうねうねと動いている光景だった。

ピニスンが言っていた通り、根っこが届く範囲の植物は悉く枯れているし、辺りには小動物と思われるものの骨が散乱している。

 

 

「マズいですぜ…俺がやられた時より明らかに伸びてやがるし、前見た時はあんな風に自分から動く感じじゃなかった。もしかしたら目覚めが近いのかもしれねぇ…」

 

「とりあえず私はピニスンちゃんの本体に守りのおまじない掛けてくるから、ジュゲムちゃんは、この周りに森の子が近づかない様に伝言をお願い」

 

「わかりやした!」

 

 

 

ピニスンに幸運値上昇と防御力が上昇するスキルをかけた後、餡ころもっちもちは例の7人と再び合流した。

戦うとなると、トロペジェンヌでも敵わないのは確実なので、彼女にはジュゲム同様、森の他の住人への伝令をお願いしている。

 

そう言う訳で、現在長く伸びた根っこの前に居るのは、外から来た7人と、餡ころもっちもちとペストーニャの計9人である。

 

 

 

「妖精さん、今ボクたちの中で話し合ったんだけど、まず、あれはボクたちが討伐する対象にしていた“魔神”じゃないと思う。でも強さ的にはそれと同じかそれ以上の力を持つ存在で、さっきのジュゲムさんの話だとこの森の住人に対しても害がありそうだから、君が許してくれるなら討伐を試みてみようと思うんだけど、どうかな?」

 

 

リクの言葉を受けて、森の妖精はリクたちをじっと見つめながら考えている。

 

確かにあの根っこへの対応はいずれしなければいけない。

だが、今までそれをしなかった理由は、まず何より根っこがどのような存在か分からない事。

 

形状からしてアレは本体ではなく、本体はおそらく地下に居る気がする。

その本体が言葉が通じる存在ならば、出来ることならばまずは説得を試みたい。

 

長老の話では、本体は大昔に竜と闘って封印された者だという。

現在の見境が無い攻撃が、覚醒していないことが原因で起きていて、もし完全覚醒した場合、話が通じて森の他の子たちを傷付けないならば、その子も森の一員として迎えたいと、彼女は考えている。

 

そして、そもそも説得が無理な存在だった場合でも、相手の強さが分からない。

 

地面から出ている根っこは、今までソレが倒した森の存在から考えると、恐らくは50レベル程。

地下に眠る本体が、同様にそのレベルなのか、あるいはそれを大きく超える存在なのか。

 

いずれにしろレベルだけで考えても、戦いに参加できるのは自身とペストーニャのみ。

ペストーニャは回復特化のため、火力にはならないので、基本的には自身が前衛として攻撃をする役をしなければならない。

 

コントンもコㇿポックㇽも、物理、魔法とも攻撃力が特別優れているわけではなく、どちらかと言えばバフ要員である。

しかもバフはフィールドにかけるタイプのものが多いので、使い勝手が難しい。

 

ただ、これらの問題は、奥の手である種族進化(・・・・)を使えば解決する。

 

コㇿポックㇽの種族進化は【究極の幸運(アルティメット・ラック)】と【究極の大厄(アルティメット・カラミティ)】を取得した者が行える、究極の奥義。

 

文字通り、このスキルを使うと餡ころもっちもちの種族は【妖精のコㇿポックㇽ】ではなくなり、バフの使用の使い勝手が非常に良くなり、魔法攻撃力も上がるし、強力な専用スキルも使用できるようになる。

 

だがそれでも、まだ問題はある。

 

それは餡ころもっちもちが、モモンガとぷにっと萌えに相談し、【苺飴のブローチ(ブローチ・オブ・ストロベリーキャンディ)】に込めた能力の一つ。

ある目的のために、餡ころもっちもちは、【蟲系】、【悪魔系】、【アンデッド系】の3種族に対して非常に弱い性質を持つ。

これらの種族からの攻撃は魔法、物理攻撃いかなるものであっても、そのダメージ量が2倍になる。

 

地面から見えている根っこから、種族は恐らくは植物系であると思われるが、可能性としては植物の形状の悪魔系という可能性が0という訳ではない。

 

トロペジェンヌのようなユグドラシルでは見なかった種族がいることからも、見た目だけで種族を判断するのは危険かもしれないと考えていた。

 

 

こういった理由から餡ころもっちもちは、“根っこ”との直接的な戦いを本能的に避けてきたのだ。

 

 

リクをはじめとした7人の様子を見る。

餡ころもっちもちは純粋な戦士職ではないので、正確に強さを測ることは出来ないが、戦士っぽい者達は、森の精鋭であるトロペジェンヌやジュゲム、ザルシャ、リュラリュースよりも強い気がする。

 

特に【コㇿポックㇽ】の餡ころもっちもちと同じドルイド系であると思われる、フードの人間?はかなり強い気がする。

もしかしたら70レベルに達しているかもしれない。

 

これらから考えると、明らかに強い7人が味方に居る今の状況で一度“根っこ”と対峙するのはいいかもしれない。

いや、ここで倒さなくても、少なくともあの“根っこ”の種族が、自身が苦手としている種族でないことが確信できれば、今後の作戦も立てやすくなる。

 

そこまで考えて、餡ころもっちもちはこのタイミングで一度あの“根っこ”にアプローチすることを決めた。

 

 

「うん、分かった。私も援護するから、一度あの根っこと戦ってみようか」

 

 

 




原作のジュゲムたちの名前の元ネタである「ジュゲム・ジュゲーム」のおとぎ話はどこから来ているのか?

元ネタがリアル世界のものなので、少なくとも転移したプレイヤーが広めた話だと思いました。
200年前である13英雄の話がすでに所々間違って伝わっている雰囲気であることから考えると、転移後世界ではおそらく意味を成さない「寿限無」の名前がちゃんとと伝わっているのは、このおとぎ話がそこまで大昔ではなく、かつ有名なおとぎ話の一部として正確に伝わっている、つまり13英雄のリーダーが広げたのでは?などと妄想しています。

あるいは実は「ジュゲム・ジュゲーム」は歴史から抹消された13英雄の一人なのかもしれない、などとも考えています。
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