オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
夢を見た。
私たちはいつもの3人と、あと、あけみちゃんの合計4人で、第6階層の巨大樹のそばで楽しくお話をしていた。
茶釜さんの膝の上には
私はエクレアを抱っこしながら、優しげな顔のペストーニャにもたれかかるように座ってる。
いつもの他愛ない話。
あれ、そう言えばなんでユリ・アルファは紅茶を入れているんだろう。
茶釜さんとこの双子も、あんなに表情豊かで幸せそう。
そうか、そう言えばココはゲームの中じゃなく、現実の世界っぽいんだった。
リクさんが教えてくれた。
でも、じゃあなんで私たちは第6階層に、私たちのギルドホームであるナザリック地下大墳墓に居るんだろう。
見ると、巨大樹の周りには森の皆もいる。
トロちゃんは相変わらずゴロゴロしている。
ビュフミーちゃんとララちゃんも楽しそうに話していて、その周りをピニスンちゃんが飛び回っている。
エルミュちゃんとザルシャちゃんは大事そうに2人の子供を抱いている。
リュラリュースちゃんはトードマン族の皆となにやら仕事のお話をしてる。
お墓の手入れをしていたジュゲムちゃんは、最近偶然洞窟の入り口で会った
遠くでトレントの皆が見守っている。
長老の気配もどこからかするみたいだ。
「あんちゃんはさ、すごいよね」
「えっ?」
「あんちゃんは、こんなに沢山の森の命を繋いだんだよ」
「そうそう、あんこさん、すごいですよ!」
茶釜さんの言葉に、あけみちゃんも肯定の言葉を述べる。
穏やかな笑顔のやまいこさんも頷いている。
「そんな…私なんて、みんなに比べれば、まだまだだよ。このナザリックの攻略だって、すごかったって聞いているし、その時の私が居ても、たぶん全然役に立てなかった」
「何言ってるの。私だって、攻略の時は皆に『ヒーラーなのにちょっと殴りすぎ』って言われたよ」
「あはは、あったねーそんな事。皆それぞれやれることが有って、みんながみんなの足りないとこを補って、それが私たち“アインズ・ウール・ゴウン”で、あんちゃんだって、その一員なんだから!」
私は心が暖かくなって、少し笑顔になった。
すると今度は巨大樹の枝に座っている、キラキラ輝くバードマンが楽しそうに話に入ってきた。
「そうそう、今、ねーちゃんいい事言った!それにアンコさんはさ、もうこのギルドの中でも1,2を争う有名人でしょ。例の種族開放でめっちゃwiki載ってるしね!あの件でモモンガさんすごい悔しそうだったよ!『グヌヌ…運営め!』って何度も…ぐえっ!」
茶釜さんの投げた盾がヒットして、バードマンは気から落っこちてきた。
「アホ弟。モモンガさんの傷を抉るな」
「いってぇ…ねーちゃんモモンガさんのことになるとすぐに…グエッ!」
茶釜さん達のいつも通りのやり取りを見ていると、いつの間にか話に出てきたモモンガさんがいた。
「みんなの言う通りですよ。餡ころもっちもちさんは今や、このユグドラシルのなかでも有名人じゃないですか。それに、仮にそうじゃなくたって、あなたはこのアインズ・ウール・ゴウンの大事なギルメンの一人です」
いつの間にかモモンガさんの隣にはたっちさんも居た。
「ええ、モモンガさんの仰る通り。でも、何か他の誰かが力になれることが有ったら、遠慮なく言ってください」
反対側にはウルベルトさんもいる。
「まあ俺は、コイツと一緒に何かするってのは御免だが、俺が力になれることもあるかもしれないからな」
「3人には…もしかしたらお願いすることになるかもね。その時はよろしくね」
……そこで目が覚めた。
なんか、昔のことと今のことがごっちゃになってたなぁ…
まあ、夢ってそういうものかな。
リクさんに聞いた話で、この世界はどうやら、ちゃんと現実で、なんでか分からないけどユグドラシルのプレイヤーは、ユグドラシルのアバターでこの世界に来ている。
それはつまりは、もしかしたらこの世界には、AOGの皆が来ているかもしれないし、これから来るかもしれない。
皆にまた会える、という希望。
それに、リクさんの場合はギルドホームごとこの世界に来ているっぽい。
ナザリック地下大墳墓そのものがこの世界に来ている可能性もあるという事だ。
もしそうなら、私にはそこに一瞬で帰る方法がある…でもそれには色々と覚悟が必要だし、それ以上に今の私には守らなければならない友達がいる。
その友達のために、今私がやらなければならないことは分かっている。
あの根っこの本体。
『悪しきトレント』とか言われている子。
あの子を何とかしなければいけない。
何とか起こして、それで会話が出来れば説得して、できなければ討伐も考えなければいけない。
起こす方法、それに倒す方法、それを可能にするためには、あの力を使う必要がある。
それと事前準備も必要だ。
もし戦いになったら、森の皆に被害が出ない様に結界を張る必要もあるだろう。
餡ころもっちもちは起き上がると、隣に控えるペストーニャに命令を始めた。
「ペス、みんなの安全のために、あの根っこの本体とお話しようと思う。戦いになるかもしれないから色々と準備が必要なの。手伝ってくれる?」
「もちろんです、わん。ですが…危険ではないのでしょうか」
「大丈夫だよ。今回は“神様モード”でいくから」
「…承知いたしました、わん」
大妖精様を守護するペストーニャ様から、森の各部族の者達へ連絡が入った。
これより3日後、大妖精様は“禁足地”の根っこの本体を呼び起こし説得を試みる。
だが説得が上手くいかなかった場合、戦闘に移行する可能性もあるため、全ての森の者は、3日後の明け方より翌日の明け方までは出来るだけ集落を出ない事。
またこの期間は、大妖精様の力で森中に結界が張られて守護されるとともに、結界の中には小さな妖精が溢れて森を歩く者を迷わせる。
どうしても外に出なければならない者は長老の木札を持つこと。これを持てば、林道の道しるべまで迷わずに歩くことが出来る。
最後に、接触が終わるまでは何があっても“禁足地”には近づかない事。
これらの情報が速やかに森中に伝えられ、森に住む者達は皆、大妖精様の無事を祈る。
約束の時間——3日後の明け方の少し前。
餡ころもっちもちは、森に残されたデケムの
「デケムちゃん、リクちゃん」
「…む、アンコ殿か。どうされた」
「これからね、あの“根っこ”の本体とお話をしようと思う。もしかしたら戦闘になっちゃうかもだから、しばらくこの
「む…そうか。ん、なんだリク…ふむ、アンコ殿、ちょっとリクにかわるぞ」
「うん」
「あ、アンコさん?おひさ、って言っても2週間ぶりくらいかな。結局
「ふふっ…うん、ありがとう」
「終わったら連絡してね。それじゃ!」
「さてと…じゃあ始めよっか」
餡ころもっちもちは小さな指に嵌められた、その小さな指輪に触れ、隠された力を解き放つ。
その小さな姿の妖精は、装いを光り輝く神聖な白い衣へと変えた。
その表情は先ほどまでの穏やかな妖精のそれではなく、優しさの中に厳しさも含むような覚悟を決めたような目の色をしていて、その顔には古の呪術的な意味合いを持つ赤い化粧のラインが浮かぶ。
彼女はすぐさま一つの魔法を唱える。
「
超位魔法であるそれは、なぜか一瞬で発動する。
トブの大森林のうち、
森には小さな妖精が溢れ、彼女が指定した領域——守護すべき森の全ては、フィールドエフェクト:
続けて彼女は2つの呪文を唱える。
「
彼女が指定した同領域には、前者の魔法により幸運値の上昇が起こり、後者の魔法で外からの魔法や物理への耐性を持つ巨大な空間と化した。
「これで準備はいいね…それじゃ、ザイトル・クワエちゃん、起きてきて」
そう言って餡ころもっちもちは、その悪しきトレントが眠っていると思われる方向へ、範囲指定をした<厄災のオーラⅠ>を放った。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
地面が割れ、巨大なものが徐々に姿を現す。
100メートルはあろうかという巨体。
5本の触手のような腕を持ち、幹の中心には顔のようなくぼみがあって、苦しそうにうめいている。
「いきなりごめんね。一旦<厄災のオーラⅠ>を解くよ。私はアンコ。この森を守る妖精で、今は“スクナミカミ”という種族。私の言葉が分かるなら、一旦話を聞いてほしいな」
条件を満たしたコㇿポックㇽが進化した種族。
それは【スクナミカミ】。
コㇿポックㇽとして使用できるバフや、【コントン】をはじめとした【
ただし“神意”指定できる魔法は決まっていて、攻撃魔法や召喚魔法は一切対応していない。
欠点の1つ目は、あらゆるモンスターに対してのヘイト値が非常に高くなるというもので、これは仮にぶくぶく茶釜がスキル等でその全力を以てヘイト管理しようとも覆すことが出来ない。
だが今回はその特性を利用して<厄災のオーラⅠ>で強制的にザイトル・クワエを叩き起こした。
欠点の2つ目は、消費MPが非常に高いこと。
特に“神意”指定した魔法やスキルは、消費量が3倍になる。
また、【スクナミカミ】状態の時は種族が人間種となり、“種族スキルを持つ人間種”という特殊な状態となる。
これは、実は<Yggdrasil 2>が実現したときに追加される予定であった新たな種族である【神種】と【竜種】のうち、2が発売しなくなったことの辻褄合わせのために【神種】が無理やり【人間種】に放り込まれたためである。
「オアアアアアアア!!」
ザイトル・クワエはその触手を素早く餡ころもっちもちへ叩き込む。
しかし、その攻撃はまるで当たらない。
餡ころもっちもちは、特別よけているわけでもないのにザイトル・クワエ自身がわざと外しているかのように、攻撃はむなしく空ぶっているのだ。
ザイトル・クワエにとって不運だったのは、魔法のような範囲攻撃を持たなかったこと。
そもそもが命中率が高くない物理的攻撃のみしか行えないため、それらの攻撃は全て異常に“運”がいい餡ころもっちもちに避けられてしまっているのだ。
「話がしたいんだ。私の言葉分からない?」
「オアアアアア!!!」
今度は種のようなものを投げつけてくる。
しかしそれも当たらない。
輝く衣を纏った【スクナミカミ】はゆっくりとその巨木のようなモンスターに近付いていく。
そしてついにその巨木に触れる位置まで来ると、彼女はそのおでこを、樹の幹にあてた。
流れ込んでくる感情は、破壊・破壊・破壊・破壊。
それは、およそ高等生物のような複雑な感情などではなく、ただ、挑んできた者を倒すように設定されたプログラムのようなものだった。
「君は…モンスターですらないんだね…そう言う風に作られた存在。ダンジョンのボスみたいなものかな…可哀想だけど、私が君にしてあげられることは、君を倒して、君の役目を終わらせてあげる事だけみたいだ」
餡ころもっちもちは、ゆっくりとその巨木から離れる。
巨木の攻撃は一向に当たらない。
餡ころもっちもちは、ゆっくりと空に昇る。
そして巨木の真上まで来た時に1つのスキルを放つ。
「
巨木が一瞬、その触手をこわばらせた。
現時点で何らかのダメージを負っているわけではないが、範囲指定された急激な幸運値の下降は、動物で言えば“寒気”のようなものを感じたようなものだった。
「
神の声が、信仰系の炎系最上位魔法を唱えた。
非常に狭いエリアに限定された灼熱の溶岩流が、巨木を焼き焦がす。
最低値まで低下した幸運値により、すぐさまバッドステータスとなり、また、不運にもコアになる部分に早い段階で火の手が回ったため、触手や種を飛ばすこともできず、ただその場で燃え尽きていく。
溶岩流が何度もその巨体を駆け巡り、やがて全てが黒い炭となったころ、餡ころもっちもちは、小さく「ゴメンね」と呟き、天候を操作して雨を降らせた。
「…何とか倒しきれたね。フルパワーはやっぱり消費激しいな…」
先ほどまで巨木が居た場所では、炭となった木から煙が上がり、火は完全に消えた。
それを確認するかのように雨が止み、空は雲間が出来、青空が覗いていく。
餡ころもっちもちは、しばらく遥かな空を眺めていた。
だが切れていくその雲間から、見覚えのない一体の浮遊する鎧が現れたことで、穏やかな気持ちは霧散し、その謎の存在に警戒を向ける。
「やあ、ぷれいやー」
槍、刀、大剣、ハンマーが周囲に浮かぶ、白金の鎧はそう言って餡ころもっちもちに話しかけてきた。
5章にしてついにあいつに気づかれました。