オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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お話は、トブの大森林にタブラ様一行が来る少し前に戻ります。
常闇を倒した彼らが、トブの大森林に到着するまでのお話から始まります。


第5章 第16話 -大陸中央の亜人国家-

 

 

ニグレド・アルベド・ルベドの3姉妹と、タブラおよびるし★ふぁーの合計5人は、ひとまず常闇の竜王(ディープダークネス・ドラゴンロード)が棲んでいた洞窟の跡地にて、ここまでの情報共有と、これからのことについて話していた。

 

 

「さて、るし★ふぁーさん、それにお前たち。私たちはこれから、ここより遥か北にあるリ・エスティーゼ王国という人間の国の中にある、トブの大森林という場所へ向かおうと思います。森林の奥地にある荒野にも直接転移は出来ますが、念のため一度森林外の街道まで飛んで、森林に最も近いカルネ村というところで一度休憩をしようと思います。るし★ふぁーさんはご存じないと思うので共有しておきますが、私たちは一度、薬草採集目的という名目でその村へ訪れているので、比較的スムーズに入れるでしょう。その後はるし★ふぁーさんのゴーレムを用いて、森林内の妖精の迷路(フェアリーズメイズ)内の調査をします。ここまでで何か意見はありますか?」

 

「はいはい、タブラさん。あのさー60レベルのゴーレムが必要って話だったけど、オレが聖王国で作った60レベルのゴーレムは、今国の復興作業で使ってるみたいなんだよね。だから、別に作った方がいいと思うんだけどどうかな?(単純にたっちさんに捕まる可能性がある聖王国に行きたくないし)」

 

「なるほど…まあ正直な話、モモンガさんとかウルベルトさんとかの形のゴーレムが森で暴れまわるのは如何なものかと思うので、それについては賛成ですね。それで、素材はあるんですか?」

 

「そこなんだよなー…正直ボディの方は、ドゥエルの鉱山にいって人間世界の金貨(盗品)で買えばいいんだけど、コアになるレアリティが高い素材がないんだよなー…タブラさん、良いの持ってない?」

 

「ふむ…まず私はそういった素材は持っていません。また、この周囲で探すとなると、お話したように、この洞窟の周りには亜人の国がいくつかあります。中でも大きな国は、トロール国、ビーストマン連邦、牛頭人(ミノタウロス)国、野豚鬼(オークス)国、馬人(ホールナー)国、そして風巨人(エアジャイアント)国の6つ。私たちはこれまでにこれらの国に潜入して国の情勢を見てきましたが、いずれの国も強者でもレベルは40台、そして比較的高レベルのアイテムがありそうなのは牛頭人(ミノタウロス)国と風巨人(エアジャイアント)国の2か国です。これら以外はそこまで高度な魔法アイテムを使用する文化というものが発展していませんでした。なので、探すならこの2か国ですが…」

 

「なんか牛頭人(ミノタウロス)国って、さっき言ってた冷蔵庫とか扇風機とか売ってる国だよね?ここから近いって話だったし、めっちゃ見てみたいからそこ行かない?」

 

「いやいや、るし★ふぁーさん、良く考えてくださいよ。冷蔵庫とか扇風機って、明らかに我々の世界の文化ですよね?ということは、それらを提唱した通称“口だけの賢者”は私たちと同じユグドラシルプレイヤーだった可能性大です。ですがどうやらその方は既に亡くなっていて、私たちが何日か街に滞在して色々と話を聞いてみましたが、それ以降プレイヤーらしき人は居ない可能性が高いです。これってどういう状況だかわかりますか?」

 

「え…どういう状況って、そのまんまじゃないの?」

 

「いや、まあそのまんまですが、要はユグドラシルプレイヤーはいないのに、ユグドラシル産武器やアイテムが存在しているという状態ですよ。説得できそうなプレイヤーが居ない状態で、何らかのきっかけで敵対したら、ユグドラシルの未知のアイテムでダメージ受けるかもってことですからね。用がないならば関わらない方が良いと思われますが?」

 

「うーん…」

 

 

るし★ふぁーが悩みだしたところで、ルベドが手を挙げた。

 

 

「父さま、質問です!」

 

「ん?どうしました、ルベド?」

 

「はい、えっと、父さまや姉さまたちは、その牛頭人(ミノタウロス)国でどうやって活動してたのですか?ニンゲンの恰好してたのですか?」

 

「ああ、なるほど。いえ、あの国に滞在していた時はニグレドの幻術で、牛頭人(ミノタウロス)の姿に偽装していました。先ほどの6か国の中で、トロール国とビーストマン連邦以外は、人間の姿でも一応旅は出来るのですが、階級は奴隷なので悪目立ちしてしまいます。なので、これらの国ではその国の国民と同じ姿の幻術を纏っていたのですよ。どの国も魔法詠唱者(マジックキャスター)はほとんどいない様で、見破られることもありませんでしたし」

 

「え、タブラさん。ちなみにそのトロール国とビーストマン連邦は?」

 

「ああ、あれらの国は人間は完全に食料なので人間の姿での入国は無理ですね。というかトロール国の住人に至っては幻術かけても、ベースが人間状態でかけると匂いで反応してきて非常に面倒でした。それにこの2か国の者は気質が荒く、同種に見える旅人であっても喧嘩をふっかけてきたりするので、価値もあまりないと判断し大した調査はしていません…娘たちも大層お怒りでしたしね」

 

 

タブラの少し遠い目を見るに、創造主を侮辱されたニグレドやアルベドのご様子はとても激しいものだったのだろう。

タブラは小さな声で「まあ、証拠は残していませんし、大丈夫ですが」と呟いた。

本当に大丈夫だったのだろうか…

アルベドの笑顔が深くなった気がするのが何だか怖いと、るし★ふぁーは感じた。

 

 

「で、話は戻りますが、この6か国は覇権を争っているとは言いますが、実際にバチバチなのは牛頭人(ミノタウロス)国とビーストマン連邦です。この2か国は過去にも戦争を何度かしていて、結果としては牛頭人(ミノタウロス)国が“口だけの賢者”が遺した武器やアイテムでビーストマンたちを退けているとか。それ以外の国は国力はありますが、他国に飲み込まれない様に守りを固めていると言った感じです。あ、例外でトロール国は誰彼構わず喧嘩売ってる感じですが、種族として各個体の再生力が強く、戦場では厄介なので、独立を保っている状態ですね」

 

 

「なータブラさん。やっぱりさーオレ的には牛頭人(ミノタウロス)国に行ってみた方がいいんじゃないかと思うなーなんか一番理性ありそうじゃん。もしかしたらバザーみたいな奴いるかもだし、ワンチャン人間状態で会っても何とかなりそうじゃない?」

 

山羊人(バフォルク)の王様でしたっけ?聞いた話ですと、その方ほど有能な者は中々いないと思いますよ。それに、アベリオン丘陵とやらは人間種の国に挟まれていたからこそ、人間との共存という選択肢を選べたのだと思います。この6大国周辺には現在人間種の国は存在しません。どうやら過去にはもっと南や、それこそ浮遊都市(エリュエンティウ)が健在だったころは人間種も居たでしょうが、現在人間が少ないこの地域では、奴隷という階級で存在できていることすら奇跡に近いですよ。ですから“口だけの賢者”が生きていた時代ならまだしも、現在は人間としての接触は難しいでしょうね」

 

「うーん…そのさ、奴隷の人間種はどこから来た人なのかな?」

 

「可能性として高そうなのが、浮遊都市(エリュエンティウ)周囲に形成されている集落ですかねーそれかもっと南や東の方に人間種の国があるのか…そこまでは調査できていませんが」

 

「例えばさ、幻術で牛頭人(ミノタウロス)の姿のままでいいから、その牛頭人(ミノタウロス)国に力貸して、ビーストマン連合とか言うのと、ついでにトロール国をサクッとやっちゃうのどうかな?」

 

「いやいや、だからそこまで私たちが深くかかわるのはリスク有りますって。ていうか、るし★ふぁーさん、あなた、アベリオン丘陵いたときは亜人の方々と仲良くやってたんでしょ?なのにそんな簡単に滅ぼすとか、それってどうなんですか?」

 

「何だろう…アベリオン丘陵にもさ、人間を食料にする亜人はいたんだけど、バザーは聖王国と同盟結ぶために、配下の亜人に人間を食べるのは止めろって命令したんだよね。最初はそれって、オレに配慮してんのかなって思ったんだけど、その後バザーと話したときにアイツは、『別に対人間だけという訳でなく、同盟内の知能ある隣人を食す種族は仲間に入れられないし、その種族を温情で残してもいずれ戦いが起きてより多くの同胞が死ぬことになるから、早い段階で決断をした方がお互いのためだ』って言ってたんだよ。オレも、正直、初めて人間を食う他種族と戦った時は人間の姿だったから、何て言うんだろ?嫌悪感?みたいのがあって、頭に血が上っちゃったんだけど、後で冷静になった後、バザーからその話聞いて、たぶんバザーが言ってることは正しくて、境界線はそこに引くべきなのかなって思うんだ」

 

「る…るし★ふぁーさん…あなた…!…いえ、まずは色々とやるべきことが終わったらそのバザーさんという方を是非お招きしましょう!」

 

「え…何急に?まあでもバザー呼ぶのは全然オッケーだよ」

 

「はっ…いけない、いけない…そうではなく、いやバザーさん招く件は前向きに検討するとして、るし★ふぁーさん、あなた忘れているかもしれませんが、私たちの仲間の中にも人間を食する者が居ること、分かっていますか?」

 

「えっ…ベルリバーさんもさすがに人は食わないんじゃない?」

 

「いえいえ、私たちではないですよNPCです。この娘たちがこうして生きているのです。もしナザリック地下大墳墓がこの世界に来たら、ナザリックのNPC達も生きているのですよ。その中には明確に人を食うと設定されている子たちもいるでしょう?プレアデスのソリュシャン・イプシロンやエントマ・ヴァシリッサ・ゼータはどうですか?餓食弧蟲王は人の身体を巣にしますよ。我々が遊びで設定した者達の中には確かに人食いが居るのです。彼ら彼女らに我慢をしろというのですか?それに……貴方が言ったように、種族として人食いが出来る種族設定のプレイヤー…ベルリバーさんとかヘロヘロさんが、人間の姿でないとき、人間を食いたいという衝動に駆られたらどうするのですか?」

 

「そっか…確かにそうだね…それはモモンガさんとも相談してギルド会議かな…いやでもプレイヤーもそういう感情になっちゃうのかな?オレ、実はこっち来てから天使の状態になってる時間てあんましなかったから、異形種の感情って言うのがまだ良く分かってないんだよね」

 

「私はその時その時で使い分けているので、何となく感じているのですが、異形種の時は考え方や価値観が、その異形種に引っ張られている可能性が非常に高いです。“脳食い(ブレインイーター)”の時の私は、知能レベルが向上していますし、かなり非情に効率的な選択をする傾向があります」

 

「いやタブラさん、人間の時も非情で効率的でしょ…」

 

「…まあ否定はしませんが傾向が強くなるのは明らかです。それに、“口だけの賢者”にはこういう逸話があります。『ある時、口だけの賢者は、牧場で非常に美味しい肉をご馳走になった。彼は余りの美味しさに感動したが、その肉のことを聞いた後は、食べたい食べたいと転げ回りながらもその後は決して口にしなかった。そして後年、彼は食料だった人間を奴隷の地位まで高めることに尽力した』…この話から考えると、“口だけの賢者”はとても理性的な方だったのでしょう。ですが、そうであったからこそ、牛頭人(ミノタウロス)の本能と苦しい戦いを強いられていた…そうは考えられませんか?」

 

「うわー…そんななんだ…オレ達はロキの指輪(リング・オブ・ロキ)でみんな人間種になれるから大丈夫そうな気もするけど、そのこともギルド会議の議題にすべきだね。あれ、人間種とってない人いたっけ?」

 

「えーっと…餡ころさん…は、あ、結局人間種になれたんでしたね…あとは…人間ではないですけど、人間種にはなれますね。確か森妖精(エルフ)とった人いましたよね。あれはおそらく大丈夫だと思いますから…まあ、私たちの場合は指輪なくさなければ大丈夫かもしれませんが」

 

 

そこまで話が進んだ時、ニグレドが声を上げた。

 

 

「タブラ・スマラグディナ様、るし★ふぁー様、お話し中のところ申し訳ありませんが、ここより10㎞ほど南西の方角に、こちらへ向かって来るものが20名ほど居ります。覗いてもよろしいでしょうか?」

 

「ん…牛頭人(ミノタウロス)国の首都の方角ですね…一応カウンター対策をして覗いてみてください」

 

「畏まりました………彼らは牛頭人(ミノタウロス)の兵士団のようです…魔法対策はされていないようですので、会話も聞いてみます………どうやら、先ほどの黒竜を倒した際の火柱の原因を調べにこの場所に派遣されたようですね。明らかに恐怖している様子です」

 

「…なるほど…」

 

「…タブラさーん」

 

「…何ですか?」

 

「チャンスじゃね?」

 

「…うーん…」

 

「やっちゃおうよー」

 

「…うーん……………では、全面的に前に出るのは、るし★ふぁーさんで、私は後ろで隠れて指示するんで良ければ」

 

「えー?!ずるくない?!!」

 

「…だって、るし★ふぁーさんがやりたいって言ったんじゃないですか」

 

「そこはAOGのギミック担当同士、仲良くさー」

 

「…では、あなたが大いなる太陽(シャマシュ)を使用した件、モモンガさんたちに怒られない様に全力フォローします。それでどうですか?」

 

「おっけー!それじゃあさっそく作戦立ててよ!!」

 

「交渉成立ですね。それじゃちょっと考えます。ニグレド、その兵士団が着くまでの時間を教えてください」

 

「はい、タブラ・スマラグディナ様、今のペースですとおよそ2時間ですが、明らかに足取りが重く、少しずつペースが落ちています。ですのでもう少しかかるかと」

 

「わかりました。それでは作戦を説明しますから、皆聞いてください」

 

 




ギミック担当の2人が悪だくみを始めました。
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