オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

115 / 133
トブの大森林に着くまでもう少しお待ちください。

元をたどれば★の「ゴーレムの素材が欲しい」という欲求がもとで、大陸中央の亜人国家群に騒乱の種が撒かれます。

タブラ様も、「失敗してもリスクないから色々と実験しよう」という気持ちになってしまいました。


第5章 第17話 -大陸中央の争乱の始まり-

 

 

 

 

「タブラ・スマラグディナ様、そろそろでございます」

 

「予想プラス2時間ですか…随分と足取りが重かったようですね。おかげでるし★ふぁーさんの転移先登録時間も確保できましたが…これはやはり、彼らはこの場所について元々警戒をしていた可能性が高いですね。ではセリフと演出はプランBでいきましょう」

 

「おっけー!」

「畏まりました。それでは発動準備に入ります」

 

ニグレドがその胸元の歯車が回り出し、超位魔法世界を騙す幻術(デイライト・ミステリー)の準備に入る。

 

タブラは自身と、娘たちに透明化をかけ、物陰に隠れる。

 

現時点での役割はタブラの護衛のみであるアルベドは、父であるタブラにしか分からないような僅かな表情の変化を見せる。

 

 

「アルベド…不安ですか?此度の作戦が、いくつかの点で運頼りなところが」

 

「お父様……はい、正直に申し上げますと、仰る通りでございます。ですが、お父様はそれをご承知のうえで今回の策を…?」

 

「ええ、アルベド…そうですね。私はこの世界に来てから不思議に思っていることが有ったのです。今回のるし★ふぁーさんとルベドの合流…確かに、この世界にアインズ・ウール・ゴウンの誰かが来ていて、私たちはその痕跡を探して活動していました。ですが、るし★ふぁーさん達との合流は、私たちにとって都合が良すぎる気がするのです。考えてもみてください、あの竜王の件についてもそうです。可能性としては考慮していましたが、考えられる中で最も望ましい形で竜王討伐に当たることが出来ました。るし★ふぁーさん達があそこまで竜王のHPを削っていた状態で、焦った竜王は何の疑いもなく私たちの策に嵌り、信じられないほど効率的かつ安全に倒しきることが出来たのですよ」

 

「それは…お父様やるし★ふぁー様の御力と作戦が完璧であったからではないでしょうか?」

 

「仮にそうであったとしても、考えられるルートの中で常に“最も望ましい”形で事が進んでいるのです。これはこの世界に来た時からそうですし、るし★ふぁーさん側の視点でもそうです。例えば彼は戦いの中で自身が所有していた使い切りワールドアイテムを使用してしまいましたが、“偶然”倒した竜王が新しいワールドアイテムをドロップしたのです。それにルベド…彼女は、私とるし★ふぁーさんが揃う事で初めて100%の力を発揮できます。つまり私たちは現在、最高クラスの諜報力を持つニグレド、最高クラスの防御力と賢さを持つお前、そして最高クラスの攻撃力を持つルベドが揃い、高い魔法攻撃力と生産スキルを持つ私と、高レベルの回復魔法と危険地帯にリスクなく踏み込めるゴーレムクラフト能力を持つるし★ふぁーさんが揃ったという事なのです…さすがにおかしいと思いませんか?」

 

「…お父様は、何者かの意思が働いているとお考えなのですか?」

 

「いえ、“意思”とまでは考えていません。もしこの場所が箱庭のような場所でそれこそ絶対的な存在…神やゲームマスターが居て、我々はその駒という状況なのであれば、もはや何をしてもその絶対者に逆らうことは出来ませんので、その場合は逆に行動に気を配る必要すらなくなります。私が考えているのは、この世界が何らかのユグドラシルのルールに縛られていて、特定のイベントは起こるべくして起きてしまうか、あるいは我々の“運”のようなものが異常に上昇しているといったところでしょうか…」

 

「…申し訳ありません、愚かな私では理解することが出来ません」

 

「いえいえ何を言うのです、アルベド。あなたは愚かではなく、ナザリックでも最高位の頭脳を持つ者です。私がお前をそう創ったのです。自信を持ってください。これはお前が愚かなのではなく、私やるし★ふぁーさんのようなプレイヤーだからこそ分かること。元々の知識の違いです」

 

「なんという慈悲深い御言葉…私はこれまで何度もお父様の娘として産まれたことを心から感謝しております…」

 

「良いのです…私が言いたいのは、今回の作戦、ある程度流れに身を任せてみようと思ったのです。もし私の推察がある程度当たっているならば、おそらく不確定な部分も我々にとって…いやもしかしたらこの世界にとって、都合のいい方に流れていくでしょう。それにそうでなかったとしても、今回の作戦はいつでも離脱可能です。逃げたところで我々に大したデメリットはありませんし、都合が悪くなったら皆で転移してしまえばいいのです。こんなにリスクが低い作戦も滅多にないので、この機会にちょっと試してみたいのですよ。私の想像している可能性があるのかどうか…まあそうは言っても、可能な限り調査も行いましたし、現時点で打てる作戦では最も良いものを選択したつもりです」

 

「はい、仰る通りでございます。運の要素が強い部分を除き、私もこの作戦が最も良いと考えております」

 

「お前にそう言ってもらえて安心しました。それではるし★ふぁーさんの勇姿を見物させてもらいましょう」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「…兵士長」

 

「分かっている…魔の洞窟までもう後僅かだ。賢者様が遺された言葉の通り、ここは禁域。我らの任務はあくまで調査であり、危険を冒すことではない。ある程度の情報を集めることが出来たら速やかに退却をする」

 

 

牛頭人(ミノタウロス)兵士長は、自身の言葉が震えていないか、細心の注意を払いながら部下たちに声を掛けた。

 

無理もない。

 

この場所は遥か昔、それこそ100年以上前の賢者様が生きておられた時代に、賢者様自身が危険な領域として、一般人が近づくことを制限した場所なのだから。

 

賢者様が遺された言葉によれば、この場所には何らかの規格外の存在が棲み、その者は定期的に多くの生き物の命を吸い取っている可能性があるとのこと。

 

賢者様が老い、自らその最期を悟り、かの場所にお隠れになる直前まで、この場所の諸悪たる根源を絶てなかったことを悔やんでおられたという。

 

つまりは、あの賢者様でさえ勝てないと思しき存在。

 

震える兵士団の足取りは重く、自分もまた例外ではなかった。

 

そして一つの丘を越え、例の禁域たる魔窟の開いた山を見渡せる領域に差し掛かった時、兵士長は確かにその想定とは違う光景を見たのだ。

 

 

 

 

山があったはずの場所は、何もない。

少し前の天を突く火柱は、山を消し去ったものだったのだろう。

 

そしてその消えた山の上空には、神域の光景…

 

大きな布を纏い顔を隠した、おそらくは天使がその手を掲げ、その手からは光の縄のようなものが伸びる。

 

光の縄は明らかに邪悪な黒竜――すでに全身に傷を負い瀕死に見える――を縛り上げ、その黒竜の喉元を、光り輝く牛頭人(ミノタウロス)が掴んでいる。

 

 

こちらに背を向ける、輝く牛頭人(ミノタウロス)は、振り返りもせずに言葉を呟いた。

 

 

 

「恩に着る…我が同郷の友よ…長きにわたる懸念であった黒竜、そなたの協力のおかげで片づけることが出来た。こやつの魂は俺が共に連れて行こう……もう時間のようだ。ちょうど我が現世にあったころ世話になった国の子供たちも来たようだ…もしあの子らが何かを望むなら、手の届く範囲で構わない、力になってやってはくれぬか」

 

「…いいだろう。この〈原動天の熾天使(セラフ・プレモ・モビレ)〉、るし★ふぁーの名に誓い、友の願い、承ろう…今度こそ、安らかに眠るが良い」

 

「ああ、恩に着る…さらばだ、友よ、そして我が子らよ!」

 

 

 

その言葉と共に輝く牛頭人(ミノタウロス)は黒竜と共に天へ消えていった。

 

兵士団の者達は、はじめ、混乱の極みであった。

 

禁域に足を踏み入れるということ自体が既に途轍もない恐怖であったところに、自身の理解の外の存在が3体。

 

天使と黒竜と輝く牛頭人(ミノタウロス)

 

しかし、輝く牛頭人(ミノタウロス)が言葉を発したとき、混乱や恐怖、それらから来る不快な昂り、そういった感情がすうーっと消えていったのだ。

 

なんと落ち着く声であったか…

 

その雄々しい御声は、安心感を通り越し、皆の心に凪のような冷静さを呼び起こす。

 

そして恐ろしいくらい冷静になり、交わされる超越者たちの会話を傾聴する。

 

 

輝く牛頭人(ミノタウロス)が天に昇って消えていったところで、兵士団の皆は気が付けば涙が溢れていた。

 

俺たちは見た。

見てしまった。

 

賢者様が、我らのことを憂い、死者の国から舞いもどった。

そして懸念であった存在――おそらくはあの黒竜――を倒し、その魂を引き連れ再び昇天なされた。

 

それを手引きしたのは恐らくあの天使――賢者様との会話で“るしふぁー”と名乗り、賢者様が友と言っていた存在。

かのお方が、賢者様を一時的に呼び戻し、諸悪の根源たる黒竜を共に討った………

 

 

牛頭人(ミノタウロス)の兵士たちは皆涙を流しながら、賢者様が消えた方角に頭を下げ敬意を示していた。

 

賢者様に対する敬意と哀悼の気持ちに整理がついたころ、その場に残された天使が声を上げた。

 

 

 

「お前たちは、牛頭人(ミノタウロス)国の住人で間違いはないか?」

 

「はっ…はい、天使殿!我らは牛頭人(ミノタウロス)国より、この禁域に起きた天変地異を調査すべく遣わされた兵士団でございます!」

 

「そうか…聞いていたかもしれんが、私は同郷の友より、お前たちの手助けをするよう頼まれた。私も長く留まることは出来ない身だが、友との約束だ。望むことが有れば聞こう」

 

「これ以上の望みなど…!我らの賢者様を一時的とはいえ復活させる奇跡を起こしていただき、賢者様が心配しておられた存在の討伐にも力を貸していただいた様子……ではせめて天使殿には礼をさせていただきたい。当代の王に会っていただけないでしょうか?」

 

 

「………欲のない子供達だ。だが友がこの国でどのように生きたか興味もある。それではお前たちの国の首都に訪問すればよいか?」

 

「はい!我々にご同道いただければ!!」

 

「もしよければ、今すぐお前たちの国の王城に伺おう。無論、お前たちも連れて。それで構わないか?」

 

「はっ…それはどういう…?」

 

「お前たちを伴い、転移するという意味だ。なに、王城の場所については友より聞いている」

 

「て…んい…しかも我々を伴って…そのようなことが本当に…?!」

 

「…ああ、事実だ。では転移しようと思うが、突然王城に現れても問題はないかな?」

 

「な…なんという…いえ、問題は…あるかもしれませんが、俺が説明いたします!」

 

「よろしい…では上位転移(グレーター・テレポーテーション)!」

 

 

 

転移魔法を唱えながら、るし★ふぁーはとりあえずここまでは上手く演技出来てホッとした。

途中何度もタブラに、『こんな感じ?』とか『これ、もう転移しちゃっていいの?』とかを伝言(メッセージ)で聞きまくったが、特にNGは入らなかったのだった。

 

タブラもタブラで、実はちょっとハラハラしていたが、やはり思ったように都合よく話が進んでいて、るし★ふぁーに対しても『友がこの国でどう生きたか興味ある、とか言ってください』とか『王城への念のためアポなし転移OKか確認してください』とか思いついたカンペを投げていた。

 

また、口だけ賢者の幻が喋り始めたところで、牛頭人(ミノタウロス)達に精神安定の魔法をかけたりと、結構忙しかった。

 

 

『やはり、このパターンも想定して、透明化状態で王城まで一度行って、転移地点登録しておいて正解でした』

 

とタブラは心の中で呟きながら、るし★ふぁーの上位転移(グレーター・テレポーテーション)によって、3姉妹とタブラも王城まで移動したのだった。

 

 

 

***

 

 

 

牛頭人(ミノタウロス)国の王城は、言うまでもないが一時騒然となった。

 

それはそうである。

突然、送り出した兵士団と謎の天使が玉座に出現したのだから。

 

混乱しながらも近衛の立ち位置にある者達が天使に剣や斧を向けた。

彼らにとっては天使というのは意思なきモンスターであるという認識だったから当然である。

 

しかし兵士団の団長が大声で『どうか、お止め下さい!この天使殿は我らの恩人にして賢者様の友。賢者様をあの世より一時的に呼び戻し、賢者様と共に禁域のモンスターを討ってくれたのです!!』と叫んだ。

 

賢明な当代の王は、まだ完全に信じるわけにはいかないが、一度話を聞かなければいけないと理解し、剣を降ろさせた。

 

そして、兵士団により禁域で何が起きたのかの説明が始まったのだ。

 

今回の作戦の中で、実はこの瞬間が最も失敗の可能性が高かった。

なぜならば、牛頭人(ミノタウロス)達が至高なる御方に剣を向けた瞬間、3姉妹から不穏な空気が流れだし、タブラが伝言(メッセージ)にて必死に彼女たちを宥めていたのだから。

 

 

 

「…なんという…俄かには信じられないが、本当にそのようなことが…」

 

「誓って嘘はございません。そして俺たちは、天使殿の転移にて、禁域から一瞬でこの玉座の間へ移動してきたわけです」

 

「天使殿…事実であれば全ての牛頭人(ミノタウロス)に代わり礼を言わなければならない…御名前は“るしふぁー”様で良いのでしょうか?」

 

「ああ、我が名は“るし★ふぁー”。我が同郷の友、“アステリオ”が世話になった国だ。あの程度の事、手を貸すのは当然である」

 

「賢者様の真名を……!やはり、あなた様の御言葉は正しいのでしょうな…余は名を“ヨシツネ”と申します。当代の牛頭人(ミノタウロス)国の王を務めております」

 

「よ…“ヨシツネ”……その名、彼から贈られたのかな?」

 

「なんと…やはりお分かりですか…はい、この名は余の先々代の王が贈られた名で、以後、王はこの名を名乗っているのでございます」

 

 

 

 

るし★ふぁー達がなぜ、“口だけの賢者”のプレイヤー名を知っていたか。

 

それは非常に簡単なことで、この玉座の壁一面に、日本語の落書きが書かれているためだ。

 

事前に忍び込んだ際、落書きの内容は一通りチェック済みである。

 

落書きの中には、明確ではないにしろ常闇の竜王の存在に気づいているような言葉もあり、それも踏まえてのセリフ回しとなっている。

 

その中に明らかに“アステリオ参上!”というのが有り、タブラ的にもおそらくこれがプレイヤー名で、牛頭人(ミノタウロス)達は読めないけど、賢者が遺したアートだからそのまま残している的な状況だろうと推定した。

 

もし違っていても『そうか…地上では異なる名を名乗っていたのだな』で誤魔化すつもりでいた。

 

“ヨシツネ”と聞いたとき、るし★ふぁーは思わず吹き出しそうになったが、こういった場合も想定して、タブラの指示で表情が見えないように顔をベールで隠していたためバレなかった。

 

 

「さて、当代の王、ヨシツネ殿よ。私は友から、この国の子供たちが困っていることが有れば力を貸すように頼まれている。もし何か懸念事項があれば言うが良い。なに、礼など考えずとも良い。これは友との約束であるし、それでも気が収まらぬというなら、友がこの国でどのように暮らしたか、何を遺したか、それを教えてほしい。それを以って私が為すことの代わりとしよう」

 

 

天使の言葉に、王は一度隣の牛頭人(ミノタウロス)と目を合わせた。

その牛頭人(ミノタウロス)――おそらくは宰相のような立場の者――は真剣な面持ちで一つ頷く。

 

それを見て王は、覚悟を決めたように天使を見据えて言葉を発した。

 

 

「それでは…このようなことを御願いするのは誠に気が引けるのですが……この国の北側、隣国にビーストマン連邦というものがあります…」

 

 




タブラ様的には、すでに聖王国で神認定されてるっぽい★ならば他の土地で奇跡起こしても問題ないだろうと考え、自身は顔が割れない様にこっそりと裏で絵を描きます。

この2人が一緒になると、失敗が少ない作戦の脚本をタブラ様が書き、天使属性と多彩な手札を持つ★が演者となって、調子に乗り出すと思うんですよね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。