オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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今週は忙しかったうえにずっと喉が痛かったです。
今年の風邪は長引きますね。。。


第5章 第21話 -人間の英雄王の誕生-

 

 

 

「よっドゥエル!」

 

「うおっ!何じゃお前さんか。どうしたんじゃ」

 

「いやちょっとインゴット売ってほしくてさーそれと可能なら何体かフェイク・バザーズ連れてっていい?」

 

「ああ、ちょうど良かった。正直お前さんの作ったゴーレムは昼夜関係なく働いとるから、このままだと在庫だけがどんどん増えて、山の金属も枯渇するかもしれんと心配しとったところだ。まあ今は人間の国の復興作業とやらでインゴットはよう売れとるが、それでも在庫過多じゃ」

 

「よかったーじゃあ支払いはまた人間の金貨で…それとフェイク・バザーズは精製場作った経験がある奴含めて10体ぐらい連れていくけどいい?」

 

「ええぞ。なんじゃ、別の場所で鉱山開発でもするのか?」

 

「そうそう。まあここからはめっちゃ離れてるからドゥエルは知らないと思う」

 

「そうか、まあええ。それにしてもお前さん、ちゃんとバザ坊にはたまに会ってやれよ」

 

「うん、バザーとは伝言(メッセージ)でよく喋ってるから大丈夫だよ。あいつ、ここにも来る?」

 

「まあ、前ほどじゃないがな。坊も今や丘陵の統一王者じゃし、お前さんも実は神とかなんじゃろ?儂にはよく分からんが、若者たちが出世していくのは嬉しいことじゃな」

 

 

出会ったころと全く変わらない、その闇小人(ダークドワーフ)の物言いに、ショータローは心地よさを覚えたのだった。

 

その後、ショータローが初対面のルベドを“娘”と紹介したことで、ドゥエルは再び混乱の極みに陥ったり、バザーに7人目の子供が生まれるらしいという話で盛り上がったりした。

 

ショータローは予想よりも多くインゴットを購入できたこと、そしてフェイク・バザーズを回収できたことについて悪い笑みを浮かべ、ドゥエルとの会話が終わったのち大陸中央の空を透明化で飛び回りながら何かを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

同じ頃タブラとアルベドは、パラケルとルゥオンとして人間に変装し、バハルス帝国に居た時に購入した〈無臭(オーダレス)〉のスクロールを使用したうえで透明化し、トロール国に侵入していた。

 

 

「お父様、私たちはこれからこの無礼者たちが暮らす国で何を成すのでしょうか?」

 

「そうですね、そろそろ説明しておきましょう。お前も分かっていると思いますが、トロールの多くは本能を優先する様子。ごくまれに武人気質であったり話が出来る者もいますが、国単位で牛頭人(ミノタウロス)国と和平条約を結ぶのは難しいでしょう。牛頭人(ミノタウロス)の王たちもそれを理解していて交渉は最後になるようです。ですので彼らの周辺国との交渉成功のためと、何より、るし★ふぁーさんの作戦が上手くいくようにアシストしてあげようと思ったのです」

 

「それでは、私たちでこの国の中枢の者の数を減らすという事でしょうか…?」

 

「いえいえ、それはしませんよ。私たちはあくまで裏方ですからね。以前この国に隠れて侵入した際に見た、人間の収容所。あそこにエリュエンティウから捕らえられたと思われる若者が居たではないですか。私の記憶ではあの若者は比較的純粋であまり疑うという事を知らない方でした。そして、私たちはラビリントスの中でアステリオさんが遺した人間用の装備を手に入れました…あとはフォーサイトの時の様に、少しだけやり方を教えてあげればいいと思いませんか?」

 

「成程…そう言う事ですか。さすがお父様です…そうなると牛頭人(ミノタウロス)達が交渉を始めるときには2通りの可能性があると思われますが…」

 

「そうですね。どちらのパターンでも、るし★ふぁーさんの作戦に影響は出ないでしょう。集団としてのトロールとの共存は難しそうですから、飲み込まれるパターンの方が良いとは思いますが、私たちがあまりに方向性を定めすぎると裏方としての立ち位置が崩れてしまうかもしれません。なので、その辺りはお任せしましょう。というより、やはり何か大きな力が運命を導いているような気配が有ります。私たちが必要以上に手を出さなくても、おそらく良き方向(・・・・)へ進んでいく気がしますので」

 

「さすがお父様でございます…そこまでお考えとは」

 

「では、作戦を始めますか。ニグレド、念のため見張りのトロールが邪魔をしてこないよう、周囲を警戒していてください」

 

『畏まりました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———青年は失意の中にいた。

 

彼は元々エリュエンティウから零れる水を目当てに外周で暮らす人間たちの一人であった。

 

ある日、外周の街に20余りのトロールが攻めてきたのだ。

彼らの目的は単純であり、それは食料の確保だった。

 

逃げる力のない者は即座に捕まり、一部はその場でトロールの空腹を満たし、若く体力が有りそうな者は生け捕りにされ、彼らの国、トロール国に連れ去られ、そこで家畜となった。

 

彼、エルキュールもまた、そうしてトロール国の家畜となった者の一人だった。

 

“狩り”で両親は殺され、彼は孤独となった。

 

体力があると判断され繁殖雄として飼われることになった彼は、収容所の他の人間たちに共に逃げようと壁越しに言葉を掛けたが、返答は芳しくなかった。

 

彼と同じように連れてこられたものは既に心が折れ、また、この収容所で生まれた人間は家畜として産まれたが故、もはや誰も逃げ出すという選択肢を持っていなかった。

 

一人で逃げ出そうと思っても、トロールたちとの圧倒的な力の差によりそれは叶わない。

 

絶望の中で、自分も少しずつ人間性を失い家畜となっていくのか…そう考えていた矢先の事であった。

 

収容所の壁にもたれかかり座っている彼の耳元で声がしたのだ。

 

 

 

「エルキュールさん、でしたよね?」

 

「なっ…!」

 

 

エルキュールは目に見えない何かに口を押えられた。

 

 

「敵ではありません。あなたが望むなら、あなたを助けることもできると思います。私は現在透明化してあなたのすぐ横に居ます。大声を出さないと約束できますか?」

 

 

エルキュールが少し落ち着いて首を縦に振るのを確認すると、その目に見えない誰かはエルキュールの口を押さえるのをやめた。

 

 

「他の方々に騒がれたりトロールに気づかれると危険なので、透明化したままお話します。私は以前、エリュエンティウであなたとお話した者です。なぜこんなところに居るのか教えてもらえますか?」

 

「あ…ああ。俺は少し前までエリュエンティウの外周で暮らしていたエルキュールだ。トロール共が攻めてきて、俺の両親は殺され、俺も捕まって家畜にされた…すまないが俺はあんたが誰だか思い出せない…あんたは誰だ?」

 

「私はパラケルです。先祖がかつてエリュエンティウの外周で暮らした者で、現在は2人の娘と共に旅をしている者です。少し前、先祖の故郷であるエリュエンティウの外周の街に滞在して、その時あなたとは何度かお話したかと思いますが」

 

「あ…ああ!思い出した!あのルゥオンさんとノアーさんの親父さんか、魔法薬屋の。しかし、あんたは何故ここに?まさか、あんたも捕まって娘さんたちもトロールにやられてしまったのか?」

 

「いいえ、違います。娘たちは安全な場所に居ますよ。私はあの外周の街が襲われて人が攫われたのを知ったので、生存する方が居れば助けようと思ってここまで忍び込んできたのです。見知った顔であるあなたが生きていてよかった」

 

「そうか…ありがたいことだ…だが俺以外の者は多くが殺され、生きている者も心が折れてしまっている…可能な限り他の者も助けたいのだが、あんたの魔法で何とか皆を助ける方法は無いだろうか?」

 

「ふむ…透明化をかけることは出来ますが、トロールは匂いに敏感で匂いを消さずに大勢で移動すれば気づかれてしまうかもしれない。私は無臭(オーダレス)の魔法が使えないのですが、自分用のスクロールしか持っていないのです」

 

「そうか…悔しいが俺の力ではトロール共を倒すことは出来ない…そうなると他の者達を助けるのは難しいか…」

 

「1つ、提案があるのですが」

 

「ん?何だろうか?」

 

「私はここまでの旅の中で遺跡やダンジョンなどでいくつかの装備や武器を手に入れましたが、戦士でない私は装備することが出来ないものがあります。あなたがその武器防具を装備してトロールを倒し、強くなることでより多くの人間を救えるのでは?」

 

「な…それはあんたが手に入れた装備だろう?それを受け取るわけにはいかないし、それにトロール共は再生能力も高く、多少の武器を装備したとしても簡単に倒せるとは思えないんだが」

 

「いえ、使えない武器は持っていてもしょうがないですし、今はそんなことを言っている場合ではないので提供します。それにこれらの装備は中々のもので、武器にはトロールが苦手とする火属性攻撃が可能です。それに私の本業である魔法薬を提供しますので、それで能力の底上げもしましょう。どうですか、試してみませんか?」

 

「しかし……いや…あんたに会わなければ俺は間違いなくここで朽ちていた…両親や友の仇、俺に出来るだけのことはやってみたい…俺が単純な男であることは俺自身が分かっている。だが、だからこそ、敵を討ち、生きている同胞を助けたいという気持ちがあるんだ。その俺の単純な望みのために、その装備を貸してもらえるか?」

 

「勿論です。ではこちらを装備してください」

 

 

未だ透明なパラケルが居ると思われる場所から、突然鎧と盾、そして片手剣が出現した。

 

エルキュールは人間基準では力のある、言ってしまえば脳筋な若者であったが、トロールに対抗できるほどの実力は無かった。

 

そんな彼でも明らかに、それらの装備は常軌を逸した強力な力を持っていると感じた。

 

恐る恐る…と言った感じでそれらの装備を身に着ける。

 

魔法の装備特有の、不思議な力を身に纏った感覚が有り、特にその片手剣は強い魔法の力を感じる。

パラケルに言われるまま小さく素振りをすると、確かに火の属性を攻撃に乗せることが出来る感覚がある。

 

 

「さて、それではこの魔法薬を差し上げます。2種類、5本ずつ差し上げますので、24時間ごとに1本ずつ飲んでください」

 

 

タブラは下級全能力強化の水薬(マイナー・フルポテンシャル・ポーション)経験値上昇の水薬(ブレス・エクスペリエンス・ポーション)をそれぞれ5本ずつ渡す。

 

エルキュールが水薬(ポーション)を飲んだのを確認すると、アルベドへ伝言(メッセージ)にて、『最も近い位置に居るトロール1体だけに魅了(チャーム)をかけて、この場所に来て待機するように指示してください』と伝えた。

 

 

 

装備と水薬(ポーション)により強化されたエルキュールが、自身から溢れる力を信じられないといった表情で見ていると、パラケルが居ると思われる場所から再び声がした。

 

 

「エルキュールさん、どうやらトロールが1体だけこちらに近づいています。その装備で敵を倒してみてはいかがですか?」

 

「なっ…いや、しかし…やらなければならないな」

 

「大したことは出来ませんが、危なそうでしたら私も魔法で援護しますので」

 

「助かる!」

 

 

収容所の扉が開く。

そしてふらふらとした足取りのトロールが1体、中に入ってきた。

 

 

「オオオオオオ!喰らえっ!!」

 

 

戦士としての職業レベルは持ちつつも、決して高くないレベルのエルキュールであったが、武器の性能と水薬(ポーション)によるすさまじい底上げにより、剣はトロールの腕を切り落とした。

 

亜人に対しての効果が高い〈アリアドネの短剣〉は吸い込まれるようにトロールの身体を切り裂き、火属性によってその高い再生能力をも阻害する。

 

トロールはなぜか(・・・)あまり抵抗することは無く『ナゼ…ナゼダ…』と呟きながら、エルキュールによってバラバラにされ、その肉は燃えて消滅し再生することは無かった。

 

 

 

「エルキュールさん、お見事です。私が手を出す必要はなかったみたいですね…おや、また新たに1体トロールが近づいているみたいですよ」

 

「な…またか!しかしこの装備…恐ろしいほどの力だ…この俺がトロールを無傷で倒せるとは…」

 

 

また、ふらふらとした足取りのトロールが一体だけ収容所に入ってくる。

そしてエルキュールがそれを倒す。

 

何故かとても安全に1体ずつ現れるトロールを倒し続けたエルキュールは、経験値上昇の水薬(ブレス・エクスペリエンス・ポーション)のおかげもあってか、レベルがどんどん上昇していった。

 

 

そんな日が4日経過した頃。

武器の上乗せとドーピングで、即効且つ効率的なレベルアップをさせられたエルキュールの肉体は、ギリシア神話の英雄の様に逞しくなっていた。

 

 

 

「エルキュールさん、素晴らしいですね。この4日間で見違えるほど強くなられた。それにこの付近のトロールは概ね倒してしまったようですね」

 

「ああ…自分でも信じられないが、これだけの力があれば同胞を救いつつ元の場所へ帰還することも難しくないと思う。パラケルさん、あんたには本当に世話になった。どれだけ感謝しても足りないだろう」

 

「何をおっしゃいますか。確かに武器や水薬(ポーション)の効果はあったでしょうが、これはあなたの実力。あなたが強くなる才能をお持ちだったのでしょう…それで、この後、あなたはどうしますか?」

 

「それなのだが、この4日間、何度か捕まっている他の人間たちに話しかけてみたのだが、やはり彼らは皆、家族を失い、自身も虐げられて心の傷は深く、簡単に癒えるものではないようだ…俺はもう少し彼らの説得にあたりたい」

 

「成程それも重要ですね。ですがあなたにお渡しした水薬(ポーション)はあと1日分のみ。強さの底上げが出来るあと1日で、より安全な状況を確保しておくことが必要かもしれません。具体的には、このトロール国の王のような個体を倒すことです」

 

「トロールの王…しかし、さすがに王となると俺が倒せるだろうか?」

 

「あなたは既に4日間、かなりの数のトロールを倒しています。流石にそろそろ王はそのことに気づくでしょう。どちらにしろ戦わなければいけないかもしれません。それに今の貴方は、私がかつて北にある人間の国の闘技場で見たウォートロールより強くなっている。水薬(ポーション)の底上げが有れば有利に戦えるのではないでしょうか」

 

「確かにな…いずれにしろ戦わなければいけないし、トロールの王を生かしておけばまた近い未来に同胞の命が奪われるかもしれない…あんたは王が居る場所を知っているのか?」

 

「確証は持てませんが、おそらくは最も大きな建物の中に居ると思います。ここからそう遠くはありません。移動の間は透明化をかけますよ」

 

「すまない。またあんたの世話になるが、その建物まで案内してくれないか?」

 

「ええ、もちろんです」

 

 

実際のところは、すでに王を含め、王が住む建物の中のトロールは女淫魔(サキュバス)であるアルベドによって強めに魅了(チャーム)をかけられていて、ほとんど危険は無いのだが、タブラの見立てではトロールの王の方がエルキュールよりレベルは高く、一方で武器やドーピングの底上げも加味すると、エルキュールが高い確率で勝つだろうと考えていた。

 

それ以外のトロールは、ドーピングの効果が切れたとしても、今のエルキュールとその装備なら問題なく倒せそうだ。

 

なので、王だけは倒させておきたかったのだ。

 

 

「さて、見えますか、あれがおそらく王です。透明化のまま近づき不意を突いて出来るだけダメージを与えましょう。私も必要そうだったら援護しますので」

 

「わかった。パラケルさん、恩に着る!」

 

 

そう言って飛び出して行ったエルキュールは、何度かの剣線の末に無事王を討ち取り、そのまま続けて側近と思われるトロールたちも倒していった。

 

さすがに緊張していたのか、肩で息をするエルキュールに、パラケルは透明化を解いて念のため回復の水薬(ポーション)を渡した。

 

 

 

「お見事でした。王が倒れた今、このトロールの国は瓦解していくでしょう。しかしその過程で散り散りになったトロールは、近隣の国の住人を襲うかもしれません…あなたはこの後どうしますか?」

 

「捕まっていた人間たちを説得してあの町に戻る、というのは変わらないが…たしかにあんたの言う通りだ。逃げ出したトロールが何処かを襲うというのはありそうだ。仲間の説得と同時に、出来るだけ残りのトロールを倒し、数を減らすか…いや、確かここの東や南には亜人の国があると聞いたことが有る。トロールが亜人の国に攻め込んだ場合は潰し合いになってくれるか…」

 

「エルキュールさん、実は私はここより南東の牛頭人(ミノタウロス)国に行ったことが有りますが、その国では人間は食料でなく一定の権利も認められていました。そして私たちと同様にトロールによる被害には困っていた模様…同じトロールという敵が居ることで、もしかしたら牛頭人(ミノタウロス)達とは敵対する必要はないと思いますが?」

 

「なっ…そうなのか…俺は殆ど街から出たことがなかったから亜人たちは皆敵なのかと思っていた。あんたのように色々な国を旅して博識な者の言葉は本当に驚かされるな。確かに敵対しないで済むならそれに越したことは無い」

 

「そうでしょう。もし、牛頭人(ミノタウロス)が友好的な関係を築きたいと言ってきた場合は、それに応じても良いかもしれませんよ。さて、私はそろそろ娘たちのところへ戻ります。5日も空けているので心配しているでしょう。それにこのトロール国には、もうあなたに敵うトロールは居ない可能性が高い。あなたはこれから捕まっていた人間たちの説得と心のケアをするのでしょう?また、私もエリュエンティウの外周やこの場所に旅で来ることもあるかもしれません。その時はゆっくりお話でもしましょう」

 

「ま、待ってくれ。この装備、お返ししなければ。それに、俺はあんたに世話になりっぱなしで、何も恩を返せていない!」

 

「装備は私が持っていても活用できないので差し上げます。まだあなたには必要でしょう。お礼などは不要ですが…そうですね。それでしたらその代わりに、ここに捕らえられていた人間やエリュエンティウの外周の人間を、あなたの強さで導いてください。それとさっき言った牛頭人(ミノタウロス)のように、友好な亜人とは仲良く、お互いの利益が得られるよう歩み寄ってみてください。そうすれば皆にとって生活しやすい場所となるでしょう。いずれ旅で私が再び訪れた時に、そうして出来上がった快適な国や街の様子を見せてください。それをもって恩返しとしていただければ私は満足です」

 

「なんと…なんという人だ。俺は…正直頭は良くないから分からないことは仲間に聞いて、そしてせっかく授かったこの力有効に活用して、あんたが言うような快適な場所を作ることに全力を尽くすと誓おう!」

 

「その意気です、エルキュールさん。ではまた会う時まで、お元気で」

 

 

そう言うとパラケルは再び透明になり、エルキュールの前から姿を消した。

エルキュールにとってトロールに捕まったことは不幸であり、地獄の日々だったが、その後奇跡的に再会した知り合いの魔法薬屋の男が齎した嵐の様な5日間は、明確に彼を成長させた。

 

エルキュールはパラケルが消えた方角にしばらく頭を下げていたが、再び頭を上げると、その意思が強そうな目で同胞たる他の人間たちへの説得を始める。

 

論理的ではなく不器用ではあったが、まじめでまっすぐなエルキュールの言葉は、少しずつ同胞たちの心を癒していき、やがて彼は皆から信頼されるリーダーになる。

 

捕まっていた全ての人間たちの心に尊厳を取り戻したのち、エルキュールは一度エリュエンティウの外周まで戻り、それまであったことを仲間たちへ共有した。

 

そしてエルキュールを旗印にした一部の集団は、トロール国があった場所に再び訪れ、モンスターや外敵の被害を受けないための強い国を作るための準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「お父様、お見事でございました」

 

「アルベド…彼、エルキュールは私たちにとって、とても御しやすい方だったと思いませんか」

 

「はい、正直に申し上げますと、あの者は少々、他を疑う事や思慮に欠けている点が多々見受けられました。ですが心が弱っている者達にはあの者のような…ある意味単純な者の方が受け入れやすいかもしれません」

 

「お前もそう思いますか…私たちは偶然にも、またもや私たちにとって、とても都合のいい者とめぐり逢い、うまくことを進められたようです。さて、それでは牛頭人(ミノタウロス)国に戻りますか。るし★ふぁーさんのゴーレム作りも始まっているでしょうし、牛頭人(ミノタウロス)国の使者が最初の交渉相手国である風巨人(エアジャイアント)国へ向かった頃でしょう」

 

 

脳食い(ブレインイーター)の姿に戻ったタブラ・スマラグディナとアルベドは、速やかにラビリントス最奥の部屋に戻っていった。

 

 




大陸中央の話は、今後のストーリー上必要なのですが、登場する人たちは皆私の妄想で、あまり詳細に話をするべきでもないと思うので、この後はサクサクと進んでいきます。

5章の終わりが近づいてきました。
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