オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
今日は時間が有ったので2話一気に投稿します。
関係ないのですが、風邪は治ったのに今度は腕の骨か筋をおかしくしていしました…
明日病院へ行きます…折れてなければいいけど
安堵の理由は、既に交渉をした
そもそも、賢者様がご存命の時代に交流があった
そもそも
人間種を含めた会話が通じる他種族を食わないという条件についても、元より口だけの賢者が広めた常識により人間が食料という考えは薄れていたし、お互い、どうしても食わなければいけない他種族がいるわけではないので手打ちすることが可能だった。
これは
ただ
彼らの生活スタイルは都市のような場所で群れて暮らすものでないため、友好国であっても自国の文化を変えられたくないという思いがあるとのこと。
ただし、いずれ再降臨なさる賢者様の御言葉は聞いてほしいと付け加えた。
ここまでは問題ない。
特に拗れることも無く、4か国間での和平交渉は成功したと言える。
不安の要因は言わずもがな。
ここから先の2か国との交渉である。
当然ながら戦争中であるビーストマン連邦との和平など、唐突過ぎる話をかの国が受け入れる筈はなく、また食料の件も、交渉を難しくする要因である。
確かに人間のような会話が成り立つ他種族を家畜として飼うというのが野蛮な行為である、という感覚が薄っすらとはあるらしいが、自国の様にルール化されているわけでもないし、ましてや戦争相手国の言葉など受け入れる筈もないだろう。
トロール国については戦争をしているわけではないが、彼らは非常に好戦的かつ、自国からすれば野蛮と言ってもいい生活習慣で暮らしていて、交渉そのものが出来るか分からないし、他種族を食うなと説得することに至っては不可能な気がする。
現にここ最近も、トロールが
トロールの被害は昔からあるため、トロール国との国境側に位置する町には、それに対抗できるだけの技量を持つ戦士が駐在しているので被害は最小限で済んでいるが、トロールの強襲はここのところ多くなっている気もする。
つまりこの2か国は、交渉即戦闘となる可能性があるので、同時に2つの戦線を抱えることがないよう、慎重に1か国ずつ進める必要がある。
現在、隠密技能が高い斥候の者がこれら2か国に忍び込み、それぞれの国の状況を観察して情報を持ち帰ることとなっている。
例えば、どちらかの国がすぐに動かせる兵が少ない状況であるならば、その国から先に交渉…いや、用件だけは伝え、賢者様が降臨される事だけは伝えなければ…
その様なことを考えながら、斥候の帰りを待っていた王たちに信じられない情報が齎されたのだ。
「それは…まことか?!」
「はい、王よ…私も信じられませんがトロール国は既に滅んでいる可能性が高いと思われます。かの国の王城があった街には人間たちが住み着いており、トロールの姿はありません。それ以外のいくつかの都市も見ましたが、人間の中に非常に強い者が居るようで、その者を中心とした集団が積極的に残っているトロールを狩っている模様です!」
「な…なんという事か。この局面でそのような厄介ごと…いや待て…その人間の集団の中に強いものが居ると言っていたが、それは人間の王であるか?」
「それは解りかねますが、その飛びぬけて強い人間は他の者からリーダーと呼ばれていましたので、指導的立場に居る可能性は高いと思われます」
「ふむ…ならばいっそ、その者を新たな国の王として考え、その集団と和平を結ぶことで、周辺地域においてはビーストマン連邦以外の全ての国と和平を結んだことになるのではないか?…大臣、どう思う?」
「は…確かに仰る通りですが、問題点が2つあります。1つは我が国を含め、周囲の国において人間は食料ではないにしろ奴隷という意識が根強いこと。この事実は人間たちの集団にとって不快と感じる可能性が高いでしょう。2つ目は、人間の多くはそもそも、我ら
「確かにそうか…トロールたちと比べて良い点と言えば、恐らくは知能という点から会話が出来るという事か…いや、しかし……これは…今こそ賢者様や天使殿が言っていた種族を越えた平等な関係を築くための機会なのではないか?」
「しかし、王よ、申し上げたように人間の国と対等な関係を築くためには、少なくとも国内の奴隷制度を改める必要があります。他3国を含めた和平という事を考えるならば、他3国にも人間の奴隷制を改めるよう進言する必要があります」
「そうだな、その通りだ…これは…おそらくは賢者様からの試練なのであろうな…余は…余自ら
「畏まりました!」
さっそく動き出した
***
「さて、るし★ふぁーさん、そろそろ約束の180日が近づいています。こういったことは大抵大幅に遅れるか、不測の事態などが起きて予定通りに作戦が進まなくなったりするものなのですが、
「いやータブラさんのアシストのおかげでしょー。まさかトロール国を人間の国に変えちゃうとは思わなかったわー」
「いえいえ、台本を書くとはいえ、全てるし★ふぁーさんにお任せするのは気が引けましたので、問題になりそうなトロール国についてはちょっとだけ手を出させてもらっただけです。アステリオさんが遺した武具のおかげで運よくこのような状況になりましたね…で、説明したように
「それだけど、マジですぐに出発しちゃって大丈夫かなー?ビーストマンの国とは戦争状態なのかわんないし、えっと、エルキュールさんだっけ?人間の新しい国とは一応友好状態になったみたいだけど、まだ人間の奴隷とかいるじゃん」
「まあ、そもそも私たちの目的はこの辺りでゴーレムの資源を手に入れることで、それはラビリントスで見つけましたし、言ってしまえば今この瞬間去ったとしても我々的には良かったはずです。ですがその過程で壮大な設定作っちゃいましたし、その最低限の後始末だけはしようという事で
「あー…うん。それはめっちゃ嫌だわ。まーオレもこの辺りでやりたいことはだいたい終わったし、
「そうですか…しかしあなたのゴーレムクラフト能力、この世界ではとんでもないですね…私が魔法で普通にモンスターを召喚した場合、一定時間で消えてしまいますし、そもそも召喚数も限られていますが、ゴーレムは召喚ではないのでずっと残り続けるようですし、製造に時間はかかりますが上限数もなさそうですね…」
「そうそう、めっちゃ便利だよねこれ。今回結構原料手に入ったからさ、元々作ってたのと一緒に鉱山採掘用ゴーレム増やして常闇が居た穴を掘らせたんだけど、結構鉱物資源採れてんだよね。インゴット製造経験があるゴーレムもいるから自動インゴット製造ライン作れたよ!」
「うーん…るし★ふぁーさんが善良側に成長して本当に良かったですね…バザーさんとネイアさん達にはいつか必ず御礼を言わなければ…」
タブラの呟きは小さな声だったので、るし★ふぁーは聞こえなかったようだった。
しかし、るし★ふぁーは、るし★ふぁーである。
善良ではあるが、本質はトラブルメイカー。
この何か月かの間で、るし★ふぁーは暇を見つけては、周辺国の街に赴き、街中には擬態ゴーレムが溢れている。
現在は休眠状態であるが、あるときからこれらのゴーレムは、街中でマナー違反を働いた者をストーキングし、殺さない程度に無力化したところで価値がありそうな持ち物を根こそぎ奪い取る、荒っぽい治安維持装置と化す。
そして街ごとに設置されたゴーレムがリレー形式でその強奪品を
ラビリントスにも既に多くのゴーレムが配置されていて、これらの素材はラビリントスの中で適切に保管され、たまに素材切れを起こした、るし★ふぁーが転移で訪れては回収していく。
彼の40人の仲間は後年、なぜ、るし★ふぁーの悪戯素材が底をつかないのか首をかしげることになる。
そして大陸中央の街々では、この治安維持ゴーレムが国民の倫理観の向上に繋がったとか繋がらなかったとか。
「さて、それではそろそろ演劇会のお時間ですかね。るし★ふぁーさん、準備を御願いします。良くなったら合図いただければ、ニグレドに魔法の起動を指示します」
「おっけー!」
約束の日、周辺国の者達は
彼らが言うには、嘗て悪しき黒竜が棲んでいた山の方角に、伝説の例の“口だけの賢者”が黄泉から再降臨し、言葉を伝えるという。
正直
彼らは皆、指定された場所までその山に近づき観察しているが、天気は雨であって、言われた方角も含めて厚い雨雲が空を覆い、とても見通しは悪い。
友好国であってもそうであったから、敵国であるビーストマン連邦の者達は端から信じている者など居らず、ついに
しかし交渉に訪れた
“賢者”の降臨などどうでも良い。
それが真であれ偽であれ、その時間は軍備のための猶予だ。
奴らが言っていたこと、“言葉を理解できるような他種族を食わない”という事について、実はこの点についてはビーストマン連邦内でも賛成する者が一定数居る。
大陸の北の方にあるという、より原始的な暮らしをしているビーストマンの国とは違い、ビーストマン連邦は技術や文化の発展が進み、その過程で“言葉を理解する他種族を食うのは野蛮”と考える者も増えつつある。
だが、多くの者はまだ、人間を含めた他種族を好んで喰らうものも居るし、褒められた行いではない古びた習慣ではあるが、他種族の幼い個体、とりわけ胎児のようなものを好んで食い、贈り物などにすることを喜ぶ高齢者もいる。
だが、その様なことは別として、
現在のビーストマン連邦の統一王であるナハードは、部下から上がって来る軍備が順調であるという報告を聞いた後、一応は伝令にあった、南西の山の上空の方角を眺められる位置にて陣を張り、その様子を見守っていた。
そしてその時は、唐突に訪れる。
始まりは不可解な天候の変化だった。
約束の方角の空の雨雲が、不自然に消えて行ったのだ。
ぽっかりと空いた空の雲間から、本来の日の光が差し込む。
そしてそこに現れたのは1柱の熾天使。
その熾天使の名を知っている
何度も、それこそ王に至ってはほぼ毎日、玉座の前で言葉を交わした、熾天使るしふぁー殿からは感じられなかったプレッシャー。
いや恐らくは、隠していたのだろう。
その強すぎる力に我らが中てられないように。
そしてその意味は即ち、これから起こる儀式は、かの御方が力を解放しなければならないものという事。
他の国者達のうち、戦う職業の者は元より、そうでない事務方の者であっても、その熾天使の持つ力が途轍もないことは肌で感じることが出来てしまった。
友好国の者達はまだいい。
彼らにとって、その熾天使は友好国に力を貸している者、一説によると例の“口だけの賢者”の友らしいというのだから。
しかし仮初の友好を口にしているビーストマン連邦の者達にとっては、それは容認できない事だ。
賢者の件が事実であれ、虚偽であれ、自分たちはアレと敵対しなければならない可能性があるのだから。
言葉を失い、それでも続けて起こる事象に目を向けるしかないと理解してその熾天使の様子を凝視する。
「〈
熾天使が唱えた呪文らしきものに呼応して、空には巨大な九重の円盤が現れ、その円盤が回り出す。
すると足元の山に光が満ち、今まで山のがれきや石ころと思われていたものが集まり天使の形を形成していく。
形作られた無数の天使たちは、呪文を唱えた熾天使を囲むように集まり皆、祈る姿勢を取った。
そうして、奇跡が起きた。
いや、ここまでも充分奇跡の所業であるが、そこから先は特に
上空、雲間から輝く者が下りてくる。
その姿は金色に輝く
その姿は確かに、お隠れになった時に纏っていた賢者様の衣と酷似している。
『るし★ふぁー、我が同郷の友よ。我がこの地でやり残した事、それを子供たちに伝え、我が撒いた希望の種の芽を出してくれたこと、感謝する……そして子供たちよ。世話になった国の者達、ヨシツネの後継の者、友サンダルデルの類縁の者、そしてこの地に住む全ての子供たちよ、我が求めに応じ、集まってくれたこと、感謝する。我はお前たちに伝えたいことが有り、今一度、友るし★ふぁーの力を借りてこの世界に顕現した』
事前に
賢者は言葉を続ける。
『我がやり残した事、それは2つ。1つはこの山の奥深くに住んでいた悪しき存在の討伐。これはわが友るし★ふぁーと協力し、目的を果たした。定期的に無差別に生者の命を吸うこの悪しき存在はもう居ない。子供たちよ、もう安心して暮らしてよい』
賢者の言葉に、
まさか、伝承の存在が本当に存在し、そしてかの“口だけの賢者”が死してなお蘇り、それを討ったというのは本当だったのかと。
『そしてもう1つ。それは子供たちの真の安寧の暮らし。わが友の姿を見て欲しい。わが友は熾天使、異形だ。だが亜人である我とも友である。故郷には人間種も亜人種も異形種も共に暮らしていた、種の垣根など無い。だがこの世界は、種が違うというだけで争い、あまつさえ他種族を食う者もいた。我はそれが嘆かわしい。我がこの世界にあった頃、家畜となっていた種を労働階級まで引き上げるのが精いっぱいであった。だが我が真に望むのは、我らが故郷の姿、種の垣根など無き安寧の暮らし……我はそれを伝えるためこの世界に今一度顕現した。だが、それも杞憂であったようだ』
賢者はそこまで言うと、集まった下界の者達を見渡した。
『
「アステリオ、それは違う。私がしたことはそなたの想いを子供たちに伝えた事だけ。子供たちは自らそなたの想いに気づき、行動した。これはその結果である。何度も起こしてしまいすまない。だが私は、友に見せたかったのだ。そなたの蒔いた種が芽を出し、子供たちが我らの故郷と同じように、種族を越えて分かり合える道を進み始めたことを」
『ああ、ああ、わが友よ…そして子供たちよ。喉の奥に痞えていた懸念は、今取り除かれた。それは子供たち、お前たち自身が自ら勝ち取ったこと。我はお前たちに、種族を越えた共栄の道を歩き始めたお前たちに、祝福を送ろう。無論、人間たち、お前たちもその中の一員だ』
突然指名された、人間たちの集団、その中でも中心に居る青年は一瞬目を見開いたが、すぐに真面目な顔になると深く礼をした。
続けて周りの人間たちも同じく礼をする。
『さて、もう時間のようだ。友よ。素晴らしい時間を感謝する。そして子供たちよ。重ねて言うが我はお前たちの選んだ道を祝福する。種を越えて共に歩まんとする全ての者達に、永久の繁栄が有らんことを…今度こそ本当にさらばだ、我が愛した世界、我が愛した子供たちよ!!』
そう言うと賢者は光の粒になり、ぽっかりと空いた青空の中へ消えて行った。
その光の粒が全て消えるまで見送った熾天使は、地上に視線を向けると言葉を紡いだ。
「私も友と同じく、お前たちを祝福しよう。そしてこの地の未来は明るいと確信した。私もまた次の土地へ赴かなければならない。だが私は常のこの地を見守り何かあればすぐに私はこの地へ戻ることも可能である。友の言葉を胸に、繁栄の道を歩け、子供たちよ!」
その言葉が終わるとともに、空の九重の円盤は姿を消し、同時にあたりを覆っていた雨雲の全てが消え去った。
後には、どこまでも晴れた青空と、未だ耳に残る“神”たる存在達の言葉。
その光景を見ていた多くの種族の者達の意識が正常に戻ってくるまでには、その後長い時間が必要だった。
大陸中央のいくつかの街は、★の資材庫になりました。