オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
私は暦通りに休めているので、このチャンスにどんどん進めたいと思います。
宜しければお酒のお供にでも読んでいただければ幸いです。
話しの切りの都合上、2話分になってしまったので、2話連続で投稿します。
深夜と言っていい時間。
ガガーランが宿の自室に戻ると、程なくしてドアをノックする音がした。
「…!」
“超”がつく一流の戦士であるガガーランはすぐさま扉の外を警戒する姿勢となったが、感じる気配は危険な空気を纏っていなかったため首を傾げる。
何らかの刺客でないならば、この時間の訪問者は一体誰なのか…?
しかしその疑問の答えはすぐさま分かった。
「ガガーラン、俺だ、パルメーラだ。夜分遅く済まないが、ちょっと話したいことが有る」
ガガーランは僅かに警戒を解き、扉を開ける。
そこには声の通り、黒目黒髪の男が立っていた。
「すまないな、今いいか?」
「ハッハ!何だよパルメーラ。良いぜ、せっかくだからベッドで話すかい?」
「いや…それは遠慮しとこう」
「ま、入んなよ」
高級宿なだけあり、部屋にはそれなりに家具や調度品もある。
小さくはないテーブルと椅子が2つ。
テーブルの上にはワインのボトルが複数。
促されるまま、パルメーラは椅子に座る。
「で、どうしたよ。まさかアレか?ラキュースの好みとか、そう言った相談か?」
「好みとかではないが…まあラキュースのことになるな。ああ、それと最初に言っておくが、この部屋には
「な…お前さん…魔法も使えるのか?」
「ああ、少しはな。で、本題だが、俺は実を言うと、さっきまでお前がラキュースの実家の屋敷に行っていたのを知っている。どうやったかは言えんが、お前とラキュースの父親の会話も聞かせてもらった」
「な…パルメーラ、お前…」
しばしの静寂。
薄暗い部屋の中、月明かりが2人の冒険者の身体を半分ずつ照らす。
「……恐れ入ったな。
「そうだな、盗み聞きして悪かったと思っているし、これはお前たちの話であって、俺は関係ないからな…だが、もし良かったら経緯を教えてもらえるか?なんでお前がラキュースの護衛を、ラキュースの父親から依頼されてるのか」
「ああ…まあ他に言わないってんだったらいいぜ。もうお前さんにはバレちまってるしな。ていうか仲間にも聞かれないように
「ま、そんなところだ」
「ふぅ…ならよぉ折角だからこのワインでも飲みながら話そうぜ。このワインはラキュースの親父さん、アインドラ伯爵から貰ったんだ。俺が今日みたいに報告に行くと追加報酬とか言っていつもくれるんだぜ。ラキュースやアズスのおっさんもそうだが、親父さんも随分と気さくな伯爵様だよな」
そう言ってガガーランは赤ワインをコップに注いで渡してきた。
パルメーラは一口それを口に含む。
当然リアルでワインなど飲んだことなかったので、最初それは随分と酸っぱく感じたが、ゆっくり味わってみると、葡萄の香りと豊かな風味を感じることが出来た。
恐らくは良いワインなのだろう。
「さーて、どっから話すか……まずは俺がまだ田舎から出てきた駆け出しの頃だったか、王国の御前試合に出て、順調に勝ち進んだんだがよ、準々決勝でガゼフのおっさんに当たっちまってな。残念ながらそこで敗退したんだよ」
「ガゼフ…確かこの国の最高位の戦士長だったか?」
「ああ、そうか。お前さんこの国の人間じゃなかったな。ガゼフ・ストロノーフってのは、王国戦士長でこの国では最高峰の戦士だよ。あのおっさんはその御前試合で優勝して、それがきっかけで国王に見いだされたんだ。ただ平民出身だったってことで王宮の中では苦労してるって話だがな」
「ほう…」
「そんで、その試合の後、これからどーしようかなって悩んでた時に、アインドラ伯爵から御声がかかったんだ。『うちの娘が冒険者になって出奔しようとしているからチームメイトになって秘密裏に護衛してほしい』ってな」
「アインドラ伯爵はその試合を見てたという事か?」
「さぁ、どうなんだろうな。あるいは国王から情報が入ったのかも知んねーな。これは後でラキュースから聞いたんだが、アインドラ家は遥か昔からヴァイセルフ王家に仕える家だとか。実際、ラキュースも歳が近い第三王女のラナーとは仲が良いしよ。あとは御前試合参加者の中である程度勝ち進んだ女が俺だけだったからってのもあったんだろうよ」
「ふむ…」
「ま、そう言う訳で、俺としても武者修行中で冒険者として活動するってことは目的にも合致するし、報酬も良かったから、一旦は受けることにしたんだ」
「ん?なんか一定期間の契約みたいな感じだったのか?」
「まぁ最初はな。正直ここだけの話、お貴族様のお守りなんて出来る柄じゃねーって思ってたからな。だけどよ、ラキュースはあの通り嫌な貴族って感じじゃねーし、何より冒険者として才能が有って、今じゃ俺より強くなりやがった…だからある時から契約とか関係なしに、真のチームメイトとしてリーダーを支えることにしたって訳よ。ただ、たまにこうやってリ・アインドルに来るときは、俺はこっそり“元”雇い主様に、お転婆娘の様子を報告してんのさ」
「“真のチームメイト”か…」
「なんか俺っちの柄じゃねーな!仲間に言うんじゃねーぞ!!」
「ああ、それは約束する…済まなかったな、勝手につけて」
「てゆうか、なんでお前さんは俺の事尾行なんかしたんだ?」
「いや…お前が他のチームメンバーに告げずに向かったのを見たから、何らかの裏切りとか、後は貴族と結託して何らかの悪事でも働くつもりかと思ったんだ…杞憂だったがな」
「はっ…俺が『蒼の薔薇』を裏切るなんざ、ありえねーよ!それに、ラキュースの親父さん、アレはマトモな貴族だ。領主としてやるべきことをやってるって俺は感じるね」
「そうか…」
パルメーラは心中では“八本指”と会うという件で、アインドラ伯爵についてはまだ信用のおける存在ではなかったが、そのことをガガーランに告げるべきでないと考え、一応は同意した。
「あー…いい気分だぜ。こんなこと、今まで誰にも言えなかったからな。なあパルメーラ、どうだ、一回俺と寝てみないか?」
「いやそれは遠慮するって言っただろ」
「ハハハ…振られちまったか。お前さん…いや…なんだ、不思議だな。俺の特技は童貞かどうか判別することなんだが、お前は…どっちか分かんねーな…こんなことは初めてだぜ」
「なんだその意味不明な特技は…怖えーよ。まあ、そうだな、例えばガガーラン、お前は天使や悪魔とか、戦場で会ったモンスターが童貞か分かるか?」
「は?モンスター?天使?悪魔?…いや考えた事ねーけどよ…多分、分からないな」
「…そういう事だ。俺は
「……何だか俺っちにも上手く説明できないけどよぅ、パルメーラ、お前、ラキュースと同じ匂いがする気がするぜ。あいつの親父さんにも、いい相手をそれとなく探すように言われてんだよ。どうだ、ラキュースは?」
「ふむ…ラキュースはまだ俺の相手をするほどの実力には達していない。だが先日のアンデッドの群れを倒している時思ったが、ラキュースはまだ伸びるな」
「いや…お前さん…いや……まぁ、そうさな。お前みたいな奴の方が初心いラキュースには合うのかもしれねーな…」
「?」
「あーそうだ。せっかくだから教えてくれよ。パルメーラ、お前さんの目から見て俺の実力はどうよ?正直言うとな、俺は最初は親父さんからラキュースの護衛もかねて雇われたようなもんだが、今じゃラキュースのが強いって感じる。お前さんが言うように、ラキュースは才能もあるし、英雄の領域に足を踏み入れているって思うんだよ。だがよぉ、俺は…最近限界を感じるんだ。俺はおそらく…英雄にはなれない。そんな気がする…戦士として隔絶した強さのお前さんから見て、俺はどう感じるか、正直に教えてくれねぇか?」
「…英雄と言うのはレベ…いや、難度…90程度と言う意味で合ってるか?」
「ん?ああ、まあそうだな。難度90のモンスターを単独で倒せるんなら、そりゃ英雄って言えるだろうな」
「そうか……まず、俺の見立てでは、ガガーラン、今のお前は難度78と言ったところだ。そしてお前が今後、難度90に至れるかどうかという点については、恐らくだが可能だと思うな」
「なっ…マジかよ?!」
「ああ。先日のアンデッド退治の時思ったが、お前はまだ成長している。正直言うが、成長の度合いはラキュースのが上だ。ただ、あいつは信仰系魔法にも割り振っているから戦士としての実力の伸びは俺にも正確には分からないが、それでもあいつの方が上だ。だが、お前が成長していないかと言うとそうではない。お前が格上の敵と戦い続ければ難度が10ちょっと伸びることは可能だと俺は考える。先日のアンデッドは数こそ多かったが、お前に担当してもらった最前線は、比較的雑魚が多かったからな」
「…そうかい……正直、嬉しいぜ。お前さんみたいな頂点の戦士にそう言ってもらえるとな…だが格上の敵か。そうなるともう、おめーら『漆黒の剣』がやったみてーに、ドラゴン狩りでもしないとダメかもしれねーな」
「武器の相性的にはアンデッドのがいいと思うぞ。先日の時は切羽詰まってたから俺がまとめて倒してしまったが、あの群れの比較的後方にいた
「いやそんな魔境どこに……いや、やっぱり知らねーな。まあ可能性があるって分かっただけでも嬉しいぜ。なあパルメーラ。このワイン飲み干すまで付き合ってくれよ。どのみちアインドラ伯爵から貰ったもんは『蒼の薔薇』の仲間には共有できねーからよ」
「…ああ、分かったよ」
アンデッドの魔境と聞いてガガーランの脳裏に浮かんだのは、まずは先日まで退治していた聖王国との国境付近のアンデッドたち。
だが、そのアンデッドは数こそ多かったが、やはりそこまで難度が高い者は居なかった。
そして次に浮かんだのは、いつか仲間のイビルアイに聞いた彼女の祖国。
詳しくは知らないが、イビルアイの祖国は未曽有のアンデッド被害で滅んだと聞いた気がする。
リグリットや、その当時の仲間と共にその国は聖なる炎で清められたらしいが、その話を教えてくれた彼女の言葉はどこか悲しそうなものであった。
だからこそ、こちらからはその話題は出さないようにしようと思ったので、その案も却下したのだった。
一方のパルメーラは、目の前の女重戦士の謎の行動については、彼女の言葉によって明らかになったし、そのことについて彼女が嘘を言っているとも感じなかった。
それよりも彼女が言った“真のチームメイト”と言う言葉に思うところがあった。
それは
そして例えば
それは今も昔も変わらない。
よく“正義”の反対は“悪”ではなく“別の正義”だと言われる。
だがウルベルトにとって、それは不快な言葉だ。
まるで自分の“悪”が“正義”などと言う言葉に穢される気がするからだ。
なぜ、自分はこんなにも“正義”が嫌いなのか。
恐らくそれは、あのリアルの世界で、己の事しか考えていない唾棄すべき支配者層共が、都合よくその言葉を使っていたからなのだろう。
あのレエブンとか言う貴族、それにパナソレイ。
あれらは支配者層でありながら、その傾向はみられない。今のところは。
そして神殿と言う組織とその元締めっぽい南のスレイン法国とかいう国。
あれらも行いは、言いたくはないが“正義”に属するもので、しかしながらやっていることは自己保身的なものでもなく民を守っていると言えそうだ。今のところは。
いずれにせよ、この街の領主であるアインドラ伯爵とやらが
パルメーラは、浮かんできたいくつかの悩みのような迷いのような感情を、毒無効化で酔うことないワインと共に飲み込み、机の上のワインが全て空になるまで、上機嫌そうなガガーランと杯を交わしたのだった。
ガガーランに関する考察…なんでガガーランはラキュースと一緒に旅を始めたのか、についての妄想でした。
ペロロン「え…嘘、ウルベルトさん、そういうのも行けるの?!…ガッツ…いや…好みの幅は人それぞれ…」
姉「おい」
ペロロン「あ」
姉「来い」
ペロロン「はい」