オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
王都の神殿に、『蒼の薔薇』と『漆黒の剣』のメンバーが集まっていた。
逸脱者2人にしては、帰りが遅いニニャとパルメーラに何かあったのかもしれないと感じたペテル達『漆黒の剣』の3人は、ニニャ達が最後に行くと言っていた神殿へとりあえず行ってみたところ、神妙な面持ちのニグンに迎えられ、概ねの事情を聞いた。
そして、安置室で一通り泣きはらした後のニニャと、その横に座るパルメーラに会い、一同はニニャの姉、ツアレニーニャに哀悼の祈りをささげた。
『蒼の薔薇』もある程度調査を終えて、その途中で現在王都に、以前リ・ロベルで共闘した陽光聖典が逗留していると聞いたため、挨拶と、今後八本指との衝突が起こる可能性が高いこと、およびその際の住民の守りを御願いしようという事で神殿に来た。
そして、そこで沈痛な表情を浮かべる『漆黒の剣』に会い、何が起こったのかを聞いた。
『蒼の薔薇』の皆も、ニニャに言葉を掛けることは出来ず、ただ、無残な姿の遺体に手を合わせた。
情に厚い女であるガガーランは、目を赤くして怒りの表情を浮かべているし、以前ニニャ本人からある程度事情を聞いていたラキュースは、神官として死者の安寧を祈るとともに、八本指に対して途轍もない怒りを改めて覚えている。
だが一同が共通して感じたのは、ニニャの不気味な静けさ。
パルメーラが一緒に居たようだし、その表情からおそらくは既に涙を流した後だと理解できたが、そうだとしても静かすぎるのだ。
当然表情には、家族を失った者の怒りと悲しみがある。
だが、それ以上にその目の色は深く、落ち着いていて、まるで津波が来る前の引き潮のような、そんな静けさを湛えている。
一同がそんなニニャの危うさに、少し警戒をしたが、パルメーラがニニャの方を軽くたたくと、表情からその危うさは失われた。
「ニニャ、皆と先に宿に戻っててくれ。俺はさっきの件、ラキュースに確認する」
「分かりました…ありがとうございます」
「ペテル、みんな、ちょうど『蒼の薔薇』に会ったし、拠点の位置は俺が共有しておく。ニニャと、先に行っててくれ」
「…分かりました。パルメーラさん」
パルメーラが言外に『ニニャを頼む』と言っていることを理解したペテル達は、努めていつも通り冷静に、ニニャを連れて神殿を出て行った。
それを見送ったパルメーラは『蒼の薔薇』の方へ向き直り、口を開いた。
「…聞いた通りだ。ニニャの姉は、八本指の運営する違法娼館で働かされていたようだ。ニグンが今日の朝に、裏路地で捨てられた遺体を見つけ、ここまで運んで弔ってくれたらしい…」
「……許せねぇ…ラキュース……俺はその娼館だけは今すぐにでもブッ潰すべきだと思うぜ!!」
「ガガーラン…私も心情的には同じよ。でも…今それをすれば他の拠点も警戒度が上がって、八本指根絶やしの作戦が出来なくなるかもしれない…」
「ガガーラン、落ち着け。ラキュースの言う通りだ…今は耐えろ……だが調査が終わって準備が整ったら、根絶やしにする。それは確定だ」
「イビルアイ…でもよぉ、見ただろ、あのニニャの顔!」
「わしもそれが気になっておる。作戦についてはラキュースに賛成だな。だがニニャの表情…あれはいつ暴発してもおかしくないぞ」
「皆の言う通りだ。実際、ニニャは一度暴発しかけた。俺が寸前で止めたが、精神が不安定になっているのは事実だ」
パルメーラの言葉に、『蒼の薔薇』の面々は驚きと共に「やはり」という表情を浮かべた。
「そこでだ、ラキュース。お前に頼みたいことがある。
「持っていますし、提供するのは構わないのですが…ですが、ニニャさんのお姉様は恐らく…」
「蘇生魔法でも灰になるというんだろ?俺も同意見だ。だがそれは、
「第5……まさか…!」
「第9位階に
「その様な…!いえ、知識としては聞いたことがあります。ですが、それは物語の中の…」
驚くラキュースに、声を上げたのはイビルアイだった。
「…ラキュース。パルメーラの言葉、事実だ。かつての私たちの仲間にも使用できる者は居なかったが、リーダーも同じことを言っていた。そういう魔法があると」
「で、では、パルメーラさんがそれを使用できるのですか?!」
「いや、俺は使用できない」
「そうか、パルメーラ殿よ…居るんじゃな。嘗てのお仲間に、使用できる者が」
「そうだ、リグリット。俺は、この街でこれから起こる八本指との戦いが終わり、この国がある程度安全になったところで、嘗ての仲間を探すことを本格的に始めようと思う。ラキュース、聞いているかもしれないが、イビルアイやリグリットの嘗ての仲間は、ほぼ間違いなく俺の同郷人。ならば、俺の仲間もまた、どこかにいる可能性がある。そして、該当する仲間を見つけたら、ニニャの姉に
「……理解いたしました。いえ、俄かには信じられませんが、可能性があり、それによってニニャさんの心が守れるのであれば、喜んで
「ありがとう、助かる」
その後パルメーラは、既に『漆黒の剣』側は拠点の特定を終えたことを告げ、印が入った地図を『蒼の薔薇』に渡した。
そして、自分自身も一旦は宿に戻ることにした。
宿までの道のりを歩きながら考える。
先ほどはああ言ったが、可能性は低い。
なんせアインズ・ウール・ゴウンのギルメンの中で神聖魔法を使える者が少ない。
まずは“
次は熾天使の、るし★ふぁーさん。
本人はあんまり乗り気じゃなかったが、熾天使で神聖系魔法のMP効率いいのに取らないのはさすがに戦略的におかしいと、ぷにっとさんに言われて渋々取得していた気がする。
後は、モモンガさん。
最終的にアレに進化したモモンガさんは、その過程で
モモンガさんに出会えるのがベストだが、ベースがアンデッドのあの人は、このアンデッドが毛嫌いされている世界では色々と大変そうだな。
他は…居たかもしれないが思い出せない。
少なくとも前線メンバーには居なかった気がする。
可能性は低い。
だがゼロじゃない。
そんな事を考えながら歩いていると、いつの間にか宿に着いていた。
「さて…一旦はニニャの様子を見るか…あとは、ラナーの処遇だな…」
***
この俺がっ……なぜ、何故だ…!
部門長のエンディオ様に認められ、密輸部門の中ではかなり高い地位を得た。
それに加え、元々の商才も相まって、自身の名がついた商会も大きく成長した。
八本指への上納分を差し引いても、充分贅沢できるカネが手元にある。
その俺様が、暗殺チームの下っ端どもの囮などをせねばならんとは……!
全て上手くいっている筈だった。
リ・ロベルは手に入れたも同然で、領主の奴も、街のあらゆる者も俺には逆らえない。
その筈だったのに。
全てはガゼフの奴と『漆黒の剣』とか言うぽっと出の冒険者風情の奴らのせいだ。
偉そうにしていやがった六腕のアンデッドがやられたのは、少し清々としたが、その後がいけなかった。
暗殺部門の奴らも失敗し、他の部門の奴らもいつの間にかリ・ロベルから消えていやがった。
いや、賭博場の奴らなんかは殺されたらしいし、恐らくは伯爵か冒険者どもか何かが手を回したに違いない。
ロベロ伯爵などは、あれから人が変わったように徹底的に俺たちのことを排除してきやがるし、脅しをかけても一切動じねぇ…
それどころか御付きの騎士が容赦なく部下に剣を振り下ろしてきやがって、その後は貴族のやり口で証拠をもみ消してきやがった…
あの青二才の甘ちゃんだった奴とは思えない目つき…まるで死線を何度も潜ってきた傭兵のようだった…両手に包帯、顔にも包帯、ボロボロに見えるのに、精神の強さは暗殺してやった先代とも比べ物にならねぇ…
『貴様のやり口など、悪魔の拷問に比べれば砂遊びも同じだ。戯れにその目をくりぬいてやろうか?目や鼻を引き千切ってやろうか?今後、八本指の者はその場で処刑、疑いがある者はまず指を落としてやることにした。人違いだったらどうするかだと?それはその後に考えればよいではないか。善良な領民は怪しい行いなどしないはずだぞ?疑わしきを滅ぼしていけば残るは清廉な民のみよ。分かったらさっさと犬小屋に帰るが良い』
冷酷極まりない、射殺す様な視線の片目で見つめながら、淡々と喋るロベロ伯爵の顔がクリストフェルの脳内に蘇った。
ああ言いながら、奴は実際は処刑の前に徹底的に調べてやがる。
いかなる時間に街に入ろうとも、門番がしつこく身元を確認してくるし、聞いた話では宿に泊まる者はさらに徹底的に調べられるらしい。
俺たちは結局、リ・ロベル入り口の門を越えることが出来なかった。
しかもアッという間にロベロ伯爵本人が門までやってきて、俺の顔を見るなり即指示をして衛兵が無言で剣を振るった。
正直俺は、あのロベロ伯爵の視線に恐怖を感じてしまった。
そして這う這うの体で逃げ帰った俺に指示された次の仕事は、王都での暗殺の囮役。
しかも目的は、あの『漆黒の剣』どもの暗殺。
聞いた話ではエンディオ様が行方不明で、その隙に付け込んで暗殺部門長の奴が俺にこの仕事を振りやがったらしい。
クソックソックソックソッ……!!
エンディオ様が見つかりさえすれば、こんな屈辱は無かっただろうに!!
王都のとある高級宿。
『蒼の薔薇』御用達の宿とは少々つくりが異なり、酒場は併設されておらず、食事をする場所は比較的シックなつくりのレストランスペースがある。
時間はちょうど夕食時で1階の奥にある、そのレストランスペースでは『漆黒の剣』のメンバーが食事をしていた。
レストランスペースの扉が開くと、襤褸を纏った男が1人現れた。
『漆黒の剣』の視線がその男に集中する。
「お前は……クリストフェル・オルソンか?戦士長様が捕えて投獄されたと聞いたが?」
「そっ…そうで御座います。クリストフェルでございます」
「呆れたぜ、やっぱり釈放されてたか。ホント救いようがねーな、八本指も腐敗貴族もよ」
「ち、違うのです!確かに私は八本指の手引きで釈放されました。ですが、それは私の口封じのため。私は罰を受け入れて、もう犯罪とは関わりのない真っ当な人生を歩もうとしていたのです。ですが、そんな私の希望が叶うことも無く、今にも殺されそうだったので逃げてきたのです!虫がいい話とは分かっています。ですが、どうか!どうかお助け下さい、『漆黒の剣』の皆様!!」
クリストフェルが頭を床にこすりつける。
しかし、『漆黒の剣』のメンバーのうち最初に喋った男——ペテルと、ルクルット、そしてドルイドらしい男のダインは、食事の手を止めクリストフェルの方を見ているが、一方で
クリストフェルはその
しかしクリストフェルは、そこで漸くもう1つの違和感に気づいた。
———1人、足りない。
そう思った瞬間。
土下座している自分の尻を誰かが蹴り飛ばした。
「ブベッ!!」
クリストフェルは顔面を地面にぶつけて転がり、仰向けになった。
その目に映ったのは、5人目の『漆黒の剣』のメンバー。
黒目黒髪の男。
「バーカ」
その言葉と共に、レストランの中に次々と男たちが投げ込まれる。
全部で14名。
それはこの宿に襲撃をかける予定だった暗殺者の数と同じ。
外から見張る役だった者まで含まれている。
そして14名は、意識はあり、表情は目まぐるしく変わっているのに、悉く体が硬直して動けない様子。
「俺のスキル〈トロメーアの氷枷〉で動き封じてるから動けんぞ。装備からして暗殺者だろうな。コイツも囮かなんかだろ。レストランの入り口に
パルメーラの言葉に、それ以外の『漆黒の剣』メンバーが喋り出す。
「救いようねーな…つーかレンジャースキル持つ俺が気づいていないとでも思ってたのかね」
「であるな。そもそも鳥や虫たちが囁いていたし、バカ丸出しであるな」
「全部で15人か。暗殺武器とか持っているだろうから回収して、戦士団に突き出しておくか」
そこまで話したところで、黙々と食事をしていたニニャがにっこりと笑った。
「ダメだよペテル。投獄したって、こいつらはすぐ出てくるんだから。生きているだけで善良な国民に被害出すんだから、害虫はここで処分しておかなきゃ。
その言葉が終わると同時に、7本の光の矢がレストランの中を駆け抜け、それぞれが1本ずつ正確に7人の暗殺者の頭に刺さった。
「ひぃっ!」
クリストフェルが短い悲鳴を上げたが、一方で『漆黒の剣』の他のメンバーもギョッとした表情をした。
明らかに普段のニニャらしくない行動。
しかし一方で、姉の事から、彼女の精神が不安定であることも理解している3人は、彼女の精神を刺激しないように咎めることはしない。
やっていることは過激だが、言っていることはその通りであるという気持ちもあるからだ。
3人は無言でニニャを見守る。
「あれ、1匹失敗しちゃったみたいだね。
そう言うとニニャは立ち上がり、即死できなかった暗殺者に向かって歩いていき、その頭を思いっきり蹴り飛ばした。
糸が切れたように転がる暗殺者が目の前でこと切れて、恐怖に駆られたクリストフェルが逃げ出そうとしたが、その背中を黒目黒髪の男が踏みつけその動きを止めた。
「ぐぅううっ!」
「なーに逃げようとしてんだよ。てか、筋力強化したとはいえ、
「パルメーラさん、たぶんだが毒とかを使うつもりだと思うから気を付けた方がいい」
「そうそう。ペテルの言う通りで、暗殺者だろうからスピードがあったり、毒使ったりだと思うぜ。そいつも毒の武器とか持ってるかもしれないから気をつけてな…ってパルメーラさんに言う事じゃないか」
「まあ、多少の毒なら私が消してしまうのであるな!」
「ねえ皆、あと7人だけど、僕がやっちゃっていいのかな?」
先ほどにもましてニコニコしているニニャの表情を見て、一同は、ここは可哀そうだけどニニャのストレスを発散させてあげた方がいいなと考えた。
そういう訳で、皆が頷くと、ニニャはもう1回
「クリストフェル・オルソン、俺は言った筈だ。次は人間としての裁きなど期待できないと」
「クッ…クソクソクソクソ!!貴様らの、貴様らのせいで!!俺の邪魔ばかりしおって!!」
クリストフェルは、わずかに動かせる右手を胸元に入れ、毒のナイフを取り出して背中側にいるパルメーラを傷つけようとしたが、当然それは叶わず、パルメーラに右手首を踏みつぶされてナイフを落とした。
「あああああ!!大人しく八本指の言いなりになっていればいいものを!!貴様らがいくら足掻いても何も変わらん!!それに貴様らは我々八本指がもうすでに敵に認定している!!貴様らの家族親戚全員を見つけ出して惨たらしく殺してやる!!絶対にッ…」
そこまで言ったクリストフェルの顔面に、ニニャの蹴りがめり込んだ。
「グベッ!!」
さすがに一撃で絶命することは無かったが、鼻を潰されたクリストフェルは間抜けな悲鳴を上げた。
「ブベッ!!ブッ!!ベッ!!……!!………」
その後、何度もニニャが蹴り続け、目玉は飛び出し、鼻は陥没し、やがて言葉を発することも出来なくなり、死にかけの蛙のように肢体を開いて仰向けになり痙攣するようになった。
「死ねよ、
電撃がクリストフェルの背中を貫き、その光はレストランの床に深々と刺さった。
「はぁはぁはぁ………八本指、ダメだ、根絶やしにしなきゃ…全員残らず殺さなきゃ…」
そう言うとニニャはふらふらとした足取りで、レストランの出口に進んでいく。
だが、
その腕をパルメーラが掴んだ。
「なん…ですか、パルメーラさん…まさか…止めようと…してます…?」
ペテル、ルクルット、ダインは明らかに興奮して異常な精神状態になってしまったニニャの様子に驚き、それを止めていいのか、あるいは行かせるべきなのか、判断が出来なかった。
だから、その腕を掴んだパルメーラに、その役目を任せることにして見守っていた。
「ニニャ、止めないさ。だがな、絶対に奴らを倒しきるためには冷静でなければいけない。今のお前は少々興奮している。少し落ち着いてから行動を開始すべきだ。いいか、焦りは失敗の種で、事前準備こそが勝敗を決める。必ず奴らを殺しきるために、俺が手伝ってやる。そのための準備をしようぜ」
「…………そうですね。すみません…あいつの言葉があまりにムカついて…冷静でなかったです」
「だろ?俺の昔の仲間も言っていたが、戦闘は始まる前に終わっているもんだ。で、ニニャ。お前はどこの拠点に踏み込みたい?」
「…当然、あの娼館です」
「だよな。そう言うと思って、準備しておいてやったぜ。すでに俺は1回入り込んで、例の娼館の構造分かってるから説明してやるよ。そんでお前が踏み込んだら、俺は外で待ってて、中の奴が1人も逃げられないように見張っててやるよ」
「…はぁ?!1回入り込んだんですか?!」
「ああ。だが中にいる奴には手を出してないぞ。お前がやりたいだろうと思ったからな」
「……はぁ……なんか冷静になりました。ありがとうございます、パルメーラさん」
「ん?良く分からんが冷静になったならよかった。じゃあ、説明するぞ。まず最初の部屋はな……」
ニニャを含む『漆黒の剣』のメンバーは、パルメーラの滅茶苦茶詳細な説明を聞きながら、何度目か分からない呆れの表情をしていた。
隠し扉の存在、従業員が控えている部屋、娼婦たちがいる場所。
しかも1度踏み込んだ時点で、娼婦たちはまとめて1つの部屋に集めて
生命に危険があった者にはポーションをかけているとのこと。
そして“客”には
なお、実際はパルメーラ自身が踏み込んだわけでなく、召喚された悪魔が侵入してこれらの作業を行ったのだが。
「……という訳だ。娼婦を匿っている部屋に攻撃が当たらないように気を付ければ、他は何やっても大丈夫だ。いる奴は全部八本指だから、気にせず攻撃すればいい。あ、それと、一人だけ難度90位の奴いるから気を付けろよ。たぶん“六腕”とかいう奴らの一人だ。剣を持ってる戦士っぽいな」
「「「「……」」」」
「ん?なんだ、皆、無言で」
「いえ……もう今更ですが、何なんですかパルメーラさんは…僕たちの保護者かなんかですか?」
「え……?いや、俺は皆と同じ『漆黒の剣』の一員だが……一員だよな?」
「はぁ…」
その後、『漆黒の剣』全員で作戦を立てた。
まずはニニャが単独で例の娼館に攻撃を仕掛ける。
パルメーラのおかげで一瞬冷静になったはいえ、ニニャの精神状態は依然として不安定であり、元凶たる違法娼館だけは彼女に対処させるべきだとペテル達は暗に考えたからだ。
一方で暴走しないように、パルメーラが補佐。
娼館の前で待機し、何かあれば手助けをする。
これに加えてパルメーラは『蒼の薔薇』へメッセージで、戦いが始まったことを告げ、冒険者組合へ向かうように伝える。
他のメンバーは、冒険者組合へ行き『蒼の薔薇』と合流。
2チームで話し合って、各メンバーが担当する拠点を割り振り行動を開始する。
なお娼館での作業が終わり次第、ニニャは冒険者組合へ行き合流、一方でパルメーラは王城へ行き、ラナーに戦いが始まったことを伝え、クライムを冒険者組へ向かわせるよう伝言する役目も担う。
普通に考えればこの役目は転移が出来るニニャ、イビルアイか、王城へ入れるラキュースがすべきだが、パルメーラが珍しく、この作業は自分がしたいと言い、また、ラナーの私室に忍び込むことも造作もないと言うので、皆呆れつつ任せることにした。
そういう訳で、パルメーラとニニャは例の裏路地に立っている。
目の前には重苦しい扉。
恐らく『漆黒の剣』は顔が割れているだろうから、いっそ堂々と入ることにした。
「
「ああ」
そう言うとパルメーラは、単純な腕力で扉を押し壊した。
重苦しい扉は、紙でできていたかのようにひしゃげ、音もなく内側に向かって壊れた。
「……じゃあ、行ってきます」
「ああ、冷静にな」
ニニャの姿は、自身の姉の命を奪った薄暗い娼館の魔窟へ吸い込まれていく。
少しだけ冷静になれたニニャは、しかしながら一方でわずかに笑みを浮かべ、その瞳からは光がすうっと消えて行く。
「……豚どもが…覚悟しろよ」
この大陸で5人目の逸脱者となった
当たり前ですがニニャはだいぶ不安定です。
パルメーラさんの異常な動きのおかげで少しだけ冷静さを取りもどせてはいますが。