オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
やっと大森林侵入です…長かった
「それじゃここで、トブの大森林について知っていることを共有しときます」
ここは王国領のカルネ村北側。
カルネ村とは、一行が先程までお邪魔していた小さな開拓村である。
普通は、エ・ランテルからこのカルネ村まで2-3日はかかるのだが、ちょっと早めに歩いたバイコーン風ユニコーンのおかげで、出発から4時間程で到着してしまった。
フォーサイトの4人は何か言いたげであったが、皆諦めたように苦笑いするだけだった。
早すぎる移動速度により、ここまでの道のりでモンスターには遭遇していない。
いや正確には3度ほど、オークやゴブリンの群れに遭遇しているのだが、早すぎてモンスターには追いつけず、ぶっちぎってしまったのだ。
その3回とも、イミーナとアルシェは気づいていた素振りを見せたが、確認のために馬車から顔を出したときは既にぶっちぎった後で、二人とも頭の上に“?”を浮かべつつ、あまりの速さで馬車が進んでいることを理解してしまい顔が青くなっていた。
そしてカルネ村に到着し、村長夫妻へ挨拶をしたのち、馬車や荷物置きのための空き家を一時的に貸してもらい、トブの大森林へ入るための注意を受けた後に出発した。
旅の中で(まだ2日目だが)少し心理的距離が近くなったヘッケランは、彼本来のフランクな口調で言葉を続ける。
「この森はアゼルリシア山脈を囲むように広がっていて、この森から入る。実を言うと森の東側は帝国の方が近い。じゃあなんでわざわざ王国まで入ってきたかって言うと、こっちから入った方が安全だからだ…こっからはイミーナの方が詳しいからあと頼むわ」
「いい加減、ちゃんと覚えなさいよ…ったく。あ・ゴメンね。えっと、まあアタシだってちゃんと説明できるってわけじゃないんだけど、簡単に言うとこの森は恐らく魔法か何かの影響で、すごい迷いやすくなっていて、良く知られた“入口”から入らないと危険なのよ」
「なるほど。それでこの村から入るルートというのがその“入口”の一つなのですね」
「そうそう、大正解。でね、入口は複数あるんだけど、この村からの入口は最も安全な入口の一つで、その理由が、さっき村長さんが言っていた“守護魔獣”の存在なのよ。基本的に守護魔獣は森から出てこないけど、どういう訳かこの村も含めたエリアがその魔獣のテリトリーになっていて、ある意味では庇護下に入っている村からの入口は他のモンスターが極端に少ないのよ」
「ああ、だから先ほど村長は、“守護魔獣様に会ったら無礼を働かず、カルネ村から薬草採集に来た”と言えと仰ったのですね。しかし、という事はその魔獣は人語が通じるという事ですか?」
「そうらしいのよ。もちろん会ったことはないけど、なんでも白銀の被毛と蛇の尾を持つ四足獣で、人の言葉も理解し、魔法の詠唱もできるらしいわ」
「ふむ…」
タブラは自身の記憶の中から該当するモンスターを検索する。
ユグドラシルにいた生物で一致するのは“キマイラ”と“鵺”だ。
“鵺”と言えば、知り合いに一人いる。
まさか『先生』が…?
…だから村を庇護している?
しかしながらこの世界のモンスターはユグドラシルと必ずしも一致しないことは、先の闘技場での見学でも分かっていることだ。
『一応、ニグレドに確認しておきましょうか』
そう思い、ニグレドにトブの大森林の調査をお願いしたのだが、帰ってきた答えは驚愕するものだった。
『タブラ・スマラグディナ様、トブの大森林を遠隔視しようとしたのですが、大部分を覗くことができませんでした』
『何ですって?!いや、まずカウンターはありませんでしたか?!!』
『はい、カウンター対策の魔法をかけたうえで調査したのですが、森林の7割は覗くことができず、カウンター攻撃を受けた形跡もありません』
『分かりました…ここから先はアルベドにも繋いだ状態で説明してください』
『畏まりました』
目線だけでアルベドを見遣ると、わずか一瞬だけ彼女の金色の瞳が見開いたように見えたが、すぐに先ほどまでの柔和な笑顔に戻る。
『では、続けます。この大森林からは魔法的な効果は感じません。ただし、無数の妖精と思われる存在が確認できます。妖精のレベルはほとんどが5以下と思われます』
『なるほど…
『はい、仰る通りかと思います』
ちなみにナザリックでは“雰囲気に合わない”という事と、そもそも妖精のNPCおよびモンスターが居なかったので採用されなかった。
つまりこの森は、元々妖精系のモンスターが多く、そのせいでフィールドエフェクトが発生してしまった可能性がある。
もっとも簡単な対処方法は
しかしこの魔法は第9位階であるし、そもそもこのフィールドエフェクトは“迷う”だけなので、自身もフォーサイトも命の危険はないだろう。
『分かりました。とりあえずは大きな危険はなしと判断して進みます。ただニグレドは監視を続けて、強いモンスターの接近や、我々が道を間違えて
『畏まりました』
タブラは認識阻害の原因が概ね分かったことで、先ほど一瞬頭の中に浮かんだ『守護魔獣様=死獣天朱雀』説は可能性が低いと結論づけた。
彼のスキルや魔法の構成を考えた場合、自身の居住領域を隠すのであれば“幻術”か“符術”を使うはずであるから。
ただ一方で、可能性は0ではないとも考え、例えば幻術の痕跡や、符を使用したトラップ等がないかも慎重に見ながら進む必要があると自信を引き締める。
『可能性0%は可能性100%と同じ。そんなことはあり得ませんからね』
と心の中で呟いた。
目の前のイミーナの説明もちょうど終わったようだ。
森は、南から入り、最初の分かれ道を東に進む。
モンスターとの遭遇に注意しながらの通常速度で歩くと、4日ほどで“何もない荒野”という領域に到着する。ここまでの道のりに薬草が生えているとのことだ。
ただ、薬草の種類は“何もない荒野”に近づくほど種類と量は豊富になっていくが、“何もない荒野”に出ると、名前の通り草は全く無くなる。
そこよりもさらに北に進んでいくと、再び森になるが、この荒野の先の森には、高難度の蟲型モンスターや
ヘッケランが最終確認をする。
「という訳で、これから森に入る。パラケルさんたちも準備はいいかい?」
「少々お待ちください。同行をするというお話をしたときに、我々は自身の身は自身で守れると説明しましたが、採集をしているときはどうしも無防備になり、皆さまへ迷惑をかけることが考えられます。なので、特別に、皆さまへ魔法薬をお譲りしておきます」
「ま…マジすか」
「ええ。マジです」
そう言ったタブラは、袋から4本の水薬瓶を出して説明を始める。
「この4本を皆様へ渡しておきます。黄色とオレンジ色が2本ずつあると思いますが、それぞれ1本ずつ飲んでしまってください。これらはそれぞれ、移動速度上昇と疲労軽減の効果があるポーションです。私の独自素材で作ったので少々色が違いますが効果はありますので」
「いや、改めてお礼を言わせていただきます。これは購入すればかなりするものでしょう」
「いえ、お互い命を懸けて探索するわけですから、出し惜しんでも仕方ありませんよ」
「その通りですが、いやはや、パラケル殿に神の祝福があることを祈らせていただきます」
「ちょっとロバー、フォーサイトの分も平等にちゃんと祈ってよね!」
「ええ、もちろん。お布施も平等にいただきますが」
チームメンバーがロバーデイクの冗談で場が和んだところで皆ポーションを飲み、出発である。
ちなみにタブラが渡したポーションは、本当は
後者はユグドラシル基準でも
人間状態のタブラは生産職のレベルもある程度まで上げているため、
タブラは、とっととパワーレベリングをすることにしたのだった。
キリが良くなっちゃったので、今日は短めです。