オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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モモンガさん待望の冒険が始まります。

知り合いの妹さんに変身させたドッペルゲンガーを連れ歩くという…どこかのバードマンは何か言いたいであろう状態です。


第7章 第4話 -エイヴァーシャー大森林①-

 

 

 

ファーインから得た情報を基に、モモンガは一旦ファーインには部屋に戻ってもらって、パンドラと共に今後の行動方針を考えていた。

 

まず確定事項として、エルフ王国のエルフ王とやらには会わなければいけない。

明らかにとびぬけて強そうだし、使用する魔法や、武器などがどうもユグドラシルと関連している気がする。

 

ただ、エルフ王はこの国やファーインにとっては害悪みたいだし、聞いた行為が明らかに嫌悪すべきものだったので、支配(ドミネート)記憶操作(コントロール・アムネジア)辺りで情報を聞き出した後にサクッと殺すべきだな、と死の支配者(オーバーロード)状態のモモンガは考えた。

 

ただ困ったことに、エルフ王が居る王城まで転移などで一気に移動する手段が無い。

 

ファーインとファーインを救出した者達、つまりはエルフ王城に行った者のうちで、仲間を伴った転移や転移門(ゲート)を使用できるものが居らず、一方で明らかにボスであるエルフ王の居る場所を魔法で覗くのは、普通に考えて逆撃のリスクが高すぎる。

 

従って、ファーインに案内してもらい、目的地を目指すしかなさそうだ。

 

先ほどファーインのステータスをじっくり調査し、さらに本人から何を出来るか聞いたときは『武技』や『タレント』といった聞き慣れない能力の話が出て実感興奮気味に詳細を聞いたが、やはりファーインの能力は戦士寄りで、転移などは使えないようだった。

 

 

モモンガとしては、不謹慎と分かっていながらもちょっとワクワクしている。

それは、未だここがどこだかは分からないが、新たな場所で冒険が出来るという事だから。

 

正直、自分の現状について、全てを受け入れたわけではない。

ここまでのことで、この世界はおそらくゲームではなく、なのになぜか自分はユグドラシルのアバターとステータスで、しかも黒歴史(パンドラ)付きで転移してきた可能性が高いと思う。

 

だけどそんな、100年以上前に流行ったラノベみたいなことが起こるというのは正直信じられない気持ちもある。

 

ともかくも今すべきことは、自分が出せる手札の中で、できるだけ安全にAOGの仲間、あるいはユグドラシルやリアルとの繋がりを見つけ出すことだろう。

 

その過程で、ちょっと新たな冒険をするぐらい、良いじゃないか。

 

 

 

 

「さて、パンドラ。俺の考えでは少なくともエルフ王ってのを調査する必要があると思う。レベル的にあのファーインさんは勝てないらしいから、お前と俺が行く必要があると思うんだけどどう思う?」

 

「はいッ、おっしゃる通りでございます!ですが、エルフ王とやらの正確な強さが分からないなかでンモモンガ様が御出陣されるのは危険、ここはこのパンドラにお任せいただけないでしょうか?!」

 

「え…いや、ダメだダメだ。エルフ王がユグドラシルのプレイヤーとかだった場合、それを確かめるために俺自身が会話した方がいいだろう」

 

「ふむ…それも確かにそうでございますね……では、エルフ王の目を欺くため、私がモモンガ様の御姿に擬態し、モモンガ様は完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)でご同行されてはいかがでしょうか?!」

 

「え…それじゃ冒険が……いやいや、それだと道案内をお願いするファーインさんが混乱するんじゃないのか?それに俺の人間種の姿は余り他のプレイヤーには知られていないし、【死の超克者(オーバーカマー)】状態の姿については、ほぼアインズ・ウール・ゴウンの皆しか知らないから、常に死の超克者(オーバーカマー)で居れば、仮に他のプレイヤーに遭遇しても、俺がAOGのモモンガだとはバレないと思うぞ」

 

「成程!それでは私は如何なる姿でご同行すれば宜しいでしょうか?!」

 

「そうだな…エルフ国は当然エルフばかりだろうから、エルフの姿となるとお前に登録したのはロキの指輪(リング・オブ・ロキ)でエルフを選んだ茶釜さんか、あとは、あけみちゃんになるな…俺が回復特化だから前衛となるとあけみちゃんの方がいいか……あけみちゃんに擬態してみてくれ」

 

「はッ、Wenn es meines Gottes Wille!!!」

 

「だからドイツ語は控えろと言った筈だ!」

 

 

 

恥ずかしいドイツ語と最敬礼の後、パンドラズ・アクターの姿は緑髪の美しいエルフの女となった。

 

 

「お前、その姿の時はドイツ語とか絶対やめろよ。あけみちゃんを汚したらやまいこさんに殴られるから、ちゃんとあけみちゃんらしく振舞うんだぞ」

 

「はい、畏まりました。モモンガさん!」

 

「お、おう…」

 

 

モモンガは、速やかにあけみちゃんの姿と、あけみちゃんらしい声色と口調になったパンドラにちょっと緊張した。

というか、別に疚しいことはしていないはずなのに、自分が作り出した上位二重の影(グレータードッペルゲンガー)をギルメン仲間の妹さんに変身させて冒険に連れまわすという行為が、何らかの犯罪になっていないか心の中の警察官(たっちさん)に問いかけたが、最終的にはたぶん大丈夫だと自分に言い聞かせた。

 

 

「パ…パンドラよ。それじゃお前はその姿で、俺は【死の超克者(オーバーカマー)】の姿で、ファーインさんの案内の元、エルフ国に潜入するものとする。他に何か決めておいた方がいいことは有るか?」

 

「はいっ、モモンガさん!エルフ王や、エルフ国の他にもユグドラシル由来の敵がどこかに居るかもしれません!なので、名前も偽名を使った方がいいと思います!」

 

「ん…確かにそうだな。でも、パンドラは拠点から出たことないし、1500人の時も出撃していないから名前すら知られていないよな…」

 

「いえ、偽名を使用するのはモモンガさんです!私は逆にそのまま“あけみちゃん”の御名前を使用することで、万が一ユグドラシルプレイヤーに遭遇した場合でも、プレイヤーは私で、モモンガさんはNPCかこの世界の人間という誤情報を敵に与えることが出来ると思います!」

 

「成程…確かに敵に誤った情報を与えることは重要だな…良し分かった。俺は偽名で、その姿の時のお前の名は“ミルンドール・ヤマセ”だ。お前は知らなかったかもしれないが、“あけみちゃん”というのはリアルの…いや、あだ名のようなもので、プレイヤーとしての名前は“ミルンドール”だった。それにファミリーネームの“ヤマセ”は、リアルの、いやユグドラシルプレイヤーであれば、高い確率でユグドラシルプレイヤーを疑う響きだ。普段はプレイヤー名“ミルンドール”を名乗り、ユグドラシルプレイヤーを疑う者の前では、適宜ファミリーネームも用いて、相手を攪乱するのだ」

 

「はい、分かりました!」

 

「あーそれと、お前の方がプレイヤーで俺の方がNPCという誤情報を与えるのであれば、敬語は駄目だ。むしろ俺がお前に敬語で話しかける必要があると思うが?」

 

「…そう、ですね。…そうだね。モモンガさん!」

 

「うん、その調子だ。…その調子ですね、ミルンドール様」

 

 

 

擬態しているパンドラは一瞬躊躇ったが、すぐに言葉を言い換えた。

一方モモンガもモモンガで、話変えている相手が、自身が作りだした黒歴史であると考えると、それに対して畏まった感じで話しかけるのは何か嫌な気持ちになったが、現在の姿——あけみちゃんのアバターのエルフに対して話しかけるという状況であれば、それは当然丁寧な言葉や敬語だったので、そう考えるとあまり違和感がなくなった。

 

 

 

「それで、モモンガさん。モモンガさんの偽名は何にするの?」

 

「ああ、それじゃあ……“モモン”…は偽名にする意味が無いか…じゃあいっそ“サトル”………いや、“サトゥルヌス”としよう」

 

「じゃあサトゥルヌスさん、エルフ王を倒すまで、よろしくお願いします!」

 

 

 

モモンガは最初、偽名を“モモン・ザ・セイントヒーラー”とかにしようかと考えたが、“モモンガ”を隠すために“モモン”は流石にないと考え直した。

 

しかしそれ以外が思いつかなかったので、じゃあもう本名の“サトル”でいいか、と考えたが、それだとリアルの日本人ぽい響きで、他プレイヤーに警戒されると考え直し、最終的に、昔タブラさん達とナザリック9階層の劇場で遊んだ時の俳優名を名乗ることにした。

 

これは当然タブラが命名したのだが、神話方面についてタブラほど詳しくない鈴木悟には、元ネタはイマイチ分かっていなかった。

 

ローマ神話ネタだから、それを知っているプレイヤーであれば、一発でプレイヤーバレする可能性が高いのだが、残念ながらモモンガはそこまで思い至れなかった。

 

 

「よし、それじゃあファーインさん呼んで説明するか!」

 

 

モモンガは正直、見ず知らずのこの世界で冒険が出来るという事に少々ワクワクしてしまっていたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

現在、一行はエイヴァーシャー大森林の東側、ダークエルフの集落に近い森の中を歩いている。

 

 

 

「ミルンドール様…申し訳ありませんが大樹海の東側については、私も詳しくは分かりません。お伝えしたように、ダークエルフの部族の者達が暮らしているという話は聞いていますが、エルフ王国の王城にもダークエルフの者は居ませんでしたので…」

 

「良いんですよ、ファーインさん!私たちの仲間にダークエルフが居ましたので、もしかしたら何か手掛かりがあるかと思って念のために調査をすることにしたんです!サトゥルヌスさんの幻術で皆エルフになっていますし、何か危険そうだったらすぐに転移で戻ればいいんですから!」

 

「さ、左様ですか…しかし、このような幻術に瞬時に皆で転移する魔法とは…神の御力というのは本当に凄まじいものでございますね…」

 

「はは…とはいえ幻術なので、耳とかに触られたらバレてしまいますからね。そこは気を付けてくださいね」

 

「はっ!サトゥルヌスさーーんのお邪魔にならぬ様、全身全霊を以って…いや、ええと…頑張ります!…ではなく……すみません…もう少し時間をください…」

 

「はは……まあ、その、口調は敬語でも問題は無いですけど、余り畏まった感じだと現地のエルフに不審に思われるので気をつけてくださいね」

 

 

 

 

モモンガ(サトゥルヌス)とパンドラ(ミルンドール)は、神殿でファーインに趣旨を説明した後、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)でエルフ国があるというエイヴァーシャー大森林の中を観察した。

 

王城に近い場所などは、流石に覗き対策がされているかと考え、王城からできるだけ遠い、森の東側を中心に捜索したところ、ダークエルフの村がいくつか発見できたために、その近くに転移して現地のダークエルフと接触して情報を得ながら、王城のある西へ移動していこうと考えたのだ。

 

無論ダークエルフという事で、ワンチャン茶釜さんを含めた双子のダークエルフNPCが居るかもという考えもあるのは事実だが、モモンガの本心は『色々と冒険したい』という気持ちが強い。

 

 

神及び従属神が姿を変えたこと、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)という神の如きアイテムを当たり前のように使用する様子などを矢継ぎ早に見せられたファーインは、目を白黒させていたが、なんとか正気を保っていた。

 

そしてエイヴァーシャー大森林には人間は居らず、ファーインや人間姿のサトゥルヌスが潜入するとかなり目立ってしまう事を進言すると、速やかに自身とファーインに幻術をかけ、しかも、この姿の時は作戦上ミルンドールの方が上位者として扱い、サトゥルヌスは同僚っぽく接してくれと言われたことでファーインは大混乱となった。

 

これはもしかして自身の信仰を試されているのか…?

しかしご命令に従わないというのも不敬極まりない…

私の行動、言動の全てが、今後のスレイン法国の存亡にかかわるかもしれない…

 

 

ファーインの目が明らかに混乱模様を示していることに気づいたミルンドールは、微笑みながら語りかけた。

 

 

「ファーインさん、サトゥルヌスさんが仰っていることは、作戦のために必要なことです。けっしてあなたを試したりしているわけではないので、そんなに気を張らなくていいですよ!」

 

 

 

その言葉を受けて、ファーインは一度深呼吸をし、そしてできるだけ違和感が無いように御二人に話かけるよう努力しているが、未だ『サトゥルヌスさーーん』という不思議な語尾を含めた、端々の言葉が直らない。

 

モモンガとしては、現時点で目撃している喋るNPCが、不敬な内容でも比較的ちゃんと言う事を聞くパンドラだけだったので、まさかこのファーインの様子がナザリックNPCにおいては一般的なしぐさであるとは想像もできていない。

 

『神と接するとなるとこんなに緊張しちゃうんだなースルシャーナさんも大変だっただろうなー』と暢気に考え、言葉遣いは、自分も敬語を使っていれば、お互い敬語なので、そういう人達として見えるだろうと思った。

 

 

 

 

「2人とも、止まってください!前方50メートル程先の木の上にダークエルフの子供が居ます!おそらくモンスターに襲われています!助けることで友好的に会話ができると思いますが、いかがですか?」

 

 

ミルンドールが2人に言うと、ファーインは『私に発言権はありません』とばかりに、サトゥルヌスの方を見た。

サトゥルヌスはミルンドールの言っていることに賛成だったので肯定するよう頷きながら言う。

 

 

「ミルンドール様の意見に賛成ですね。助けて情報を得ましょう」

 

 

 

3名は速やかに駆け出した。

 

 

 

 

 

「くっ…来るなぁっ!!」

 

人間からは6-7歳くらいに見えるダークエルフの少年が、樹の上で棒を振り回しながら、必死に登って来るモンスターを追い払っていた。

 

少年は涙目になりながら自分の行いを後悔していた。

 

村では、子供ながら優秀な野伏としての才能があると言われている。

しかしまだまだ子供である自分は、大人たちの足手まといに過ぎない。

 

始まりの十三家の者として、こんなところで立ち止まるわけにはいかない。

 

産まれたばかりの弟にとって、誇りとなるような兄となるために、次の大会では優勝して、あの複合弓を受け継ぐのだ。

子供ながらにそう考えて、度々一人で森に潜っては野伏の腕を磨こうとしている。

 

今日もその“特訓”の一環だった。

 

しかし未熟な察知能力は、静かに後をつけて樹を上ってきた巨大催眠蛇(ジャイアント・ヒプノティズムパイソン)の存在に気づけなかった。

 

気がつけば蛇の牙が肌をかすめ傷がついた。

 

マズい…このままではいずれ眠りに落ちて、この大蛇の餌食になってしまう!

 

それまでに何とかこいつを追い払わなければ…!

 

だがその考えに反し、体は段々ということを聞かなくなり、力が落ちていく。

 

ああ……なぜおれは、大人たちの注意をちゃんと聞かなかったのか…

 

 

死を覚悟した瞬間、眠りに落ちる直前で、声が聞こえた。

 

 

「武技・〈超斬撃〉!」

 

声に遅れて、巨大催眠蛇(ジャイアント・ヒプノティズムパイソン)の身体が二つに切り裂かれた。

 

助かった……ぼんやりした目でその声を発した主を見ると、それは少なくとも400歳位の黒髪のダークエルフ?の女性。

少年はその顔に覚えが無かったので、別の部族の人なのだろう。

 

その女性は少年の様子を見るなり、再び声を上げた。

 

 

「サトゥルヌスさーーん、このダークエルフはおそらく巨大催眠蛇(ジャイアント・ヒプノティズムパイソン)の毒を受けております。治療しなければ覚めない眠りに囚われる可能性があるかもしれません」

 

 

 

その言葉に反応して、女性の背後から、今度は白髪のエルフ、おそらく200歳くらいの男性が現れた。

 

 

「なるほど、では私が治療します…とりあえず、〈大治癒(ヒール)〉」

 

白髪の男性が何かの魔法を唱えると、体の傷と眠気が嘘のように消えて行く。

 

 

「あ……すごい…あっ…ありがとうございま…!!」

 

御礼を言おうとした瞬間、少年は、その白髪の男性の背後に、先ほど2つに裂かれたはずの巨大催眠蛇(ジャイアント・ヒプノティズムパイソン)が最期の力を振り絞って襲い掛かろうとしているのを目撃していしまい言葉を失ってしまった。

 

しかし白髪の男性は、まるでそんなことは言わなくても分かるとばかりに微笑みながら『大丈夫』と言うと、左手をわずかに掲げて何らかの言葉を呟いた。

 

 

 

「…スキル・〈世界輪廻(ワールド・リンカーネーション)〉」

 

男性の左手から、小さくて白く輝く魔法陣のようなものが現れると、その魔法陣は瀕死の巨大催眠蛇(ジャイアント・ヒプノティズムパイソン)に絡まった。

 

そして巨大催眠蛇(ジャイアント・ヒプノティズムパイソン)は、まるでその光に命を吸われるように急速にその力を失い、小さくなっていく。

そして完全に消滅したかと思った瞬間、再びサイズが大きくなっていき、今度はそこからバーニアが出現した。

 

白髪の男はそうやって出現したバーニアを捕まえながら呟いた。

 

 

「ん…これは兎?いやリスかな?…うん…ともかくここでも、このスキルは使えるか」

 

 

 

少年が呆気にとられていると、また別のエルフ——緑髪で150歳くらいの女性が微笑みながら話かけてきた。

 

 

「サトゥルヌスさんたち、御疲れ様です!君も、もう大丈夫だよ。良ければ君の御名前を教えてもらえるかな?」

 

「あ……はい、おれの名前はブルーベリー……ブルーベリー・アディです」

 

 

アディは、目の前で行われた戦闘や、自分を癒した者がどのような魔法を使ったかは分からなかったが、ともかくも自分の命の恩人に礼を言ったのだった。

 

 




時間軸的にブルーベリー・エグニアは産まれたばかりです。
この創作キャラは、本編時間軸では(御方の介入が無かったため)死んでいた筈のエグニアの兄のつもりです。

モモンガ様の明らかにヤバそうなスキルや種族は後々説明を入れます。
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