オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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愚の洞窟まで到着です。


第1章 第12話 -大森林③-

 

翌日、フォーサイトとパラケルはキャンプを張った場所から少し南に戻り、街道沿いの薬草を摘んでいた。

 

薬師組合からの依頼は6種類ほどの薬草をそれぞれ指定された量摘むというものだった。

ただ、指定した薬草であれば多めに摘めばその分、報酬も増えるという事で採りつくさないように注意しながら多めに摘む。

 

“何もない荒野”のほど近い領域は、トブの大森林の比較的奥地であるので、ここまで来る者は少ないのか、薬草は思った以上に生えている。

 

タブラにとって驚きだったのは、ドルイドの解析を使うと薬草の名称が分かるという事だ。

確かにユグドラシルではそうだったが、この現実のような世界でも同じ現象が起こるとなると、この世界のシステムがユグドラシルに寄っているという事を改めて感じた。

最初は『いや、“ニュクリ”なんて草、知りませんよ』と思ったが、フィールドにて解析をしてみたら特定の草にコメント欄の様なものが出て“ニュクリ”と書いてあるのだ。

この文字は確認したがアルベドには見えていない。

 

最後に“エンカイシ”という薬草を摘んでいるとき、アルベドが目線で何かを訴えてきた。

タブラはすぐさまアルベドに伝言(メッセージ)をつなぐ。

 

『何かありましたか?』

 

『はい、お父様。それが妖精の迷路(フェアリーズ・メイズ)の領域にリザードマンと思われる者が1体居り、こちらを見ています。いかがいたしましょう?』

 

『ん?どういうことですか?』

 

詳しく聞いてみると、薬草を採集できないアルベドは、タブラとついでにフォーサイトのメンバーに危険が無いか、悪魔としてのスキルを使い周りを感知しながら様子を見ていた。

彼女のスキルは妖精の迷路(フェアリーズ・メイズ)の効果であっても数メートルは感知できるので、気配がするなと思ってその方向を見ると、妖精の迷路(フェアリーズ・メイズ)で隠された林道のようなものがあり、そこに一人の蜥蜴人(リザードマン)がこちらを見ているという。

 

『その蜥蜴人(リザードマン)の強さは分かりますか?それと敵対の意思は?』

 

『はい、おそらく戦士としてレベル20程。腰に剣のようなものを下げていますが、戦うというよりはこちらの様子を見ている状態です』

 

『分かりました。状況から考えるに、その者はこの森の住人でしょう。妖精の迷路(フェアリーズ・メイズ)の境界を知っていて、森の侵入者である我々が敵対的な存在でないか確認しているといったところですか。行動から知性がありそうですし、無理に戦うのはよしましょう。ちょうど最後の薬草も摘み終わりましたので、気づかないフリをしてあげて、フォーサイトともにキャンプへ戻りましょう。ただ、攻撃をする素振りを見せたら、フォーサイトに気づかれないように処理すること』

 

『畏まりました』

 

アルベドはタブラからの伝言(メッセージ)が切れると、タブラの『摘み終わりましたのでキャンプへ戻りましょうか』という声に従って、移動を開始した。

 

人間たちの姿が見えなくなると、その蜥蜴人(リザードマン)、ザリュース・シャシャはホッと安心して息を吐くと、踵を返して自身が棲む集落へ向かって歩き出した。

 

 

キャンプ地へ戻ると、フォーサイトは改めて薬草の数を数えて、規定数が揃っていることを確認すると昼食を作り出した。

と言ってもパンや木の実を準備しているだけだが。

 

タブラは、というと、お手伝いで集めてあげた薬草をフォーサイトに渡したのち、ついでに自分用に集めた薬草を種類ごとに分けて別の袋に入れ、順番にアイテムボックスにしまっていく。

そしてフォーサイトには気づかれないように、“何もない荒野”を転移のために登録した。

 

そしてこの時点で任務が終わってしまったフォーサイトが少し長めの休憩をとっているすきに、“何もない荒野”をくまなく調査する。

 

まずニグレドからの情報で、この荒野は周囲直径10㎞程の円形になっていることが分かっている。

中心には小さな山のようになっているところがあり、その部分も含めて一切の草木は生えていない。

また、地面に所々ガラス状の物質が存在している。

これらからタブラが想定したのは、この場所は過去に隕石か何かが落ちて現在のようになったのではという事だった。

 

『一応、何かないか解析してみますか』

そう思ってタブラがアイテムサーチの魔法をかけた瞬間、信じられない結果となった。

 

そこら中からアイテムの存在を示す反応が出るのだ。

しかし見た目では荒野でしかない。

なのでフォーサイトが遠くにいることを確認し、アルベドに持たせたWI『真なる無(ギンヌンガガプ)』で本当に軽めに地面をたたいてもらう。

すると表層がはがれ、土の中からアイテムが大量に出てきたのだ。

 

複数のインゴット、ヴィーヴルの竜石、聖水、スクロール、ユグドラシル金貨…

 

驚いたことにどれもがユグドラシル産のアイテム。

タブラの中でこの場所の警戒度が一気に上がった。

 

『アルベド、今からしばらくは周囲にいるものは動物以外すべて報告してください』

 

『はっ!』

アルベドは、なぜか地中からユグドラシル産のアイテムが出てきたという異常事態を素早く理解し、警戒状態となる。

 

『ニグレド、警戒網をこの荒野だけでなくさらに直径10キロほど広げられますか…ニグレド?』

 

『あ…申し訳ありません。回答遅れて大変申し訳ありません。可能です…確認しましたが半径20キロの中で妖精の迷路(フェアリーズ・メイズ)の影響がない領域は、そちらの荒野から北側にいくつか見られます。最も近い場所は、荒野の最北端から森に入って5キロほど進んだ場所にある洞窟群です…おそらくですがトロールの巣となっているようです』

 

『分かりました。引き続き怪しいものがあれば遠慮せずすべて伝えてください』

 

『畏まりました』

 

タブラは、地中から見つけたアイテムを素早くアイテムボックスにしまう。

このまま調査を続けたいが、昼食後の休憩時間からもうだいぶ経っている。

これ以上フォーサイトと別行動をするのは、彼らに不審がられると判断し、キャンプへ戻ることにした。

 

 

「あ、パラケルさん、ルゥオンさん、大丈夫ですか?だいぶ奥までいっていたようだが…」

 

「ああ、ヘッケランさん。少し調査をしていたのですが、今日の午後からの動きについて相談してもいいでしょうか?」

 

「ええ、もちろんです。オレらの用事はもう終わったし、ここから先はパラケルさんの採集に付き合いますよ!」

 

横でアルシェもコクコクと頭を縦に動かしている。

そういえばアルシェには、彼女の能力を見極めるという事と、カバーストーリーとして素材の採集が必要と説明したのだった。

そのことを思い出したタブラは、これを利用してもう少しこの森を調査しようと決めた。

 

 

その後フォーサイトはパラケルから以下の説明を受けた。

・パラケルが必要としている薬草系素材はおおむね摘んだが、鉱物系素材がまだ足りない

・荒野から北にそのような鉱物系素材があるかもしれないので探索がしたい

・護衛として、ついてきてほしい

・モンスターのレベルが高いと聞いているので、今までと違い惜しまず魔法薬を使う

 

3点目まで聞いたとき、フォーサイトのメンバーは若干の焦りが浮かんだ。

なぜならば“何もない荒野”の北の領域は急激にモンスターのレベルが上がると言われていて、自分たちもまだ侵入したことがない。

ただ4点目を聞いて、今まで以上に強力な魔法薬があるという事実を理解し、これはいけるかもしれないと考え始めた。

 

フォーサイトは四人で話し合った結果、『正直、荒野の北に侵入したことが無く、モンスターのレベルが分からないので、まずは一度侵入してみて対応可能か確認したい』というものだった。

パラケルはその解答に満足したように、「それで構いません、それでは行きましょう」と答えた。

 

タブラとしては『対応可能になるよう強化すればいいわけですね』と理解したのである。

 

 

 

「では皆さん、こちらを差し上げます。それと昨日お渡しした、ポーションの残りのうち、オレンジの方を飲んでいただけますか」

そう言って差し出されたポーションと、昨日のオレンジのポーションを、フォーサイトのメンバーは飲み干した。

 

全能力強化の水薬(フルポテンシャル・ポーション)経験値上昇の水薬(ブレス・エクスペリエンス・ポーション)がフォーサイトの体内に吸収された。

 

「その二つで、あらゆるステータスがある程度上昇しているはずです。それでは行きましょうか」

 

ユグドラシルで言えば、さっさとレベル95まで上げるために無限湧きダンジョンに挑む前に施す強化を行った感じである。

 

今度はルゥオンが先頭、その後ろをパラケル、そしてその後ろに先ほどの陣形にフォーサイトが進む。

 

イミーナが『護衛対象が前に出るのは…』と言ったが、パラケルは『ルゥオンは実は戦士としてはかなり強いのですよ。なので、敵を確認するまではまず我々で先行しますので』と言われてしまった。

 

お父様に頼りにされて嬉しいアルベドは、現在のフォーサイトが出せる全速力の8割程度の速度で進みながらニマニマしていた。

 

突然、ルゥオンとパラケルが停止する。

フォーサイトも停止し、木の陰に身を隠す。

すると頭の中位に声が響いた。

 

『パラケルです。伝言(メッセージ)で話しかけています』

 

二度目なので、フォーサイトはそこまで驚かず、パラケルの方を見て頷く。

 

『前方に洞穴があるのが見えますか?あの中を探索したいと思うのですが、高い確率でモンスターが居ます。一旦モンスターの種類を確認します。その後作戦を考えますのでお待ちください』

 

 

***

 

 

作戦のため、フォーサイトは少し南に戻り、現在地面に穴を掘っている。

パラケルに「3メートルぐらいの深さで掘ってください」と言われ、『まじかよ?!』と思ったが、意外とすんなり掘れる。

 

いや、すんなりというかサクサク掘れる。

気づけば本当に3メートルの穴がいくつかできていた。

そしてそれらの穴を葉っぱや枝で隠す。

そう、落とし穴である。

 

ちょうどパラケルから伝言(メッセージ)が入り、準備完了を伝えると、4人は草陰に隠れた。

 

 

しばらくすると、予定通りルゥオンが走ってくる。

そして彼女の後を1頭のトロールが追いかけてくる。

 

「マテー!!クッテヤルゾ、ニンゲン!!」

 

ルゥオンは落とし穴を低空ジャンプで躱すが、トロールは当然なすすべなく穴に落ちる。

すかさず、フォーサイトの4人はトロールに集中砲火を始める。

イミーナとヘッケランは、パレケルに渡された錬金溶液:酸属性を武器にエンチャントし、酸属性の剣と弓で攻撃。

ロバーデイクは武器魔法化(マジック・ウエポン)の魔法で火属性を付与した武器攻撃、アルシェは酸の矢(アシッドアロー)火球(ファイヤーボール)をMPに注意しながら浴びせる。

 

ルゥオンは、危なげなく戦えていることを確認したのち“次”のために落とし穴用の枝と葉を素早く集めて、集中砲火の横に置き、洞窟に戻る。

そして洞窟の前で、次のトロールを待つ。

 

パラケルはというと、フォーサイトに見えないことをいいことに、完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)で洞窟の入り口から堂々と侵入。

洞窟を調査しながら隙を見て静寂(サイレンス)をかけて1トロールをピックアップし、入口まで放り投げ、そこからはアルベドにバトンタッチだ。

 

この効率作業で、トロールの数はどんどん減っていく。

 

この作戦は、洞窟の中にいるのがトロールばかりと分かったことで、効率よく洞窟の掃除&フォーサイトレベル上げを行うために考えたことだ。

アルベドも、トロールのレベルが低すぎるし、いざとなれば瞬時に戻れる距離なので、お父様がトロールピックアップ係をするのを了承した。

 

仮にフォーサイトが弱点特攻しても苦戦する個体が居た場合は、アルベドが手を貸すが、倒すのはフォーサイトのできればアルシェに任せるように言ってある。

 

 

しばらくこの作業を続けて4時間ほどたったころ、“次”が来なくなった。

フォーサイトは洞窟の方を見ながら警戒していると、パラケルから再び伝言(メッセージ)が入った。

 

『皆さん、お疲れさまでした。どうやらザコは全部片付きました。残るはボスが1匹の様です。こいつはどうやら、他より多少知性が高く、おびき出すのが難しそうなので、ここは全員で力を合わせたほうが良いかと思います。静かに洞窟を進んできていただけますか?』

 

フォーサイトは顔を見合わせたが、とりあえず言われた通り洞窟に向かって進む。

入り口にはルゥオンがいて、微笑むとフォーサイトを中に入るように誘導した。

そして、彼女と一緒にしばらく進むと最奥の一歩手前のところで、パラケルが待っていた。

 

さて、この奥にボスがいるようです。

恐らく妖巨人(トロール)の上位種ですね。今この場は静寂(サイレンス)をかけていてあちらには聞こえていませんので作戦を練りましょう。

 

フォーサイトは気づかれないように最奥の空間を覗いたがそこには明らかに別格と思われる巨大な妖巨人(トロール)がいた。

 

 




 
愚はレベル30くらいでしたっけ?
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