オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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ネイア母とか、口だけ賢者さんとか、名前が明らかになっていない人に勝手に名前(プレイヤー名)をつけるのは出来るだけしたくないのですが、ストーリー上、どうしても必要なので名づけをしたキャラが出ます。

ここまでの話の中で余りにも匂わせをすると早期にバレそうだったので会話の中に僅かにしか出していなかったです。

ですがこの状況の元凶に近い存在なので、オリキャラではなくちゃんと原作に存在するキャラ
を使用することにしていました。

引き続きお読みいただければ幸いです。


第7章 第19話 -4つ目のピース-

 

 

「どういう……どういうことだ?!お前が…何故…何故その名を…クランの名を?!!」

 

「やはり……いや…記憶が戻って来る……そうか…取り込まれていたのが解除されているということか…ならば時間はあまりないか…」

 

「ツァインドルクス!何故だ!答えろ!!」

 

「…ツァインドルクス=ヴァイシオンは、モモンガに倒された……私は………そうだな。弐式と武御雷は相変わらず、つるんでいるか?フラットは女性メンバー入った後も性癖語っているのか?ウルベルトは………私が辞めた後も中でうまくやれていたか?」

 

「な………バカな……嘘だ………………レットさん……レット・ストレンジさんなのか?!」

 

 

 

モモンガは、嘗ての仲間の名を呼んだ。

それは、彼らがまだナザリック地下墳墓を攻略する前、弱者救済から始まったクラン、ナインズ・オウン・ゴールだった時代。

 

最初の9人のうちの1人、たっち・みーと喧嘩し、除籍し、その後はゲーム自体を辞めてしまった神官職の男。

 

レット・ストレンジは、そのモモンガの言葉に小さく頷いて肯定の意を示した。

 

 

「やはり、そうだったか。五十嵐からアインズ・ウール・ゴウンのことを聞いたとき、そうではないかと思っていたんだ…このような偶然…いや、物理学の世界には偶然などないからな……」

 

「レット……さん……俺…は……」

 

「モモンガ、おそらく時間がない。私が知っていることを話しておく」

 

呆然とするモモンガの様子など気にせず、その男——レット・ストレンジは喋り出した。

 

 

 

「私は、元のリアルで、物理学者をしていた。ユグドラシルを辞めた後、私は終わりに向かっていたリアルの世界を少しでも延命させる方法を研究した。しかし、それはどうやっても叶わないことがわかった……だから私は、あの終わりの世界を無かったことにする方法を模索した…因果律の破れ、つまりは結果と原因の事象逆転。少々専門的な話だが、分かりやすく言えば過去に戻る方法だ」

 

 

モモンガには分からない。

彼が喋る内容も、そして彼がなぜ竜の姿だったのかも。

 

それ以上に、モモンガ——鈴木悟は、ついさっきまで激しい憎悪の対象であり、そしてその命を奪うことで報復を果たしたと思っていた竜が、嘗ての仲間だったのかもしれないという事実に、ただただ、呆然としていた。

 

 

「因果律の破れは物理学的な矛盾だ。だから普通は起こりえない。だが多宇宙理論のような状況、つまり複数の因果領域が並行して存在するならば未来の事象が過去の結果に影響を与える可能性が生まれる。つまり事象の結果が別の因果領域に働きかけ、結果別の因果領域にある別の宇宙の過去に影響を及ぼすならば、物理学的矛盾が起きないことになるのだ」

 

 

モモンガは正直、嘗てのクラン仲間が語る内容は殆ど理解できなかった。

しかしながら“賢い”と設定された彼の息子は、その内容を何となく理解していた。

 

 

「それからはただひたすら、観測を続けた。伝手を使って様々な企業に協力を要請した。そして何のことは無い、数年前に辞めたゲーム、ユグドラシルにそのヒントを見つけた。ユグドラシルのデータエンジニアが、外部からの不正なアクセスを確認したのだが、そのアクセスログは明らかに地球外から、もっと言えば別の因果領域から届いている可能性を示唆していた。私はそのログを解析し、さらに複数の複合企業の幹部たちから出資を募り、ついにその発信元たる別因果領域への介入に成功した……それがこの世界、この宇宙だ」

 

 

「何を…?どういう…ことですか…?」

 

 

「悪いが時間がない。伝えられるだけ伝えておこうと思うから、詳細を説明する暇はない」

 

モモンガの言葉を遮り、レット・ストレンジは言葉を続ける。

 

 

「私たちの因果領域では、通信の技術は科学技術だったが、おそらくこの因果領域ではそれは始原の魔法(ワイルド・マジック)という力だったのだろう。“竜帝”と呼ばれる竜王が始原の魔法(ワイルド・マジック)を使い、私たちの因果領域にコンタクトしたという事だ。これは竜王となった私の感覚的なものなのだが、竜帝は希少な財宝を求めて始原の魔法(ワイルド・マジック)を使用したのだと思う。それは私たちの因果領域に偶々存在していた〈ユグドラシル〉というゲームの膨大なデータ量を見つけ出した。そしてそれは私たちの因果領域ではゲームに対する不正アクセスという形で観測した。元のリアルでは残念ながら因果領域を越えるほどの技術を持っていなかったが、観測した不正アクセス、つまりは竜帝の始原の魔法(ワイルド・マジック)ではそれが可能かもしれないと結論づけた私は、〈ユグドラシル〉のエンジニアに働きかけ、ゲームのサービス終了のタイミングで不正アクセスに対する防御、つまりアンチウイルス対策を手放し、かつ、私とエンジニア、そして出資を募った幾人かの企業幹部たちは、始原の魔法(ワイルド・マジック)で見つけられやすくするため、設定上持てる限りのデータ量、つまりはアイテムを装備した」

 

 

そこで、モモンガの横で、輝く竜王の言葉を聞いていた者——パンドラズ・アクターは本来の姿である上位二重の影(グレーター・ドッペルゲンガー)の姿に戻り、声を上げた。

 

 

「つまりは、“竜帝”と呼ばれる存在が、結果的にあなただけでなく、私やモモンガ様をこの世界へ転移させたという事でございますか?」

 

 

竜王は、その言葉に一瞬驚いたが、パンドラの姿を目撃すると、何かを理解したような顔となり言葉をつづけた。

 

 

「ドッペルゲンガー…そうかモモンガの従属神(NPC)だったのか…という事はミルンドールも…いや…そうだな。ああ、お前の言う通りだ。私の目的通り、竜帝の始原の魔法(ワイルド・マジック)で、私たちは別の因果領域へ移動することに成功したが、予想していなかったことが2つ起こった。1つは私たち以外のプレイヤー、特にワールドアイテムのようなデータ量が多いものを所持していた者が優先的に、始原の魔法(ワイルド・マジック)の効果を受け、定期的にこの世界へ転移するようになったことだ」

 

 

竜王はパンドラの方を見て喋り続ける。

彼はこれまでの経過で、“賢い”と設定されたNPCはそれが反映されていることを知っているからだ。

 

 

「そしてもう1つはこの、竜王の身体だ。私たちは皆、人間の姿で〈ユグドラシル〉に登録していた。だが、持っていたアイテム、ロキの指輪(リング・オブ・ロキ)世界紅玉(ワールド・レッドオーブ)のある効果によりドラゴンという種に変化し、そして、因果領域を越えるという通常は起こりえないことを起こした事の辻褄合わせによって、この世界と〈ユグドラシル〉の設定に取り込まれてしまった、と考えられる。正確なことは分からないが、この竜の姿、仮に私が来なかったとしても存在するはずだったこの姿の竜と、私が同一の存在となってしまったのではないかと思う。その結果、私の記憶と、この竜本来の記憶が混ざり合い、今の今までモモンガのことを正確に思い出せなくなっていた」

 

 

そこでようやく、モモンガが声を発した。

 

 

「…正直、レットさんの言っていることは殆どわかりません。ですが、レットさんの魂?がその竜の中に入ってしまったというのなら、俺のスキルでそれを切り離すか、あるいはレットさんの魂?だけを蘇生することが出来ると思います、だから…!」

 

 

「モモンガ…おそらくそれは無理だ。私や、竜になった他の者達は設定に取り込まれた(・・・・・・・・・)。だから竜王が倒されたなら、それと同一の存在となった私もまた、そういう設定(・・・・・・)として滅びる、筈だ。それに、そのスキル、それがどういうものだか私は分からないが、あまり多用しない方がいい。私は体が竜になったことで竜王としての精神になっていたし、過去に見たプレイヤーも、その外見に精神が引っ張られていった。あのスルシャーナでさえも100年ほどかけて徐々に精神は人間から離れていったような気がする。だからお前も、その様な命を弄ぶような真似はしない方がいい」

 

「命を…弄ぶ……いや、まってください!レットさんはスルシャーナさんと知り合いだったんですか?!彼は今どこに?!」

 

「スルシャーナは…私の認識が正しければ、八欲王と呼ばれた別のプレイヤー殺された」

 

「これされた…?!…そんな……!」

 

「モモンガ、残念だがそろそろのようだ。そうだ、私が塒にしていた穴に、スルシャーナのギルドのギルド武器とやらがある。竜王の私は、何故かそれを守らなければいけないという気持ちが強かったが、今、設定から解放された私はそうは感じないから、これはもしかしたら、竜王や竜帝といった存在を脅かす何かなのかもしれない…もう私は消えるから……持っていき、有効に使えばいい…」

 

「ま、待ってください!!ダメです!!レットさんは……竜王の精神に乗っ取られてたってことでしょう?だから餡ころさんを……元のレットさんだったら、仲間なんですから、これから一緒に、他のみんなを探しに……!」

 

「モモンガ……私がたっちと喧嘩をしたのは……あいつが理想だけを言い、決して現実を変える戦いに挑まなかったからだ…だから形は違っても、何かを変えたいと足掻くウルベルトとは気が合ったんだ……ユグドラシルを辞めた私は……あの終わりに近いリアルを変えるために全力を尽くしたつもりだったが……結局この世界では竜王などになってしまい…アンコだけでなく、多くのプレイヤーを殺した……モモンガは…間違えるな……命を弄ぶ者には……なるなよ」

 

「レットさん!!」

 

 

 

竜王の身体が光に完全に包まれた。

程なくして、その身体の全ては光の粒子となり、その光も消滅した。

 

 

「レ……レットさん……」

 

 

モモンガ手を伸ばすと、そこにはもはや竜の姿はなく、代わりにその手には光り輝く銀色の鍵が握られていた。

 

 

『特殊アイテム:黄昏の鍵(キー・オブ・ザ・ラグナロク)1/6』

 

 

 

 

「…スキル〈世界輪廻(ワールド・リンカーネーション)〉!!」

 

しかし手ごたえは感じられない。

 

 

「…真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)!!」

 

しかし蘇る者は居ない。

 

 

「…スキル〈冥界下り〉!!!」

 

輪廻の理の中に、竜王の形をしたなにかが去っていくのが見えた。

それはどんなに手を伸ばしても、決して届くことは無く、程なくしてモモンガは、もう何もできる事が無いことを悟り、こちらの世界に戻ってきた。

 

 

 

「レットさん……なぜ…何故ですか…………クソ……クソがァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

人間種と設定された【白夜の神(ノクス・アルバ)】の白髪の青年は、膝をつきながら頭を抱えて涙を流した。

 

 

賢き従属神たる者であるパンドラも、何が起きたかは正確には分からない。

なぜならば神が“レットさん”と呼んでいた存在は、パンドラが生まれた時にはユグドラシルには存在していなかったのだから。

 

だが神の尋常ではない様子から、その存在はおそらくスルシャーナのような、神にとって重要な者だったのだろうと理解した。

 

 

 

長い時間が経って、神はやっとその顔を上げられたが、その顔は明らかに普段とは異なっていた。

 

フレンドであったスルシャーナの死、そして自らが齎した嘗ての仲間の死が、深くその精神に突き刺さっていたから。

 

その長い時間は、レット・ストレンジという者を殺したのは自分だが、その原因を作ったのは“竜帝”や“設定?”といった存在であるという事を自分の中で納得させ、また、彼の言葉から他のアインズ・ウール・ゴウンの仲間がこの世界に転移している可能性を理解し、それを希望として定めるために必要なものだったのだ。

 

赤い目は少し深みを帯び、表情は明るいとは言えない。

だが、レットさんが言ったことは全うしなければならないと自分に言い聞かせ、立ち上がった。

 

 

「……パンドラ、すまなかったな。行こうか、レットさんが言っていた塒とやらに。ギルド武器を回収しなければならない」

 

「はっ。畏まりました」

 

 

 

 

集団飛行(マス・フライ)で飛び上がると、その光景は明らかに異常なものであった。

 

竜王が始原の魔法(ワイルド・マジック)で結界を張った領域の内側、つまりシュオールのイナゴが暴れ回った領域は、完全な荒野となり、草木が一つも生えていない。

 

領域に居た不運なドラゴンズブレスの住人は、生きてはいるが、毒を打ち込まれ、全身が腫れあがり、もがき苦しんでいるのが見える。

 

モモンガは怒りに任せて発動した超位魔法の凄惨な効果を改めて認識し、自身の罪を激しく後悔した。

 

ユグドラシルにおいて〈黙示録の蝗害(ディザスター・オブ・アバドンズローカスト)〉という魔法は、広範囲の領域を永続的に荒野に変え、さらに生産も全て行えなくなるという点が非常に凶悪で、使用すると他プレイヤーからブーイングが来ることが確実であったため使用しなかったが、この世界、プレイヤーでなく、生物がちゃんと生物である世界では、イナゴによる『死に至らない攻撃』の方が凄惨であると感じる。

 

例えばツァインドルクスが始原の魔法(ワイルド・マジック)で、イナゴの拡大を阻止しなかった場合、アーグランド評議国の国土は全て荒野と化し、作物は永遠に育たず、国民は死ねない苦痛に藻掻き続け、最期は餓死するという結末を迎えていただろう。

 

 

「パンドラよ……こんなことで俺がしたことの罪が消えるわけではないのは分かっているが……せめて住民の治療だけはして来ようと思う。お前は塒へ先に行ってアイテムを回収していてくれるか?」

 

「畏まりました」

 

 

モモンガは自身に透明化をかけ、苦しむ住人たちが居る領域まで行くと、何度か〈全てを癒す者の祝福(パナケイア)〉を発動した。

 

住人たちは続けざまに起こる現象に理解が追いついていない様子だったが、ともかくも苦痛が去ったことに安堵の表情を浮かべていた。

 

その中には、泊った宿の主人である蜥蜴人(リザードマン)や、珍しい商品を購入した露店の主人も居た。

 

罪のないはずの者達が、自身の怒りに任せた攻撃に巻き込まれていたことに、モモンガは改めて暗い気持ちになった。

 

そしてパンドラと合流すると、彼らは、もはや『評議員』が存在しないアーグランド評議国を後にした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

スレイン法国に戻ったのは深夜であった。

 

それはモモンガの心の中に、今は誰かと顔を合わせたくないという思いがあったからであったためだった。

 

聖殿の最奥に静かに移動してきたモモンガは、改めてパンドラに預けていたアイテム群を確認していた。

 

その中で特に気になるもの。

 

それは、いわゆる『孫の手』のような形をした棒で、先端には肉球がついたネコの手のようになっている。

 

アイテムの名前は、【借りてきたネコ様の掌】。

ギルド:ネコさま大王国のギルド武器である。

 

モモンガはそれを手に取り、効果を調べようとしたのだが、ふと気が付くと目の前の部屋———それはルファスが眠る部屋の壁に日本語の文字が浮き上がったのだ。

 

 

 

『ネコの手を借りてきた者に、この部屋の扉を開くチャンスを与えよう』

 

 




システムに取り込まれた存在である竜王ズは、蘇生魔法で蘇らすことは出来ません。

例えばRPGで、ストーリー上必ず死ぬNPCを蘇らすことが出来ないのと同じです。
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