オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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腰は痛いわ、仕事はヤバいわですが、連休様様ですね。
台風でどこも行けませんし、だらだら腰の療養しながら書いていきます。
少しペースダウン申し訳ないです。

にしてもあのスライム主従の話になると18禁に近づくので気をつけなければいけませんね


第8章 第5話 -港町の特産品-

 

 

「ウィードさん、見えてきたぜ。たぶんあれが話にあった港町だ」

 

「そ、みたいですね。いやー、ブレインさんのおかげで安全に素早く移動が出来て助かりますわ。じゃあ、俺が入り口で話聞いて今日の宿、確保するので」

 

 

 

嘘である。

 

この世界基準で言えば非常に強者の部類であるブレインであっても、本来の弐式とナーベラルの2人に比べれば移動速度は遅いし、モンスターの討伐効率も悪い。

 

だが当然、人間の“ウィード”一行はただの商人なので、街が近いところでユグドラシルプレイヤー的な動き方をするわけにはいかず、そういう言う意味で良いカモフラージュになっている。

 

 

あの後、弐式は考えた末にブレインの申し出を受け入れて、少なくとも東の列島諸国までは共に旅をすることにした。

 

それは上記で述べた“商人ロール”のための良いカモフラージュとなると考えたためだ。

 

そもそも以前から、力のない商人2人旅というのは不自然ということは分かっていたので、護衛的な者を雇うべきではと考えていた。

しかし、(自分で設定したとはいえ)ナーベラルの余りのポンコツっぷりを理解していたので、現地の人間と共に旅をしていて、いつどんなボロを出すか分からない。

 

最低限、自分たちの正体と実力は隠匿すべきなのだが、テンパったナーベラルは平気で口を滑らす可能性がある。

そしてナーベラル的に気にいらない相手———おそらく弐式に対して失礼な者———に対しては魔法をぶっ放すくらいは平気でやってしまいそうだ。

 

だが、ここまでの対応を考えると、すでにナーベラルは弐式の本名(プレイヤー名だが)を口走ってしまったが、このブレインという男はそれについては知らないフリをしてくれるようだし、この世界基準ではかなりの上位者と思われる実力を持っていて、護衛としても違和感がない。

 

そして、既に失態を演じてしまったナーベラル的にも、このブレインは無礼な人間という認識ではないようだ。

当のナーベラルは、もう決して失態を演じないようにと、ブレインの前では常に口に手を当てて言葉を発さないようにしているが、ブレインもその不自然な様子を見て見ぬふりしている。

 

ロキの指輪(リング・オブ・ロキ)でも消えていない職業レベル由来の、最上位の能力鑑定スキルを駆使してブレインを観察してみたが、彼は見た目通りの戦士職で、魔法的な能力は有していないようだし、商人としてのお宝鑑定スキルを使用して観察しても、未知の魔法的アイテムの気配もない。

 

仮に自分たちの正体等がバレたとしても速やかに他の誰かに情報が伝わることは考えにくいし、ブレインの強さ的にも、本当に万が一の場合は容易に口封じも出来る。

 

 

これらから考えると、このブレインという男は適任の人物である可能性が高い。

 

 

「よし、それじゃあブレインさん。護衛として貴方を雇わせてくれないだろうか。期間は、少なくとも東の列島諸国に到着してその国を出るまで。そこから先は要相談でお互い良ければ期間延長だ。俺たちも身を守るために必要なアイテムは提供する。移動費、食費や宿泊費はこちら持ちだ。それで雇い賃は、そうだな。1日、金貨1枚でどうかな?」

 

「金貨?!いや…条件はそれで構わないんだが……食費や宿代まで出してもらって、金貨ってのは余りに高額だと思うんだが……」

 

「護衛をお願いするってのは命を預けることだし、既に命を救って貰ったからな。それに、まあ、なんだ。うちの従業員の事とか、理解いただけるようだし、口止めとかそういうの含めたら、それほど高額じゃないと思う」

 

「ん……まあ、あんたがそれでいいなら俺の方は不満はねえな。じゃあ、まあ、少なくとも東の列島諸国まではよろしくな」

 

「よろしくー」

 

 

そういう訳でブレインが旅の一行に加わったのだが、何気に大変だったのは、一旦南の交易都市に戻り、宿に入った後であった。

 

 

ブレインとは別部屋で、弐式とナーベラルは同部屋だったのだが、部屋に張った瞬間、ナーベラルが、それはもう完璧な土下座をしてきて、さらに持たせていた忍者刀を差しだし、自身の首を落としてくれと懇願してきたのだ。

 

しかも、なぜか与えていた服を全て脱ぎ去り、全裸となっている。

 

全裸土下座である。

 

 

「私は……私は、取り返しのつかないことを……どうかこの命で償わせていただきたく……!」

 

「待て待て待て!!まず服を着て!!いや、声漏れるから静寂(サイレンス)を!!」

 

 

出来るだけ裸体を視界に入れないようにしながら、何とかなだめすかし静寂(サイレンス)を部屋にかけた後に、弐式はナーベラルを落ち着かせながら訳を聞き出した。

 

まず土下座の理由は、ある程度想像は出来ていたが、ブレインの前でうっかり弐式の名前を言ってしまった事。

それに関しては、確かに困っているが、もう今更だし、そもそもナーベラルをそうあれ(・・・・)と設定してしまったのは自分自身。

その設定をした弐式が、ナーベラルを責めるというのはおかしな話だ。

 

まあ責めるなら、どっかの脳食い(ブレインイーター)なのだろうが、それを口に出すと、もっとややこしいことになりそうなので言わない。

 

服を全て脱いだのは、御手討によって吹き出すであろう血で、弐式から下賜された衣服や武器を汚すわけにはいかないと考えたからとのこと。

 

さらにナーベラルにとって決定的だと感じたのは、ブレインの同行を許した事だったらしい。

 

部外者であるブレインの同行を許し、しかも護衛として雇う。

それはつまり、自分自身はお役御免だということだと、飛躍した理解をしてしまったようだった。

 

だがナーベラルの立場になってよく考えてみれば、それはもしかしたら当然のことかもしれない。

 

プレアデスの役割はギルメンの盾となり時間を稼ぐこと。

 

突然出会ったばかりの異世界の人間に、いきなり護衛役を任せるということは、自分の役割を奪われたと感じてもしょうがないのかもしれない。

 

 

弐式は頭をガシガシと掻き、反省する。

 

ナーベラルはこんな外見だが、産まれて10年も経っていない、いわば子供のようなもの。

創造主である弐式にとっては真に子供であり、これから先、ナーベラルという可愛い娘が、ちゃんと正しく成長するように教育しなければいけない。

 

最初の設定はちょっとアレにしてしまったが、この世界でのナーベラルは、プログラムで設定された言葉しか喋らないNPCではなく、自身の意思を持って喋り、行動する存在。

 

他人に対するちょっと過剰な反応も、弐式を、親である自分を心配し、守ろうという思いから来ているもののはずなのだ。

 

 

弐式は、ナーベラルの肩を優しく抱き、その美しい黒髪の頭を撫でた。

 

 

「にっ弐式炎雷様っっっ?!!!」

 

 

真っ赤になりながら戸惑うナーベラルに、弐式は努めて優しく話しかけた。

 

 

「ナーベラル…ごめんな。俺、ちゃんとお前の気持ちを考えていなかったな。お前に何も相談せずにブレインを護衛に雇ってすまなかった。あれはな、この先正体を隠して人間として旅をするために便利だと思ったから雇った、いわばカモフラージュなんだ。俺にとっての相棒——プレアデスは、俺が創造したお前以外にあり得ない。だから、お前も、そんな風に自分の命を軽く考えることは止めてくれ。俺にとっては、お前が居なくなることの方が耐えられない程辛いことなんだぜ」

 

 

その言葉を聞いたナーベラルは、一瞬目を見開いたかと思うと、その切れ長の両目に大粒の涙を滲ませた。

 

 

「あっ……あっ……あっ……弐式…炎雷様ぁぁぁぁ………!!私の…私のような…不出来な者に……なんて…なんてお優しい御言葉っ……あああああああ!!!」

 

 

胸の中で泣きじゃくるナーベラルの頭を優しく撫で続けながら、弐式は頭の中で呪文のように唱え続けた。

 

 

『この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘。この子は娘』

 

 

 

 

 

暫く時間が経って、ナーベラルの涙がひいてきたところで弐式は再び言葉を発した。

 

 

「さあ、もう泣き止んで、服を着な。1階の食堂で食事をしよう。そういう人間にとって普通の行動をすることも、“草(ウィード)”として大事な仕事だ。それにいつも言っているけど、人間種状態の俺は防御力お化けだから、この世界で俺に1ダメージすら与えられる存在なんて殆どいないぞ。いつもお前が俺のことを心配してくれているのは分かるけど、もう少し俺のことを信用してくれてもいいだろ」

 

「あっ…はい!勿論でございます!今の弐式炎雷様を傷つけることが出来る存在などこの世界には居りません!!ただ弐式炎雷様に群がる害虫が居れば、それを事前に追い払うのが私の使命だと考えております…」

 

「あー、うん。ありがとう。まあ、あれだ。行動する前に事前に情報共有をしよう。お互いにな。俺も気を付けるからさ。まあ今の俺がダメージを受けるってのは、敵からよりも例えば食アタリとか病気とか、そういうののがまだ可能性ある位だろうから、そんなに心配しなくていいから」

 

「はい、畏まりました!!では……その、行動をする前に確認をさせていただきたいのですが、あの、先ほどから腰を引いておられるようにお見受けします。もしや、何らかの御病気か何かでしょうか?腰が痛くなるような御病気が……?」

 

 

「…………変化の術!」

 

 

速やかにハーフゴーレムに姿に変身した弐式炎雷は、自身がナーベラルの裸体に何かを押し付けないよう腰を引いている原因……その感情が霧散していくのを感じた。

 

半分ほど。

 

 

「ふぅ……ホラこの通り。大丈夫だ。何ともない。ペロロンチーノ、五月蠅い。体はどこも悪くないぞ」

 

「えっ?!ペロロンチーノ様?!」

 

「ゴメン、何でもない。ペロロンチーノは居ない。俺の独り言だ。さて、ナーベラル、服を着るのだ。人間の行商人としての服を。お前が着たら、俺も人間に戻る」

 

「??畏まりました!!」

 

 

 

 

 

そんなこんながあって、現在は3人旅をしている訳だが、ブレインの雇い主でナーベラルの上司(という設定)のウィードではあるが、この3名の中では他人との会話は明らかに彼が向いているので、初めての町に入っての会話は基本的には彼が担当する。

 

 

「やあやあどうも、こんにちは。俺は従業員と護衛と共に旅してる行商人だけど、街に入る足代はいくらですか?」

 

「旅人か。ああ、入町税は1人、銅貨3枚だ」

 

「成程成程。では銅貨が9枚と、そうだ、これはチップのつもりなので良ければこの町のこととかおすすめの宿とかを教えてもらえないかな?」

 

 

そう言うと、これといった特徴のない顔のその商人は、銅貨の束の上に5枚の銀貨を乗せて渡した。

 

 

「ん…これはありがてぇな。ちょっと前にどっかの国の貴族サマが来てたみたいで、町の中の宿とか店は潤ってたんだが、俺みたいな門番はそういった恩恵が無かったからな……ここはゴ=ラの町。見ての通りの港町さ。東の列島諸国へ渡る定期船が出てるし、漁業も盛んだから魚は美味いし、それなりに珍しいアイテムなんかも流れてくる。宿は、そうだな『豪流亭』辺りが値段も手ごろで、飯も旨いからいいんじゃないか?」

 

「おお、いい情報ありがとう。ちなみに俺のような余所者が往来で行商とかしても大丈夫ですかね?」

 

「ああ、船着き場前の広場はそう言ったことは自由だ。だがちょっと遅かったな。例の貴族サマは結構前に東の列島諸国に渡って行っちまったからな。なんでも珍しくてお気に入りの品だったら金に糸目をつけず買ってたらしい。お気に入りは名産の食い物や酒、後は石鹸や工芸品やら衣類、特に下着なんかを良く買ってたとか。旅で消費するのか珍しい日用品とかお気に入りだったって話だ。あんたももし海を渡ってあの貴族サマに会ったら、そういうものを売りつけるといいぜ」

 

「それは何とも景気のいい話だ。いやぁ、あやかりたいものだね。ところでその船旅というのは危険だったりしないんですかね?貴族の方が乗っていったという話ですが、海のモンスターとか、そういうのは大丈夫なんですか?」

 

「ああ、そうだな。まあ非常に運が悪ければそういうモンスターとの遭遇もあるかもな。だが、東の列島諸国には、島々を守り支配する竜王ってのが複数いて、そいつらが居るおかげで海のモンスターはあんまり出ないんだ、この海域では」

 

「ほう、東の島を守る竜王」

 

「ああ。まあ、あれらはカミサマみたいなもんだ。列島諸国の奴らは支配されているみたいだからどういう心境かは知らんが、部外者であるこの町の者とか、あんたみたいな旅人は別に気する必要はねぇよ。辺にちょっかい出さなければだがな」

 

 

 

門番から紹介された宿に入り、一旦荷物をほどく。

その後、3人は行商が出来るという広場に繰り出してみた。

 

そこには確かに門番が言ったような、露店や、食べ物の屋台が並んでいる。

 

 

「ブレインさん、門番が言ってたけど、やっぱり東の列島諸国には竜王とやらが複数いるみたいだよ。ただ、あの話しぶりだと、竜王は守り神的な存在かもしれないから、安易に戦いを挑むってのは難しいかもしれないな。それとその竜王たちのおかげで、海のモンスターはあまりいないらしい。とりあえず今日はこの広場の露店を見学して、持ってる商品で売れそうなものがあったら俺も露店を出してみようかと思う」

 

「ふぅん、そうか……まあ竜王に関しては風説を聞いただけだからな。実際に島へ渡ってみればどんな感じなのか分かるだろうさ。ところで俺はちょっと腹が減ってきてるから、そこらの露店で売っているものを食べてきたいんだが」

 

「ああ、そうね。俺も何か食べるかぁ。ついでにどんなものが売れ筋か調査だな」

 

 

努めて一言も喋らない黒髪の従業員を伴った印象の薄い商人と、青髪の剣士が露店を回る。

 

ウィードが、恐らくはエビのような海産物を挟んだパンのようなものを食べながら露店を回ると、多くの露店で見慣れない瓶に入ったものが売られていることに気づいた。

 

 

「あー、お兄さん。その瓶に入ったものは何?なんかどこの露店にも売ってる気がするんだけど」

 

「見慣れない顔だから旅人さんかな。これはさ、海藻を煮詰めて濾したものだよ。用途は色々でね、昔は魚や木の実なんかを混ぜて煮固めて食べたりしていただけだったんだが、最近はここにオイルや香料を入れて、体に塗ったりするとヌルヌルとしていい感じだよ」

 

「ふーん……なんだろう、ボディローション…的な?」

 

「そうそう!旅人さん、良く知ってるねぇ!これはさ、少し前までここに滞在していたどこかの国の貴族さんが偉く気に入ってね。体に塗って、その、ね。色々と楽しむ方法があるとかでさ。その貴族さんは侍女の方とね、色々楽しんでいたみたいでさ!それ以来カップルに大人気なんだよ。後ろのお連れさん、もし、そういう関係なら、是非試してみてよ!」

 

「こっ…この、マダラショウジョウバエ(体に纏わりついてくる害虫)がっ!!!」

 

 

露店の若い男がニヤニヤしながら言っている意味が分かったのか、あるいは、あまり大きな声で言えない、その小瓶の中身に用途について説明するため、ウィードに耳打ちするように接近して話したのがダメだったのかは分からない。

 

だが少し顔を赤くしているような気がするナーベラルが激高して何かをしでかす前に、弐式は今にも飛び掛かりそうな彼女をなだめ、さっさとこの買い物を終えることにした。

 

 

「あー…連れが、スミマセンね……とりあえず迷惑かけたし、うん、1個だけ買うから、うん」

 

「毎度ォ!」

 

 

弐式は買ってしまったその小瓶を、アイテムボックスの底の方にしまい込んで、間違っても間違えないように、帰ったらさっさとハーフゴーレム化することを誓うのだった。

 

 




?「いやーこの世界の服や下着も、探せばなかなかのものもありますねぇ!防御力なんかは皆無ですが、これは、これで………」


?「これは…!このヌルヌル……いや、いい買い物をしました。宿に戻ったら試してみましょう!あ、浴槽で使って水道管に詰まってたりとかは……ああ、溶かせばいいですね!」


?「はぁはぁ……もう少し…その……軽蔑した目線でお願いします!」
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