オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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ついにタブラさんにばれます。
それでも全所業の50%くらいですが。


第8章 第11話 -錬金術師の心は大荒れ-

 

 

「あ……あの、パラケルさん…その、落ち着きましたか?」

 

「ええ……大変お手数をおかけしました。いただいたポーションの代金はちゃんと払いますので」

 

「い、いえ、普段から素材などを補充していただいていますし、何より今の私やフォーサイトの皆があるのはパラケルさんのおかげです!代金など!!」

 

「いえ、対価はちゃんと払わなければ。それに私が、普段置いていっているのは、私は使用しないもの、つまりは私にとっては不用品です。それをあなたが再利用してくれているわけですから気になさらないでください」

 

「そ…そういう訳には…」

 

「では、今頂いてる情報の料金ということにさせてください。というかおそらく国家機密が含まれる内容を教えてもらっている気がしますし、むしろ足りないくらいだと思いますが」

 

「わ…分かりました」

 

「では………続きを教えてもらえますか?」

 

「はい、ええと……ソルディフ卿が祖国の金貨1万枚を両替されたところからでしたね」

 

「……ええ」

 

「では……その後私と事務官の方と四騎士の方でお話して……」

 

 

 

タブラは、ある程度成長したアルシェの前では下手に幻術をかけない方がいいと考え、『パラケル』のまま話を聞いていた。

お供のニグレドは不可知化状態で同じ部屋にいる。

 

 

クレマンティーヌという輪廻聖典の隊員からヘロヘロさんらしき人がバハルス帝国の隣国である竜王国というところで、侵略してきたビーストマンを倒しまくったという話を聞いて少し頭が痛くなっていたが、アルシェからソルディフ・カーゴ・カルト・ヘロ=ヘロ卿が、このバハルス帝国で、おそらくはユグドラシル金貨1万枚以上を特に警戒もせずに両替したという事実の追撃で一度膝から崩れ落ちたところだった。

 

 

そもそもはアルシェに、何故バハルス帝国がリ・エスティーゼ王国に宣戦布告したかの背景を教えて欲しいと頼んだのだったが、アルシェは、『それを説明するためには、ある遠国の貴族の訪問が発端となっている』といい、その話を始めた。

 

 

アルシェが知っている、その貴族の最初の行動は、護衛任務を請け負ったフォーサイトを助けた事。

話しから、どうやらソリュシャンも一緒に来ているのは確実そうだ。

 

そこまではいい。

そこまでは良かった。

 

ユグドラシル金貨1万枚の話を聞いて、タブラは気が遠くなりそうだった。

既に皇城に、ユグドラシル金貨が回収不可能なほど保管されていて、その様子から考えてもヘロヘロさんは他の国でも同じようなことを平気でしている可能性が高い。

 

集合知が無いパラケル状態でも分かる。

もうユグドラシル金貨の完全回収と隠蔽は不可能だと。

そういう訳で一度膝から崩れ落ちたのだ。

 

 

伝言(メッセージ)でニグレドが、『タブラ・スマラグディナ様?!タブラ・スマラグディナ様?!!』と呼び掛けてくる声に『大丈夫…大丈夫です』と答え、驚きながらも介抱して、自作のポーションを飲ませてくれたアルシェにも感謝の言葉を述べた。

 

 

 

そして気を引き締めなおして続きを聞いていたが、今度は闘技場の件に話が及んだ時、「バカなんですか?!!!!」と叫んでしまった。

 

アルシェはビクッとして泣きそうな顔になり、ニグレドはさっきから『タブラ・スマラグディナ様?!タブラ・スマラグディナ様?!!』としか言っていない。

 

 

「大丈夫……大丈夫です。私は、大丈夫です……すみません、アルシェさん、確認ですが、そのソルディフ卿は武王を倒し、9代目武王の称号を継承したと…それで、彼は闘技場で武王として戦いを続けたのですか?」

 

「いえ、ソルディフ卿は、その後闘技場で戦うことは無くこの国を旅立ちました。現在8代目の元武王が代理のような立場で闘技場に立っていますが、ソルディフ卿の強さに届くものは今後も現れないだろうということで、殿堂入りとなり9代目武王であるソルディフ卿には永世武皇という称号が贈られ、そのことは国中に大々的に伝えられました」

 

「Oh!Shit!!」

 

「ひっ!」

『タブラ・スマラグディナ様?!』

 

「す…すみません。何でもないです。脅かすつもりは無かったです。申し訳ない」

 

「はぁ……それで、そのソルディフ卿はもうこの国に居ないということですが、彼の存在がなぜこの度の戦争に繋がったのです?」

 

「はい…そのソルディフ卿は、この国を発った後、隣国の竜王国という国へ赴かれたそうです。竜王国はさらにその隣国のビーストマンの国から侵略を受け、その戦いにソルディフ卿が介入し、最終的にビーストマン国は滅び、嘗てのビーストマン国の領土は竜王国のものとなりましたが、竜王国の女王はソルディフ卿の功績を称え、その土地をソルディフ卿に献上するという噂があります。少なくとも竜王国はソルディフ卿並びにソルディフ卿の祖国と友好関係を築くことを考えていて、これはバハルス帝国と同じ対応です……パラケルさん?!」

 

「大丈夫です……続けてください……」

 

 

アルシェには、パラケルは真っ白に燃え尽きたような表情となっていて、とても大丈夫には見えなかったが、戦争のことについて説明しなければならないことはまだあったので、言葉を続ける。

 

 

「はい…えっと、それで、その後、ソルディフ卿は北側の隣国であるカルサナス都市国家連合へ向かい、5年に1度の競技大会に出場。『コネリエ』という競技で前代未聞の強さを見せ、さらに競技大会のさなかに侵略してきた東の“騎馬王”という半人半馬(ケンタウロス)の集団をも下し、最終的に“騎馬王”はソルディフ卿の配下となったとのことです。これを受け、カルサナス都市国家群に属する12の小国全ての都市長で協議し、彼らはソルディフ卿並びに卿の祖国の属国になることを求めたとのことです。これにより、バハルス帝国は東側国家と敵対することは出来なくなり、ちょうどそこに、リ・エスティーゼ王国の災害の話が入ってきて……パラケルさん?!!」

 

「大丈夫…大丈夫です…だいたい、分かりました…」

 

「本当に大丈夫ですか……あの、魔法薬を準備しますし、フォーサイトの他の皆も会いたいと思うので、よろしければ今日は泊まって行かれませんか?」

 

「ああ…いや……まだやることがあるのでそれは遠慮しておきます…それよりもアーウィンタールで強めの酒を出す店を教えてもらえますか?」

 

「え…えっと、はい。昔ワーカーだったころによく使っていた『歌う林檎亭』は、言えば結構強いお酒を出してくれると、ヘッケランが言っていました……それと、その…」

 

「…何でしょうか?」

 

「もしかしてソルディフ卿は、パラケルさんのお知り合いなのですか?」

 

「………はぁ…まあ、私だけ国家機密を教えてもらって、はい、さようなら、という訳にはいきませんね。そうですね……このことは他言無用でお願いしますが、私の元々の祖国というのは、エリュエンティウではなく、彼と同じ場所なのです」

 

「そっ…そんな…!では、パラケルさんも…やはりあのソルディフ卿のような…」

 

「詳しくは…まだ説明できませんが、いずれお話するときが来るでしょう……それよりも前に、私としては、このバハルス帝国とリ・エスティーゼ王国の戦争というものの被害を最小限にとどめたいと思っています」

 

「その…立場上、私は強く言えませんが、そうしていただけるとありがたいです…」

 

「ええ、なんと言うか、この戦争、私の仲間達のせいで起きたということが良く分かったので、責任を取る必要がありそうですし……とても気が進みませんが、これはフールーダ翁にも会って説明しておく必要がありそうですね……念のため確認ですが、ソルディフ卿は、そのカルサナス都市国家群というところにまだいるのですか?」

 

「いえ、伺った話では、さらに東に向かって、すでに旅立ったと…」

 

「そうですか……いえ、ありがとうございます。お仕事の邪魔をして申し訳なかったですね。少し『歌う林檎亭』に寄ってから、一度仲間の元に戻ります。また、すぐに会うことになるでしょう」

 

「はい…その。色々と落ち着きましたら、フォーサイトの皆とも会ってください。皆、パラケルさんのおかげで、今があるんです」

 

「ええ……そうですね」

 

 

 

 

『アトリエ・フォーサイト』を出て歩くパラケルに、姿を隠したニグレドが話しかける。

 

 

『タブラ・スマラグディナ様…ヘロヘロ様の事、よろしかったのでしょうか?』

 

『ええ…もう隠してどうこうできる段階ではありません…幸運にも彼らは善良な者なので、いっそのこと、こちらからある程度情報は開示して、味方にしてしまった方がまだマシです……あンの情報漏洩スライムが……』

 

 

パラケルは、その後、生まれて初めて“やけ酒”という行為を実行し、ヘロヘロに対する怒りが薄ぼんやりしたところで、毒無効化のポーションを飲んで、『歌う林檎亭』を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「……という訳です」

 

「おーう……俺は人の事言えないけど、何やってんだヘロヘロさんは……」

「ぎゃはははははははははは!!!!!!」

 

 

「もう台無し、台無しです!!私がどれだけ、あの国で情報漏洩に気を付けて行動していたか!!そういう訳で、今回の戦争の原因は60%がヘロヘロさん、40%がウルベルトさんの責任です!!」

 

「えぇ……まあ、俺に責任が無い訳でないのは分かるが………なあ、それよか、あと2人って誰なんだ……俺の知り合いの女はほぼ蒼の薔薇だけだから……ラキュースは悪談義するだけの仲間だし、忍者2人はあんまり喋ってないし、イビルアイは精神子供だし、流石にリグリットは年齢的にないし…そうなると消去法でガガーランしか居ないんだが……」

 

「じゃああのガガーランさんも入れて3人でいいでしょ!!とにかく、戦争をどうするかと、あのスライムの回収です!!ニグレド、申し訳ないが、お前の能力で、今まで赴いたことがある場所の全てを遠隔視してください!ヘロヘロさんとソリュシャンは魔法的なカウンター対策法は持っていない筈ですが、念のため軽めのカウンター対策は行ってください!」

 

「タブラさーん、あのクソドラゴンズがいたらヤバいんでないの?」

 

「ああ、そうだ。その話もしなきゃですね。まずはウルベルトさん、竜王を倒したときに手に入った鍵状のアイテムを見てもらえますか?」

 

「…うっす」

 

 

ウルベルトは、普段怒らないタブラに怒鳴られたことで、ちょっと萎縮しながら無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)に手を入れた。

 

 

「ほら、これ。アイテム名は…あれ?『特殊アイテム:黄昏の鍵(キー・オブ・ザ・ラグナロク)3/6*』……?この最後のアスタリスクは付いていたっけか??」

 

「少なくとも、私のにはついていませんでしたよ。私が持っているこれ、『特殊アイテム:黄昏の鍵(キー・オブ・ザ・ラグナロク)4/6*』……これにもアスタリスクがいつの間にかついていたのですよ」

 

「…どういうことだ?」

 

「お話したように、この最後の数字は、このアイテムは全部で6個あり、その通し番号である可能性が高い。パン・みーの話から、〈冥界下り〉の中で眠っているモモンガさんは、この鍵を2本持っている。そうなると残りは2つ。私は残りの2本はおそらく、ヘロヘロさんと、それ以外のまだ会っていないAOGの誰かが持っていると考えています。まあ、ヘロヘロさんが2本持っている可能性もありますが」

 

「どゆこと?」

 

「初めは無かったアスタリスクマークが、いつのまにかアイテム名に追加されていた。これから考えられるのは、おそらくボスモンスターが全て倒され6本すべての鍵が、いずれかのプレイヤーの手に渡った…そうは考えられませんか?」

 

「…そうなるともうこの世界にあの竜王のような存在は居ないということか?」

 

「スレイン法国では昔から、始原の魔法(ワイルド・マジック)を使用する竜王を他と区別するため『真なる竜王』と呼んでいたとのことです。また、パン・みーによれば、モモンガさんが戦った白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)は、元のリアルの魂を持っている存在で、倒されることで記憶を取り戻したとのこと。レット・ストレンジさんの言っていたことを信じれば、彼は科学技術で捕捉した竜王の魔法でこの世界に渡り、何故かは分からないがユグドラシルの設定に取り込まれたと。これらから考えると、そういった存在はレット・ストレンジさんを含め6名いて、それら———『真なる竜王』は全て倒された。結果、このアイテムの名前が変わった。これがユグドラシルの設定なのだとすれば、おそらくは重要なイベントか何かが起こるキーアイテムか何かだったのでしょう」

 

「成程、その仮説が正しければ、もはやこの世界に鍵のアイテムを持つような真なる竜王———つまりはリアルから転移してきた竜王は居ないから、始原の魔法(ワイルド・マジック)で攻撃されることも無い、か」

 

「あくまで、手元にある情報から考えられる仮説です。ですが、それを確かめるためにもヘロヘロさんを捕獲しなければいけないのは事実です。なので最低限の対策はしたうえで、今後はニグレドに遠隔視をしてもらおうという訳です」

 

「なるほどねー。じゃあさ、聖王国とアベリオン丘陵はネイアとバザーに直接聞いてみるよ。ヘロヘロさん、あんだけ激しい動き方してんだから、近くに居たらソッコー見つかるでしょ!」

 

「そうですね。ではそれはお願いします」

 

「じゃあ、リ・エスティーゼ王国は……ちょっと待ってくれ、イビルアイから伝言(メッセージ)が入っている」

 

「ああ、お先にどうぞ」

 

 

 

ウルベルトは頷くと、指を耳に当てて何やら会話をしている。

 

 

「…なに、本当か?!…ちょっと待っててくれ」

 

 

ウルベルトの反応に、タブラが尋ねる。

 

 

「どうしました?」

 

「イビルアイは今、ここからかなり南の国に居るそうなんだが、その国の大臣から俺たちのような力を持つ神の存在の話を聞いたらしい。その情報共有をしてくれると言っている。もしかしたらヘロヘロさんかもしれないからここに呼んでしまっていいか?」

 

「わーお!めっちゃタイムリー!」

 

「そうですね。一応輪廻聖典の方々に許可を取って呼びましょう。彼女はここは知らないでしょうから、一度リ・エスティーゼ王国で落ち合って、そのまま連れてきてくれますか?」

 

「ああ、分かった」

 

 

 

数十分後、パルメーラに連れられた吸血姫(ヴァンパイア・プリンセス)が、法都の聖殿に現れた。

念のため現在は、皆人間の姿をしている。

 

 

「イビルアイ、情報提供助かる。すまないが早速、教えてくれるか?」

 

「あ、ああ。実は私が訪問していた風巨人(エアジャイアント)国の大臣は、私が13英雄として旅した時の仲間の親族でな。ここ何年かであの国に起きた事…神の降臨について教えてくれた」

 

「神……そう言う風に言われるということは、やはり可能性が高そうだな……どうした2人とも?」

 

「いえ…続けてください…」

「うん…続けて…」

 

 

 

「ああ、あの国の周辺には昔から『口だけの賢者』という伝説的な牛頭人(ミノタウロス)の賢者の話がある。その賢者はもう何百年か前に死んでしまったという話だったが、1年位前の事らしいが、その伝説的な『口だけの賢者』を黄泉から呼び戻し、邪悪なモンスターを倒すとともに、あの辺の亜人種国家の改革を進めた者が居たらしい。現に、あのあたりの亜人種国家は様変わりしていた…凶暴なトロールの国家は滅び、ビーストマンと牛頭人(ミノタウロス)の国の戦争も終わっていて、交易まで始まっていた…この変化はさらに南の砂漠を越えた先の国々でも同じでな…私からすれば信じられない変化だ。これだけのことを成した者だ。なぜか砂漠の先では名前はしっかりと広まっていなかったが、風巨人(エアジャイアント)国やその周辺国家では、それを成した者の存在が新たな時代の神として崇拝の対象となりつつあった」

 

「成程な…その者の名前は分かるか?」

 

「ああ、ちゃんと聞きだした。その名は『るしふぁー』様。輝く黄衣で顔を隠した最上位天使とのことだ!!」

 

 

 

ショータローの姿はいつの間にか見えなくなっており、パラケルは頭を抱えていた。

 

その辺りの情報をちゃんと共有されていなかったパルメーラは意味が分からず頭の上に大量の“?”が浮かんだ。

そして、同時にイビルアイの様子をつぶさに観察して『こいつじゃないよな?違うよな?』と疑心暗鬼になっていた。

 

 




★「ここで切り上げれば崇拝の対象にはならないって言ったじゃん!!もうやだネイアとバザーのとこ遊び行く!!」

ウィードさんは砂漠の先のイビルアイ故郷付近では『草』として本名は晒さなかったために、イビルアイは亜人国家で聞いた神の話とウィードの話がごっちゃになり、誤った(誤ってはいない)報告となってしまいました。

アンケートです。9章の内容でどちらかを出す必要があるので、どちらがいいか多数決を取りたいと思います。どちらの場合でもストーリーに影響は無く、R18にはしないつもりです。お好きな方をお選びいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

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