オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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各人の職業レベルなどは妄想の産物です。



第1章 第14話 -パラケル先生の魔法講義-

 

 

夜も遅くなり、村の家々の明かりも消えたが、ワーカーチーム:フォーサイトが借りた空き家に横付けされた、パラケルの馬車の中からは明りが漏れていた。

 

日が沈む前に一行はカルネ村に到着し、夕食を摂った後、フォーサイトは借りた空き家で、パラケル達親子は馬車で、それぞれ就寝する予定であった。

しかし、現在は『今回のトブの大森林での戦闘の結果と、明日以降の動きについて共有したい』というパラケルの提案で、一同は馬車の中に集まって話をしている。

 

タブラはトブの大森林での戦闘中、アルシェの様子を見ていたのだが、かなり疑問に思っていることがあった。

現在彼女のレベルは29。

はっきり言ってこの世界基準で言えば、英雄の領域に足を踏み入れたと言っていいレベルだ。

にもかかわらず、大幅なレベルアップをした昨日の妖巨人(トロール)戦後、彼女は第3位階より上の位階の魔法を使用していない。

 

ユグドラシルのプレーヤーの常識では、レベルが上がるなどで条件を満たした状態でコンソールを開き、使用魔法一覧を確認すると取得可能魔法が表示されている。

タブラとしてもその常識があったために、アルシェが第4位階の魔法を使わない理由が分からない。

 

ちなみにユグドラシルでのレベル29というのは、仮にそのレベルを全て魔力系魔法の職業レベルにつぎ込めば、ギリギリ第5位階を使用できるラインである。

タブラは、フールーダがレベル46であるにもかかわらず第6位階までしか使えないという事実から、この世界ではもしかしたら位階が一つ上がるレベルはユグドラシルよりも厳しいのでは、と考えていた。

レベル46ならば、第7位階が使えてもおかしくないからだ。

従ってアルシェが第4位階を使用できるようになる目安は、厳しく見積もってレベル28程度では?と考えた。

しかし蓋を開けてみれば、レベル29の彼女はいまだに第3位階を使用。

この矛盾というか疑問点を解消するための聞き取りを行うのが、今回の目的である。

 

アルシェはアルシェで、緊張していた。

それは、パラケルが自分たちを馬車に呼んで“戦闘の結果”を話すと言ったことによるもので、すなわち自分にとっては試験の結果発表をするという事ではないか?と考えたからだ。

明らかに自分は成長したと思うが、それがパラケルの眼鏡にかなっているとは限らない。

出発時よりも少し太くなったような気がする腕で、杖をぎゅっと握りしめ、覚悟を決めて他の3人とともにパラケルの馬車へ入る。

 

 

「ああ、遅い時間にすみません、皆さん」

 

「いや、全然大丈夫だ。ていうか今回の任務はすでに大成功確定だし、パラケルさんのおかげで、移動やら宿泊なんかにかかる金もだいぶ節約できた。本当に心から感謝しているぜ」

 

「それは良かったです。私としても目的の素材を採集できましたので、当初の予定通りwin-winの結果になりましたね。さて、先ほど言ったように皆さんをお呼びしたのは、今回の戦闘について共有をしておいた方が良いと思いまして」

 

アルシェがぎゅっと奥歯をかみしめる一方で、イミーナやロバーデイクも思うところを述べる。

 

「本当に、今回パラケル殿のおかげで、非常に効率的に任務を達成できたというだけでなく、なんというか…かなり鍛えられた気がしますね」

 

「そうそう、それアタシも感じてたのよ。弓の威力、明らかに上がった気がするわ」

 

 

「ふむ、なるほど。私がお伝えしようと思ったのは、この2日間でだいぶ頑張ってモンスターを倒していただいたので、皆さんのレベ…いや難度が上昇しているという事をお伝えしようと思ったのです。私はスキルである程度の難度を測定することができます。まず、ヘッケランさん、よろしいですか?」

 

「え、あ、ハイ」

 

“ある程度難度を測定できる”というパラケルの発言に、一同は“生まれついての異能(タレント)”のようなものだろうか?と考えた。

しかしタブラからの説明を受けて、一同はそんなことはどうでもいいと思えるくらいの自分たちの成長ぶりに腰を抜かす。

 

最終的な難度(レベル)は以下の通りと説明された。

ヘッケラン  難度76 (レベル25)

イミーナ   難度69 (レベル23)

ロバーデイク 難度70 (レベル23)

アルシェ   難度87 (レベル29)

 

特にアルシェの伸びがすさまじく、出発時と比較すると難度は+25ほど増加しているという。この理由はラストアタック…つまり敵にとどめを刺した回数が多かったからとのことだ。

パラケルはこの4日間、フォーサイトのメンバーの行動をつぶさに確認しながら、難度が上昇する条件を観察していたという。

剣を使って素振りをするとか、魔法でキャンプ地に警報(アラーム)をかけると言った、最終的にモンスターを倒すという事象に繋がらない行動は、ゼロではないにしろ、難度上昇(彼の言葉を借りるならば“経験値”)にはつながらない。

 

一方でモンスターを倒すという結果につながる行動をした場合は、たとえそれが支援魔法であっても、大きく難度上昇に影響する。

さらに言えば、自分たちよりも強い相手であればあるほど良く、さらにラストアタックをした者は最も上昇するという。

 

フォーサイトは経験上何となく感じていた、“強くなる”条件が明確になり、今後はこのことを念頭に置いて戦おうと決意した。

 

「それにしても難度が平均で75って、もう冒険者で言えばオリハルコンってことじゃないか?」

 

「そうですね…いやはや、パラケル殿との旅は驚くことの連続ですな」

 

「オリハルコンって…アタシ達が…マジ?なんか笑えてくるわ」

 

「難度87…私が…」

 

 

「そうですね、ですが皆さん、これからも慎重さを失わないように。格上の相手との戦闘は強くなるために必要なことですが、死んでしまったり大けがを負ってしまえば、そこでお終いになるかもしれません。あくまで今日の話は参考に、というところです」

 

フォーサイト一同はパラケルの忠告に、真剣な顔で頷いた。

その様子を見て、タブラは本題を切り出す。

 

「さて、これに付随してアルシェさんに聞きたいことがあるのです」

 

アルシェは心の中で『ついに来た…』と呟きながら、パラケルをまっすぐ見つめて頷いた。

 

「難度87というのは、私の認識では英雄の領域に足を踏み入れてると言えるのではないかと思います。にも拘らず、あなたは今日の戦闘も全て第3位階までの魔法しか使用していませんでしたね。第4位階を使用することはできないのですか?」

 

アルシェは一瞬パラケルが何を言っているか良く分からなかった。

彼女の常識では、魔法はその位階を行使する実力と、魔法そのものの理解の両方を持って初めて行使可能になる。

 

第4位階の魔法というのは、帝国魔法学院でも使用できるものは極わずかであったため、具体的にどのようなものがあるかアルシェ自身良く分かっていないところがある。正直、この任務で自身の魔力は上がっている気がするので、何とかして第4位階の魔法についての魔術書などを閲覧し、“理解”の方を得れば行使できるのではないかという淡い期待があった。

 

「その…正直なことを言いますが、第4位階を行使できそうな感覚はあります。ですが、私は第4位階の魔法にどのようなものがあり、それらのうちどれが自分の適性に合っているかまだ学習できていません。なので、この旅が終わってアーウィンタールに戻ったら、なんとかして魔法書の閲覧をしたいと考えています」

 

 

その解答を聞いて、タブラは『ハッ』とした。

よく考えたら、この、おそらく現実であるゲームではない世界に『コンソール』は存在していない。

従って、この世界の者が新たに魔法を学ぶためには、今アルシェが言ったような“現実的な”手段が必要なのだ。

うっかりしていたことを反省する一方、『まてよ』と思い彼女に再度確認する。

 

「第4位階の魔法を学ぶにあたって魔法書の閲覧は必ず必要ですか?例えば私が第4位階の魔法を説明することで魔法書の閲覧と同じ効果は得られますか?」

 

「えっと…おそらく可能です。というのも私は帝国魔法学院で魔法を習っていた時は、魔法書と先生による実践で学びましたが、フォーサイトに入った後に覚えた魔法…例えば飛行(フライ)などは、そういうものがある、という知識と、それを使うというイメージを繰り返すことで使えるようになりました」

 

「成程…それでは私の知識にある第4位階魔法をお教えします。まずは現在覚えている魔法を教えていただけますか?あなたの適性に合っている傾向を知りたい」

 

そう言う訳で突如、パラケル師による魔法講義が始まった。

この講義は魔法を使う者、アルシェとロバーデイクは興味津々だったことは当然として、ヘッケランとイミーナも是非聞きたいと申し出た。

 

『たとえ自分が使えなくても、どのような魔法があるか知ることはワーカーとして大きな価値がある』というヘッケランの意見に、タブラは少し感心し、彼ら4人への講義が始まった。

 

改めてアルシェをよく解析しながら、彼女の攻撃魔法の傾向を聞いていく。

雷系、酸系、炎系の魔法を中心に覚えているようで、水系は僅か、氷系は覚えていないようだ。

魔法は全て魔力系。彼女の職業レベルも全て魔力系魔法を覚えるものであった。

内訳は以下の通り。

 

ウイザード       12レベル

アカデミックウイザード 4レベル

ハイ・ウイザード    8レベル

ウォー・ウイザード   5レベル

 

これをもとに支援系・攻撃系(雷系・酸系・炎系)の魔力系魔法を説明。

 

ロバーデイクの職業レベルも覗いてみたが、彼も全て信仰系で構成されていて、ユグドラシル基準で言えば第4位階に到達していてもおかしくないので、信仰系の第4位階魔法について説明する。

職業レベルの内訳は以下の通り。

 

クレリック     10レベル

ハイ・クレリック  5レベル

テンプラー     4レベル

プリースト     4レベル

 

 

夜だというのにアルシェとロバーデイクの二人は、おそらく大金を積んでも普通は受けることのできない魔法講義に興奮し、一通りメモを取りながら聞き終わったところで、実際に行使できないか試したいという。

 

夜の森は危ないのだが、ここカルネ村は魔獣の加護とやらでモンスターが少ないということで、他のメンバーが護衛をする形で、村の外の北の広場で練習することにした。

 

 

実施にやってみるとタブラの想像通り、二人は第4位階の魔法を使える様になっていた。

 

集団・重症治癒(マス・ヘビーリカバー)善の波動(ホーリーオーラ)の発動に成功したロバーデイクは膝をついた体制となって、神とタブラに祈りをささげている。

「この私が…第4位階を…神よ、パラケル殿、感謝いたします…これで今以上に弱き者たちや子供たちの命を守ることができます…」

 

アルシェはというと、すでに4種類の第4位階魔法に成功した。

そして、改めてパラケルへ深く頭を下げ感謝の言葉を述べる。

「パラケルさん、私はあなたに本当に感謝している…おそらくこの力だけでも、妹たちを守ることができると思う…」

 

2人の余りの善人発言と、敬愛するお父様が正しく評価されているという事実に、アルベドはとても上機嫌で微笑んでいる。

一方でタブラは、おおむね作戦がうまくいったという事と、新たに生まれた疑問に一人首をかしげる。

 

アルシェはともかく、レベル23のロバーデイクが第4位階魔法を習得できたという事は、この世界の者であってもレベルと位階の関係はユグドラシルと同じルールのような気がする。

とすると、フールーダはなぜレベル46にもかかわらず第7位階に到達していないのか?

そこで、先ほど確認したアルシェとロバーデイクの職業レベル構成を思い出した。

彼ら二人は、それぞれ、魔力系“のみ”、信仰系“のみ”の職業構成である。

その結果彼らは第4位階に、“ユグドラシルと同じように”到達した。

 

もしかしたらフールーダは魔力系以外の職業を取っていて、その結果魔力系のみで見るならば第7位階に至れていないのではないか。

この可能性に行き着いたタブラは、次回フールーダと会う時(会いたくはないが)、彼の職業レベル構成を確認してみようと考えた。

 

そして同時に一つの可能性が浮かんだ。

魔力系のみを取っているアルシェはギリ第5位階に至れるのではないか?ということだ。

 

目の前で頭を下げるアルシェの頭を上げさせ、夜空の元、もう一つの魔法について講義を始める。

 

「アルシェさん、あなたはとても頑張りましたので、もう一つ魔法をお教えしましょう。魔法の名前は龍雷(ドラゴン・ライトニング)。この魔法は雷撃を出す魔法で…」

 

一通り説明を終えたタブラは、その魔法の威力を考えて空に向かって打つことを提案する。

 

「それでは、頭の中でイメージがまとまりましたら、一度空に向けて撃ってみてください。まあ、多少高度な魔法なので、現時点では撃てなくてもそこまで気にしないように」

 

星空に向けて両手を伸ばすアルシェは、タブラから教わったイメージが形になるよう魔力をまとめ上げ、言葉とともに魔力を打ち出した。

龍雷(ドラゴン・ライトニング)!!」

 

 

夜空に輝く竜が昇って行った。

タブラは心の中で『ビンゴ』と呟く。

 

ここに、新たな第5位階魔法詠唱者が誕生した。

 

 





アルシェちゃんは、現時点でほぼ限界まで成長しました
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