オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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本編の下準備がもう少し続きます。

名前とか、種族とか、一部は妄想です。

モモンガさんが幸せそうな様子を描くのはとても楽しいです。


第0章 第2話 -モモンガさんはとっても幸せ-

モモンガはその日、とても幸せだった。

モモンガがリアルでの仕事を終えて、いつものように<ユグドラシル>にログインすると、最近はめっきりログインしてこなかった2人の姿が既にあったのだ。

 

「ウルベルトさん、ベルリバーさん!」

 

「ああ、モモンガさん」

「なんか久しぶりだな、モモンガさん」

 

全身に口がある巨体のベルリバーと、モノクルをかけたヤギの外見をしたウルベルトは、モモンガに気づくと、あいさつのアイコンを出しながら答えた。

 

「そうですね、でもここナザリックはみんなの家ですから、時間があるときに来ていただければいいんですよ!」

 

モモンガの喜色に満ちた様子(想像上ではあるが)に、二人は少しほっこりしながらも、先ほどまで話していたことを頭の中で反芻した。

 

 

 

一つ、モモンガさんおよび他のギルメンにはユグドラシルのサービスが2138年に終わることは告げない

 

……これは、無意味に友人に悲しい思いをさせないという意味もあるし、ハッキングによって得られた情報を伝えることは仲間を危険にさらす可能性があると感じたからだ。

 

一つ、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーにはYggdrasil Mobileのアプリダウンロードを可能な限り勧める

 

……富裕層がダウンロードをしているという事実が何の意味を持つかはわからないが、彼らが自分たちにとって不利になることはしないだろうという想定から。ただし、これは高額ではないが有料だし、最終的には各人の判断にゆだねる。

 

一つ、最近ログインしていないメンバーには可能な限り連絡を取りログインを促す

 

……これは来るサービス終了日にモモンガが孤独にならないように、また、他のゲームにモモンガを誘って、いざユグドラシルが終了したときにモモンガが行き場を失わないように、という判断から。

 

 

3つ目の件については、例えば弐式炎雷やぷにっと萌えは“アーベラージ”というゲームをやっているし、ペロロンチーノは(ジャンルはアレだが)ゲーマーで様々なゲームをやっている。彼らが自然にモモンガを誘えば良いし、そうでなくとも“ユグドラシルだけが全てでなはい”という思いをモモンガに持たせることができれば良し、という思いからだ。

 

ただしウルベルトは「いや、たっちのやつは俺からは連絡しませんからね。そこらへんはベルリバーさんやってくださいね」と念を押していたが。

 

 

そう言う訳で、最盛期とまではいかずとも、その日から徐々にギルドメンバーがログインすることが多くなっていった。

 

そうしたなかで、2136年9月、<Yggdrasil Mobile>は大型アップデートを行った。

それはキャラクターの保存機能の実装である。

 

これは過去に一度でも<Yggdrasil>でキャラクターを作成した場合に設定されるIDと、いくつかの個人情報により、一度退会した場合でも、退会時のキャラクターおよびアイテム情報を再度呼び出すことができるというもので、過去<Yggdrasil>で退会処理をしていた場合は、状況は“退会”ではなくステータスが“休会”となり、アプリ経由で課金すれば退会時の状況からやり直せるというものだ。

 

実際のところ、ギルド:アインズ・ウール・ゴウンの何名かは退会をしてしまっていたのだが、このアプリを通じて復帰できるようになった。

退会をしていたメンバーとして代表的なのは3人娘だ。

 

ぶくぶく茶釜、餡ころもっちもち、やまいこの女性プレーヤー3名は、まず、声優として有名なった茶釜がログインする時間が無くなり退会。

次に、教師として学年副主任になったやまいこが次に退会。

そして、女性一人となってしまった餡ころもっちもちも2人に続くように退会となっていた。

 

しかし、ウルベルト・ベルリバーの働きかけで、ログイン頻度が上がったぺロロンチーノが姉を説得。

(どうやったかは不明だが、茶釜復帰時はぺロロンチーノが姉からの質問に“はい”か“Yes”でしか答えていなかったので、何らかの犠牲を払ったと思われる)

 

続けて、「かぜっちが戻ったなら」と餡ころもっちもちが復帰。

 

そして最後に「二人ともいるなら」とやまいこも復帰した。

 

ただし、普通のOLで比較的時間がある餡ころもっちもちに比べて、茶釜・やまいこの両名はやはりリアルが忙しく、ごくまれにしかログインはしてこない。

 

 

***

 

 

『あああ~~!たのしいなぁ!!』

モモンガは心の中で叫ぶ。

 

久しぶりにベルリバーとウルベルトを玉座の間で見たあの日以来、多くのギルメンがログインしてくるようになった。

 

元無課金同盟のペロロンチーノやウルベルトとは、他のワールドに出張してPKしたり、冒険したり。

 

忙しさからログインはごく稀だが、憧れにして恩人の純銀聖騎士たっち・みーも訪れて他愛のない昔話をしたり、そのたっち・みーの復帰を聞きつけた、武人建御雷は最強装備の作製を再開し、それの素材集めと製造補佐で、あまのまひとつが呼び出されたり。

 

ク・ドゥ・グラースとホワイトブリムとヘロヘロは、メイドをもっと増やしたいとか言って、まだNPC作成ポイントを使い切っていないメンバーに詰め寄ったり。

 

3人娘が揃っているときは、お茶会をしたり、失言をしたペロロンチーノを折檻したり。

 

相変わらず、るし★ふぁーは距離感がバグった感じで話しかけてきて、時たまタブラ・スマラグディナと一緒に何やらコソコソと第八階層で話し合っていたり。

 

 

何人かは今も連絡も取れないメンバーもいるが、最盛期のギルド:アインズ・ウール・ゴウンが戻ってきたかのような黄金の日々にこの上ない幸せを感じていた。

 

そんな幸せな日々が、モモンガの気持ちを少し大きくさせたのか、彼は予想外の行動に出る。

 

 

***

 

 

タブラ・スマラグディナはモモンガからのメッセージに目を落とし、少し思案する。

 

『実は他ギルドの方とフリーチャットで繋がりまして、その方を一度招きたいなーなんて考えています。そもそも他ギルドの人をナザリックへ呼んでもいいかということも含めて、皆さんに聞きたいので、次の日曜日のAM10:00に参加できる方は円卓へ来ていただけませんか? モモンガ』

 

おそらく律儀なギルドマスターは、連絡がつかない人を含めて、全てのギルドメンバーへこのメッセージを送ったのだろう。

 

10か月ほど前、タブラはギルドメンバーのウルベルト・アレイン・オードルとナザリック第10階層の『最古図書館(アッシュールバニパル)』でばったり出くわした。

 

「あ、タブラさん。」

「ウルベルトさん、お久しぶりですね。」

 

なんてことはない短い挨拶の後、二人はしばらく話し込んだ。

ウルベルトはどうやら、モモンガの<Yggdrasil>への、のめりこみ具合を心配しているようで、それとなくログインして彼とともに時間を過ごしてはどうかということを伝えてきた。

 

『悪』に拘った男にしては随分と、、とも思ったが、彼の根っこの部分が善良であることはよく知っている。そういう意味では『正義』に拘るある男と似ているのだが、それを言うと話が進まなくなるので、素直に肯定した。

 

ウルベルトに言われるまでもなく、タブラはまだこの<Yggdrasil>を引退するつもりはなかったが、確かに最近はログイン頻度が減っていたことを思い出した。

 

決して好転することがないリアルでの暮らしに囚われていたというありふれた理由だが、それは目の前の男も同じで、むしろいつか聞いた話では、自分よりも状況は悪いだろう。

そんな『悪』の男にも心配されるあのガイコツは……と思ったが、よく考えたら自分も作成したNPCのうち1体はモモンガさんの嫁という裏設定をフレーバーテキストに織り込んでいる。

 

「まあ私もね、ウルベルトさんと同じで、モモンガさんのことはちょっと心配です。このギルドはもう新しいギルメンは増えないことになっていますし、メンバーも永遠に居るわけじゃない。それに、いつかはゲームのサービス終了の日が来る…そうなった時に彼が次を見ることができるか、今のところは分かりませんね」

 

そんなやりとりを思い出した。

 

 

そして、その10か月後、渦中のモモンガは果たして、新しい友をギルドの外に見つけるかもしれない。

「これは、叶えてあげたいですね。まあ万が一の危険がないか、それを見極めるのが私たちの役目ですかね…」

 

そうひとりごちると、モモンガ指定している日時に他の予定が入らないよう、スケジュールにメモを入れるのだった。

 

 

***

 

 

モモンガの『友達出来るかな大作戦』(命名:るし★ふぁー)は結果から言えば大成功だった。

 

相手は、ロールプレイギルドとして有名な『ネコさま大王国』の副ギルド長で、種族はモモンガと同じ『死の支配者(オーバーロード)』の“スルシャーナ”という人物とのことだった。

 

モモンガに届いたメッセージを聞く限りでは、彼は<Yggdrasil>で初めて『エクリプス』の職業レベルを開放したモモンガにあこがれていて、外見や職業などをモモンガに寄せているとのこと。

いうなればそれは『モモンガのロールプレイ』だ。

 

最初はモモンガ、というかギルド:アインズ・ウール・ゴウンは運営が用意したNPC集団と思っていたとのことだが、試しにフリーチャットでメッセージを送ったらモモンガから返信があり、NPCでないことを確信して何度かメッセージを送ってきたとのこと。

 

餡ころもっちもちがメッセージの内容を読んだ後、

「モモンガさん、この人、モモンガ推しだよ。ちゃんとファンサしてあげなきゃ」

と言った言葉があまりに的を得ていて、他のメンバーは笑いを押し殺しながらも賛同した。

 

そんな雰囲気の中、皆油断していたのかもしれない。

 

「じゃあ、ちょっくら見てきますか」

そう言うと、弐式炎雷がどこかへ出かけた。

 

余りの即行動に、誰も反応できなかったが、その2時間後、帰ってきた弐式炎雷は言った。

「『ネコさま王国』、ちょっと侵入してきたけどあれは噂通りロールプレイギルドだね。トラップもゆるゆるだし、戦闘向けって感じで作られてなかったよ」

 

ザ・ニンジャの余りの行動力にメンバーは呆れ、武人建御雷は小言を言う。

 

「弐式よぉ、お前戦闘向けだったらどうするつもりだったんだよ…」

「いや建やん、それでもちゃんと逃げてくるから大丈夫だって。俺、ニンジャだし」

 

「まぁ、頭おかしい弐式さんのおかげで裏も取れましたし、いいんじゃないですか」

ぷにっと萌えが言う。

実際、ぷにっと萌えは弐式が出発したのちの2時間で情報を集めて、『彼らは安全である』という同じ結論に至ってはいたのだが……

 

そう言う訳で、ナザリックに招かれたスルシャーナは、モモンガと並んでスクリーンショットを撮りまくり、『墳墓』エリアの適当な墓の前で二人で横になり『一発芸:朽ちた二つのガイコツ』などを披露し大いに盛り上がった。

 

スルシャーナは、雰囲気からおそらくモモンガよりかなり若く、善良な青年といった感じで、始終モモンガを尊敬している感じだった。

モモンガもリアルでは仕事上での後輩はいるが、ファンのような対応をされたことはないのでどうして良いか分からないという感じだったが、まんざらでもない様で、ギルドメンバーやナザリックの自慢をしていた。(もちろん、防衛上の問題になりそうな事はぼかして)

 

その様子を見たぶくぶく茶釜が、何となく、良からぬ妄想をしていたのは、彼女だけの秘密である。

かつてモモンガにプレゼントしたボイス入り腕時計を一度返してもらって、8:01に新たな隠しボイスを入れようか真剣に悩んだが、寸でのところで理性が勝ち、その案は却下となった。

 

 

「そういえば、モモンガさんはNPCとか作成されたんですか?僕のギルド、NPCは全てネコのアバターという縛りがあるので、“追随する霊的存在(フュルギャ)”っていうアンデット種族のネコ外装にしてるんです。名前は『ルファス』っていうんですが今度見に来てくださいね!」

 

スルシャーナが気軽に投げた爆弾にモモンガは一瞬フリーズした。

そう、彼の頭の中にはかつて自身が作成した黒歴史が呼び起されたからだ。

 

『大丈夫、落ち着け俺、フレーバーテキストを見せなければ、ただの黄色い服を着た『上位二重の影(グレータードッペルゲンガー)』だ。大丈夫、大丈夫。』

 

中身はただの人間で、精神の自動沈静化など起こるはずのない鈴木悟は、自分自身にそう言い聞かせたが、後日『ネコさま大王国』にお邪魔したとき、嬉々としてルファスのフレーバーテキストを見せてきたスルシャーナのおかげで、さらにその後日、モモンガは自身の黒歴史を会って1か月も経たない自身のファンの青年に公開するという精神的苦行を受けるのであった。

 

 

しかしながらこの騒動は、アインズ・ウール・ゴウンのギルメンに、ほっこり&爆笑をもたらしただけではなかった。

 

設定ダイスキ・タブラ・スマラグディナさんが、「いい機会だから、各NPCのフレーバーテキストをみんなで見てみません?」と言い出したのだ。

 

当然、黒歴史を抱えるモモンガは反対。

だが獣王メコン川の「いや、モモンガさん。あなたのNPCのテキストはもう見たから大丈夫ですよ。失うものもう無いと思うので楽しみましょうよ」

という言葉で撃沈。

 

その後の多数決でも、賛成22反対1で『みんなの黒歴史NPCフレーバーテキスト閲覧会』が開催される運びとなった。

 

モモンガの抵抗は無力だった。

 




楽しんでいただけているのならば幸いです。

引き続きよろしくお願いします。
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