オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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本編のための下準備回が続きます。

批判覚悟でアルベドさんの設定を変更しました。

今回で前日譚は終わらせたかったのですが、下準備があと2つほど残っているので、次回も前日譚が続きそうです。

それでは、よろしくお願いいたします。




第0章 第3話 -世界樹の終わりの始まり-

「「「「「「「「「なっっっっっっっっっが!!!!!」」」」」」」」」

 

円卓の間で、(タブラ・スマラグディナを除く)ギルメンの声が重なった。

アルベドの設定に対する皆の正直な反応である。

 

『黄金の瞳に漆黒の髪が麗しい傾国の美女である。』

から始まり、スクロールが進んでいくにつれて皆の目が滑る滑る。

 

『非道で狡猾』

の辺りでガーネットが「えっ?ヤバい奴じゃん…」と呟いたが、その後にも長く続くのを見て白目になっていた。

 

全表示が終わると、ぬーぼーが「このさ、『夢見る国の化け物』ってアレですかね。なんか…なんだっけ、神話の。この設定、クラスとかに反映してるの?」

ぬーぼー(ナザリックの目)”は細部までちゃんと読んでいた。流石である。

 

「いいえ、別にそういうことはありませんね。そうだったら楽しかったんですが、防御力特化型の戦士として割り振ったらレベル100まで行っちゃいました。もうあと50くらい欲しかったですね」

とタブラは嬉しそうに答える。

 

続けて死獣天朱雀が口を開く。

「アルベドってことで純白のドレスってことなんだね。でもさ、タブラ君、彼女の生い立ちの部分、これは再結晶のイメージではない気がするな。この内容ならば名前は“キトリニタス”のが良かったのではないかい?」

 

すかさずタブラが答える。

「いえ先生、そこはギャップですよ。彼女の設定は全てにおいて相反する要素を同時に含んでいるんです。だから白化でありながら生まれは浄化ではなく不浄化、完璧な淑女でありながらビ●チという……」

 

そこまで言ったタブラの声が小さくなって急に止まった。

なぜならそのタブラの視線の先には、ピンクの肉棒が親指を下にするアイコンを出していたからである。

 

ちなみに、この場にペロロンチーノはいない。

トップバッターとして、自身が作成したNPCである『シャルティア・ブラットフォールン』の説明を嬉々として話し出したが、“死体愛好家”、“両刀使い”の辺りから、茶釜の機嫌が悪くなり、“貧乳”の辺りで一度、ペロロンチーノとともにログアウトしていった。

 

その後、誰も何も言えない時間が5分続いたのち、茶釜とペロロンチーノは再ログインしてきたが、それ以降、ペロロンチーノは一度も喋っていないし、動いてすらいない。だから彼はこの場にいないのと同じである。

 

 

そんなことがあった後に“ビ●チ”である。

 

「タブラさん」

妙に澄んだ、茶釜の声が響く。

 

「はい」

タブラは、それ以外の言葉を言えるはずもない。

 

「良く、ないんじゃないかな」

 

「はい」

 

 

 

沈黙。

こわい。

 

 

 

しかし沈黙を破ったのは意外な人物だった。

 

「タブラさん。このビ●チって、よく言ってるギャップ萌えってヤツでしょ」

るし★ふぁーである。

流石空気読めない子、皆そう思ったし、茶釜が切れないか鳥が震えている。

 

「あ、うん、そう、です」

 

「アルベドって種族は“女淫魔(サキュバス)”だったよね。サキュバスがビ●チって普通じゃない?これ、ギャップある?」

 

「あ」

タブラから素の声が漏れた。

 

「なんか内容長くて分かんないけど、淑女のままのほうがギャップない?」

 

「待って、ちょっと待って…そうすると…そうか…だったらいっそ……でもカルマ値が…」

タブラは普段とは違う素の口調で長考モードに入ってしまった。

そして、茶釜のほうを見て早口で言う。

 

「ごめんなさい茶釜さん、この設定は変えます。変えるからちょっと時間をください。ニグレドも変えます。ちょっと待っててください。すみませんでした。」

 

そしてそのまま『最古図書館(アッシュールバニパル)』へ速やかに消えていった。

 

余りに逃げの速さ、というか自分の世界に入り込んだタブラの様子に、茶釜は毒気を抜かれたように“ヤレヤレ”のアイコンを出していた。

 

少なくとも今日、タブラに対する3人娘の好感度は-5となったが、タブラは特に気にしてはいなかったようだった。

 

その後、主要なキャラのテキストを皆が見終わったのは、リアル時間で夜の12時を過ぎていたのだった。

 

 

 

 

翌日、改めて円卓の間に集まったギルメンの中で、ぷにっと萌えが言った。

「昨日改めて皆のNPC見て思ったんですが、ちょっと偏りすぎですね」

 

モモンガも同じ感想だったが、それをうまく言葉にできなかったため、ぷにっと萌えの言葉の続きを待つ。

 

「つまりですね、『うわっ…うちのNPCカルマ値低すぎ?!』ってやつですよ」

 

そのぷにっと萌えの言葉に、“悪”に拘るウルベルトが反論する。

「いや、ぷにっとさん、うちのギルドは悪のロールプレイですよ。なんか一部そうじゃない奴もいるようですが、NPCが悪寄りなのは自然でしょう」

 

暗に否定された“そうじゃない奴”である純銀の聖騎士は、何か言いたげに一瞬体を動かしたが、とりあえず二人の会話に入るのは我慢したようだ。

その様子を横目で確認したぷにっと萌えは続ける。

 

「まあ、その通りで、そこは否定しないのですが、これは単純に戦術の問題です。悪のロールプレイと有名なギルドに攻め込むとしましょう。その場合攻め込む側は、当然カルマ値が悪の敵に対して有効な手段を用意してくるでしょう?」

 

「まあ…確かにな」

 

「それに悪一色の敵に対して有効なアイテムとか魔法あるでしょ?」

 

皆の頭の中に一つのワールドアイテムが浮かんだ。

今まで、皆、誰もがその可能性を考えていたが、そのアイテムが“20”の一つで、確率から言ってもそれを使われることはないと、どこか正常性バイアスのようなものが働いていて、考えないようにしていたもの。

 

ワールドアイテム:光輪の善神(アフラマズダー)

 

 

ぷにっと萌えは続ける。

「先日、ギルマスのおかげで友好関係を結べたギルド『ネコさま王国』ですが、彼らも少なくとも2つ、ワールドアイテムを持っていると言っていました。特に防御として利用していないからということで教えていただいた『豊穣の月(ナンナ)』。あれは彼らの拠点から動かせないようでしたのでウチの脅威となることはないですが、使い方次第ではかなり恐ろしいものです」 

 

豊穣の月(ナンナ)』の入手条件はギルド:アインズ・ウール・ゴウンの『諸王の玉座』に類似する条件で入手できるものであった。

彼らは現在の拠点である城を、初見で攻略したことにより、城の神殿部と言われる領域に存在する神という設定でWI『豊穣の月(ナンナ)』は存在することとなった。

 

その効果は、特定の下位種族の大量永続自動召喚でさらに召喚された者は特定の追加効果を持つ。

種族の自動召喚期間は30日か、180日か、360日のいずれかから選択でき、期間が長いほど追加効果の付与可能数が増える。

設定した自動召喚期間が来るまで、新たな召喚種族を選ぶことはできない。

 

彼らはネコのロールプレイをしたいがために、迷わず“ネコ”を選択。

“ネコ”は動物扱いで攻撃力はほとんど持たないが、城の中にはとんでもない数のネコがあふれ、透明化・監視・バフ・デバフなど様々な効果を持つ。

 

実を言うと、先日弐式が忍び込んだことは、即『ネコさま王国』のギルメンにばれていたのだが、wikiに載るほど有名なAOGのニンジャは超有名で、スルーされていたのだ。

「あ、スルさんのお客さんが来た」と思われたのだ。

 

仮にこのWIがナザリックにあった場合、使い方は無限大である。

 

 

「つまり私が言いたいのは、このゲームのクソ運営の性格を考えると、我々の想像もできないようなアイテムや魔法がまだまだあって、我々のギルドが簡単に滅びる可能性があるということです。以前の1500人の時は幸運にもそういうことは無かったですが、結局NPCは全てやられて第8階層まで侵入を許しました。この機会に我々のさらなる強化を図ってもいいのでは、とそう思った次第です」

 

ここでモモンガがギルマス(議長)として意見を引き継ぐ。

 

「…というわけで、ぷにっと萌えさんからギルド:アインズ・ウール・ゴウンの強化という案が出ました。ぷにっと萌えさん、多数決の前に、具体的に何をするかという案があれば仰っていただけますか?」

 

「ええ、そうですね。まず考えていることが守りと攻めの2つあります。一つ、守りのほうは、高レベルNPCの設定見直し。もう一つ、攻めのほうは更なるワールドアイテムの獲得です」

 

一同から「おお…」と声が上がった。

こういう時、すぐに意見を言うタイプの方の賢いメンバーであるタブラは、まだ最古図書館から出てきていない。

そのため、意見を言うものはなく、一旦はぷにっと萌えの説明に耳を傾ける。

 

「例えばですがうちにはレベル100NPCが9体います。あ、8階層のあれらは除いてですよ。そのうち前線に出ないのはオーレオール・オメガ、セバス・チャン、そして宝物庫のパンドラズ・アクターです。この3体を除いた、残る6人のNPCのうち、カルマ値が善なのはコキュートスのみ。茶釜さんとこの双子は中立寄りの悪。あとは極悪です」

 

ぷにっと萌えは続ける。

「で、結局何が言いたいかというと、この極悪の3人のうち一人を善寄りにして、それ以外の80レベル以下のNPCモンスターのうち一部を同じく善寄りにしてはいかがということです」

 

ウルベルトが手を挙げた。

しかし、ぷにっと萌えはそれを予知していたようにそれを一旦待ってくれというジェスチャーで抑え、すぐに答える。

「そして、それはアルベドが最適かと思うのです。」

 

ぷにっと萌えの意見はつまり、設定魔が自身のNPCの新しい設定を考えている今のうち、彼にこの話をして、新しいアルベドの設定を善寄りにすることで、全体のバランスをとるということだった。

 

自身の“悪”の結晶でもある“デミウルゴス”を何としても悪のままにしておきたかったウルベルトは少しホッとして、この意見に賛成した。

そして、その後の多数決でも特に反対意見はなく、タブラへの説得(というか説明)は、言い出しっぺのぷにっと萌えがすることでこの件は終息した。

 

 

「続けてワールドアイテムですが」

 

ぷにっと萌えが続ける。

「これは残念ながら今すぐできることはないですが、ぬーぼーさん、弐式さん、ぺロロンチーノさんみたいな探索や速さに自信がある方には未知の捜索を、私やタブラさん、ベルリバーさんのような内勤組は調査を、そしてモモンガさんは、せっかく友好関係を築けた『ネコさま王国』の方と連絡を取って何か情報がないか探ってみるというのはどうですかね」

 

これについても特に反対意見はなかった。

それぞれが、できることをするという単純なものだ。

そして、ウルベルト・ベルリバーがぷにっと萌えにもお願いした、モモンガが友人を作るということにも貢献できる話だ。

 

ウルベルト・ベルリバーも心の中で、『流石軍師だけあるな…』と呟くのだった。

 

 

 

 

***

 

 

そんな日常は、ある日突然終わる。

それはリアルであってもDMMO RPGであっても同じ。

 

2137年5月31日、20時間の長時間メンテナンスの後の、6月1日のこと。

メンテナンス明けにログインした全てのプレーヤーが受け取ったのは以下のタイトルがついた運営からのメールであった。

 

<2138年6月30日 Yggdrasilサービス終了のお知らせ>

 

 

***

 

 

 

タブラの28時間に及ぶ格闘の末、再設定されたアルベドは以下の通り。

 

 

ナザリック地下大墳墓の守護者達を統括する最高位の悪魔(サキュバス)。

黄金の瞳に漆黒の髪が麗しい傾国の美女である。

気高く、大墳墓に侵入してきた者達には圧倒的上位者として振舞う。

たとえ力や知恵を備えた勇者であろうとそれが変わることはない。

それは自身に与えられた地位の重みを知り、誇りを持っていることの証左である。

彼女の実力は折り紙つきである。戦闘力ではシャルティアに、智謀策謀ではデミウルゴスと、個別の点では及ばない部分があるものの全体的には極めて高いレベルに至っている。

内政能力、実務能力、編み物や掃除といった家事にも長けた万能家(ゼネラリスト)である。

本棚の並びに拘るなど几帳面な性格がうかがわれるが、自他をはっきり分ける性分で、掃除も自分以外に要求するということはない。綺麗好きであるが同時に収集癖があり、コレクションしている物品を置いたスペースは乱雑になりがちである。

家事関連も合わせて自身を女性的に見せるための演技なのではないかとするむきもあるが、それを確認しようという者はいない。

他者に対して優美な微笑を絶やすことなく、淑女のような語り口は、少なからぬ者に天使か女神だろうか、と思わせる。

その見方は真実をついているとも言えるが、真に彼女が抱える苦悩はその生まれを考えれば複雑なものである。

彼女はもともと夢見る国の化け物として生を受ける筈の失敗作であった。

性格は捻じ曲がり、残酷で、他者に苦痛と絶望を与える事を悦びとし、暴虐を行うためには手段を選ばない非道で狡猾な精神を持っていた。

しかしそれを不憫に思った、生と死を司る神により遣わされた高潔な最高位の天使をその身に宿したことで現在の精神と姿を手に入れるに至った。

その結果、彼女の本性は相反する二つのものを抱えることとなり、そのことに苦悩しがらも、守護者の長という立場、それにより彼女という存在が注視されているという事実、そして自身を憐れんだ神への愛により自身の正気を支えているのである。

もし彼女の心の支えが失われ、化け物の半身が身を擡げることがあれば、ナザリックの外で生きる者たちは、地上の暴君と呼ばれた女王や女帝たちの暴虐は所詮人間のやることでしかなかったと知ることになるだろう。

常に浮かべる微笑は一種のポーカーフェイスであり、他の感情を顔に表すこともある。

そして、どんな愚者でも、その相手が敵であろうと、彼女が淑女のような態度を崩すことはない。見た目だけならまさに非の打ち所の無い美女である。

ちなみに淫魔のくせに純情一途で、騎獣はバイコーンに扮したユニコーンである。

 

カルマ値:+150

 





タブラさんの気持ちはわかるけど、全てのNPCにこのレベルで設定を入れる労力は私にはないです。。
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