オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
そもそも大厄災でオリジナル詠唱する人は、絶対こういう楽しみ方すると思うんですよね…
色々考えた末、パルメーラは『漆黒の剣』にある程度自分の強さを開示することに決めた。
自身の強さを理解してもらえれば、パワーレベリングを受け入れてくれるのではと考えたのである。
そこで意を決して、言葉を選びながら、『漆黒の剣』に説明する。
「あー…その、なんだ。気を悪くしないで聞いてほしいんだが…」
『漆黒の剣』の面々は頭の上に“?”を乗せてパルメーラを見る。
「俺は説明した通りかなり遠方から来たんだが、この国の人間のレベル…難度というのか?とにかく“強さ”は、俺の元居た場所と比べるとかなり低い」
『漆黒の剣』はさらに疑問の表情になる。
「例えばなんだが、さっき話に出てきた“ギガントバジリスク”だが、俺の国ではザコ扱いだ。当然俺も何の問題もなく倒せる」
『漆黒の剣』の面々は明らかに『この人何を言い出したんだ?』という表情になったが、善良な彼らはすぐに表情を改め、『とりあえず完全に疑うのは良くない』という考えになった。
ニニャだけは『あ…この人また言い出した』という感想だったが。
「それで思ったんだが、もしよければ俺がレベルアップ…いや強くなる方法を教えるから、皆その方法を試してみないか?」
「あ、えーと確かに強くなる方法を教えてもらえるのは助かります。ただ、これからリ・ウロヴァールで任務が始まりますし、その任務の後に時間あれば教えてもらえますか?」
ペテルがやんわりと『間に合ってます』と言う。
ニニャが、どんどんいたたまれない気持ちになっていく。
ウルベルトも『まあ、そんなすぐには信じられないよな』と思っていたので、一つの提案をする。
「いきなりこんなこと言われても信じられんと言うのも良く分かるから、次にモンスターに遭遇したら俺だけに任せてくれないか?そこで強さを示すからそこで判断してほしい。それと、強くなるためには敵を倒すという事は避けては通れないから、任務中に行った方がいい。やり方は俺が考えるから、もし俺の話を信じてくれるならば、モンスターの倒し方を俺が言うとおりにしてくれ」
パルメーラのその言葉に、『漆黒の剣』の一同は、とりあえず次のモンスターとの遭遇までこの話は保留しようという事になった。
しかし現実は無情である。
それなりに、ちゃんと統治をしているウロヴァーナ辺境伯の領土は街道も比較的しっかり整備されていてモンスターの被害は少なく、その後モンスターや野盗との遭遇は無く、リ・ウロヴァールに到着してしまった。
『漆黒の剣』のパルメーラを見る優しい表情に、ウルベルトは少し泣きたい気持ちになってきた。
***
リ・ウロヴァールに到着したのち現地の冒険者組合に向かうと、既に到着した別の冒険者チームでかなり混雑していた。
現地の組合長は、チームの階級ごとに仕事を割り振り、すでに仕事与えられた者たちは行先へ向かって順次出発している。
ここで改めて今回の依頼内容が説明された。
曰く、最近リ・ウロヴァールの東側に位置するアゼルリシア山脈でモンスターどうしの覇権争いが活発化しており、その影響で一部のモンスターが山を下りて人里を襲う頻度が増しているという。
数か月前に王国に現在2つしかないアダマンタイトチームのうちの一つである『朱の雫』がその覇権争いの元を断つためにアゼルリシア山脈入りをしたが、様々なモンスターの種族が入り乱れて戦っており、特に
リ・ウロヴァールという場所は王国でも北東の端であるため、冒険者チームは集まりつつあるとはいえ、このタイミングで到着した『漆黒の剣』は最も早く参加するグループの一つとなった。
「はい、じゃあ次は
「はい、わかりました」
「あなたはリーダーのペテルさんですね。それでは組合からの補給物資をお渡します……あれ、あの方はプレートが
「あ、はい。彼は後から加わったメンバーなので彼個人のプレートは
「そうですか?…まあ、無理なさらないでください。それではとりあえず10日間の任務よろしくお願いいたします。」
「はい、行ってきます」
受付嬢は一人だけ
『漆黒の剣』は本来はエ・ランテル所属で、パルメーラはリ・アレクサンデルで登録をしたので、本来はチーム編入は少々面倒な手続きがいるのだが、ここはそのどちらからも遠く、それら2都市からの情報は伝わっていなかったし、この人手不足に、こう言っては申し訳ないが
そう言う訳で、5人は指定された街道へ出発していった。
さて、それではなぜパルメーラが『漆黒の剣』に加入するような形になったかというと、これはニニャからの意見による。
パルメーラは『次のモンスター対応で実力を示す』と言ったが、残念ながらその“次”が訪れなかった。
その結果、パルメーラの実力は不明の状態でパワーレベリングの件も保留になっている。
しかし、そもそもパルメーラの言っていることは、ちょっと盛っていると考えているニニャは、もし仮に彼をこの任務において一人で放り出した場合、実力的に近い他の
浮くだけならまだしも、喧嘩になったらことなので、だったらある程度事情を知っている『漆黒の剣』で面倒を見たほうがいいと他のメンバーにこっそりと言ったのだ。
なおペテル辺りは、同じ戦士職であるので、パルメーラはかなり強いような雰囲気を感じ取っており、彼が言っていることもあながち嘘ではないのでは?と考えていたのだが、彼が他のチームと揉めそうというのは同意だったので、ニニャの意見を採用することにした。
実際のところ、ニニャも含め、『漆黒の剣』はパルメーラのことをとてもユーモアで面白い人だと好意的に見ていたというのもあり、嘘か誠か分からないが同じ“漆黒の剣”を扱う戦士である彼を、本当にチームに加えてもいいと考えていたのである。
そんな風に、好意的かつ暖かく見られているとは露知らず、ウルベルト的には早くモンスターを派手にぶっ殺してパワーレベリングに移りたいと思っていたし、チームメンバー特にニニャからの、何とも言えない視線には気づいていたので早く汚名を晴らしたいという気持ちの焦りもあった。
そんな中で開始した任務のまさかの初日、運悪く(ウルベルト的には運よく)、山脈から降りてきたハルピュイアの群れと遭遇してしまう。
最初は何かの鳥かと思ったメンバーだったが、最初にルクルットが真っ青になり、次にニニャ、続けてペテルとダインが言葉を失った。
伝承によればアゼルリシア山脈のハルピュイアは山脈の上空にいるモンスターで、難度は50~60。そのうえ少なく見積もっても20匹はいる。数も加味するとアダマンタイト級が対処してもおかしくないモンスターの集団である。
確かに見晴らしがよく、遠くまで見通すことができる場所であるため、こちらも早めに発見出来たが、それはあちらも同じこと。しかも奴らは高速で飛行するモンスターであるため、全力で逃げても追いつかれる可能性が非常に高い。
『漆黒の剣』の4人の脳裏に“死”の文字がはっきりと見えた。
その瞬間、黒い影が『漆黒の剣』の前に立つ。
「やっと、俺の出番が来たな」
『漆黒の剣』が何かを言おうとしたが、その瞬間パルメーラの左手から黒い陽炎のようなものが立ち上がる。
左手の甲には、赤黒く浮き上がる悪魔の紋章。
これは、
ペテルは息を飲む。
同じ戦士職の彼は、少なくとも他の3人よりは正確に、パルメーラの戦士としての実力が跳ね上がったことを感じた。
「スキル:ジュデッカの凍結」
パルメーラがそう呟いた瞬間、全てのハルピュイアが空中でその動きを凍結させる。
パルメーラはいつの間にか、腰の黒剣を抜いている。
剣からは黒い陽炎が上がっている。
パルメーラがその剣をゆっくりと地面に水平になるまで横向きに剣を持ち上げた。
次の瞬間、陽炎が一瞬だけ揺らいだように見えた。
そしてパルメーラは剣をくるっと回すとそのまま鞘にしまう。
鞘に刀身が完全に隠れた瞬間、パルメーラは呟いた。
「
次の瞬間、全てのハルピュイアは体に十字の線が入り、4つに分かれてその死骸は地面に落ちた。
ハルピュイアは断末魔の悲鳴も上げることは無かった。
自分たちが斬られたことも死んだことも気づいていないのだろう。
ちなみに、刀身の黒い陽炎は課金エフェクトであり、“暗黒連撃”は即興で勝手につけた技名である。
今までの自身の評価を覆すために、大人げなく100レベルの全力の速度で斬撃を何回も繰り出しただけのことである。
『漆黒の剣』が5本目の魔剣の存在と英雄の再来を完全に信じた瞬間だった。
特にほとんど疑ってかかっていたニニャの衝撃はすさまじく、体を熱いものが通り抜けたような感覚で、腰が抜け、その場に座り込んでしまったほどだった。
ウルベルト様的には加減がイマイチわからないので、速度だけは結構本気で後はこんもんかな的な感じでした。