オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

年が明けたのでもう一話いっときます


第2章 第9話 -パワーレベリング・不幸な出会い-

 

通された会議室には、先ほどパルメーラさんが『総司令』と呼んだドワーフの他、三人のドワーフがいた。彼らは自分自身をそれぞれ『事務総長』、『商人会議長』および『洞窟鉱山長』と説明した。

 

『総司令』のドワーフが口を開く。

 

 

「さて、本来ここにいる4人を含めた合計8人の摂政会の代表がおります。正直申しますと、あなた方が本当に来るとは思っていなかったので、残りの4人は別の用事で今は集まれなかったのです」

 

「いや、それは構わない。こちらも昨日の今日だからな。それにしても王的な者はいないという事か?」

 

「はい…かつては王が居たのですが、現在は居りません。私たち8人が各部門の代表として意見を出し合って国のことを決めています」

 

「ほう…支配者はおらず合議制というやつか…」

 

 

 

パルメーラさんは、なぜか少し機嫌がよさそうに頷いていたが、僕はとりあえず伝え聞いていた知識を話すことにした。

 

「えっと…僕はこのチームの魔法詠唱者(マジック・キャスター)のニニャと言います。僕が聞いている話では、200年くらい前までは“ルーン工王”という王族がいたとか。ですがルーン工王は魔人討伐のために旅に出てそのまま戻らなかったと…この話は事実ですか?」

 

「なんと…あなたは我々のことをよくご存じの様だ。人間にも普通に伝わっている話なのですかな?」

 

「いや…どうでしょう?僕はこの話はおとぎ話のような形で聞きました。皆は?」

 

そう言って僕が『漆黒の剣』の他のメンバーを見遣ると、皆一様に首を横に振った。

 

「なるほど…まあ、おおむねその通りです。我々の最後の王が去って以来、私たちは摂政会によって国を運営しております。そして…ルーン技術をはじめとした国の技術は徐々に失われ、守りの力も落ちてきているのが現状」

 

「そして、あのクアゴアと言ったか。あいつらの侵攻を許しているという訳だな」

 

「はい、仰る通りかと。昨日は時間が無く詳細は説明できませんでしたが、奴らは近年までそこまでの脅威ではなかったのですが、どうやら強大な王が生まれてからは奴らの侵攻は強さを増し、南の都フェオ・ライゾは奴らに占拠されました。西の都、北の元王都は霜の竜(フロスト・ドラゴン)により崩壊、占拠され、残るはここフェオ・ベルカナのみ、ここに身を寄せて住んでいる状況です。」

 

「王…」

 

パルメーラさんが呟く。

 

『漆黒の剣』としても聞き捨てならない言葉があった。

考えたことは同じで、今度はペテルが話す。

 

「失礼、私はこのチームのリーダーを務めるペテルと言うんだが、今霜の竜(フロスト・ドラゴン)に都が占拠されていると聞いた。それはつまり、あなた達は霜の竜(フロスト・ドラゴン)と敵対しているという事だろうか?」

 

「いや、ドラゴンとは直接敵対はしておりません。ただ、クアゴアの王がうまく霜の竜(フロスト・ドラゴン)に取り入り、我々のかつての王都にある財宝目当てに、霜の竜(フロスト・ドラゴン)が住み着くよう仕向けたと考えられます」

 

「ドラゴンの威を借る王族か…」

 

またパルメーラさんが呟いた。そして言葉を続ける。

 

「そもそもなぜ、クアゴアはあんたたちと敵対しているんだ?」

 

「ああ、それについてはワシが説明しよう」

『洞窟鉱山長』と名乗った、やや目つきの鋭いドワーフが口を開く。

 

「奴らは鉱石を食料とする。だから鉱石を発掘し様々な技術に利用するワシらとは資源の奪い合いをしとるんじゃ。そして奴らは食った鉱石によって体毛の色が変わり、希少な鉱物を食った個体は非常に硬くなる性質がある。体毛が青や赤の者はワシらの技術ではなかなか倒せないのが現状じゃ」

 

「成程な…硬いと言ったが、例えばこの都市に入るときに通過した門。あれはアダマンタイトか何かだと思うが、あれより硬いか?」

 

今度は再び『総司令』が答える。

「いや、さすがにアダマンタイトより硬い個体は居ないと思うが、それでも金属そのものへの耐性があって金属の武器による攻撃は通りづらい」

 

「ちなみにあの門はアダマンタイトとオリハルコンを合わせたものじゃ。あれを壊せるやつは居ないと思うが、何らかの理由であの門を越えられると、もうワシらは守る手段がないかもしれんな」

『洞窟鉱山長』が付け加えた。

 

 

そこでパルメーラさんが再び口を開く。

 

「状況はだいたい分かった。それで、だ。俺たちがそのフェオ・ライゾにいるクアゴアの連中や、場合によってはクアゴアの王なんかを倒しても問題ないか?」

 

僕を含めた『漆黒の剣』の4人はギョッとして目を見開いた。

もしやと思っていたがやはりそうか…という感想だった。

ペテルが何かを言う前に、『総司令』が口を開く。

 

「いや、問題も何も…それが可能ならば私たちは願ったり叶ったりなのだが…失礼だがあなた達5人でそのようなことが可能なのだろうか?」

 

「やってみなければ分からないが、(少なくとも俺一人で)可能かどうかで言えばおそらく可能だな」

 

 

4人のドワーフは『おお!』と声を上げた。

しかし『商人会議長』が疑問を投げかける。

 

「いや、そのーそれが可能なら誠にありがたいのだが、あんたたちにとってそれをすることの意味は何なんじゃろうか…わしらに差し出せるものは正直あまりないのだ。昔は人間との交易も行っていたのだが、都市がいくつか使えなくなってからはめっきりと交易もなくなって、正直あなた達に渡せるものが無いというか…」

 

「んー…俺たちとしてはレベルアッ…いや、そうだな。ニニャ、俺たちにとって利益になること、なんかあるか?」

 

「はぁ?!急に僕に振られても……そうですね…例えばですがルーン工王が残した武器とか財宝とか…あとは人間との交易を再開して鉱石とかを融通してもらうとかですかね」

 

「だ、そうだ。そういうの可能か?」

 

 

ドワーフたちは少し考える体制に入ったが、最終的に『事務総長』が言った。

「ワシ個人としては、クアゴアどもを倒してもらえるならばそれぐらい…と思うが、一応決定は摂政会の合議が必要だの。どうだろう、今日はここに泊まっていただいて、明日までに摂政会で話し合ってお答えするというのは」

 

 

パルメーラが目線でペテルに『どう?』投げかけた。

 

ペテルは苦笑いすると「ではそれでお願いします」と答えたのだった。

 

 

***

 

 

案内された宿は砦の中にあり、想像と違って人間サイズにも対応している天井の高さだった。

ドワーフたちが部屋を出て、『漆黒の剣』だけになると、皆のジト目がパルメーラに集まる。

 

 

「じゃあ、説明するな」

 

「当たり前です。何なんですかこの状況」

 

「まぁまぁ、ニニャ。なんていうか、もう今に始まったことじゃないし、とりあえずパルメーラさんの話を聞いてから考えよう」

 

「で、あるな」

 

「さんせい…だが悪いんだけど、横になったまま聞いていいか?まだちょっと気持ち悪いんだ」

 

 

 

パルメーラの話は、案の定、想像の斜め上を言っていた。

 

曰く、昨日宿に泊まった夜、パルメーラは一人で宿を抜け出してこのアゼルリシア山脈まで全速力で出かけ、この洞窟を発見したという。

その中で、“クアゴア”の群れを発見。

彼らは言葉は通じるものの敵対的だった為、いきなり攻撃されて反撃し倒してしまったという。

 

その後、ドワーフの集落も見つけ、クアゴアと敵対してるという事を確認。

クアゴアが『漆黒の剣』のれべるあっぷに適していると判断して、現在に至るとのこと。

 

色々と突っ込みたいこととかあったが、規格外の存在であることは既に承知済みなので、『漆黒の剣』はとりあえず押し黙った。

 

その様子を見て、パルメーラは申し訳なさそうに『漆黒の剣』に質問をしてきた。

 

 

「その、勝手に決めてすまない。確認をしておきたいことがあるんだが、クアゴアは亜人種に見えたんだが、あいつらを倒すことは冒険者的に問題ないのか?」

 

一同頭の上に“?”が出た。

 

詳しく聞いてみると、山小人(ドワーフ)は人間種、クアゴアは見たところ亜人種。

パルメーラさんの故郷では、人間種、亜人種、異形種は共に暮らしている環境で、敵対した場合は種族関係なく戦うという状況だったため、少なくとも人間種の山小人(ドワーフ)は戦わない方が良いと考えたが、亜人種に対するこの国の考え方がイマイチわからなかったというのだ。

 

彼的には攻撃してきたので敵対と考えたが、その考えは一般的か、と言うのだ。

 

余りの常識のずれに、ニニャは改めて大きなため息をついた。

 

 

「えーとですね…まず、亜人種が人間に敵対してきた場合、それは敵と考えて反撃するのは問題ないです。ただ、“クアゴア”はこのアゼルリシア山脈以外では見かけないですし、冒険者組合が討伐対象にしているという話は聞いたことが無いので、討伐による報酬は恐らく無いです。だからいくら倒しても昇級の評価にはならないと思います」

 

「そうか!じゃあ倒してしまっても問題ないな」

 

「ええ、まあ。でもパルメーラさん、なんで僕たちが呆れたような顔をしているか分かりますか?」

 

「え?!…えっと、そうだな。勝手に決めたからか?」

 

「それもそうです!でも、パルメーラさんの説明から考えると、何かの勘違いで山小人(ドワーフ)の方が攻撃してきてた場合、倒す対象が山小人(ドワーフ)になってたでしょ?!山小人(ドワーフ)とか森妖精(エルフ)の人たちは交易もしてる友好種族ですから、そんなことしたら大問題ですからね!!あと、クアゴアっていうのを当たり前に倒せるみたいに言ってますけど、さっきの山小人(ドワーフ)さんの話では金属の武器が効かないって言ってましたよ?僕らの武器、基本的に金属しかないから、攻撃できるの魔法使える僕とダインだけになりますよ?!その辺考えてます?!」

 

余りの事にまくしたてるニニャに気おされるでもなく、パルメーラはあっけらかんと、とんでもないことを言った。

 

「あ、武器に関しては大丈夫だ。渡した武器は全部アダマンタイトくらいだったら簡単に切れるし、普通に武器で戦えばダメージ通ると思うぞ」

 

 

なんかもう何も言えなくなった『漆黒の剣』一同は、ともかく今日は休んで明日に備えることにした。

 

 

ちなみにウルベルトはだいぶぼやかして説明したが真相はもう少し斜め上だ。

 

昨日、完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)状態で、この洞窟内を飛び回り、まとまった数が居てレベル的に『漆黒の剣』を守りつつ倒させられると思ったのは、“クアゴア”と“ドワーフ”の2種族だった。

ドワーフはユグドラシルにも居たのですぐに判別がついたが、“クアゴア”は初見だったのでしばらく不可知化状態のまま観察していた。

 

すると彼らの会話からどうやらドワーフと争っているらしいことは理解できたので、一旦不可知化を解き、人化した状態で、とりあえず話しかけてみた。

すると『何だ貴様は!さてはドワーフどもが雇った人間か?!』とかいって襲い掛かってきたのでサクッと殺し死体を確保。

 

次にドワーフも一旦不可知化で観察して、やはりその後、人化して門の外から話しかけた。

その結果、ドワーフは比較的友好的で、かつクアゴアの死体を見せたら、少なくとも敵を倒してくれる存在だと信じてくれたので、『じゃあ明日チームメンバーを連れてもう一度来るからクアゴア対策についてその時話す』とだけ言って帰ってきたのだ。

 

実際のところ、総司令官は『なんか夢だったのかな?』という気持ちと『でもクアゴアの死体が確かにある』という事実で混乱していて、『夢ならば明日、あの人間が来ることはないだろう』ととりあえず深く考えないことにしたのだ。彼の中では8:2で夢であるという方が優勢だったのだが。

 

声をかける前に各陣営を不可知化状態で観察しているときは当然山羊の悪魔状態だったので、普通に会話するクアゴアやドワーフの横に、顎に指をかけて興味深げに観察する黒山羊の悪魔がいるというとんでもないホラーな状況だったのだ。

 

ウルベルトは、現在はもはや外面とかを気にしていないのであまり気づいていないが、この状況をギルメンが見ていたら間違いなくスクショにとって総突っ込みが入っただろうし、タブラ辺りは、『不可知化を一瞬解くというのを何回かやってくれませんか?』と要望を出していただろう。

 

 

その夜、小脇に抱えられていてかなり乗り物酔い状態だったペテルとルクルットは速やかに眠りに入り、そこまで乗り物酔いしておらず意外といける口だったダインはドワーフたちと楽しく飲み、ニニャは布団の中で丸まりながら、新しい『漆黒の剣』のメンバーのことを怒りと呆れと良く分からない複雑な感情で考え続けていた。

 

パルメーラは当然抜け出して、フェオ・ライゾの地形を観察し、どうやって『漆黒の剣』に経験値を稼がせるか考えていた。

 

そして翌日、摂政会は正式にクアゴア退治を彼らに依頼したのだった。

いや、彼らが失敗しても、自分たちに特に損失はないだろうという判断なだっただけなのだが…。

 

 




原作程切羽詰まっていなくて、かつ来たのが人間だったので、ドワーフたちはあまり疑っていないというか信じてもいないです。
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