オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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まだまだ漆黒の剣のパワーレベリングは続きます


第2章 第10話 -パワーレベリング・流れ作業-

 

『漆黒の剣』の5人がフェオ・ジュラを出発して少し行ったところで、パルメーラは他の4人に“おいでおいで”のジェスチャーをした。

4人はため息をつくと、例のフォーメーションになった。

 

特に左右のペテルとルクルットは『頼むからもう少しゆっくり移動してほしい。車酔い状態で戦闘ができないかもしれない』と懇願し、その結果、今回の移動は余裕を持ったスピードになっている。

 

ニニャは運ばれながら、パルメーラに気になっていたことを聞いてみる。

 

「あの、パルメーラさんはなんでこんな真っ暗な中をぶつからずに走れるのですか?」

 

「あーそれは…戦士の勘だな。レベル…いや難度が200位になれば周りの環境なんて目をつぶっていても分かるようになる」

 

「そんなことが…」

「すごいな…」

 

左右のペテルとルクルットが感嘆の声を上げた。

ペテルにとってパルメーラは戦士として目指す頂きだし、レンジャーのルクルットにとっては暗視と言う能力は喉から手が出るほど欲しいものであるからだ。

 

ニニャは自分で質問して、パルメーラの雰囲気から『あ、なんか誤魔化してるな』と感じた。

実際それは正しく、戦士としての感覚と言うのもあるが、暗黒騎士のスキルであるところが大きいからだ。

 

ダインは二日酔いで無言になっている。

 

 

しばらくすると、パルメーラの走る速さはゆっくりになり、やがて止まって4人を降ろした。

 

「ここから200メートルほど先がフェオ・ライゾの入り口だ。ルクルット、索敵をお願いできるか?」

 

 

小声で説明するとルクルットは頷き、静かに先頭を歩き出す。

そしてしばらく進むと、道は曲がり角になり、その曲がり角の前でルクルットはしゃがんだ。

 

「この先は一本道みてーだ。その先には空洞があって、おそらくフェオ・ライゾはそこだな。かなりの数の亜人がいる気配がある」

 

「よし、じゃあ作戦を説明するからみんな聞いてくれ」

 

 

パルメーラは説明を始める。

曰く、クアゴアと戦うのはこの曲がり角のこちら側。

クアゴアを数匹ずつおびき寄せるから、まず、パルメーラが手加減して手か足を切り飛ばす。クアゴアを殺さず、かつ攻撃か逃走ができないようにするためだ。

 

その隙に4人で連携して倒す。

ただし、とどめを刺すメンバーはローテーションにして、特定の誰かだけがとどめを刺し続けないこととする。

基本的にはパルメーラの渡した武器を使い、ダインとニニャは武器そのもので殴るか、魔法攻撃でとどめを刺す。ただし、魔力の枯渇が起きないよう、殴打が基本とのこと。

パルメーラは最初以外は基本手を出さないでクアゴアがフェオ・ライゾに戻ったり、逃げたりしないように見張る役だ。

 

色々と突っ込みどころが多いのだが、すでにパルメーラの規格外ぶりは理解しているので、質問も多くは無かった。

 

 

まずはペテルが質問をする。

「あー…質問なんだが、フェオ・ライゾから出る道はここ以外もあるんじゃないのか?クアゴアがそこから逃げようとした場合はどうするんだ?」

 

「それは大丈夫だ。昨夜、他の出口は塞いでおいた」

 

「……そうですか」

 

 

次にニニャの質問。

「えっと…この道までおびき寄せるっていう話ですが、そんな都合よく、少しづつここに来るんですか?」

 

「それも大丈夫だ。詳しくは…俺のスキルが関係するから秘密だが、ちゃんとそうなるように準備している」

 

「うーん…まあ不測の事態はパルメーラさんが対処してくれるって言うならもうどうでもいいかな…」

 

 

最後にルクルット。

「ちなみになんだが、オレの感知では結構な数がいると思うんだが、どれくらいの数がいるかってある程度分かってるのか?それと、敵の強さは本当にオレ達で対処可能なのか?」

 

「そうだな、数は1万から2万くらいだと思うぞ。強さは下がレベ…難度30台で最大でもギガントバジリスクくらいだ。なに、手足失って動けないとこにその武器で攻撃浴びせれば倒せるから安心しろ」

 

「いちまっ……!ギガっ……まあいいや。頑張りますんでヤバくなったら援護を頼みます…」

 

 

「ほかに質問が無ければ始めるぞー疲れて動けなくなったら今日はそこでおしまいにしよう」

 

「「「「……はい」」」」

 

 

『漆黒の剣』は理解してくれたようなので、パルメーラは上機嫌で配下の悪魔たちに伝言(メッセージ)で指示を始める。

 

昨夜、ウルベルトが何をしたかと言うと、まず今いる道以外のすべての道を見つけ、それぞれに召喚した悪魔、嫉妬の悪魔(エンヴィ)淫魔(インキュバス)女淫魔(サキュバス)を中心に配置。

逃げないように見張りつつ、近くのクアゴアから精神支配をしていって、ウルベルトから指示があったら、この唯一の道へ向かうように仕向けるというものだった。

 

またこの通路にも、不可知化状態の暴食の悪魔(グラトニー)が複数待機していて、クアゴアの死体がたまってきたらこっそり処理することになっている。

 

そう言う訳で、悪魔プロデュースの作業が悪魔たちの監視下の元、始まったのだった。

 

 

始めのうちは様子見という事で、誘導するクアゴアの数は2~3体程度にしていたが、討伐数が増えるにつれ『漆黒の剣』の動きはどんどん良くなってきたので、昼前には一度に10体ほどを同時に相手にできるようになっていた。

 

これは彼らの普段からの連携と、様々な効果が付与された装備群、そして少しづつだがレベルアップしていることに起因している。

昼頃になり、パルメーラ自身が空腹を感じはじめたことと、戦士的な感覚でおよそのレベルがわかるペテルがだいたい15レベル位になったので、ランチ休憩として一旦クアゴア誘導を止めるように悪魔に指示。

 

皆で、朝、ドワーフたちからもらったランチボックスを広げて休憩する。

 

 

「皆、どんな感じだ?疲労はあるか?」

 

「いや…パルメーラさん。なんていうか体の疲労はほとんどないんだが…同じ作業ばかり続けていると飽きるんだなという事が分かりました」

 

「そうか、その気持ちは良く分かるぞ。俺も昔、ライン…いや、俺も弱いころは同じようにレベルアップを頑張ったからな」

 

「なんつーかさ、どんどん体の動きが良くなってる気がするよ。今日は弓使ってないけど、弓の飛距離も伸びてるんじゃねーかな?」

 

「ああ、だろうな。俺が見た感じ、多分皆、難度で言うと15くらいは上がっているぞ」

 

「え…15?!…マジか」

 

「ダインは二日酔い治ったか?」

 

「おかげさまで、ずいぶん良くなったのである。午後はもう少し動けるようになるはずである!」

 

「よしよし。ニニャはどうだ?」

 

「なんか信じられないんですけど、勘違いでなければ第3位階が使えそうな感じあります…ただ、第3位階の魔法については手持ちの魔導書とかが無いので、知識として聞いたことがあるもので汎用性が高そうな飛行(フライ)火球(ファイヤーボール)を覚えられるか試してみようと考えてます」

 

一同から『おお!』とか『流石術師(スペルキャスタ―)!』とか言われて嬉しそうにしている。

しかしそこでパルメーラは待ったをかけた。

 

「いや、優先して覚えるのは電撃(ライトニング)電撃球(エレクトロ・スフィア)の方がいいと思うぞ。クアゴアは電撃系の技が良く通ると山小人(ドワーフ)たちが言っていた」

 

「なるほど…確かにそうですね。ただ、電撃球(エレクトロ・スフィア)について聞いたことが無いのでイメージが出来そうにないです」

 

「ん?そうなのか?そんなに難しくないぞ。電撃(ライトニング)は直線状に貫通する雷撃を打ち出す魔法だろ。電撃球(エレクトロ・スフィア)ってのは電撃を凝縮した球を放って、それが着弾すると周りに電撃を飛散させる魔法だ。イメージ的には火球(ファイヤーボール)の電撃版みたいなもんだな」

 

「…よくご存じですね」

 

「ん?ああ…俺の職業である暗黒騎士(ダークナイト)は魔法も使えるんだよ。ただ、本職の魔法詠唱者(マジックキャスター)には劣るがな」

 

 

一同は再び驚愕の表情となった。

そしてニニャが「どんな魔法を使えるか教えてもらってもいいですか?!」と興奮気味に聞いてきたので少し思案する。

 

 

ウルベルトは、この国の最高位冒険者が30レベル程度だろうという推測から、ユグドラシルルールに則れば魔法は精々第5位階が関の山だろうと考えている。

従って、気軽に見せてもいい魔法は第6位階が限界かな、と意外と魔法については的を射た予測を立てていた。

 

そもそも暗黒騎士(ダークナイト)のパルメーラの時は、悪魔の末裔の暗黒騎士というロールプレイをしたいので魔法主体の戦闘は避けたいという厨二的発想もある。

 

暗黒騎士(ダークナイト)は確かに魔法を使える職業だが、戦士職を伸ばした方が強くなるので暗黒騎士(ダークナイト)としての魔法は最低限必要なものしか覚えていない。

それでもベースが魔法系の職業レベルを持つので、第8位階までは使えるのだが…。

 

そう言うわけでウルベルトは無難な魔法を説明する。

 

「例えば暗黒騎士槍(ダークランス)なんかがある。これは暗黒属性の貫通効果のある魔法攻撃を飛ばすことができる技だ。これは第4位階だな」

 

 

ニニャはキラキラした目でパルメーラを見ているし、他のメンバーも口々に褒めたたえる。

 

「マジかよ…伝説レベルの剣士で魔法は第4位階とか…13英雄もこんな感じだったのか?」

 

「本当にとんでもないのである!」

 

「パルメーラさん、俺が魔法を使うのも可能なんだろうか?」

 

 

ペテルの真剣な眼差しに、パルメーラも真剣に考えて答える。

 

「そうだな…不可能ではないがやめた方がいいと思う。まず、俺の職業である暗黒騎士(ダークナイト)はかなり特殊でな、そもそもこの職業は魔法剣士に近い。だから職業として魔法を使えるベースがあるんだ。ただ、魔法のレベルを上げると、その分戦士としてのレベルを消費することになるから、単純に戦士として強くなりたいなら魔法は仲間に頼った方がいい。俺は例外的に、装備やら、悪魔の末裔人(ディアボロ・ディセンディ)として持っている種族レベルの底上げがあるからうまい事いっているが、本気で戦士レベルだけを極限まで上げたものには敵わない……ワールド職をとらない限りはな…」

 

パルメーラの説明の中には、意味不明な単語もあったが、それはいつもの事なので一同は流す。

ただ彼が言いたいことは、『魔法を覚えず戦士として極めたほうが普通は強くなる』ということと『魔法は仲間に頼れ』という事なんだと納得した。

 

 

『漆黒の剣』の反応を見るに、やはり第4位階の魔法を使えると開示したのは正解だったとウルベルトは内心考えていた。

ただその理由は、隔絶した力を持っていると知られると警戒される可能性があるとか情報の秘匿とかそういう事ではなく、『実はもっと高位階の魔法を使えると後から知られた方がその時の衝撃が大きいだろう』というとても厨二的な考えに起因するものだった…

 

 

ランチ休憩が終わり、午後は、はじめは一度に10体、後半は50体同時に処理をしていく。

レベルが上がるにつれて、効率はどんどん上昇していき、召喚した全ての暴食の悪魔(グラトニー)から『もうおなか一杯です。本当に申し訳ありません』というメッセージが来たので、そこからは暴食の悪魔(グラトニー)の仕事は速やかに死体を運搬し、大裂け目に捨てるというバケツリレー要因になった。

 

その後の戦闘の中で、ニニャは順調に第3位階魔法を覚えていき、雷撃(ライトニング)火球(ファイヤーボール)電撃球(エレクトロ・スフィア)を習得してバリバリの攻撃魔法使いの道を進みだしたのだった。

 

そしてついに、およそ15000匹のクアゴアの群れは残すところ後1匹となり、パルメーラは再び『まった』をかけた。

 

 

「よし、皆。よく頑張ったな。このフェオ・ライゾにいるクアゴアはあと1匹になった。残っている奴は赤毛のクアゴアで、こいつは山小人(ドワーフ)が言っていた上位種の指揮官か何かだろう。難度はだいたい90と言ったところだ」

 

「90?!」

 

一同が驚愕する。

それはそうだ。つい3日ほど前に遭遇して死を覚悟したハルピュイアは難度が精々60と言われているし、90というのはギガントバジリスクを越える強さという事だ。

 

しかしそんな一同の驚愕をよそにパルメーラは平然と恐ろしいことを言ってのけた。

 

「今日の最後のさぎょ…特訓は、あいつを4人で倒すこととする」

 

「いや…パルメーラさん、さすがにそれは無理だと思う。難度90と言うのはアダマンタイトの仕事だ」

 

「皆、今自分たちの難度がどれくらいだか理解しているか?俺は戦士職の難度はだいたい分かるんだが、ペテルは63、ルクルットは57だ。ダインとニニャは使える魔法の数と位階からの推定だが、ダインは少なくとも54、ニニャは66は超えている」

 

一同は「え?」と言う顔を浮かべた。

パルメーラの言葉を信じるならば、概ね難度の平均が60でこれはオリハルコンに到達していると考えて良い。

 

「じょ…冗談だよな?」

「私たちがオリハルコン…であるか?」

「え?でも…え?」

 

「あ、ちなみにニニャ、さっきお前が使えた貫通属性のあるデカい雷撃の槍を出す魔法、第4位階だからな」

 

「はぁっ?!」

 

「いけそうだなって思ったからイメージ伝えたら簡単にできたじゃないか、おめでとう。第4位階使えるってことは難度はおそらく66超えてるぞ」

 

「え…なんか僕、騙されてたの?」

 

「ダインも、さっき召喚成功した岩石と苔の獣(ロックアンドモス・ビースト)は第3位階だと思うぞ。ドルイド系はそこまで詳しくないが」

 

「なんと…」

 

 

そこまで黙っていたペテルは、そこでようやく口を開く。

 

「パルメーラさんが言っていることは正しいと思う…魔法詠唱者(マジックキャスター)の強さは正直分からないんだが、俺とかルクルットの強さは、パルメーラさんが言っている水準で間違っていない感じがする…」

 

「いや皆、よく考えてみろよ。今日1日で、一人当たり4000匹近い格上の相手を倒してるんだぞ。むしろこれしかレベルアップしていないことの方が疑問だよ。俺としては」

 

 

言われてみればそうである。

午後はもう完全に作業になっていたが、30-40匹が1分おきに現れては、瞬時にパルメーラに手足をもがれ、それに武器をたたき込む簡単なお仕事が、もう数時間続いていたのだ。

パルメーラの支援と装備のおかげで、全く苦労なく敵を殺していたが、4人で討伐数15000と言うのはどこの化け物集団だという話である。

 

余りの同じ作業に、心は死にそうだったが。

 

 

「そう言う訳で、最後はさらに格上の相手を倒して、今日のところはお開きにしよう。とは言え格上は格上だ。作戦を練って戦った方がいい。4人で意見を出し合ってどう戦うか考えてみてくれ。俺は基本手を出さないが、本当にヤバそうだったら対応するから安心しろ」

 

そこから10分ほど『漆黒の剣』の作戦会議が始まった。

もう10時間ほど戦い続けているので皆力尽きているかと言うとそうではない。

むしろやっと頭を使って戦闘ができるのでちょっとやる気が出ている。

何せ手探りだった最初の1時間以降は、あまりの武器性能の高さで、本当に急所を狙って武器を差し込めば一撃という作業以外の何物でもない行動しかできていなかった。

 

だがここにきて、作戦を練ってチームワークで戦うという本来の動きができる。

そのうえ、皆パワーアップして、できることの幅も大幅に広がっている。

 

 

 

***

 

 

 

統合氏族王ペ・リユロの腹心にして、レッドクアゴアのヨオズは突然の事態に焦っていた。

彼は、ペ・リユロからドワーフどもの都市奪還の命令を受け、現在は15000の部下と共に、奴らの都市の南にある、すでに奪還した都市に陣を敷いて作戦会議を行っていた。

 

しかし昨日から、何らかのモンスターにより魅了(チャーム)をかけられたようで、自身の意思ではうまく行動ができなくなっていた。

部下たちは順々に都市の北西の出口に向かって進んでいき、そのまま帰ってこない。

ついに自分だけが残されたところで精神支配が解けた。

 

本来は別の出口から出るべきと考えたのだが、どうも他の出口には、自身では到底倒せない強い気配がして、仕方なく部下たちが消えた道を慎重に進む。

 

曲がり角を曲がった瞬間、先ほどまで別の入り口から感じていた強い気配が背後に迫っている感じがし、後戻りできないと直感した。

 

同時に足元の苔で覆われた岩が盛り上がり、自身の足を掴んで自由を奪う。

『しまった』と思った瞬間、岩は人型になり自身の体に纏わりつく。

本気で暴れれば壊せそうな感じがあったが、その瞬間両手の爪先を狙った、黒く輝く金属の剣が降り注ぐ。

その剣は、金属であるはずなのに、自身の自慢の爪や毛皮を吸い込まれる等に通り抜け、鋭い痛みが走る。

 

直後、岩の隙間を縫って、雷撃の槍が自身を貫く。

死ぬことは無かったが、あまりの衝撃に体がこわばる。

その後は、黒い金属の剣と杖でひたすら攻撃され、体が動けなくなってぼんやりとした感覚の中で、聞こえた言葉と飛来する5つの光を目撃したのを最後に意識は完全に途絶えた。

 

魔法属性変化(チェンジアトリビュートマジック)魔法の矢・雷撃(サンダー・マジックアロー)!!』

 

 





ウルベルト様はリアルでのお仕事を少し思い出してしまい、少しだけ『申し訳ないことをさせているな』という気持ちになりました
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