オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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ウルベルト様は深く考えていないので、「ここでは召喚したモンスターがずっといるな。便利」と思っています


第2章 第11話 -幕間・続ハズレ領主-

 

 

ここはフェオ・ジュラ。

現在、会議室には摂政会の8名のドワーフとパルメーラがいて、何やら話し込んでいる。

 

なお『漆黒の剣』の4名は疲れ果てて宿で寝ている。

 

 

 

2時間ほど前のことだが、昨日フェオ・ライゾに向けて出発した人間5人の冒険者パーティーがもう戻ってきたという事で、総司令官は『やっぱり様子見で、倒せないと判断して帰ってきたか』と思った。

 

しかし、彼らのリーダーと言っていた男が、レッドクアゴアの首を持ってきたという事で、大騒ぎになり、摂政会の8名が緊急で集まった。

 

ただ、目の前にいる男以外は極度の疲労という事で、早急に宿で休むことになったので、摂政会8名と話すのはこの男だけとなった。

 

「いや、俺は今回は援護と移動が担当だったから、戦闘は彼らが担当したんだ。だから働いた皆は休ませてやってくれ。何があったかと今後のことは俺から説明するから」

 

と言ったその男は、他のメンバーと異なり疲労は一切なく、返り血などの服の汚れも皆無だ。

総司令官は、最初のこの男との出会いと、『移動と援護担当』という言葉から、この男は移動に特化した何らかの能力を持っていて、戦闘の主体は他の4名なのだなと納得した。

 

その移動と援護担当ですら、通常のクアゴアは難なく倒せるようだし、リーダーと呼ばれていた男はなんと司令官クラスのレッドクアゴアの首を携えていた。

 

フェオ・ライゾまで行くとなると、何日かかってしまうので確認は後日となったが、司令官クラスを倒したという事は一軍を制圧してフェオ・ライゾを奪還したという彼らの話は信ぴょう性が高い。

 

 

摂政会の面々は、パルメーラという男に頭を下げて感謝の意思を示していた。

 

「本当に、なんとお礼を言っていいか分からない。フェオ・ライゾがクアゴア(奴ら)に占拠されてから、我々は食料も鉱山資源も乏しくなっていってジリ貧だったのじゃ。これで王が居た時代とはいかずとも、また発展の兆しが見えた。魔法詠唱者(マジックキャスター)の方が言っていた、交易については、可能になったら早急に再開する。ただ、財宝に関しては宝物庫がある元王都のフェオ・ベルカナに霜の竜(フロスト・ドラゴン)やクアゴアの王が居る故、お渡しすることは依然難しいが…」

 

そこまで言うと、人間の男は「王…」と呟き、一拍おいたのち質問をしてきた。

 

 

「もし、知っていれば教えてほしいのだが、その霜の竜(フロスト・ドラゴン)やクアゴアの王とやらの強さはいかほどなんだ?難度という指標はわかるか?」

 

「いや、強さと言われても…クアゴアの王は聞いた話では、皆さんが討ち取ってくれたレッドクアゴアよりさらに上位の強さと硬さを持っており、非常に知能も高いとか。もしかしたらアダマンタイトを食べて成長したのかもしれません。霜の竜(フロスト・ドラゴン)は…実は奴らのもとには山小人(ドワーフ)の奴隷が居ります。知恵の高いクアゴアの王が我々の同胞を捕虜にし、奴隷としてドラゴンの下で働かせているのです。その中で命からがら逃げだしてきた者の話では、ドラゴンは10数匹おり、恐ろしい冷気のブレスを吐くとか。それにドラゴンの王の妃には信仰系魔法を使う者までいるとのことです」

 

「奴隷……成程…情報感謝する。ちなみにブレスは冷気以外あるのか?毒とか麻痺とかそういった状態異常系も含めてだが」

 

「いや…そこまでは分かりません。ただ、逃げてきた者からは冷気のブレスについてしか聞いておりませんです」

 

「ふむ…一度フェオ・ベルカナを確認してそいつらの強さを見てみたいな。誰かに道案内を頼めるか?口が堅く…できれば少人数が良い」

 

「な…!アンタまさかクアゴアの王や霜の竜(フロスト・ドラゴン)と戦う気か?!」

 

「戦うかどうかは強さを見極めてからだな。それにそいつらを放っておいたらいずれにしろお前たち山小人(ドワーフ)はまずいことになるんだろ?だったら情報だけでも集めといたほうがいいんじゃないのか?」

 

山小人(ドワーフ)たちは押し黙る。

この人間の言う事は間違いなく正しいからだ。

 

 

『事務総長』が口を開く。

「しかし、あなただけでチームの行動を決めていいのかの?リーダーに確認すべきでは?」

 

「ああ、それなら大丈夫。フェオ・ベルカナまで見に行くのは俺だけだ。斥候には俺が一人で出たほうが早いし安全だからな」

 

『総司令官』は心の中で「やはりそうか」と頷く。

 

それから摂政会の8名は少しの時間意見を出し合った後、改めて『事務総長』がまとめて回答を言った。

 

「分かった。それではフェオ・ベルカナまでの道を案内するものを選抜する。明日の早朝、声をかけるのでそれでよろしいか?」

 

「ああ、それで構わない。よろしく頼む」

 

そう言うと、その人間の男はあてがわれた宿へ消えていった。

 

残された8人の山小人(ドワーフ)たちは、男の足音が完全に消えると口々に己の意見を言い始める。

 

あの者たちの本当の狙いは何なのか?

そもそもドラゴンを倒せるものなど居るのか?

案内役に誰を選出するのか?

 

しかし未だ怪しい人間たちを全く信用したわけではないが、山小人(ドワーフ)たちの表情はそこまで暗くない。

なぜならば、決して対処できないとあきらめていた問題を解決できる可能性が現れたからである。

 

 

 

宿に戻ったパルメーラは明日以降の流れをどうしようか考えていた。

実を言うと、フェオ・ベルカナへの道は既に一度、軽く探していたのだが、かなり複雑な場所があり、本性の状態でも妖精女王の祝福(ブレス・オブ・ティターニア)の様な探査系呪文を取っていなかったので、一旦引き返しているのだ。

 

道を無理やりぶっ壊してしまえば楽なのだが、それをするとニニャ辺りにすごく怒られそうな気がする。

 

そういう訳で“道案内”が必要だと考えていた。

また、ドラゴンやクアゴアの王などは自身が本気で行けば“勝てない”とは思っていないが、今回の依頼の期間は10日で残りは5日半。

帰りの時間を考えると4日ほどで用事を終わらすのが理想である。

 

もう自分は『漆黒の剣』の一員だと思っているので、自分のわがままで依頼未達成などの事態になり、チームの輪を乱すようなことをしたくないのだ。

 

このチームは、どこぞの正義オタクや支配者階級のものなどが居らず、皆気持ちが良いので自分もチームの一員でありたいという思いがある。

そういう訳で、このフェオ・ジュラに帰ってくるときも、ちゃんとリーダーにクアゴアの首を持たせて自分はあくまでチームメンバーです、というアピールをした。

 

ニニャについては時々変な目で見てくるので、あまりいじり過ぎて呆れられないよう注意しようと思っているが。

 

ただそのニニャについてはいくつかの疑問がある。

彼の成長速度がおかしい気がするのだ。

 

今日の最後に放った呪文は魔法属性変化(チェンジアトリビュートマジック)で雷属性を付与した魔法の矢(マジックアロー)

こちらから指示したわけでもないのに、敵に応じて魔法を変化させるという事をやってのけた彼は、センスがいいと感じている。

 

ただ、問題はその矢の本数。

矢の本数は5本だった。

魔法の矢(マジックアロー)で出る矢の本数は、使用できる位階に応じていて、5本出たという事は、彼は第5位階に至っているということ。

 

ラストアタックの回数で言えば4人とも同じくらいだったので、彼だけがレベルで言うと29、難度で言うと実は87程度?に至っているというのは計算が合わない。

 

確かにユグドラシルでも、職業によって成長の速さは若干異なる。

上級職であればその分遅くなる。

しかし彼らは全員が下級職。

戦士・レンジャー・ドルイド・魔法詠唱者…

なんならこの中では魔法詠唱者が若干成長速度が遅いまであるのだが…

 

魔法について悩んでいると、不意に僕からの連絡が入ってきた。

こいつは…ああ、リ・アレクサンデルに置いてきた悪魔の一体だ。

作戦は数日前に終了して、新しい領主が来たと聞いていたが…

 

しかしその内容はウルベルトの怒りを再燃させるものだった。

 

「お伝えします。新しい領主としてリ・アレクサンデル領に来た“チエネイコ男爵”ですが、御方が仰っていた『税率を上げる』、『無駄に金銭を使う』、『奴隷を使用する』の全てを行おうとしています」

 

「そうか…奴隷は既に屋敷にいるのか?」

 

「はい、元々住んでいた屋敷から連れてきたようです」

 

「…そうか。では先のアレクサンデルと同じように、奴隷は保護し教会へ、その後屋敷の中のすべての人間、あ、いや、奴隷以外で平民はいるか?」

 

「居りません」

 

「そうか、では奴隷を教会へ送った後、チエネイコ以外の者は全て人間がやったと思える形で殺せ。チエネイコは地下の例の部屋に括り付けて放置しろ。そのまま何もしないでいい。擬態の悪魔(イミテーター・デビル)はチエネイコが餓死するまでチエネイコに成り代わり、餓死したら死体は領主の椅子に座らせて放置だ。その後は次の領主が来るまで待機」

 

「承知いたしました」

 

 

 

パルメーラは一つため息をつくと今度は別の影の悪魔(シャドウ・デーモン)伝令(メッセージ)をつなぐ。

 

「おい、俺だ」

 

「はっ!何か御用でしょうか」

 

「今お前は誰の影に入っている?」

 

「はい、お言いつけの通り、チエネイコなる者を推薦していた者から辿り、現在はブルムラシュー侯爵という者の影にいます。この者が実際にはチエネイコを遣わした者のようです」

 

「よし、それではお前はその者の身辺を調査して引き続き俺に報告しろ。特に詳細に報告するポイントは『税率を上げる』、『無駄に金銭を使う』、『奴隷を使用する』に関連することだ。後日その者の屋敷に追加の影の悪魔(シャドウ・デーモン)を送る。その他調査に必要なことがあれば遠慮なく言え」

 

「お心遣い誠にありがとうございます。それでは調査を継続いたします」

 

 

伝言(メッセージ)を切ると、山羊の悪魔の姿になっているパルメーラは、ため息をつきながらせっせと影の悪魔(シャドウ・デーモン)を作成する。

 

先ほど話したブルムラシュー侯爵についている影の悪魔(シャドウ・デーモン)から、まさか翌日に同じような報告が来るとは夢にも思っていないパルメーラは、本日の影の悪魔(シャドウ・デーモン)作成後、どっと精神的な疲れが来てベッドに倒れ込むのだった。

 

 




残念ながら、知恵ない子は即消えてもらいました。
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