オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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誤発動。
こういう事ってゲームでは時たまありますよね


第2章 第13話 -パワーレベリング・誤算の一撃-

 

パルメーラがフェオ・ジュラに到着したのは午後の早い時間だった。

しかし、その時点で、『漆黒の剣』の4名はやっと起きだしたところだった。

宿のラウンジでパルメーラが待っていると、4名は眠そうに目をこすりながら降りてくる。

 

「パルメーラさん、すまない。かなり寝坊したみたいだ」

 

「昨日はかなり限界まで魔力を使った感じがするのである」

 

「ほんとだぜ。オレ、寝てるとき2回足がつって起きたぞ。まあもう回復したけどよ」

 

「ふああ…すみません。僕も寝坊したみたいです」

 

 

「ああ、皆おはよう。昨日はお疲れ。でも相当強くなったのは事実だぜ」

 

パルメーラのその言葉に、『漆黒の剣』は自分たちの実力の上昇を改めて思い出す。

そして5人は雑談をしながら朝食(パルメーラは昼食)を食べるのだった。

なお、すでにフェオ・ライゾ奪還の可能性が高いことは伝わっており、宿の主人からもかなりのサービスと思われる量の食事が出されている。

 

パルメーラは、リアルでは決して食べることが無かった“肉”のうまさに一人感動しながら、メンバーに話しかける。

 

「さて、今日の予定なんだが…」

 

瞬間、4名の顔はこわ張る。

無理もない。

パルメーラの提案する訓練は、とても効率的で明らかに強くなっているのは分かるのだが、肉体的にも精神的にもだいぶキツイ。

 

パルメーラはそんな4人の顔を見て『おっやる気になってるな』と勘違いし、意気揚々と語りだすのだった。

 

 

「…そう言う訳で、クアゴアの王が居る場所へは洞窟からではなく、いったん外に出てから山歩きし、別のトンネルから入ることにする。ちょうどよく火山噴火か何かでできた道があってな」

 

「はあ…また大移動か…パルメーラさん、俺たちが酔わない速度でお願いしますね」

 

「ああ、昨日ぐらいでいいよな?」

 

「ええ…まあそうですね」

 

「了解した。それでだ、任務の残り期間を考えると、山小人(ドワーフ)の旧王都に行って戦った後、もう一度ここに戻ってくるとなると間に合わないかもしれない。だから、摂政会の奴らにはそのことを伝えて今日でこの街とはサヨナラにした方がいいと思うんだがどう思う?」

 

正直な話、移動距離が減るという事は、パルメーラによる運搬移動が減るという事なので、特に酔いやすいポジションのペテルとルクルットは大賛成だった。

ダインもアップダウンがある道は酔う可能性があるので賛成。

ニニャも論理的には賛成だったのだが、なぜか引っかかるところがあった。

あの方法でパルメーラに抱きついているのが…なぜか…いや、それはおかしい。論理的に。

ニニャも賛成の目線を送るとペテルが代表して『ぜひそうしましょう』と答えた。

 

 

食後一休みしたのち、パルメーラは摂政会のメンバーにフェオ・ベルカナの現在の状況を伝えた後、『漆黒の剣』はこれからフェオ・ベルカナに向かい、可能な限りクアゴアを倒し、そのままフェオ・ジュラには戻らずに帰投することを伝えた。

 

探索の結果どうなったかは、後日パルメーラが伝えるという事で双方納得となった。

 

そう言う訳で、一行はまた、パルメーラによる運搬移動で、アゼルリシア山脈西部の洞窟?の入り口まで来た。

ここからはそんなに距離は無いという事で各自歩きだ。

 

 

「しかしこんな穴ができるなんて自然の力はスゲーな…それにしてもこの穴からクアゴアが出てくるってことはないのか?」

 

「いやルクルット、この前の山小人(ドワーフ)の話だと、クアゴアは日光の下には出てこられないらしい。だからこのトンネルを使って地上に出ることもないんじゃないか?」

 

「確かにそうか…」

 

パルメーラはうまい事、この穴が自然にできた方向に話が行っているので安堵の表情を浮かべる。

そんなパルメーラの顔をニニャがのぞき込む。

 

「な…なんだニニャ?」

 

「いえ、特には…ただパルメーラさんがその表情をしている時って、なんかろくでもないこと考えている時な気がするんですよね…」

 

「何言ってるんだ。これからまた結構な戦闘になるんだから余計なことを考えない方がいいぞ」

 

「……」

 

 

パルメーラはできるだけ表情を変えないように、それっぽく言う。

ニニャの、パルメーラを見る目はハイライトが無くなっていて、ただ、パルメーラを見つめている。

なんか…コイツ怖い!!

 

パルメーラは静かに心の中で悲鳴を上げた。

 

 

 

完全に洞窟に入り、正確に言うとここは難所を抜けた先の、フェオ・ベルカナへ続く一本道の途中。

当然パルメーラは、前回のフェオ・ライゾと同じ作戦で行こうと考えていたので、前回召喚した悪魔たちは転移門(ゲート)で移動済みであり、この道以外の道は塞いである。

 

歩きながら、『漆黒の剣』のその概要を説明し、今回はこの道を戦闘地点とすることや、今回のクアゴアは前回より数が多いので、おそらく何日かに分けて作業することになるという話をしている最中、運の悪いことにクアゴアに遭遇した。

 

 

「あ」

 

「クア」

 

「おま」

 

それぞれが出合頭遭遇で戸惑った隙に、パルメーラはじゃあさっそくだけど今日の訓練開始だな、とばかりに、そのクアゴアの両足を切り落とした。

 

パルメーラは忘れていた。

 

午前中のトンネル工事で、ハジマリノ悪(オリジンオブエロヒム)の設定をした後、元に戻していなかったことを。

 

『幾億の刃』の効果が発動されるとき、対象が一人だったり、プレーヤーだった場合はその者に対してのみ掛け算のロールダイスが振られるが、複数のモンスターだった場合は、モンスターの群れに対して掛け算のロールダイスが振られるのだ。

つまり群れの一匹への攻撃に対して効果が発動すると、群れのモンスター全員に同じ攻撃が入るのだ。

 

パルメーラはクアゴアの足を切り落とした瞬間、『幾億の刃』の発動を感じた。

そして、掛け算の結果が表示される。

 

『×10万』

 

直後、まだ見えぬフェオ・ライゾの方角から凄まじい悲鳴が遠ざかる津波の様に広がっていくのが聞こえた。

 

5人が、パルメーラにせかされる形で急いでフェオ・ライゾまで来ると、一面に両足が切断されて悲鳴を上げるクアゴアが広がっていた。

 

この場所にクアゴアはおよそ6万5千匹居た。

『両足を切断する』と言うダメージが、10万匹分発生し、ダメージの伝播が奥まで届いた後、残りの3万5千分のダメージは引き返す形となり、奥から3万5千回分だけ2度目が襲ってきた。

 

クアゴアはこの時、奥に行くほど(つまり霜の竜(フロスト・ドラゴン)がいる王城側に行くほど)地位の高いもの、つまり強い個体が居た。

 

このダメージの波が何をもたらしたかと言うと、“2回目”のダメージを受けなかった手前側の3万匹の弱い個体は足が切断されて動けないが生きており、奥の3万5千のうち、手前に近い2万は弱い個体が2回攻撃を受けたため死亡し、その奥の1万5千弱は上位個体だったので2回攻撃を受けても生き残ったが瀕死で、最奥のペ・リユロを含む数体は足切断+大ダメージではあるが動けるという状態だった。

 

何度となくこの『幾億の刃』を使用し、モンスター狩りやPVPに活用してきたウルベルトは素早くこの状況を察知。

奥の道をふさいでいる悪魔たちに『色が青と赤と白の個体に強めに精神支配か麻痺をかけて動けなくして、再び隠れろ』と指示。

 

続けて『漆黒の剣』に以下のように指示。

 

「なんでこうなったか後で説明するから、とにかく今は急いで、もがいているクアゴアにとどめを刺してまわれ。ニニャとダインは魔法力半分以上は残るように気を付けながら可能な限り広範囲の魔法で殲滅し、もし新しい魔法を覚えられそうだったら炎系を重点的に覚えてくれ。はい、スタート!!」

 

パルメーラの言葉に反射的に飛び出した『漆黒の剣』は最初こそ、傷ついているとは言え、見渡す限りのクアゴアに警戒したが、数えきれないほどのクアゴアは皆足を失い、もがいていて瀕死なので、おそらくパルメーラに借りた武器じゃなくても殺せるレベルの弱りようだった。

 

試しにルクルットは何度か弓を打ってみたが数発でとどめを刺すことができたので、もう狙いとか定めずに乱射している。

 

長剣を持つペテルは、もはや剣を下に向けてダッシュした方が早いと気づき、剣を構えることもなく通り道右横の瀕死クアゴアを直線的に殺していく。

 

ダインは召喚した岩石と苔の獣(ロックアンドモス・ビースト)が普通に走れば、そのままひき殺してくれることに気づき、自身は後ろ手を組んで岩石と苔の獣(ロックアンドモス・ビースト)のランニングを見ている。

その後何か思いつた様に火球(ファイヤー・ボール)を唱えて成功していた。

 

ニニャは、魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)電撃球(エレクトロ・スフィア)を唱えたら、範囲に入った全てのクアゴアにとどめを刺してしまい若干ビビっていた。

その後、イメージを伝えた龍雷(ドラゴン・ライトニング)の発動に成功し、さらにアレンジして龍炎(ドラゴン・フレイム)とかいう魔法を完成させた。

 

最後に最奥にいた白い個体に向けて、ニニャが龍炎(ドラゴン・フレイム)をぶっぱなし、4万5千のクアゴアにとどめを刺す作業は2時間ほどで完了したのだった。

 

 

ペ・リユロは、自分たちがなぜ、こんな目に合うのか、何がいけなかったのか、どこで間違えたのか、そんなことを考えながら最期の時を迎えた。

 

 

 

***

 

 

 

「で、説明をお願いできますか?」

眼にハイライトが無くなったニニャがパルメーラに詰め寄る。

 

パルメーラは何となく正座になり、事の顛末を説明した。

 

 

…悪剣・ハジマリノ悪(オリジンオブエロヒム)の効果が発動した。

 

その事実を聞いた一同は驚愕するとともに“悪剣”の恐ろしい効果に戦慄する。

 

とはいえ、この作業は一同の心にかなりのダメージを与えた。

 

 

 

「なんていうかよ、子供の頃、意味もなく昆虫を殺したことってあるだろ?オレはさ、あれは残酷なことだって思ってたんだけど、今、大人になってそれ以上の悪行をしている気分だ…」

 

「人は…残酷である…」

 

「良かったのか…あれで良かったのか…?俺は…子供のころ夢見た英雄に…」

 

「僕は貴族に対してはどこまでも残酷になれると思ってましたが…モンスターに対してもこんなに残酷になれたんですね…」

 

 

仲間たちの様子を見て、パルメーラはさすがにまずいことをしたなと思い、その場でしばらく休むことにして無言で静かに腰を降ろしたのだった。

 

 

一同が休んでいると、数名の人間たちが現れた。

 

「おいおい大丈夫か?!何だこの死体の群れは…!」

 

「ケガしてるのか?!ポーション無いのか?」

 

「あ…アンタは山の爆発から出てきた!!むごご」

 

 

パルメーラは素早く何か言いかけた男の口を手でふさぎながら、このチームのリーダーらしき男に言った。

 

「すまないがあなたのチームに獅子ごとき心(ライオンズ・ハート)を使える者はいないだろうか?俺たちは冒険者チームで、この亜人たちは俺たちが討伐したのだが、あまりの数の殺戮で仲間の精神がだいぶ傷ついてしまったようだ」

 

 

パルメーラ的には出会いたくなかった男を含む冒険者チーム『朱の雫』との邂逅であった。

 

 




ペ・リユロさん殺してしまいました。
ごめんなさい。
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