オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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次の御方の降臨です。
仕事始まったのでペースダウンするかもです


第3章 第1話 -<Yggdrasil 2>のはじまり-

 

2138年6月30日

ギルド:アインズ・ウール・ゴウンの玉座の間。

 

 

「そうですか?ではお言葉に甘えて」

ヘロヘロは受け取った腕輪型のワールドアイテムをその粘体の腕にはめた。

 

約1年前、このゲームの終わりが発表された後に弐式炎雷が発見したいくつかの新ダンジョン。

その一つで見つけたこの腕輪型ワールドアイテム。

 

これと、奇跡のログボことロキの指輪(リングオブロキ)により、その後の1年のヘロヘロは大いにこのゲームを楽しんだ。

 

WI:拳闘神の腕輪(ブレスレット・オブ・ファイティングゴッド)。このアイテムの効果は、『武器を使用しない戦士系の職業レベルに限り追加で5レベルの枠が手に入る』

 

つまりこれは、メタ的なことを言うならば、モンク系の竜の秘宝の指輪。

モンク系であればレベルが105まで上げられるという、ゲーム末期らしいとんでもアイテムである。

 

モンク系という事でこのアイテムはヘロヘロの専用となった。

そしてヘロヘロは考えた。

このアイテム、そしてロキの指輪(リングオブロキ)を最大に活かす方法を。

 

元々ヘロヘロは、モンク系であるが筋力が弱いスライム種であるので、酸攻撃に特化し、攻撃力はそこそこだった。

この酸攻撃で武器破壊をするという対プレイヤー戦で非常に凶悪かつ恐れられる存在だったのである。

当然AOG wikiでも要注意プレイヤーとして有名だった。

 

ヘロヘロはこれを逆手に取り、さらに凶悪なことを思いついた。

 

まず、黒き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)の時の酸攻撃に関する種族レベルを1だけ落とす。

この1レベルを、今まで割り振っていなかった種族レベルの“擬態”に割り振り、唯一できる擬態として、ロキの指輪(リングオブロキ)で得た新たな種族である『人間』と同一の外見を登録する。

 

ロキの指輪(リングオブロキ)で得た人間のアバターでは、純粋なモンクの攻撃力を限界に上げ、さらに今まで取らなかった職業:武器破壊者(クラッシャー)を取得。

最後に職業や種族を探知されないように探知阻害の指輪をして、アイテム欄にはもしもの時の回復アイテムと、完全不可知化の込められた杖を大量に準備。

 

以上で対プレイヤーや他ギルドへの侵略時に以下の戦い方をする。

 

まず始めはスライム種で人間に“擬態”し杖を構えて参戦。

他のギルメンも一部は人化して、相手プレイヤーは混合パーティーの魔法職と勘違いする。

 

魔法職を狙ってきた戦士職を黒き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)の酸で攻撃し武器に劣化ダメージ。

ここで他のギルメン同様、本性の黒き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)の姿になる。

相手プレイヤーは、AOGの有名な“武器破壊スライム”であることを認識、警戒する。

 

この時点で今度はロキの指輪(リングオブロキ)で人化、そして杖により完全不可知化。

相手プレイヤーは酸攻撃に対する耐性を上げ、警戒。

 

この隙にAOGの他のメンバーが魔法等で攻撃。

ヘロヘロは速やかに相手プレイヤーに近づき、モンクの通常攻撃を全力でたたき込む。

不可知化は解けるが、この場合は酸でなく武器破壊者(クラッシャー)の効果を乗せるので、どちらにしろ武器耐性低下もしくは破壊。

 

この3段構えの凶悪コンボは、AOGの黒き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)の情報を得ている者ほど効果があり、調子に乗ったヘロヘロたちは中規模ギルドを破壊して回るという蛮行に出た。

 

その中である日、ヘロヘロはいつものギルド攻撃時に、がら空きになっていたギルド武器に対してこの武器破壊者(クラッシャー)の効果を乗せたモンクの全力を叩き込んだ。

するとなんとギルド武器破壊に成功してしまった。

 

武器破壊者(クラッシャー)は武器破壊後の一時的な攻撃力はワールドチャンピオンをしのぐ。

これが楽しくなってしまったヘロヘロは、この凶悪コンボによりついに10個のギルド武器を破壊。

そこでヘロヘロは新たな職業を得る。

それこそが世界の破壊者(ワールド・クラッシャー)

 

武器を破壊した者が辿り着く境地。

隠しワールド職の一つ。

ヘロヘロはこの職業レベルを、WI:拳闘神の腕輪(ブレスレット・オブ・ファイティングゴッド)の追加5レベルに使用した。

 

結果、世界の破壊者(ワールド・クラッシャー)を最大5レベルまで上げた、レベル105の人間種のヘロヘロは、武器破壊せずとも、戦いの中で一時的にワールドチャンピオンをしのぐ力が出せる攻撃力お化けとなり、たっち・みーに最も肉薄していたのは事実上、ウルベルトでも武人武御雷でもなく、この人型ヘロヘロだったのである。

 

 

ただ、ヘロヘロは性格上、同じギルドの仲間と戦うことに興味が無く、たっち・みーとヘロヘロのドリームマッチは最後まで行われなかった。

 

 

 

 

「いやー、本当に楽しかったですねー」

 

現在は黒き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)

の姿でニコニコのアイコンを出す彼は、最終日にログインできた仲間たちと楽しい時間を過ごしていた。

 

だが彼には一つ、賭けのようなものがあった。

プログラマーとしてのカンと、希望的観測が『Yggdrasil 2が有る』という可能性を否定できていない。

 

なので口では穏やかに、最後の時を迎える風な言い回しであったが、心の中では『Yggdrasil 2こい』と連呼していた。

 

そして最終日と翌日になんと年休を取り、まだ空想でしかないYggdrasil 2を楽しむための準備は万端だったのである。

 

『Yggdrasil 2の発表はまだです。ですが、これまでの経緯から、ある可能性は否定できません。そしてその発表は、Yggdrasilの終了の瞬間…きっと最後の瞬間にログインしていたプレイヤーには“Thank you for your playing”の文字だけではなく、その下に“...and,

WELCOME TO YUGGDRASIL 2”の文字が映し出されるはず…!さあ、準備は万端ですよ。このために人生で初めて有給とったんですからね!!』

 

彼の中のゲーム魂は、密かに熱く燃えていたのである。

 

 

 

 

23:58

 

23:59

 

00:00

 

 

 

 

 

ヘロヘロの目の前に、草原の景色。

少し先には山が見える。

周囲には少し離れたところに獣が2足歩行しているような亜人型モンスター。

空はどこまでも晴れ、わずかな土煙と、夏の草の匂い。

 

 

「きッ……」

 

「キタ―――――――――――――――――――――――!!!!!!」

 

 

「やったッ!!!来ましたユグドラシル2!!!アナウンスも無し!!いきなりフィールドに飛ばされる!!!!さすがユグドラシル運営!!!!」

 

「なんですかこのグラ!!!リアル以上でしょう!!!匂いとか感覚の実装ヤバ!!!法律どこ行ったってかんじですよーーーー!!!!サイコーーーーー!!!!!」

 

「しかも動き超リアル!!!1のアバターで開始!!!WIもアイテムも引き継ぎ!!!!あーーーーー!!!最後の1年全力出してよかったッーーーー!!!もう全力で楽しみますよーーーー!!今日はもう徹夜決定です!!!!!」

 

 

ヘロヘロが思いのたけを全力で叫んでいると、少し遠くにいる亜人型モンスターはギョッとした様子で若干ひいている。

 

その直後、背後から拍手と共に美しく、どこか妖艶な女性の声がする。

 

「ヘロヘロ様…ああ、ヘロヘロ様!ヘロヘロ様が、お喜びになられて、私も本当にうれしゅうございます…!」

 

振り向くと、そこにはちょっと際どめのメイド服を着た、金髪縦ロールで美しく豊満な胸を持ち、しかしどこか淀んだような目をした女性。

私の最高傑作、ソリュシャン・イプシロンがそこにいた。

 

「はぁう…」

 

変な声が漏れた。

自身の趣味を詰めこんだ、最高傑作ソリュシャン・イプシロン。

ホワイトブリムさん、ク・ドゥ・グラースさんと一緒に作ったあの子たちと違い、私だけのソリュシャン。

 

1ではNPCは拠点から動かせなかったので、こんなふうに連れ出すことはできなかった。

それ以上に、今彼女が喋った様な、事前登録していない言葉を流暢に喋るなど、1には…というより今までのDMMO RPGでは実現できていなかったこと。

AIの進化…それをこんな形で発表…しかも外に連れ出せるという運営からのサプライズサービス…

 

ヘロヘロは今、黒き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)の姿で良かったと思った。

人型だったら、感動と絶頂で何かが出ていたかもしれない。

いやリアルの自分、エライ事になっているかもしれない。

でも今はそんなことどうでもいいです!

ソリュシャンが!

私のソリュシャンが目の前に!!

 

 

「ソリュシャン・イプシロン。やっぱりかわいいですねぇ」

 

「ああ…ヘロヘロ様…そのような勿体ないお褒めの御言葉…この上ない幸福でございます!!」

 

「へっ?!」

 

「どうされました?」

 

「ソリュシャン?」

 

「はい、ヘロヘロ様!」

 

「ソリュシャン、私の言葉が分かるのですか?」

 

「もちろんでございます!何なりとお言いつけください!」

 

「え…それじゃあ、私を持ち上げてくれます?」

 

「…!なんと恐れ多く身に余る光栄…それでは玉体に触れさせていただきます!」

 

ソリュシャンは恭しく、まるで高貴な赤子でも持ち上げるような優しい手つきで私の体を持ち上げた。

 

「えーと…そのまま抱きしめてくれます?」

 

「ああ…そのような身に余る光栄…よろしいのでございましょうか?」

 

ヘロヘロは、『あ、これが警告メッセージ替わりですか。それにしても本当に良く設定されていますねー』と思った。

なぜならばDMMO RPGは当然18禁。

現在NPCに触れているだけでも、1では警告が来る。

仮にこのままソリュシャンがヘロヘロを抱きしめた場合、確実にその豊満な双丘にヘロヘロは埋まる。

そして警告メッセージ&即BANだろう。

 

そう思った瞬間、ソリュシャンが言葉をつづけた。

 

「それでは、失礼いたします。ご不快なことがありましたらすぐに止めますので、お言いつけください」

 

その言葉に続く柔らかい感触、暖かく、いい匂い。

 

「んっふ!」

 

「どうされました?!」

 

「いえあの…絶ちょ…いえ、もう少し続けていただけますか?」

 

「はい、ヘロヘロ様!」

 

むにゅ。

 

 

 

『これヤバいです…まさか18禁のロック解除?いや急激な2への移行で監視システムが不十分?それとも1からの引継ぎユーザー特典?あ…また…』

 

「…んっふ」

 

 

メイド姿の金髪縦ロール美女が、何やら黒っぽい粘体を抱きしめている。

周囲はあるはずもないピンク色のオーラが立ち込めるような幻覚が見える空間になっている。

 

突然現れて、大音量で何かを発していた黒い粘体と、おそらくは人間の女性。

最初は驚いたビーストマンたちだったが、とりあえずは人間がいるようだという認識に変わっていく。

 

そう、人間()がいるという認識に。

 

最も近くにいたビーストマンが、恐る恐る近寄り、背後から人間の女の首元辺りに手をかけた。

しかしいつもの肉を掴む感覚はなく、自分の手が沈んでいく感覚。

ビーストマンは理解ができず、言葉が出ない。

 

「ん?ソリュシャン、どうしました?」

 

「いえ、先ほどから周りにいたモンスターが私の背後から手を出してきましたので捕食しております」

 

「なんですって?ソリュシャンに手を出す?」

 

ヘロヘロはソリュシャンの胸元から滑り降りると、その様子を確認した。

確かに虎かライオンのような顔をした二足歩行の亜人型モンスターがその手をソリュシャンの首元に沈みこませ固まっている。

 

「私のソリュシャンに手を出すとはいい度胸ですねぇ…それじゃあ周りにたくさんいるみたいですし、2で最初のモンスター狩りをしましょうか。私は両方の種族でカンストでしたけど、もしかしたら2はレベル上限解放されてるかもですね!」

 

そう言うとヘロヘロは、最近お気に入りの戦闘スタイル、人型(スライム擬態)→スライム型→人型(指輪)の流れの最初である、スライムの種族レベルによる擬態で人型に変化した。

 

「まずは最初のフィールドですし、スライムの攻撃力でやってみますか。ソリュシャン、そのまま、そいつを捕まえててくださいねー」

 

「はい、ヘロヘロ様!」

 

 

こうしてこの世界をまだゲームだと信じて疑わないプレイヤーによる、無邪気な虐殺が始まる。

 

 

 




ヘロヘロ様が舞い降りました。

恐らくご理解いただけたかと思いますが、ウルベルト様自滅の遠因です。

あとちょっと3章は18禁に片足を入れる感じになりそうです。
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