オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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これで前日譚はおしまいです。

前準備は完了しました。




第0章 第5話 -離れ行く世界樹の葉達-

サービス終了の日は月曜日だったこともあり、前日の29日がメンバーが最も多く集まる日となった。

 

例えばブルー・プラネットは、ユグドラシルのサービスが終了することを一つの区切りとして、外国へ長期の出張することを決めた。

自然学者である彼は、主に極圏のまだ僅かながら自然と呼べるものが残存する場所へ赴き、フィールドワークを行うこと、及びそれによって得られたデータをもとに、世界に少しでも動植物相を復活させることが夢であった。

 

その夢はあまりにも儚く、移動に伴い外気に触れる時間が長くなることは間違いなく彼の健康に影響を与えることは、本人を含めた誰もが分かっていたが、誰もそれを口にはせず、ただ、暖かく送り出した。

日曜日発のチケットは少し安いらしい。

 

「Mobileのサービスはまだ続いているみたいなので連絡は取れますし、もし2があったらそこで会いましょう!」

そう言うと彼は午後5時を過ぎたあたりでログアウトしていった。

 

 

 

妖怪博士こと死獣天朱雀は、嬉々としてPKしている時とは別人のような落ち着いた声で皆に軽い挨拶をした。

「明日は授業の後、教授会があるから抜けられないんですよね。まあまた一緒に遊びましょう。それと、モモンガさん」

 

「はい?」

モモンガは突然名指しを受けてキョトンとした。

 

「実はうちの研究室の庶務をやってもらっていた方が辞めてしまってね。まあ生徒は悪ガキばかりだからしょうがないのかもしれないのだけれど…モモンガさんは落ち着いているし、ギルド長として癖が強い人たちと話すの得意でしょう?もし良かったら庶務の仕事興味ありませんか?後日資料送りますからよかったら見てくださいね」

 

突然のヘッドハンティングに驚きつつも、モモンガは自分がそのように評価されていたことを素直にうれしいと思った。

 

「それじゃ、皆、またね」

死獣天朱雀はログアウトしていった。

 

 

 

「多分明日はログインできないから、今日あいさつしとくね!」

茶釜はまず、やまいこ・餡ころもっちもちと3人で会話した後、他のメンバーにも挨拶をした。

「なんかね、明日の夕方以降、私が住んでるエリアが一時的に停電になるかもとかで何とも言えないから今日のうちに挨拶しておこうと思って。やまちゃんもたっちさんもそうでしょ?」

 

「そうそう。ボクのところにも連絡あったよ。ほんとやめてほしいよね。最終日だっていうのに」

やまいこが賛同する。やまいこと茶釜は昼は仕事が普通にあるため、夕方以降の停電はログインに影響する可能性が高かった。

 

「私のところもそうですが、幸運にも明日は非番なので昼間は参加できそうですね」

たっち・みーも答える。

 

この3人とペロロンチーノはご近所というほどでは無いが、同じアーコロジー内に住むメンバーで、アーコロジーの定期メンテナンスで電力等の一時供給中断タイミングが、ユグドラシル最終日と被ってしまったとのことだ。

たっち・みーを除く3人は実際、6月30日にはログインしてこなかった。

 

 

 

6月30日。

たっち・みーや他のメンバーは昼からログインし、モモンガが買い込んだ花火を皆で楽しみつつ時間を過ごした。

 

だが皆、2年前の頃のように重い空気を孕んではいなかった。

2年間で取り戻したAOGメンバーの絆は更なる冒険でより強固になり、メンバーの一番心配だったモモンガも明るい雰囲気を醸し出していたからである。

 

ヘロヘロが言うようにもしかしたら2が有るかもしれないし、Mobileはしばらく生きているのでそこから連絡も取れる。

幾人かのメンバーや、主に『ネコさま大王国』のメンバーがモモンガを別ゲームに誘っている。

また、茶釜からは、おそらく彼女の昼休みの時間、彼女はモモンガとユグドラシルを介したプライベートコールをつないでこう言った。

 

「モモンガさん、今まで本当にありがとうね。バカ弟も私も、モモンガさんがギルマスをやっていてくれたから今までやってこれた。それとさ…そうだな、今は結構忙しいんだけど、もう少し落ち着いたら、またオフ会やろうよ。モモンガさんには言わなければいけないこととかあるし…さ」

 

「えっ?…あ、はい。もちろんです。茶釜さんも体に気を付けてくださいね。また、メールします」

いつもの作った声でなく、素の声の茶釜がプライベートチャットで喋ってきたことに少しドキドキしたモモンガは、突然のことで気の利いたことも言えなかった。

茶釜はというと、そんなモモンガがモモンガらしいと思い、電話の向こうで少し笑った。

 

「それじゃあ、また。元気でね」

そう言うと、彼女は電話を切った。

モモンガはサムズアップしたピンクの肉棒アバターが消失し、〔log out〕という文字が短い時間表示される幻影を見た気がした。

 

 

ログインしたメンバーは夕方になると宝物庫に集まっていた。

それは宝物庫にしまわれているワールドアイテムを持ち出すためである。

 

AOGにふさわしい終わりの瞬間はどのようなものかを皆で話し合った結果、AOGの持つワールドアイテムを皆で装備し、設定上動かせる自作NPCとともに最期を迎えるというのはどうか、という意見が出たからである。

 

場所は玉座の間。これはそこに動かせないワールドアイテムが存在するからであり、1年前のサービス終了のアナウンスがあった後に集めた4つの新たなワールドアイテムを含めた全部で15個の“世界に一つ”のうち、14個が集う姿は壮観であった。

残りの1個は、もともとオーレオール・オメガに装備させているものだ。

最後だけ拝借するのはかわいそうなので彼女に装備させたままでいる。

ちなみに一ギルドが同時に15個所持というのは、後にも先にも最大でユグドラシルのレコードに記録された。

 

最後の瞬間にログインできているメンバーは、それぞれの創造したNPCを玉座の前に並べている。

ウルベルトはデミウルゴスを、たっち・みーはセバス・チャンを、モモンガはパンドラズ・アクターを、餡ころもっちもちはペストーニャとエクレアを、ヘロヘロはソリュシャンを、武人建御雷はコキュートスを、弐式炎雷はナーベラルを、そして、タブラ・スマラグディナとるし★ふぁーはアルベド、ニグレド、ルベドを。

 

タブラは「最後ですしね」と言い、自身の“娘”たちの秘密を少しだけ明かしてくれた。

まずニグレドは、現在“怪人”の風貌ではない。服装は変わらないがアルベドによく似たお姉さんの顔をしている。

「皆さんに怒られた後、ニグレドの設定をいくつか変えました。ホラー演出のスキップ方法はお教えしたと思いますが、更なる隠しコマンドでニグレドの外見はこうなり、部屋の内装も変わります。この状態のニグレドは人間に見えるが実は怪人という設定です」

 

ニグレドが玉座の間に登場したときにあまりに異なる風貌(顔)のため、モモンガを含めたメンバーはぎょっとしたが、今のタブラの説明で納得できたという顔になった。

 

「そしてルベドは…まあ、これはるし★ふぁーさんから話してもらいましょうか」

 

そう言われた、るし★ふぁーはニヤリと笑って得意げに早口にしゃべりだす。

「ルベドは、オレとタブラさんの合作で、オレの隠しゴーレムの一体です。ふっふっふ…実はレメゲトンの悪魔像残る5体は姿を変えこのナザリック内に隠されれています。その中でも最高の1体がこのルベド、最高級の素材と最強のコアを使用して作られたこの子は種族:半神で、全ての聖属性職と悪魔種族に対して有利な特性を持ち…」

 

「まあ、種族名は私たちの妄想ですが、そう言う訳で彼女は以前手に入れたカロリックストーンをコアに、七色鉱などの素材をふんだんに使った最強ゴーレムです。NPCではないのでフレーバーテキストを書き込めませんがそこは裏技として、ゴーレムに付属するメモ欄にフレーバーテキストを入れました。るし★ふぁーさんの拘りで、造形は2000年以上前の石膏彫刻芸術を参考に、“ルベド”の名に恥じない燃えるような赤い衣を纏った、神と天使と人が一体になったという設定の…」

 

 

「お二人とも、熱意は分かりました。サービス終了までしゃべり続けるつもりですか?それとるし★ふぁーさん、隠しゴーレムって何ですか?聞いていないですよそんなの」

 

余りに盛り上がる設定魔二人を諫めようと思って言葉を遮ったモモンガだったが、るし★ふぁーの聞き捨てならない言葉を思い出し、『またコイツは勝手に素材を』という怒りで声が低くなっていた。

 

そんな様子をほかのメンバーがさらに諫めて、とりあえずタブラたちの説明は終わった。

 

 

「それはそうと、他のメイド41人はいいの?ヘロさん」

弐式が尋ねると、ヘロヘロは答える。

 

「正直、メイドに囲まれるというのは夢の一つではあるのですが、あの子たちはク・ドゥ・グラースさんとホワイトブリムさんとの3人の娘たちなので。100%私の娘と言えるソリュシャンだけにしました」

 

 

「はい、ヘロヘロさん」

モモンガはヘロヘロにワールドアイテムを手渡す。

 

「これは、確か弐式さんが単独先行して見つけたやつですよね。私じゃなく彼が持つべきでは?」

 

「いえ、そう言ったんですが…」

モモンガが弐式炎雷へ目線を送ると、彼は答える。

 

「いやそれ、明らかにモンク向きのアイテムだったしヘロさんが持った方が様になるって。その代わり山河社稷図持たせてよ。ニンジャっぽいじゃんコレ」

 

「そうですか?ではお言葉に甘えて」

そう言うとヘロヘロは腕輪型のそれを、スライムの腕にはめた。

 

 

モモンガは次々にワールドアイテムを配っていく。

一部のギルメンは装備を拒否した。

全身鎧に手ごろに追加するものがなかった、たっち・みーと同じく、しっくりするものが無かったセバス・チャン。

侍っぽいものがなかったから要らないといった武人建御雷(コキュートスも)。

NPCに関してもエクレアはそのまま抱っこした方が可愛いということで追加装備はなし。

デミウルゴスは“完成した悪魔だから”という理由でウルベルトに要らないと言われた。

 

モモンガは最後に、ウルベルトに『幾億の刃』を渡そうとしたとき、ウルベルトの様子が少しおかしい気がした。

 

「ウルベルトさん、どうかしました?なんか、あまり元気ないというか…」

 

「あ…いや何でもない。モモンガさん。ついにサービス終了かと思うとな…」

 

「そうですね…でも皆さんのおかげで私はとても楽しかったです。ほかの色々なゲームにも誘ってもらっていますし。まずはユグドラシル2に期待ですが」

 

そういって笑顔のアイコンを出すモモンガを見て、ウルベルトは悩みごとのうちの一つは解消されたと思った。

モモンガは、多分もう大丈夫だ。

おそらく次に進める。

 

だがもう一つのことが、気になってしょうがない。

 

今日、本当はベルリバーもこの場にいる筈だった。

だが昨日の夜遅く、ベルリバーから短いコールが入った。

「こんな夜遅くに…」

と思ったが一応コールに出ると、聞きなれたベルリバーの、聞いたことがないほど真剣な、有無を言わせないような声が入ってきた。

 

「ウルベルトさん、時間がない。一度しか言わないからよく聞いてくれ。知り合いの計画がおそらく“あちらさん”にばれた。明日の決行場所としていたアーコロジーの“ホログラフィ”と名乗る何者からの逆探知があり、警告をするメッセージが入ってきた。しかし彼らは強行するらしい。この情報を聞いた時分かったんだが、決行場所のアーコロジーはたっちさんがいるところだ。色々な意味で決行すべきではないと思うから俺はこれから止めるよう説得しに行く。明日はユグドラシルには行けない。モモンガさんには何も言わないでくれ」

 

「ちょ…ちょっと待て!あんたがわざわざ行く必要ないだろ!」

 

「たっちさんがいるからという理由だけじゃなく、俺は基本的にはテロ活動みたいな関係ない人間を巻き込むようなやり方は反対なんだ。これはあいつらをそれなりに知っている俺の役目だ。だから、モモンガさんの方は任せた」

 

「お…おい!」

 

「じゃあな。また他愛もない話に誘うから、ウルベルトさんは正しい悪を貫いてくれ」

 

「おい!」

 

その後何度コールしてもベルリバーにつながることはなかった。

 

 

目の前は、このユグドラシルという世界の最後に向けた準備が着々と進む。

しかしその中で、たっち・みーがモモンガに何かを話しかけたかと思うと、「すみません、緊急の呼び出しがあったので先にログアウトします。またメールしますので!」と言い、ウルベルトが声をかける間もなく消えていった。

 

消えていく直前、全身鎧のヘルムの隙間から、あの男がこちらを見た気がした。

 

 

「じゃあ、残り1分切りました。皆さん、これまで本当にありがとうございました。ここにいる皆と、今日ここに来れなかった皆のおかげで、このナザリックは最後まで栄光の時間を過ごしました。ワールドアイテム所持数レコード1位は本当にすごいです。それじゃあ、強制ログアウトの前に皆でスクショ撮りますよ。あ、今日来られなかった人には私から後で送ります」

 

モモンガがスクショを最後の言葉を述べて写真を撮るよう促す。

 

「あ、待って、うちのパンドラはたっちさんに変身させます。これで皆写りますね!」

 

「いや黒歴史写したくないだけでしょ!」

「パンドラ入り写真はすでに撮影済みですよー」

 

仲間たちは最後までわちゃわちゃとしながら、各々写真を撮る。

そして、最後の締めにモモンガが言った。

 

「それでは皆さんで…“アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ”!」

 

「「「「「「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!!!」」」」」」

 

 

 

世界樹に終わりの時が来た。

栄光に満ちた世界樹の葉はばらばらになって樹から落ち……

 

 

離れ離れとなる。

 





次回からそれぞれの物語が始まります。

進め方を色々と相談させていただくかもしれません。

よろしくお願いいたします。

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