オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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原作でもソリュシャンは本当に有能ですよね


第3章 第3話 -帝国の街でロールプレイ-

 

山道はたいして強いモンスターも出てこず、また野宿の回数が増えるとまたソリュシャンに手を出してしまいそうなので、ヘロヘロはスライム化したソリュシャンを胸元にしまうとダッシュで北と思われる方角を急いだ。

 

おかげで翌日の午前中には山を抜け、午後には遠方に街らしきものが見えてきた。

ヘロヘロは一旦立ち止まり、考える。

おそらくアレは人間種の街でしょう。

さて、どのようにファーストコンタクトをしますかね。

 

まず、自分の名前は“ソルディフ・カーゴ・カルト・ヘロ=ヘロ”。

これは昨日で会ったオプティクスという男に名乗ったし、後々矛盾が出ないようにこれで行くつもりです。

というかゲーム的にはこの名前はもう登録されていて、別の名前を名乗ると変な感じになるのではとヘロヘロは考えている。

 

オプティクスはこの名前を名乗った後、自分のことを“貴族”と勘違いした。

これは恐らく何らかのイベントの開始の合図で、今後は貴族としてふるまった方がいい。

そうなるとソリュシャンはどうなるか。

護衛兼メイド。いや完璧ですね。

というかこのソリュシャンと言うNPCを連れてきたことでこのイベントが始まっている節すらあります。

そうなると貴族ロールってことですかね。

 

自分の知識が正しければ、貴族はどこかの国で領地とかを持つ者。

私の場合はどうでしょうか?

現時点でこの2の世界で、知っている国名は3つ。

恐らく今いる『バハルス帝国』、昨日のアンデット地帯のダンジョンを抜けた先にある『王国』、そして女王がいるという『竜王国』。

 

くあー!!『竜王国』超、気になりますねー

竜の女王ってめっちゃファンタジーじゃあないですか!!

1の時は竜ってどちらかと言うと強敵でしたが、2では竜が国を治めてるんですかー

しかも昨日のオプティクスという人間種のNPCが向かっているという事は、人と竜が住まう国とかですか?

もうベッタベタですねー

この帝国あらかた見たら行きたいですねー

 

 

じゃなかった、脱線しました。

この3国は知ってはいるけど少なくとも、これらの国の貴族とは名乗れませんね。

 

そうなると…やはりナザリックですかねー

まあギルメンの41人はナザリック国の貴族と言ってもいいですしね。

王がモモンガさんで…あ、でもウルベルトさんは貴族とか嫌がりそうですね…

 

じゃあ遥か南にある国という事にしますか。ナザリックの名前は出さない方向で。

方角的に遥か南なら竜王国とやらも該当しないでしょう。

 

でもなんで旅しているんだって話ですよね…

ああ、いっそ諸国漫遊的な感じにしますか。

私自身がモンクですし、諸国で自分の力試しをしたくて旅に出てしまった困った主とその御付きの護衛という感じで行きましょう。

 

それにしてもナザリックも含めた、1の時の各ギルドホームは移植されてるんですかね?

ナザリックはあれだけ頑張ってみんなで作ったギルドホームですから、あってほしいですねー

でも私にはソリュシャンが居ますから、とりあえずは満足ですけど…

 

よし、では設定はそれで。

ソリュシャンにも共有しましょう。

昨日の対応もそうでしたが、ソリュシャンは状況対応ができる子で良かったです。

ちゃんとフレーバーテキストに“仕事できる子”と書いておいて良かったですね。

 

 

そうしてヘロヘロは、懐からソリュシャンを出すと、考えた設定を説明した。

自身は困った主という設定なので、時々『ヤレヤレ』感を出してくださいとお願いすると、ソリュシャンは少し考えて、『練習をさせてください』と言った。

 

 

「では、私が貴族であるにもかかわらず勝手に国を出て諸国で腕試しをしていて、あなたはその御付きのメイドと言う前提で、これから向かう国などで、私が腕試しのためにモンスター退治や力試しの武術大会などに参加すると言い出した場合の発言をお願いします」

 

「はい、それでは…………全く!またそのようなことを…そのような危険なことで御身にお怪我などされたらどうされるおつもりですか!どうしてもご参加されるというのであれば、わたくしが代わりに参加いたします!本当に困ったお人なんですから…」

 

「はう…90点!!もっと冷たい目でも大丈夫です!!」

 

「至高の御方にそのようなご無礼を…!ですが精進いたします」

 

「ふぅー…役作りは問題ないようですね…それでは少々ですが装備を変更いたします」

 

そう言って、ヘロヘロはアイテムボックスを開き、コレクションのメイド服の中から大人しめのものを選択しソリュシャンに着せる。

 

「うーん…ロングスカートも良いですねー原点感ありますねーホワイトブリムさんの言う通りですねー」

 

ソリュシャンは、愛しい御方に新しい服を下賜され、さらに何度もじっくり観察されることで、その淀んだ眼は恍惚として何とも言えない幸せそうな顔になっている。

 

「では私も服を変えます」

 

ヘロヘロは自身の服はそんなに持っていないが、現在のいかにも胴着に見える高防御力の服ではなく、クラスは落ちるが高級そうな服に変更する。

 

 

「貴族かと言われると微妙ですが、上流階級が必死に庶民の服に近いものを探して着ている感じにはなりましたかねー。せっかくだから世界観に合わせた装備がいいですよねー。えっと…あったあった、無限の小銭入(インフィニティ・コインパース)。これはソリュシャンも持っていてください。金貨が10万枚まで入りますから入れておきましょう。この一見革袋の中に金貨を入れて買い物とか超それっぽいじゃないですか!この謎の無駄アイテムはこのためにあったんですねー」

 

もうヘロヘロは完全にそう言うロールプレイをしながらユグドラシル2の世界を楽しもうと考えていた。

昨日道具の確認をしたときに、アイテムボックスのオープンが未知の方法に変更されていたので、そのプログラムを考えてみたが思い浮かばず感動し、さらにコンソールが開かないことでログアウトできないことに気づいた。

 

しかしプログラマーとしての知識が逆に一つの可能性を導き出してしまった。

 

「これは…まさかTET(Time Expansion Technology)!!ダイブ環境での感覚時間遅延を起こし、結果的に現実では超短時間で、長時間のログイン体験ができるという…脳への負担とか色々と言われていましたが…まさかこんな形で開発成功を公表するとは…くーーーーー運営め!!サイコーです!!!!という事はログアウトするにはある程度のイベントまで進むか、特定のアイテムの入手ですかね。いやーーーーほんと有給とってよかった!!!バイタルサインに問題出たら緊急停止するはずですし、限界まで遊ぶぞおおおおお!!!!!」

 

と叫んで、それを見たソリュシャンはニコニコしていた。

この勘違いで、ヘロヘロは、ここが現実あるいは異世界転移かもしれないと疑う重要なポイントを華麗にスルーしてしまったのである。

 

 

そう言う訳で何となく変装を完了したヘロヘロとソリュシャンは、目に留まった遠方の街へ歩き出した。

ロールプレイは楽しむつもりであるが、明らかなプレイヤーが居たらコミュニケーション、あるいはPVPもやってみたいと考えている。

 

 

街に入ろうとするとヘロヘロは、当然のごとく門番に声をかけられた。

 

「ん、あんたら、通行証を持っていないようだが王国から来たのか?冒険者でもないなら足代を払ってもらうことになるが…」

 

 

『おお…確かにこの世界観だったらこういうNPCいる筈ですよね!いやー分かってますねー』

 

 

「ええ、王国ではありませんが遥か南の国から来た旅人です。なるほど街に入るための入国税のようなものですね。金貨何枚でしょうか?」

 

ヘロヘロはさっそく革袋から金貨を取り出すというファンタジー世界のロールプレイができて楽しくてしょうがない。

 

「なっ金貨?…いや二人で銅貨4枚だ」

 

「銅貨…ですか。申し訳ないのですが私はこの国の通貨を持っていません。この金貨でお支払いできませんか?」

 

そう言ってその高級そうな身なりの男が手渡した金貨を見て、門番は驚く。

それは門番が知る金貨よりも大きく、精緻な模様が掘られていて、持ってみると重さも重い。

 

「…申し訳ないが、こちらでしばらくお待ちいただけるか?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

すると門番は金貨を持って奥へ引っ込んでしまった。

 

 

「成程…いや設定が細かいですねーまさか通貨が違うとは。最悪何かの方法でお金を稼ぐ必要があるかもですね。モンスターを倒してもデータクリスタルやドロップは無かったですし…どうしましょうかねぇ」

 

「ヘロヘロ様、先ほどの者を殺して奪えばここも通れるのではないですか?」

 

「うーん…それは最終手段ですね。まだ2のルールが把握できてません。街中で人間種のNPCを殺すとその街のイベントが体験できなくなるとかあるかもしれませんし…なのであなたも、まずは危害を加えずに様子を見るようにしてください」

 

「はっ、誠に申し訳ありません…人間種への対応、承知いたしました」

 

 

しばらくすると門番が、何やら奥に設置されている部屋に入るように案内する。

中には商人風の男が一人。

そこで門番から説明が入った。

 

 

「あなたのような外国から来る方が居ることを想定して、皇帝陛下がこの国の通貨を持っていなかった場合の両替を行う制度を設けているんだ。そう言う訳でこちらで先ほどの金貨をこの国の通貨と両替する。両替はこの金貨1枚でいいだろか?」

 

ヘロヘロは少し考え、この先この国の通貨はある程度ないと困るなと考えた。

それに、これは1から継続してプレイしているプレイヤーのための両替ポイントだなと理解した。

 

「いえ、この国の通貨が全くないのは少々不便なので、1000枚ほど両替していただけますか?」

 

そう言って無限の小銭入(インフィニティ・コインパース)からユグドラシル金貨1000枚をジャーと出した。

 

 

「「なっ!!」」

 

机の上にいっぱいになる金貨を見て門番と、おそらく両替商の男は驚愕の顔をする。

だがそこでソリュシャンが口を開いた。

 

「ヘロヘロ様、またそのようなことを!このような雑事は私にお任せください!御方が直接金貨を出されるなど!」

 

ヘロヘロはハッとした。

良く考えたらメイドを連れた貴族が、自らこんなことをするのはおかしい。

さっき、ソリュシャンにも無限の小銭入(インフィニティ・コインパース)を渡した意味がないじゃないか、と。

それにいち早く気づいて、主を諫める風の注意をしてくれたソリュシャンの余りのシゴデキっぷりに、今日のことはギルメンに合流したら自慢しようと心に誓った。

 

 

「いいのですよ。私だってポケットマネーを持っておきたいのです」

 

「ですが…!」

 

「もう、しょうがないですね。それでは両替していただいたお金はソリュシャンが持っていてください。せっかく自由に使えるお金が手に入ると思ったのですが…」

 

 

門番と両替商の男は、目の前で繰り広げられた様子を見て、この者たちの関係性と状況をおおむね理解した。

これは、おそらくどこかの国の放蕩(あるじ)と、それのお目付け役の従者だ、と。

 

その後、名前を聞かれた時男が名乗った名前が4つあり、門番たちは『やはりな』と思った。

国名を聞いたが、『それは国に多大な迷惑がかかるから勘弁してほしい』と言われて、門番たちは、まあそうだろうな、と思い苦笑いした。

 

そもそもこの両替のシステムは、今後の山小人(ドワーフ)の入国が急激に増えるだろうことに由来している。

ほんの数日前にドワーフ国から連絡があり、国が落ち着いたから近く交易を再開したい、そのためにうちの国の人がおたくの街へいくからよろしく、と言われたのだ。

 

皇帝はあまりの一方的な物言いにちょっと頭が痛くなったが、彼らとの交易は国が潤うので、早急に両替ルールを各街へ伝えたばかりだったのだ。

山小人(ドワーフ)は同じ通貨も使用するが、一方で通貨を持たず物々交換というケースもあると理解しているためだ。

 

そのため、山小人(ドワーフ)は当然ドワーフ国から来るので、国名を記載するという事を制度化していなかった。

 

 

そう言う訳で門番は、ルール上書かなくてもいいし、この金貨が皇城に持ち込まれれば金貨から国が分かるだろうと考えて、この放蕩貴族を通すことにした。

 

 

 

街に入ったヘロヘロは改めて感動する。

 

『NPCの数すご!!街並みのグラとかえぐすぎですねー良くこれでラグらないですねー!いやホント感動です!!』

 

そして先ほどのソリュシャンの行動を小声でべた褒めする。

 

「ソリュシャン、先ほどは本当にグッジョブでした。これからもああ言ったフォローお願いしますね」

 

「はい、私の御役目ですので」

 

ソリュシャンは人目があるのでロールプレイの範囲内ととれる言葉づかいで回答する。

しかしその顔は紅潮し、明らかにうれしそうである。

あまりの可愛さに、つい、いけない気持ちが持ち上がってきたが、少なくともしばらくは手を出さないと心に決めているので、頭の中では餓食狐蟲王とかニューロニスト・ペインキルなどのことを考えて必死に耐えた。

 

門番に教えられた宿に到着するとそこは恐らくこの街で最も格式が高い宿だった。

『跳ぶペガサス亭』と書かれた門をくぐると、中は豪華ながらも落ち着いたラウンジがあり、奥に受付がある。

 

ヘロヘロは先ほどのような失敗をしないよう、入り口の門はソリュシャンに開けさせ、受付にもソリュシャンが対応する。

その間ヘロヘロは、ラウンジの椅子でくつろぐ。

経験が無いのでこれが正解なのか分からないが、しばらくすると紅茶が運ばれてきたので正解なのかもしれない。

 

紅茶を一口飲んで、思わず出そうになった声を押し殺す。

旨過ぎる…と言うか“味覚”の再現…やはりユグドラシル2、侮りがたしと言ったところだ。

 

受付が終わり、ソリュシャンが戻ってきた。

 

 

「あなたも座りなさい」

 

と言うと、ソリュシャンは一つ礼をして向かいの椅子につつましく座る。

 

「それで、部屋は取れましたか?」

 

「はい、最上階のお部屋でございます。もう向かわれますか?」

 

「ええ、この紅茶を飲んだら行きましょう」

 

 

そんな“それっぽい”会話をしたのち、二人は部屋に向かった。

 

 

驚くのはその豪華さ。

当然ヘロヘロはリアルでこのような場所に宿泊したことはないし、ユグドラシルではこのようなレベルでの感覚の再現は無かったから、感動しっぱなしである。

 

子供の様に部屋中のものを触りまくり、ベッドで跳ねてみたりした。

 

一通り堪能すると、備え付けの風呂に入ることにする。

 

当然リアルではこのような風呂に入る経験はなく、湯を溜めた浴槽につかる体験は初めてである。ゲームの中であるが。

 

するとソリュシャンが、『お体をお洗い致します』と声をかけてきた。

 

ヤバい…この流れは…ヤバい。

 

 

 

 

結果、ヘロヘロは耐えた。

耐えきった。

 

ちょっと何かが溢れてしまったことは認めるが、ソリュシャンと最後まで致すことはなく、耐えきったのだ。

 

 

風呂上り、備え付けのバスローブでくつろいだ後に、食堂へ向かうことにした。

 

「はーーー色々と大変でしたが、基本的には最高ですねー。こんなのリアルでは味わえませんし。味覚も再現されているという事は夕飯も期待大ですね」

 

一旦着替えて、部屋から階段を下りていく。

食堂には自分たちの他は、4人の客が1組いるだけで、他にはいない。

まあ大きくない街ではあるが、この街で最高の宿であるみたいだし、そこまで混雑という事はないかと考えた。

 

 

4人組の客は変な組み合わせである。

商人風の悪くない身なりの大人の男女が3人。

金髪に赤髪が混じった男、がっしりとした金髪で丁寧に手入れされた髭がわずかに生えた男、そしてエルフに見える細身の女。

もう1人はやや若い少年と青年の間くらいの年齢で前髪が長めで目が隠れているのが印象的な男だった。

 

 

『もしかしたらイベントの発生かもしれない』

 

そう考えたヘロヘロは、この4人の会話に耳を傾けることにした。

 

 





Bまででなんとか堪えました。
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