オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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スライム種の成人年来が分からないのですが、一部の異形種の方にとっては過激な内容を含むため念のためR18タグをつけましたが、運営には異形種の方が居ないとのご助言をいただき、内容をマイルドにしたうえでタグ外しました。

皆さまご助言感謝いたします。


第3章 第8話 -目覚ましソリュシャン-

 

 

まずは今夜の宿の確保という事で、ヘロヘロとソリュシャンはこの街の中心街と思われる場所を歩いていた。

すると明らかに高級そうないで立ちの建物が見えてきた。

ヘロヘロには街の店に掲げられている文字が読めないので、その建物が宿泊施設なのか確証が持てない。

そこでヘロヘロは、その建物が見えるカフェで飲み物を飲みながら、ソリュシャンが中に入り宿かどうか、そして空き室があるかどうかを確認することとなった。

 

外が見える席でおすすめを注文(メニューが読めないので)すると、出てきたのは茶色い液体。

店員は『マキャティア』と言っていた。

飲んでみると練乳のような甘みと苦みのあるコーヒーのようなもので、そもそも本物のコーヒーも飲んだことは無かったが、ヘロヘロにとってはとてもおいしく感じられた。

 

『本当にすごい技術ですね…』

と、今までは決して無かった味覚の再現に何度目かの感動をしていた。

 

しばらくすると、件の高級そうな建物からソリュシャンが出てきた。

その表情、歩きは普段と変わらないが、創造主であり本性は同種族であるヘロヘロには分かる。

明らかに怒っている…。

 

 

「とりあえず座りなさい。あなたにも同じものを注文しましょう」

 

「はい…ヘロヘロ様」

 

2つ目のマキャティアが運ばれてきて、ソリュシャンが一口それを飲んだところでヘロヘロは尋ねる。

 

「で、どうでしたか?あの建物は」

 

「はい…あの建物は確かに宿泊施設でした。ですが…」

 

ソリュシャンは言い淀むが、意を決したように続きを述べる。

 

「ですが、紹介制で初めての客を泊めることはできないと…。至高の御方のご要望を拒否するなど万死に値する愚かな行為ですが…お言いつけの通り一旦は危害を加えず戻ってまいりました」

 

「なるほど…」

 

 

ソリュシャンは、至高の御方のご要望を叶えることが出来なかった無能な自分自身に怒りを覚えた。

そしてそれ以上にあの宿の人間どもに対しても。

 

御寵愛まで授けてくださった愛しい御方の信頼を裏切るような無能の自分など生きている価値など無い…この命を差し出すことなどもはや何の未練もない。だがその前に、御方のお許しが頂けるなら、あの者どもに自身の愚かな行いを自覚させ、苦痛と共に死を与えることを最後の任務とさせていただきたい。

 

そこまで考えて、その思いを進言しようと思いヘロヘロの顔を見たが、予想外にもヘロヘロは上機嫌な笑顔を浮かべている。

 

「いや、お約束ですねー…まだ条件を満たせていないという事ですか。紹介制という事はこの国の重鎮や何らかのキーパーソンと関連するイベントのクリアが必要という事ですね…1の時もそうでしたが、ゲーム初期はできないことも多いですが、これから少しずつ攻略が進んでいき解放されると考えるとワクワクしますねー!」

 

お怒りになって…いらっしゃらない?

それどころか“ワクワクする”と、仰って…

これは…もしかしなくても私のことを気遣って下さっている…

ああ…なんて慈悲深い御方…私はこのような御方に創造いただき…

それどころか、あんなに激しくご寵愛を…!!

 

ジュゥゥゥ!!

 

想定よりも速いペースの酸のお漏らしで、中の人はもうそろそろ限界かもしれない。

 

 

「それでは、我々のような旅行者でも泊まれる宿を探しましょう。この店の店員へ聞いてくれますか?それと、これは宿に着いてからでいいのですが、もう少し金貨を両替しておきましょうか。先ほどの魔法薬店で並んでいた商品は金貨30枚ほどのものも普通にありました。今後、急に高額アイテムが購入できるイベントが来て、その時に2の通貨を持っていないのは嫌ですからね」

 

 

その後ソリュシャンがカフェの店員から聞いた、一見さんが泊まれるアーウィンタールの宿では最高級の宿に入り、ヘロヘロ的には1からの継続プレイヤー用両替スポットと理解している街の門までソリュシャンをお使いに行かせ、10000枚のユグドラシル金貨をこの世界の貨幣に両替した。

 

当然、あまりの量の貨幣の両替に、一時騒然となったのは言うまでもないが、ソリュシャンのメイドとしての完璧な振る舞いと、“お仕えしている高貴な御方”という説明から、どこぞの貴族か王族が来ているのだなと判断され、時間はかかったが両替は完了した。

 

ただ優秀な帝国の門番は、この件を速やかに皇城の事務官に伝え、翌日の午前中には皇帝の耳にも入ることとなったのであるが。

 

 

 

両替も終わり、豪華な夕食も終わり、後は風呂に入って寝る段となった。

 

 

「ヘロヘロ様、お体をお洗い致します」

 

ソリュシャンが当然の様に備え付けの風呂場についてくる。

 

ヘロヘロは真剣に悩む。

昨日、今と同じ人種族の状態でソリュシャンに体を流してもらった際、確かに最後まではいかなかった。いかなかったが、別の意味でいってしまったのは事実だ。

 

そもそも初日の××の時もそうだが、この2は色々と制限がなくなり過ぎていて、18禁行為も解禁されているし、感覚もほとんどそのままというトンデモ仕様だ。

 

電脳法…というか風営法的によくこんなことが許されているなと思う。

 

可能性としてはこれは実はβテストのような段階で、あらゆる行為はテスト名目で黙認されている可能性もある。

これは町中にプレイヤーが全くいないことからも、仮にこれがβテストでなくても、プレイしている者が非常に少ないか、あるいはワールドが信じられないほど広いかのどちらかだろう。

だがβテストの場合、ソリュシャンとの××や、昨日のお風呂も運営に記録されているという恐ろしい状況であるともいえる。

 

『いや…さすがに記録されていたら警告入りますよね。××はモンスター形態のあれだからスルーされている可能性はあっても昨日のお風呂のアレはさすがに…まてよ…』

 

ヘロヘロは気づいた。

 

要はお風呂の時などはスライム形態でいれば、絵的にアレでないので運営に見られていても大丈夫なのではないかと。

 

しかしこれも一つ問題がある。

 

恐らくこれは2のシステムだと思うのだが、スライムの形態の時は、思考や行動がスライムっぽくなりがちなのだ。

 

初日、スライム形態で休んだ時、疲れているわけでもないのに何となく全てがどうでもよく、本能的な欲求が表面化していた。

 

サクッと殺したサーベルウルフの肉を躊躇うことなくおいしく消化したし、その後、傍に居た魅力的なスライム(ソリュシャン)と××したくなった。

そして翌日、朝の光を浴びて何となく人に擬態したから良かったものの、あのまま洞窟の暗い所に居たら、ジメジメして気持ちがいい洞窟にしばらく居座り、本能のままソリュシャンと何回も番っていたかもしれない。

 

要は、××に発展してしまった場合、朝起きなければいけない時間に目覚ましのアラームのようなものが無いと、ずっとそのままという危険性があるのではないかという感覚がある。

 

『いやスライムの再現度高すぎでしょう…ユグドラシル運営はこういうとこあるんですよねー…』

 

だがここで気になったことがあった。

不定形の粘液(ショゴス)であり、細かい分類ではヘロヘロとは違うものの、ソリュシャンもスライム種。

彼女はそういった“スライム的な”本能は無いのだろうか。

 

気になってしまったので、若干恥ずかしいが聞いてみる。

 

 

「ソリュシャン、お風呂の前に聞きたいのですが、あなたは“スライム”としての本能は無いのですか?例えば、湿った所にずっといたいとか、本能的な…えーと…食事・睡眠・性欲と言った欲求が前面に出て抑えられなくなると言ったことは無いですか?」

 

するとソリュシャンは膝をつき家臣の礼をとりながら答える。

 

「はい、ヘロヘロ様。不定形の粘液(ショゴス)としての本能はございますが、至高の御方のご命令が全てにおいて優先でございます。ご命令いただければこのソリュシャン、どのような任務でも喜んで行わせていただきます」

 

ヘロヘロは『成程…NPCはどんなに高度でも、言ってしまえばプログラムだからプレイヤーとは違うのですね』と納得した。

 

 

「成程そうですか…では…例えば朝起きる時間になったら、私がどのような状態であっても声をかけて起こしていただけますか?正直私は、黒き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)の姿でいると本能が前面に出て、予定していた人間種としての行動が出来なくなる可能性があるかもしれないと考えているのですが」

 

「ヘロヘロ様がそのようにお望みでしたら、必ずそのようにさせていただきます」

 

「そうですか、助かります。それでは朝、人間種が起きる時間になる、あるいは可能性が低いですが、ホテルの人間がこの部屋に来るなどの、人間種としての姿を見せなければいけない状態になったら、私にそのように言ってください。スライムの本能が出ていて私があまり言うことを聞かなかったとしても、強く言って起こして下さい。お願いしますね」

 

「はい、承知いたしました」

 

「よし、それではこれからの時間はスライム種の姿で過ごします。お風呂もその方が洗いやすいでしょうし」

 

「畏まりました」

 

ソリュシャンは静かに、体内の玩具(人間)を強い酸で溶かしきった……。

 

 

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

 

 

翌朝、ヘロヘロが最初にはっきりとした意識で感じたのはソリュシャンの声だった。

 

 

『………ロさま…』

 

『…ロへロさま…』

 

 

『…ヘロヘロ様ぁぁぁ!!お時間で…お時間でございますぅぅ…!』

 

『ああっ!!ヘロヘロ様ぁぁぁ!!あっ!あああっ!!起きる…あっ!!お時間で…ああっ!!ございますぅぅぅ!!』

 

 

ハッと我に返ると、自身の黒き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)の体がソリュシャンの不定形の粘液(ショゴス)の体に覆いかぶさるように乗っかっていて、粘体の一部は入り交じっていた。

 

さっきのソリュシャンの声は音声として発せられたものでなく、スライムとして一体化している状態で共有するように響くテレパシーのように感じた。

強い感覚が、ソリュシャンの不定形の粘液(ショゴス)の部分に触れているところだけでなく、全身から感じる。

きっとソリュシャンもそうなのだろう。

全ての感覚を共有しているような感じである。

 

5分ほどの時間を、ソリュシャンの幸せボイステレパシーと共にぼんやり感じながら、やっとヒトとしての意識が表面に起き上がってきた。

 

「はうっ!!」

 

「ああ!!」

 

 

その最後のソリュシャンの声の後、ヘロヘロは速やかに人型に擬態した。

 

「はぁはぁはぁ…ソリュシャン…」

 

「ヘロヘロ様ぁ…おはようございます…朝でございます…」

 

 

ここは風呂場。

どうやら、昨夜はベッドにも行かず、お風呂タイムのまま突入してしまったのだろう。

 

『またやってしまった…』

 

ヘロヘロは何とも言えない気持ちがこみ上げる。

 

だが、ふと浴槽を見るとソリュシャンはなぜか体を薄く延ばし、浴槽を覆うように広がっている。

落ち着いて人型に擬態できるまで回復したソリュシャンに聞くと、お互いの酸で浴槽が溶けないよう、溶解抑制効果のある液体を出しながら浴槽を覆っていたとのこと。

 

ヘロヘロはソリュシャンの余りのシゴデキと、自身の本能行動の抑制の効かなさに戦慄を覚えた。

 

そしてその後は身支度を整え、無言のまま食事をし、特に昨夜の事には触れずに今日のスケジュールを簡潔に伝えたのだった。

 

 

 

「今日は、闘技場を見に行きましょう」

 

「はい、ヘロヘロ様」

 

 





ソリュシャンの中身が空になりました。

サキュロントさん、お疲れさまでした。
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