オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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ついにヘロヘロ様は2つ目の国の王様と繋がりました。


第3章 第17話 -竜王国内のビーストマンを亡ぼせ!-

 

 

ドラウディロンは、ソルディフ・カーゴ・カルト・ヘロ=ヘロという貴族が玉座の間に入ってから今まで、ずっと彼女のスキルでその男を観察していた。

 

非常に薄いとは言え、真なる竜王の血をわずかに受け継ぎ、ほんの少しだが種族レベルを持っている彼女は、竜として唯一使えるスキル・竜の感覚(ドラゴン・センス)を密かに使用する。

 

このスキルは対象が持つ力の強さや性質をごくわずかにだが看破することが出来る。

種族レベルが非常に低いドラウディロンに分かることは、対象のエネルギー量の大きさ、善悪の性質、そして言動が嘘かどうか程度のもの。

それも何となくしか分からない。

 

 

ドラウディロンと宰相は、知りたかった様々なことをヘロ=ヘロ卿へと矢継ぎ早に質問する。

ドラウディロンは、帝国皇帝の様に腹を探るような質問や深読みはしない。

今までの国難による苦労と、それを解消できるかもしれないという希望が、王として取り繕う余裕を失わせているためだ。

 

 

 

「お名前から察するに貴殿は貴族の様じゃが、差し支えなければどこの国の方か聞いても良いか?」

 

「いえ…実は王をはじめとした仲間たちには黙って国を出ている状態なので、国名をお伝えすると仲間に迷惑をかけるかもしれません。ただ、ここよりはるか遠い国ですので、国名もご存じないと思いますよー」

 

「む…そうか。今後も貴殿のお力を借りるとなると、正式に国交を結んでおきたいところなのだがの…」

 

「あーそれでしたらお気になさらず。私の仲間や王には後から伝えますので、出来ることがあればお手伝いしましょう。バハルス帝国の皇帝とも後日正式に挨拶ということになってますしねぇ」

 

「な…ヘロ=ヘロ卿の御国はバハルス帝国と国交を結ぶおつもりですか?」

 

「いえ、正式にはいただいた親書を皆で見て決めますが、あの国では私もお世話になりましたし、一度はお招きしたいですねぇ」

 

 

宰相の顔は険しくなる。

既に隣国の、あの有能な皇帝は、この方の有用性を理解し国交を結ぶための準備を始めている。

この会談の後、いや可能ならこの会談中に、我が国も卿の祖国と友好関係を結ぶ交渉をしなければならない…

同じく有能な宰相はそう考えた。

 

 

「ヘロ=ヘロ卿、すでに私たちの国の多くの国民は貴方に救われたという事を理解しております。正式な形で御礼をしたいと思いますので、貴国の王と繋いでいただく事は可能でしょうか?」

 

 

実際のところは、それなりに有能であるドラウディロンも、宰相の意図にすぐさま気づき、彼の意見に同調する。

 

 

「うむ、宰相の言う通りじゃ。我が国として御礼を述べることも出来ぬというのは、竜王国の女王の名前が廃るというもの。貴国あての親書をしたためるので、貴国の王陛下にお渡しいただけないだろうか」

 

「ええ、構いませんよー。おそらくドラウディロン陛下の存在を知れば、仲間(ぺロロン)も王(モモンガさん)も喜ぶでしょうねー」

 

「な…なんと。良く分からぬが嬉しいの」

 

 

ヘロ=ヘロ卿の発言に、ドラウディロンも宰相も、『もしかしてこの人の仲間や王はロリコン?』という考えが浮かんだが、さすがに他国の王に対して失礼過ぎるので、一般的な考えである『竜王の末裔との交流』という観点だろうな、と考え直した。

 

実際は半分はロリコンで当たっているし、ヘロヘロ的には竜との人のハーフは竜人だから、たっちさんとこのNPCと同じで異形種という事でモモンガさんも安心してナザリックへ招けますねーというものだった…

 

 

「ところで、私が出来るお手伝いの話に戻りますが、敵対しているのはあのビーストマンとか呼ばれているモンスターですよね?あれを倒せばいいのですか?」

 

「よろしいでしょうか?」

 

 

同じくこの場にいる火滅聖典のシュエンが断りを入れて、敵戦力の話を始めた。

 

曰く、この国の東にはビーストマン国が存在していて、根本的な問題を解決するには敵の殲滅という事になるが、近年生まれたと思われる王は賢いうえ逸脱者級の実力者という情報があり、またビーストマンの王が居る街にたどり着くまでも相当な距離があることや数えきれないほどのビーストマンがいる。

 

そして自分たち聖典部隊は国のルールに則り、言葉が分かる亜人種へはまずは対話で交渉をしようとしていたが、王にたどり着くことが出来ず、結果ビーストマンが増えて今の状態が生まれてしまった。

なので、被害が出る前にビーストマンを敵認定することが出来なかったことを本当に悔いていること。

 

さらに、数日前に本国に救援依頼をしていて、さらにビーストマンが大儀なき侵略者である旨も、伝言(メッセージ)と早馬で急ぎ伝えているので、本国からの強力な救援を呼べるかもしれない事。

 

 

「我々の力が及ばず、現状はかのような状況でございます…昨晩までに卿がこの国の西側に居たビーストマンどもをかなり殲滅してくれたおかげで、少なくとも西側の街の脅威は遠のいたと言っていいでしょう。ですが、東側の街の脅威度は依然として高く、我々のいくつかの部隊と、この国のアダマンタイト級冒険者チームが詰めておりますが、昨夜のような侵攻があった場合は、完全に防ぎきれるか不透明な状態です。さらに国境を越えて奴らの国へ攻め入るとなると、より困難かと思います」

 

 

「ふむ…良ければ地図など無いでしょうか?この竜王国の街が全て載っていて、周囲のダンジョンとか、その、ビーストマン国とやらとの国境とか載っているものがあると助かるのですが」

 

 

ヘロヘロは流石に慎重になっていた。

あの悪辣極まりない運営の罠にもう嵌りたくないという思いから、少なくともこの国の街の位置は把握しておかないと、また突発タワーディフェンスが始まるかもしれない。

街の配置を確認し、昨夜と同じ戦法で仕掛ければ国の東側のビーストマンもある程度殲滅できると踏んでいた。

 

ストーリー的に、ビーストマンというのは敵認定でいいようだし、一旦この国の中でモンスターが暴れそうな状況が無くなれば、後は国境の向こうでは無差別に殲滅しても大丈夫そうだとゲーム的なとらえ方をしていたのだ。

 

 

 

しかしヘロヘロの発言に、有能な宰相は躊躇いを覚えた。

確かにこの王城には、自国の街、および隣国のある程度の範囲までの地図というものが存在している。

しかしながら地図というのは、それが敵国に流布してしまえば、自国にとっては非常に危険な状態になると言ってもいい。

 

自国の複数の街を救ってくれたとはいえ、今日会ったばかりのこの男と、その国を、信じていいものか…

難しい判断を迫られ悩んでいると、女王も同じ考えを持っていたようで宰相と目があった。

 

 

ドラウディロンはスキルを使って見ているが、宰相の質問に答えるヘロ=ヘロ卿は嘘を言っている感覚が無い。

しかしその割には、彼から強さも感じない。

モンクだと聞いていたから武器等は持っていないようだが、気持ち悪いくらい何も感じないのだ。

何なら後ろに控えているメイドの女の方はシュエンたちよりも強そうな気配がするのだが…

 

もう一つ気になることは、彼らの性質である。

後ろに控えるメイドは強い“悪”の性質を持っていて、一方でこのヘロ=ヘロ卿という男はなぜかうまく読むことが出来ない。

 

ただ、この性質については、“悪”か“善”かが、その行動に直結するわけではないという事も知っている。

例えば、皮肉を言ってくる天敵の宰相は“善”だし、あの今にも事案を起こしそうなセラブレイトは、非常に強い“善”を感じる。

一方で、国に対して大きな働きをしてくれることが多いオプティクスは“悪”の性質であると感じている。

 

ちなみに火滅聖典をはじめ、スレイン法国から送られてくる者は例外なく“善”であるため、それはそれで気持ち悪いと考えているのだが。

 

だからメイドが“悪”であることはそこまで気になるわけではないのだが、ヘロ=ヘロ卿からどちらも感じない(・・・・・・・・)というのが初体験なので少々不気味なのだ。

 

なぜ、彼からは強さも、性質も感じることが出来ないのか。

ドラウディロンの中でこの部分が腑に落ちなければ、本当の意味で信じるという事は難しいという結論が出る。

 

そしてドラウディロンは決心したようにヘロヘロを見据えて質問した。

 

 

「ヘロ=ヘロ殿、正直に言うが、私は竜の末裔として、相手の力などをある程度看破する力を持っている。だが、貴殿からはそれらが何も感じられないのじゃ。この理由について答えていただけるだろうか」

 

「ふむ…成程」

 

 

ドラウディロンだけでなく、宰相も、オプティクスも、シュエンも、ヘロヘロに注目した。

ヘロヘロは『2の竜にはそんな設定があるんですねー』と感心しながら、一つ確認をする。

 

 

「ドラウディロン陛下の仰ることには思い当たることがありますね。私は普段は力を隠しています。一瞬力をお見せすることは可能ですが、力を持たない者が中てられると体調を悪くするかもしれませんね。この中ですと陛下と宰相殿は戦闘職でないご様子なので、少々心配です。お見せしてもよろしいでしょうか?」

 

 

名指しをされたドラウディロンと宰相は、覚悟を決めた顔で頷いた。

 

 

「そうですか。それでは…」

 

 

ヘロヘロはゆったりとした服の中で、他の者には見えないように探知阻害の指輪を外した。

 

 

 

ヘロヘロが指輪を外した、たった10秒の時間の後、宰相だけでなくその場に居たソリュシャン以外の者は、全身の体表に大量の脂汗を流し、膝が震えて立っていられなくなった。

 

ソリュシャンは内側に色々と汗のようなものを流し、違う意味で立っていられなくなりそうだったが、ちゃんと持ちこたえた。

 

そのため、しばしの休憩の後に会議は再開され、もはやヘロ=ヘロ卿の強さを疑うものは居なくなったので、玉座に近隣の地図が運ばれてきて、ヘロ=ヘロ卿を主軸に置いた作戦がトントン拍子に決まっていった。

 

王都の東側には3つの街がある。

ヘロヘロの作戦は、この3つの街にビーストマンが集結しないように注意しながら、竜王国東側領域のビーストマンを夜のうちに殲滅するという事だった。

 

本当にざっくり説明されたその他の者たちには、それがどうして可能なのかという事も含めて意味が良く分からなかったが、とりあえず火滅聖典、『豪炎紅蓮』、そしてこの場に居ない『クリスタル・ティア』のメンバーは3都市に詰めて、街にビーストマンが入らないように防御することと、夜間に各街の者が街の外に出ないように見張るように求められた。

 

この作戦は一夜のうちに行い切ることが重要と説明を受けたので、各メンバーが街へ出向き、夜間外出の禁止などを町中に説明する時間を含めて、決行は3日後の夜となった。

 

 

火滅聖典、『豪炎紅蓮』のメンバーが王都を旅立ち、それぞれの担当する街へ向かう。

ヘロ=ヘロ卿とメイドのソリュシャン嬢は、決行までの間、王城の来客用部屋で泊まってもらうことになった。

 

 

作戦決行の朝、ドラウディロンは宰相と共にヘロ=ヘロ卿の祖国へ渡す親書を作成していた。

 

「ふぅ…子供のような文面でなく、ちゃんとした国家間外交のための文書を書いたのは久しぶりな気がするな」

 

「今回に関してだけは、冗談でもお子様作文はやめてくださいね。ちゃんと大人形態に合った女王然とした内容でお願いします」

 

「分かっておるわ!ていうかいつもはお前が強要してるんじゃろうが!!…それにしても、あのヘロヘロ殿…おそらくだが私の曽祖父と同じかそれ以上の力を持っていると思う…」

 

七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)様とですか?!人間が、竜王と同じ力などと…そのようなことがあるのしょうか?」

 

「分からんよ。私だって初めての体験だ…ヘロ=ヘロ殿が力を開放した途端、幼いころ会った曽お爺様を含めた、誰よりも強力な力を感じた。そして不思議なことに性質は強力な善も強力な悪も内包しているように感じた。この感覚は曽お爺様と同じなんじゃ。そして、最初から最後まで、嘘は言っておらんかったと思う…もしかしたら我が曽祖父と同じように、人の姿をした竜王だったりしてな」

 

「それが事実であれば、かの方の国は竜王が支配する国という事でございますかね。そうとなれば冗談ではなく、バハルス帝国よりも先に友好関係を結ばなければなりませんよ。いや、事実でなくても友好関係は必須です。卿のお話では祖国には、卿よりも強い方がいらっしゃると。長いビーストマンとの戦いで、兵が疲弊して十分に育っていない我が国にとっては、強力な友好国を作ることが重要です。いや、強力な他国が敵国と繋がることが何より問題です。帝国は現在は王国を侵略していますが、王国を飲み込んだのちに狙うのは間違いなく我が国です」

 

「…分かっておる。ヘロ=ヘロ殿を通じて、何としても我が国と彼の国の友好的な関係を作らなければならん。ビーストマンの件だけではなく、その後のことも考えてな…」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ヘロヘロが、竜王国東側の領域にいるビーストマンをミンチにしているちょうどその頃。

 

 

ここは竜王国から南西に位置する、とある都市。

この国の住人からは神都と呼ばれている。

 

その都市の中心に位置する、一見すると宗教的建造物の中。

その中で12人の者たちが会議を行っていた。

 

席に座るは、軍事機関の責任者である大元帥、魔法の開発を担当する研究館長。司法、立法、行政の三機関長。そして『水』・『火』・『風』・『地』・『闇』・『光』の6つの宗派の神官長と、最後にもう一人。

ここにいる者以外には存在すら秘匿されている7つ目の聖典部隊の隊長兼最高神官長の女。

 

会議は静かに進む。

 

『公平中立』と『弱者救済』を是とし、一方で慎重かつ正確な情報収集を基に動く。

確かに、問題解決までの動きが遅いこともある。

 

しかし、冷静さを欠いた行動は思わぬ隙を生み、その隙に付け込まれれば逆撃を受けることもある。

彼らの“神”が伝えている教えは、彼らの中に生きている。

 

だが生き物は弱いものである。

様々な悪感情、例えば虚栄心、猜疑心、妬み、欲求。

これらは人間種であれ、亜人種であれ、異形種であれ、程度の差は有れど生まれてしまう事もある。

 

犯罪がゼロになることは無いし、教育が不十分であったり、格差や貧しさが、心を曇らせることを知っている。

彼らは自国の中にこのようなものが生まれた時にそれを正すべく、常に目を光らせている。

そしてその結果不幸な道に落ちてしまった者を救済することも重要な使命である。

そこで救済されたものが“神”に出会い、力を蓄えた者たちが7つ目の聖典部隊として働くのだから。

 

各部門の者が担当する領域で見つけた問題を共有し、その解決に適した部門に振る。

その定例の行いが静かに行われていく。

 

最後に火の神官長であるベレニス・ナグア・サンテイニが、担当する部隊である火滅聖典から上がってきた報告を共有した。

 

「竜王国へ派遣されている火滅聖典より連絡がありました。残念ながら、ビーストマン国の者が多数、竜王国の都市に攻め入ったとのことです。たまたま居合わせた遠国の旅人が火滅聖典と協力し、これを撃退。竜王国の国民には被害が出ませんでしたが、派遣されている副隊長のシュエンはビーストマン国が『大儀なし』と判断。竜王国はビーストマン国の侵攻に抗い戦争に発展する模様です」

 

年長者にふさわしい、普段は慈愛に満ちた微笑を浮かべている表情のべレニスは、今回ばかりは悲し気に報告書を読み上げた。

 

他の出席者からも、本当に残念であるという気持ちがこもったため息が出る。

種族を越えて分かり合うことはできなかったのだ。

しかしそうなると、竜王国側の戦力は不足しているのではないかという認識が一同の中にあった。

ベレニスのそれに続く報告は、皆のその考えを裏付けるものである。

 

 

「シュエンは戦力不足と、ビーストマンによる侵略に対抗するために本国に戦力を求めております。『大儀なし』とはいえ、何の交渉もなく此度で一度にビーストマン国を亡ぼすことはいささか性急かと思いますので、少なくとも竜王国内の多数のビーストマンを撃退または退避させる力が必要かと」

 

 

そこで、6人の神官長たちと大元帥の話し合いが始まる。

既に戦力を出している『火滅聖典』は元より、戦闘を得意とする『陽光聖典』も『漆黒聖典』も別任務についており、そこから人員を割くのは難しい。

また、この戦いは人間種と亜人種の戦いになるので、対人間種の戦闘力を想定している軍事機関では対処が難しいだろう。

同時に、竜王国民やすでに戦地にいる火滅聖典の傷ついた者を癒す信仰系魔法を使えるものも必要だ。

 

議論に答えが出ず、皆が困り果てていると、最も奥に座るそれまで会議を静観していた最高神官長の女が静かに手を上げた。

 

 

「人員の配置から考えて、ここは私の部隊から人を出すのが適切でしょう。私の部隊の秘匿性を考えると、最少人数で、かつ速やかに任務を終えられる者を送るべきと考えます。戦力、早い移動速度、信仰系魔法。これらを備える“輪廻聖典”の第九席次、クレマンティーヌ・リンカ・クインティアの単独潜入を推薦します」

 

10代前半の外見をした、左右で白銀と漆黒の異なる美しい髪の色と、同じく左右で異なる強い意志を宿した目の色をし、特徴的なとがった耳が良く映える、ハーフエルフの女が静かにそう告げた。

 

 





御方のせいである意味一番ぐちゃぐちゃになってしまった法国が動き出しました。
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